介護施設にはどんな種類がある?施設ごとの特徴と勤務先の選び方も解説
文/山本史子(介護福祉士)介護施設は、利用者さんの機能の維持や社会との交流に加え、家族の負担軽減に必要な場所です。しかし、介護施設にはさまざまな種類があり、働く側としても、どの施設を選べばよいのか悩むのではないでしょうか。本記事では、介護施設の種類や特徴・入居施設を選ぶ際のポイントについてお伝えするとともに、介護職としての勤務先の選び方について紹介します。
1.介護施設の種類
介護施設を大きく分けて「在宅介護」と「施設介護」の2種類があり、どちらも利用者さんの自立を支え、QOL(生活の質)の維持・向上を目指しています。それぞれの特徴を解説します。
「在宅介護」に関わる施設
在宅介護に関わる施設として、自宅に訪問するサービスと、利用者さんが通所や短期で宿泊(ショートステイ)できる施設など、大きく4つの種類に分けられます。それぞれに該当する施設や事業所として、以下が挙げられます。
在宅介護 | 自宅に訪問する |
・訪問介護(ホームヘルパー) ・訪問入浴 ・訪問看護 ・訪問リハビリ ・夜間対応型訪問介護 ・定期巡回・随時対応型訪問介護 |
施設に通う |
・通所介護(デイサービス) ・通所リハビリ ・地域密着型通所介護 ・療養通所介護 ・認知症対応型通所介護 |
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短期間宿泊する |
・短期入所生活介護(ショートステイ) ・短期入所療養介護 |
|
訪問・通所・宿泊を組み合わせる |
・小規模多機能型居宅介護 ・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) |
在宅介護に関わる施設の場合、宿泊を伴うものや夜間の訪問を扱っているサービス以外では、日中に利用されるところがほとんどです。利用者さんの介護レベルも幅広く、必要なサービスも異なります。共通しているのは、できるだけ自宅での生活を希望している方が利用することが多いという点です。そうした在宅介護を支えるため、訪問や通所・宿泊をうまく組み合わせて、利用者さんの身体の機能を維持し、家族の介護負担を軽減するために利用されます。訪問・通所・宿泊のサービスの取り扱いは施設の規模によって異なり、それぞれのサービスを総合的に取り扱っている介護施設も多くみられます。
「施設介護」に分類される施設
施設介護とは、利用者さんが介護施設に入所し、介護サービスを受ける施設全般を指します。要介護レベルなどによって入所できる施設が異なり、規模や提供するサービスの種類も違います。次の表は、入居する介護施設の一覧です。
施設介護 | 施設等で生活する |
・特別養護老人ホーム(特養) ・介護老人保健施設(老健) ・特定施設入居者生活介護 (有料老人ホーム・経費老人ホームなど) ・介護医療院 |
地域に密着した小規模施設など |
・認知症対応型生活介護(グループホーム) ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 |
入所できる施設では、24時間体制で介護サービスや医療的ケアが提供されます。一人暮らしで周囲のサポートが受けられない方や、介護度が高く周囲の助けが必要な方が入所される傾向にあります。
さらに、入居施設には、公的施設と民間施設の2種類があります。公的施設は、国や地方自治体・福祉法人が運営する介護施設で、利用者さんが比較的低料金で安定したサービスが受けられるのが特徴です。これに対して民間施設は、企業や法人などの営利団体が運営する施設で、施設によってサービスの内容や料金が大きく異なります。次の項目から、それぞれの特徴を解説します。
2.公的な入居型介護施設の種類
公的な入居型の介護施設は、低所得の方や介護度が高い方が優先的に入居できる傾向にあります。具体的には、次のような施設が挙げられます。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- ケアハウス
- 介護医療院
それぞれの施設の特徴や利用者さんの傾向を解説しましょう。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は、常時介護が必要で、自宅での生活が難しい利用者さんに対して、入浴・食事・排泄などの日常生活の介護や機能訓練・健康管理といったサービスが提供される施設です。一般的に要介護度3以上の高齢者が対象ですが、施設によっては要介護1・2の方でも入居できるところもあります。
