利用者さんが仕事をして報酬を受け取れるデイサービスとは?"はたらくデイ"を行う「フラワー園デイサービスセンター」の取り組み|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー愛知県名古屋市にあるデイサービス「フラワー園デイサービスセンター」では、利用者さんが軽作業に取り組むことで園内通貨を受け取れる「はたらくデイ」を実施しています。利用者さんは来所後、レクリエーションの一環として作業に取り組み、お仕事によって得た報酬は、好きな物やサービスなどに交換できます。
地域の企業からの作業依頼もある「はたらくデイ」とは、一体どのような取り組みなのでしょうか。社会福祉法人フラワー園 事業所長の渡邉一央氏に話を聞いてみました。
1.「フラワー園デイサービスセンター」はどんな施設?
ーー「フラワー園デイサービスセンター」の施設紹介をお願いいたします。
愛知県名古屋市にあるデイサービスです。2024年現在は100名ほどの方に利用していただいており、平均介護度は2.3、平均年齢は86歳です。要支援や要介護認定を受けた方だけでなく、要支援や要介護となるリスクが高いと判定された事業対象者の方にもご利用いただいています。当施設で提供しているサービスは、基本的に他のデイサービスと大きな違いはありません。ただ、これからご紹介する「はたらくデイ」や、園内通貨を活用した取り組みを行っている点は、大きな特徴といえるでしょう。
2.「はたらくデイ」の取り組みについて
ーー「はたらくデイ」とは、一体どのような取り組みなのでしょうか。
「はたらくデイ」は、利用者さんが軽作業に取り組むことで、園内通貨を受け取れるプログラムのことです。リハビリや介護予防のためだけにデイサービスを利用するのではなく、お仕事に取り組むことで生きがいを感じていただきたいとの思いから、7年前に始めました。
「はたらくデイ」はレクリエーションの一環として実施していますが、参加は必須ではありません。また、作業時間も決まっていないため、入浴やお食事以外の余暇時間に、好きなタイミングで取り組んでいただいています。なお、作業の完了時にお渡しする報酬には、「ワーク」と呼ばれる園内通貨を使用しており、お仕事の難易度や緊急性に応じて、「1ワーク紙幣」または「10ワーク紙幣」を組み合わせてお渡ししています。実際のお金に換算すると、1ワークが10円程度の計算です。
3.利用者さんが取り組むお仕事の内容
ーー利用者さんが取り組むお仕事としては、具体的にはどのようなものがあるのですか。
利用者さんに取り組んでいただくお仕事は、施設内でのお手伝いだけでなく、地域の企業さんからの依頼もあり、バラエティ豊かな作業を揃えています。具体的なお仕事の内容としては、施設内のお手伝いでは、タオル畳みや草木の水やりなど。地域の企業からは、ボールペンにインクを詰める作業や、車のドアハンドルの部品の一部を組み立てる作業などをご依頼いただいています。
ーー内職のような作業もあるのですね。ちなみに、このお仕事はいつもどれくらい用意されているのでしょうか。
利用者さんに取り組んでいただくお仕事は、常時30ほど用意しています。チラシを折るなどの簡単なものから、造花作りなどの少し複雑なものまで、様々な難易度のものを揃えるようにしていますね。なお、お仕事を開始するまでの流れをご紹介すると、利用者さんは来所後、「お仕事掲示板」に仕事を見に行って、自分が取り組みたい作業を探します。掲示板には、各仕事の詳細のほか、作業によって受け取れる報酬(ワーク)も記載されているため、高い報酬が得られるお仕事に優先して取り組む利用者さんもいらっしゃいます。
そして、お仕事をご自分で選ぶことが難しい利用者さんには、「〇〇さんは細かい作業が得意なので、こちらのお仕事はいかがですか」など、利用者さんの職歴や好みを踏まえたうえで、スタッフからご提案することもあります。
掲示板を見て取り組むお仕事を探す利用者さん
4.院内通貨の使いみち
ーーお仕事によって受け取った園内通貨は、どのようなものに変えられるのですか。
園内通貨は、生活用品をはじめとした商品や、外出行事、各種サービスに交換できます。具体的には、生活用品であればトイレットペーパーやティッシュペーパーボックスなど。外出行事では、スタッフと一緒に近所の喫茶店や回転寿司へ行けるほか、サービスとしては、カメラが得意なスタッフによる遺影の撮影や、ネイル体験などを用意しています。商品の写真と必要なワーク数(金額)が記載されたカタログを用意しているため、そのカタログを見て、欲しいものをスタッフにお伝えいただき、ワーク紙幣と交換で商品を受け取ります。
ただし、カタログに載っていないものでも、利用者さんからのご要望があれば、なるべくお渡しするように心がけています。例えば当施設では、裏庭の一部を1年100ワーク程度で利用者さんに貸し出す「レンタル農園」の取り組みを行っているのですが、この農園にて植える花の苗や肥料などは、利用者さんから要望があれば、ワークと引き換えに職員が購入しています。
ーー外出行事にも交換できるとは驚きです。特に人気の商品や、サービスがあれば教えてください。
最も人気があるのは、トイレットペーパーやティッシュペーパーボックスです。当施設はご自宅まで送迎を行っているため、かさばる品を玄関まで運んでもらえて便利との理由により、多くの利用者さんから人気を集めています。なかには、「今度は〇〇と交換してきて欲しいと家族から言われた」など、ご家族の希望によって商品を選んでいる利用者さんもいらっしゃるようです。
また、先ほども少しご紹介した、当施設の裏庭を貸し出す「レンタル農園」も人気のあるサービスの一つです。この取り組みは、「草花を育てることが好きな利用者さんのために、使っていない裏庭を貸し出してはどうか」との発想により始まったものです。裏庭をいくつかのスペースに区切り、1区画100ワーク前後で貸し出しています。一度借りた後は、何を育てても良いため、皆さん好きな花を植えるなどして楽しまれています。
5.利用者さん・ご家族からの反応
ーー「はたらくデイ」や「レンタル農園」について、利用者さんやご家族からの反応はいかがですか。
皆さん本当に楽しんで作業に取り組んでいただいているようです。障がいをお持ちの方や介護度が高い方も、他の方と協力しながら作業されていて、今では利用者さんの9割ほどの方が何らかのお仕事に取り組まれています。なかには、「どうしてもレンタル農園の契約を更新したいけれど、ワークが足りないので、ローンで支払わせて欲しい」と仰る利用者さんもいて、驚くと同時に、それだけ「はたらくデイ」の取り組みが皆さんに浸透しているのだと感じ、嬉しくなりました。
また、ご家族からは「フラワー園デイサービスセンターに通うようになってから、なんだか祖母が元気になりました」「この施設に通い始めてから、介護度が下がったんです」などのお声をいただく機会も多く、スタッフのやりがいにも繋がっています。今後もより多くの利用者さんに、活動をお楽しみいただければと考えています。
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