「生徒」は介護施設の高齢者、「先生」は介護スタッフ~「おとなの学校」グループの取り組み~│気になるあの介護施設
取材・文/小南哲司(イージーゴー)
ある介護施設。黒板の前に立つ介護スタッフの問いかけに、元気な声で応える利用者さん......。よく見るとそこは教室?
ちょっと変わった施設の運営に携わる株式会社「おとなの学校」代表取締役 大浦敬子氏に話を聞いてみました。
1.「おとなの学校」とは?
――「おとなの学校」グループの事業概要について教えてください。
まず「おとなの学校」のメソッドですが、高齢者の介護施設を学校に見立て、介護スタッフが先生役、利用者さんが生徒役となって行う「学校式」の介護です。自社のフランチャイズとして通所介護施設を持っているほか、全国の介護施設で弊社が発行する教科書を取り入れていただいています。
医師であった両親がもともと熊本で高齢者向け医療をやっていて、その医療法人から出発しています。それを医師として私が引き継ぎ、現在は熊本で社会福祉法人をやっています。あとは宮城に医療法人があり、精神科病院の運営と障がい者の総合サポートをしているほか、「大浦けいこのじぶん発見ラボ」という、一般社団法人のセミナー事業なども手掛けています。
そして、東京に事務所があるのが中核事業である株式会社「おとなの学校」です。本社では介護施設「おとなの学校」のフランチャイズ事業と、高齢者向けの教科書「おとなの教科書」の販売(月刊、約15,000部発行)を中心に行っています。「おとなの学校」のフランチャイズ施設は、熊本県に3つ、山口県に2つ、東京都、千葉県、大阪府、兵庫県に各1つの計9か所です。

大浦敬子氏
2.「おとなの学校」のはじまり
――グループの事業を始めたきっかけは何ですか。
両親の高齢者医療を引き継いた1994年頃には、認知症ケアはまだ方法論が確立されていませんでした。それを改革したいと感じたことがきっかけです。
2005年に高齢者の公文式の学習療法に出会い、「これはいいのではないか」と思って導入することにしたのですが、その時に介護施設を「学校」にするというコンセプトを思いつきました。その理由は、高齢者が施設ではなく学校に行っている気分を出す、これがとても認知症の人に効果があることがわかったためです。認知症の人は、記憶をはじめ認知機能に障害があり、いま目の前の世界の認知が難しくなっています。だけど昔の記憶が残っているので、学校のことはわかります。相当重度な認知症の人でも、また「学校」という場では身も心もしっかりするのです。
私たちが使っている「おとなの教科書」は、よく勘違いをされるのですがドリルではありません。教科書を使った授業をきっかけに、参加されている高齢者の皆さんがどんどん発話をすることを目的としています。介護スタッフが先生役になるのですが、スタッフが話すのは2割程度で、8割は「生徒」の利用者さんが話すことを目指して、教科書としてまとめています。
また教科書は「回想法」をベースにしています。学校という空間の中で、自分は生徒なのだと認知していただくことで、昔のことをとにかく話す場を徹底して作ります。そうすると心が若返るんですよね。人間って心で動く動物だから、心を動かしたら体が動いて、意欲的にもなるんです。

「おとなの学校」の「生徒」である利用者さん
3.介護スタッフに与えた好影響
――介護スタッフに良い影響を与えた点はありますか。
スタッフに余裕が生まれることです。実は「おとなの学校」って、授業をやるのに「先生」として1人スタッフがいればよくて、「生徒」20~30人を1人で惹きつけることができます。そうすると、例えば全部で4人のスタッフがいた場合は、1人が授業をして、残りの3人は別の仕事に取り組めるのです。2人は入浴介助、もう1人は記録と、違う仕事ができるので、よくある「レクリエーションにスタッフみんなでかかりきりなる」といった状態は生まれない。だから、業務改善ができるのです。
実際に導入施設には「とても仕事が楽になった」というふうに喜んでもらっています。「定時退勤が当たり前になって、部長や社長にも褒められた」といった喜びの声をもらうこともありますね。

熱心に問題に取り組む利用者さん
もっと大切なのは、高齢者自身が意欲的になっているのを見るので、若者である介護スタッフも元気になることです。それと、学校の先生という役割が楽しく感じられる人も多く、離職も少ないようです。介護スタッフから愛されている施設になっていると思います。これは自分で言うのもなんですけど、自信がありますね(笑)。
そういった感じで「おとなの教科書」を取り入れている施設は、全国594ケ所(2022年12月現在)になっています。
取材・文/小南哲司 編集/イージーゴー
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