特養に入居する利用者さんは介護度が高めの方が多く、介護職員は身体的な負担がやや大きい傾向にあります。その分、基本的な介護知識や技術が身に付けやすく、介護職としてのスキルアップが可能です。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)は、入居者の心身回復を促し、可能な限り自宅での生活ができるようにすることを目的として入居する施設です。医師や看護師が常駐し、リハビリや医療ケア・介護が受けられます。
老健では、要介護度1以上の高齢者から利用可能で、入居期間は3カ月と決められています。そのため、在宅復帰が難しい場合は、次の入所先を探さなければならない点を利用者さんや家族に説明する必要があります。介護職員として働く場合、医療やリハビリなど幅広い知識を身に付ける機会が多く、他業種との関わりも増えるでしょう。しかしその分、業務内容が多岐にわたる点や利用者さんとの関わりが短期間になる点は、老健特有のデメリットといえます。
ケアハウス(軽費老人ホームC型)
ケアハウスは、自立した生活が難しい60歳以上の高齢者で、主に低所得者の方もしくは、家族の支援が受けられない方を対象に入居できる施設です。地方自治体や福祉法人のほかに、民間企業による運営もみられます。ケアハウスは、軽費老人ホームC型に該当します。以前には、軽費老人ホームとしてA型とB型も存在していましたが、現在はケアハウスへ移行しています。
ケアハウスには一般型と介護型があり、一般型は主に自立した方向けの施設です。そのため、一般型ケアハウスの介護職員は介護サービスを提供できません。安否確認や食事提供を主な業務としており、入居者と円滑なコミュニケーションをして信頼関係が築ける方が求められます。一方、介護型ケアハウスは、介護が必要となった方が利用でき、食事・入浴・排泄といった生活介護サービスを提供します。施設スタッフが介護をする場合、特定施設入居者生活介護の指定を受ける必要があるため、基本的な介護知識や技術が必要です。
介護医療院
介護医療院は日常的な介護だけでなく、長期にわたり医療的ケアが必要な方向けの施設です。2024年3月末に廃止された「介護療養型医療施設」からの移行先として新設されました。
介護医療院はⅠ型とⅡ型に分かれており、Ⅰ型は手厚い医療ケアが必要な方、Ⅱ型はⅠ型よりも比較的容体が安定した方を対象としています。介護医療院での介護職員の役割は、日常生活介護のほか、リハビリのサポートやレクリエーションなどです。医療ケアや看取りなどにも対応しているため、医療職や看護職との連携も必要となるでしょう。医療と介護の両方のスキルを包括的に身に付けられ、幅広い経験が得られます。しかし、介護度の高い方の介護や看取りなど、精神的負担も大きい面もあります。
3.民間が運営する入居型介護施設
民間が運営する高齢者施設には、さまざまな種類があり、独自に多様なサービスと居住環境を提供しています。ここでは、代表的な例として次の3つを解説します。
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- グループホーム
有料老人ホーム
有料老人ホームは、自立から要介護者まで幅広いニーズに対応する施設です。介護付き、住宅型、健康型の3種類があり、提供されるサービスや介護の程度が異なります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
健康型 |
・健康状態が安定しており、自立した高齢者が対象 ・主に家事などの生活支援が行われる ・健康維持のためのイベントや趣味活動などのレクリエーションが豊富 ・ホテルのような高級な施設も存在する ・利用者さん同士の交流も可能 ・介護が必要になった場合、退去する必要がある |
---|---|
住宅型 |
・自立〜要介護度2程度の介護度が低い高齢者が対象 ・介護サービスを利用したい場合、外部サービスの利用が必要 ・食事や家事の生活支援のほか緊急時の対応や安否確認をする |
介護型 |
・要介護度の高い高齢者が対象 ・24時間体制の介護サービスを提供する ・施設で介護サービスが提供できる |
健康型や住居型の有料老人ホームでは、施設スタッフによる介護サービスがなく、介護型有料老人ホームは、施設スタッフによる介護サービスが提供されます。
健康型の老人ホームでは、生活相談や緊急時の対応が主な業務です。住宅型では、日常生活の支援や安否確認などをして、利用者さんとの信頼関係を築くことが大切です。介護型では介護サービスを提供するため、日常生活介護や健康管理・レクリエーションの実施など、幅広い業務を担当します。介護度によって利用できる有料老人ホームの種類は異なりますが、状況に合わせて選択肢も多くあります。比較的介護度が低い利用者さんとの交流が可能で、時間をかけて信頼関係が築きやすい職場といえるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、自立した高齢者を対象とした住宅サービスです。比較的自立した方から介護が必要な方まで利用でき、高齢者が自宅に近い形で生活する点が特徴です。サ高住は、一般型と介護型の2種類あります。
