"はたらくデイ"を継続するうえでの工夫は?仕事をして報酬を受け取れるデイサービス「フラワー園デイサービスセンター」の取り組み|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー愛知県名古屋市にあるデイサービス「フラワー園デイサービスセンター」では、利用者さんが軽作業に取り組むことで園内通貨を受け取れる「はたらくデイ」を実施しています。利用者さんは来所後、レクリエーションの一環として作業に取り組み、お仕事によって得た報酬は、好きな物やサービスに交換できます。「はたらくデイ」は珍しい取り組みですが、継続するうえで、どのような工夫がなされているのでしょうか。社会福祉法人フラワー園 事業所長の渡邉一央氏に話を聞いてみました。
1.「はたらくデイ」の取り組みを始めたきっかけ
ーー「フラワー園デイサービスセンター」の施設紹介をお願いいたします。
他社の介護施設との差別化をしたいと考えたことがきっかけです。当施設が位置する名古屋市中川区には、デイサービスをはじめとした介護施設が複数存在しています。そこで、お金をかけて設備を揃えるよりも、利用者さんに興味を持っていただきやすい、ユニークな取り組みができないかと考えていました。
こうして何か良い方法はないかと考えていた時のこと。施設にて、ある利用者さんに洗い物を手伝っていただく機会がありました。職員がお礼を伝えると、「いいの、いいの。家ではやらせてもらえないから」と利用者さんは仰ったそうです。そのエピソードを聞いた際に、社会に参加し続ける難しさを実感すると共に、何か高齢者の皆さんの生きがいになる取り組みを提供できないかと考え、「はたらくデイ」を始めました。
2.「はたらくデイ」の取り組みを継続するために行っている工夫
ーー「はたらくデイ」の取り組みを継続するために行っている工夫や、気をつけていることはありますか。
なるべく利用者さん全員が取り組める作業を用意することです。「はたらくデイ」についてお話すると、「要介護5の方は難しいですよね」と言われることが良くあります。しかし、要介護5の方や半身麻痺の方でも、隣の方やスタッフと協力してチラシを折るなど、できる作業はたくさんあります。そのため、利用者さんが作業に取り組めるかどうかを、スタッフ側で勝手に判断しないようにしています。利用者さんに生きがいを感じていただくため、それぞれの方に適した作業を用意することが私たちの仕事でもあると思うので、難易度の低いものから高いものまで、豊富な作業を用意するように心がけています。
また、利用者さんのご家族や地域の方々の理解を得ることも、気をつけている点の一つです。私たちの取り組みが広がれば、「フラワー園デイサービスセンター=はたらくデイの取り組みを実施している介護施設」と認識されるだけでなく、地域の方々からお仕事のご依頼をいただく機会の増加にも繋がります。実際に利用者さんのご家族がお勤めの保育園から、イベントに使う飾りの作成依頼を受けたこともあります。この取り組みを続けるためにも、今後も活動について定期的に発信を継続していく予定です。
近隣の保育園やスーパーから作業依頼を受けることも
3.スタッフに向けて実施している取り組み
ーー「はたらくデイ」の継続にあたっては、スタッフの協力も必要かと思います。スタッフに向けて実施している取り組みがあれば教えてください。
スタッフにおいても、やりがい・働きがいを感じてもらいたいとの想いから、それぞれのスタッフがこれまでに培ったスキルや特技などを、利用者さん向けのサービスとして提供する取り組みを実施しています。介護士は他業種から転職する方が多いため、さまざまなスキルを持っている人が多い傾向にあります。そのため、それらのスキルを利用者さんに提供すれば、利用者さんにも喜んでいただけるうえに、スタッフ自身のやりがいや自信にも繋がるのではないかと考えました。
たとえば、園内通貨の「ワーク」で交換できるサービスの一つに、ネイルの施術があります。これは美容師の勤務経験があり、ネイルの資格を持っているスタッフのスキルを活かしたいとの思いから始めました。ほかにも、趣味のカメラを活かして遺影の撮影サービスの提供を始めるなど、それぞれのスタッフが持っている能力や好きなことを、仕事に絡める取り組みを実施しています。はたらくデイをより盛り上げていくためにも、今後もスタッフの力を借りていく予定です。
ーースタッフの方々が持つ能力やスキルを利用者さん向けのサービスに繋げるために、実施した工夫はありますか。
スタッフ向けのプロフィールシートを作成し、それをスタッフ同士で読み合うことで、サービスとして提供できそうな項目を見つける取り組みを実施しています。プロフィールシートとは、職歴や趣味、苦手な業務などの項目があり、読むだけでそのスタッフの人となりが理解できるシートです。「書きたくないところは記入しなくて良いよ」と話したうえで、スタッフ全員にシートを書いてもらい、終礼のカンファレンスの時間を少し削って皆で読み合いをしました。
すると、「私には何の取り柄もない」と話していたスタッフに対して、「〇〇さんは書道が得意なんだ!そういえば、利用者のAさんが書道に興味があると言っていたよ」「英語が得意なら、簡単な英会話教室もできそう」など、他のスタッフが、その人のスキルを活かす方法を考え始め、本人も気がつかなかった能力を見出すことに繋がったのです。結果として、利用者さんに提供できるサービスが増えただけでなく、仕事に対するモチベーションアップや、スタッフの相互理解を深めるきっかけにもなったと感じています。
4.今後の展望
ーー今後の展望をお聞かせください。
当法人で運営している介護事業所では、どの施設においても利用者の自立支援を目的として運営しており、それぞれ異なった取り組みを実施しています。現在、当施設においては「はたらくデイ」を実施していますが、はたらくデイに固執するつもりはなく、時代の流れや利用者さんのニーズに沿って、変化し続けることが重要であると考えています。今後も利用者さんにとって役立つ取り組みを継続できるように、当法人ができることを追求していく予定です。
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