利用者さんの「やりたいこと」に挑戦できるデイサービスとは?地域に溶け込んだ介護施設「デイサービスSoda」に注目|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー
岡山県総社市にある「デイサービスSoda」は、利用者さんがやりたいことに取り組めるデイサービスです。事前に決められたプログラムはなく、利用者さんは来所後、料理や手芸、散歩などの自分が好きなことに取り組みます。Soda代表の土井脩平氏に、施設の概要や1日の流れなどについて聞いてみました。
ーー「デイサービスSoda(ソーダ)」の施設紹介をお願いいたします。
岡山県総社市に位置するデイサービスです。2024年8月にオープンしました。特徴は「やりたいことに挑戦できる」ことで、利用者さんお一人おひとりにやりたいことをヒアリングしたうえで、それぞれのニーズに合わせた活動を行っています。施設名のSoda(ソーダ)は、「そうだ、一緒にやってみよう!」の「そうだ」から名付けました。2025年2月現在の利用者数は1日あたり7~8人で、80〜85歳くらいの方が多く来所されています。また、平均介護度は要介護2程度です。
ーー「利用者さんのやりたいこと」とは、具体的にはどのようなことに取り組めるのでしょうか。また、一回の利用の流れも教えてください。
皆さん本当に多種多様なことに取り組まれています。料理に励む方もいれば、木工作業に取り組む方、手芸をする方、ギターを演奏する方も。また季節の活動として、味噌作りやしめ縄作り、紅葉狩りなどをスタッフからご提案することもあります。
ある1日の流れを簡単にご紹介すると、9時半に利用者さんが集まった後は、まずバイタルチェックと朝礼を行います。その後お昼ご飯作りをする方と、それ以外の方に分かれ、それぞれ行動を開始します。料理を希望する方は、スタッフと一緒にスーパーや野菜の無人販売所へ。一方、料理をしない方は、動画を見ながら体操をしたり、将棋や縫い物をしたりして過ごします。お昼ご飯を食べた後も、特に決まったプログラムはありません。施設に併設された本屋や駄菓子屋の店番をして子ども達と触れ合う方、スタッフと散歩に行く方、クラフトテープでカゴを編む方、ギターを弾く方まで様々です。そして3時におやつを食べた後は、全員で体操をして身体を動かしたり、掃除をしたりして、4時半には帰宅の準備を始めます。

駄菓子屋には日々地域の子ども達が訪れている
ーーただ単に「やりたいこと」のサポートをするのではなく、買い物や掃除など、日常生活に必要な動作をふんだんに取り入れているのですね。
そうですね。当施設での活動は、身体機能訓練になるように環境調整をしています。例えばお昼ご飯の買い物であれば、「今日のメニューは肉じゃがです。じゃがいも・にんじん・こんにゃく・豚肉がどこにあるか探しましょう!」「豚肉は1人50gなので、6人分だと全部で何グラムになりますかね?」などの課題を出すのです。このような課題があると、店内を歩きながら頭を使うことになるので、認知機能の訓練にかなり役立っていると感じています。
また、料理をする際は、利用者さんの活動量を増やすため、なるべく立ったまま作業ができるように工夫しています。立位保持ができるよう机の高さを調整したり、ご本人に「立って野菜を切った方が手に力が入るので、作業しやすいですよ」と説明したりすることで、無理なく立っている時間を増やすイメージです。目的の有無は利用者さんのモチベーションに直結すると思うので、「どうすれば機能訓練になるか?」については、常に意識していますね。

お昼ご飯にコロッケを作る利用者さん
ーーこれまでに利用者さんと取り組んだ「やりたいこと」で、印象に残っているものはありますか。
特に印象に残っているのは、利用者Aさんとの活動です。Aさんは以前他のデイサービスに通われていましたが、あまりデイサービスに行くのがお好きではなく、施設に馴染めなかったそうです。また、同施設ではあまり笑顔を見せず、話すこともほとんどなかったといいます。その後、事情によりデイサービスを変えることになり、担当ケアマネジャーからの紹介で当施設に来ていただくことになりました。Aさんは昔からものづくりがお好きだったとのことで、まずは木工作業をおすすめしてみました。すると、一緒に棚を作ったり、竹を削って流しそうめんの台を作ったりしているうちに、段々と「今度は〇〇を作りたい」とご本人からアイディアが出てくるようになったのです。さらに、笑顔が見られるようになったうえに、スタッフに話しかけてくださる機会も増えました。以前のAさんを知る方からは、「あんなに楽しそうなAさんの姿は見たことがない」とのお声もいただき、当施設での活動を通して「Aさんらしさ」を取り戻していただけたことを、非常にうれしく感じています。
他にも、利用者Bさんと鬼ノ城に行ったことも印象的でした。鬼ノ城は桃太郎伝説のモデルとされる場所であり、総社市で生まれ育った子どもたちにとっては定番の遊び場でもあります。Bさんも幼い頃に鬼ノ城で遊んだ思い出があり、「久しぶりに行きたい」とのことだったので、ある日車椅子でお連れすることになりました。すると、展望台に着いた時に、懐かしい景色に感動したBさんは車椅子から立ち上がり、「帰りは少し歩いてみようか」と言われたのです。Bさんは普段ベッドで過ごすことが多い生活を送られていたので、歩きたいと言われた時には私も驚きました。その時に撮影した写真を県外に住むお孫さんにお送りしたところ、「昔のおじいちゃんの笑顔が見れて本当によかったです」という感想をいただくことができました。これからも、利用者さんが今まで諦めていたことに挑戦できる場所になればと考えています。
ーー「デイサービスSoda」について、利用者さんやご家族、地域の方々からの反応はいかがですか。
利用者さんやご家族だけでなく、地域の方々からも前向きな反応をいただく機会が増えてきて、大変うれしく感じています。当施設は地域との繋がりを大切にしており、施設内に本屋や駄菓子屋を設けたり、積極的にイベントへ参加したりすることで、地域の方々との交流を深めています。介護事業所は閉鎖的に思われることが多く、「中で何が行われているのか分からない」と感じている方も少なくありません。いつかご自身やご家族が介護を必要とした際に、迷って不安になることがないよう、介護について知るきっかけを広く提供したいと考え、積極的に地域と関わるように努めています。最近では、「歳を取ったらこんな施設に通いたいと思いました」「家族を通わせたいです」といったうれしいお声をいただくことも多く、実際に利用に繋がるケースもありました。こうした地域との繋がりを大切にすることで、施設をより身近に感じていただくだけでなく、利用者さんにとっても良い刺激になればと考えています。
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