一般型 |
・主に食事の提供や安否確認、生活相談などのサービス ・介護サービスを利用する場合は、個別に契約が必要 |
---|---|
介護型 | ・施設職員による介護サービスが受けられる |
サ高住では、一般的には安否確認や生活相談のみを提供するだけで、食事や介護・生活支援は行いません。そのため、介護サービスが必要な方は、外部の介護サービスを契約する必要があります。
一般型のサ高住で働く場合、安否確認や生活相談を主な業務のため、介護サービスの提供にかかる負担は少なめです。ただし、利用者さんの安全を守るため、緊急時の対処法を身に付ける必要があるでしょう。一方で、特定施設入居者生活介護の指定を受けたサ高住は、施設職員による介護サービスが提供できます。そのため、入浴や排泄などの介護技術が求められます。
グループホーム
グループホームは、認知症の高齢者を対象に、少人数で家庭的な環境の雰囲気のなかで、その人らしい生活ができる施設です。
一般的に1ユニット9人以下の少人数で共同生活を送っており、食事の準備や掃除などを利用者同士で協力しながら生活をします。グループホームでは地域の活動に参加したり、ボランティアを受け入れたりするなど、地域とのつながりを大切にする傾向にあります。
介護職員は利用者さんの残存能力を生かして、洗濯や料理などの日常生活の見守りや、できないことのサポートをするなど、それぞれの利用者の状態に合わせて、個別ケアをすることになるでしょう。認知症の利用者さんと少人数で過ごすため、一人ひとりとじっくり向き合うことができ、認知症の専門知識が学べる施設といえます。
4.【介護度別】施設の選び方
施設選びの際には、利用する高齢者のQOL(生活の質)の維持や家族の負担軽減を考慮する必要があります。介護度によって適切な介護施設は異なるため、特徴を踏まえて紹介することが大切です。続いて、利用者さんの視点で、介護度別の施設の選び方をまとめました。
自立している方から比較的介護度が低い方
現在は、介護サービスを利用する必要がなく、自立している高齢者であっても、さまざまな理由から老人ホームを探すケースがあります。例えば、孤独感の解消や健康への不安・将来介護が必要になったときのための備えとして準備しておきたい、など、より豊かな生活を送るための選択肢の一つとして考えられるためです。しかし、自立している方や要介護度が低い方を対象とする介護施設の多くは民間運営で、公的施設と比べて費用がかかります。
そうした状況を踏まえて、将来に不安を抱えて老人ホームを探す場合、介護が必要になっても利用できる施設を選ぶとよいでしょう。例えば、住宅型有料老人ホームであれば、自立から比較的介護度が低い方でも入居可能で、介護サービスを受けたいときは、必要な支援の内容と量が決められます。
孤独を解消したい場合には、レクリエーションやほかの利用者さんと交流できる施設を探すとよいでしょう。例えば、健康型の老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)なら、充実した設備をもつ施設もあり、趣味活動も可能です。また、サ高住は有料老人ホームより行動の自由度が高く、外出しやすいというメリットがあります。ただし、介護度の低い方が利用できる施設は、高齢者向け住宅としての役割が強く、高額な費用がかかるかもしれません。
自立した方が施設を選ぶときは、買い物や通院のしやすさや、自由に生活できる環境か調べておくとよいでしょう。また、食事の提供や緊急時のサポートなど、どの程度のサービスが受けられるか事前の確認が必要です。また、医療的ケアが必要なときや介護度が高くなったときは、退去を求められる場合があることを理解しておく必要があります。
介護度3以上の方
介護度が高くなると公的施設の受け入れが可能になります。日常的な介護が必要な場合、特別養護老人ホーム、介護型有料老人ホーム、介護型ケアハウスが利用できます。特に重度の要介護状態の場合、常時介護が必要なため、特別養護老人ホームが適しています。ただし、介護型有料老人ホームは、民間企業が運営している場合も多く、公的施設と比べて費用が高めに設定されています。
リハビリや医療的ケアが必要な方は、介護老人保健施設がよいでしょう。自宅に戻る意思があり、リハビリを受けたい方に適しています。ただし、専門的で高度な医療が必要なときは、受け入れが難しい場合も考えられます。
介護ケアに加えて医療的ケアが必要な方は、介護医療院がよいでしょう。介護医療院は安定した身体状態から看取りまで対応しています。
どの施設においても、施設によって居室のタイプが異なります。多床室しか用意されていない場合もあるため、個室を希望する方はあらかじめ施設に聞いておくことが大切です。
5.認知症に対応した施設
認知症の方が入居できる施設は、次のような施設が挙げられます。
- 介護型有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- グループホームなど
特にグループホームは認知症専門の施設で、認知症の方が親しみやすい環境で、安心しながらほかの利用者さんや介護職員と交流が取れます。できる限り、身の回りのことを自分ですることで、身体機能を維持し生活リズムを整えられるのが利点です。加えて、心身の健康を支えるために、地域との交流や趣味活動が積極的に行われます。地域密着型で運営されているため、住み慣れた土地で生活が可能ですが、利用者さんの居住地以外では受け入れられない場合もあります。居住地以外のグループホームが使えるかどうかは市区町村によって異なるため、市区町村の窓口やケアマネジャーに相談してみましょう。可能であれば一度施設を見学して、スタッフの質やサービス内容・入居者の雰囲気を確認しておくと安心です。
6.職場として介護施設を選ぶ際のポイント
介護施設は種類が多く、介護職員としても、どの施設を選べばよいのか悩むことがあるかもしれません。さまざまな施設から、自分に合った職場を選ぶには、次のようなポイントを押さえておきましょう。
- やりたい業務内容の施設を選ぶ
- 待遇
- 職場の雰囲気
次から詳しく解説します。
やりたい業務内容の施設を選ぶ
まずは、自分が介護施設でやりたい業務内容を明確にしておきましょう。先にも紹介したように、介護施設によって利用者さんに提供するサービスは異なります。自身が取り組みたい業務に一致した施設を選ぶとやりがいをもって働きやすいでしょう。
例えば「医療ケアのサポートがしたい」「レクリエーションをして利用者さんと楽しみたい」など、自分がやりたい介護ができる職場・施設を探すことが大切です。自分の働きたい仕事がわかれば、選択肢も狭まります。
給与や待遇
介護職員の給与は、施設によって異なります。次の表は施設ごとの給与の平均月収をまとめたものです。
介護施設の種類 | 平均基本給与額 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 350,230円 |
介護老人保健施設 | 338,900円 |
介護医療院 | 312,420円 |
特定施設入居者生活介護事業所 (介護型有料老人ホーム・介護型サービス付き高齢者施設など) | 322,320円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 (グループホーム) | 287,550円 |
訪問介護事業所 | 306,780円 |
通所介護事業所 | 280,770円 |
(出典:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省)
特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、身体介護が中心となる施設では、他の施設と比べて、平均給与が高い傾向にあります。一方で、訪問介護事業所や通所介護事業所では、日中のみのサービス提供ということもあり、全体と比較して平均給与がやや低めです。ただし、上記はあくまで目安であり、保有している資格や働き方によっても給与は変わります。収入アップを目指すのであれば、働いてからスキルアップする機会があるかという点も、調べておくとよいでしょう。
職場の雰囲気
ホームページや求人票だけでは、施設内の雰囲気がわかりにくいかもしれません。応募を考えた施設があれば、実際に働いているスタッフに話を聞いたり、実際に施設を見学したりするのがおすすめです。利用者さんの施設での表情や職員の利用者さんへの接し方を見れば、施設の雰囲気が理解できます。自分が働く姿もイメージしやすくなるでしょう。
まとめ:介護施設の種類はさまざまあるため、特徴を理解することが大切
介護施設には、さまざまな種類があり、その目的によって提供する介護サービスは異なります。そのため、自分が働こうと考えている施設に、自分がやりたい業務があるか、働きやすい勤務形態かどうかを調べておくことが大切です。働く施設によって、求められる介護技術や資格も異なります。自分に合った職場を見つけ、働きながらスキルアップを目指してみてもよいでしょう。
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