介護職員基礎研修とは?廃止の背景や現行の研修・資格について解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護職として働く方やこれから介護職を目指す方であれば、「介護職員基礎研修」という言葉を見聞きした経験があるのではないでしょうか。介護職員基礎研修は、現在の「介護福祉士実務者研修」の基礎となっている研修で、現在は廃止されています。
とはいえ、介護職員基礎研修はなぜ廃止されたのか、現行の制度でも介護職員基礎研修の資格を活用できるのかなどについて、気になっている方も多いはず。この記事では、介護職員基礎研修の概要や廃止に至った背景、現行の研修・資格制度との比較などを詳しく解説していきます。介護職としてキャリアアップを目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.介護職員基礎研修とは?
介護職員基礎研修とは、介護職員の専門性向上と介護サービスの質向上を目指して、2006年に創設された介護職共通研修のこと。社会の高齢化によって、一人暮らしの高齢者や認知症の高齢者の割合が増えるなか、老後の安心を支える仕組みを安定的に運用することを目的に作られました。しかし、介護職員基礎研修は2012年に廃止され、2013年に介護福祉士実務者研修をはじめとする新しい制度がスタートしています。
介護職員基礎研修はなぜ廃止された?
介護職員基礎研修が廃止された理由として、介護福祉士資格の取得方法が複雑化していたことが挙げられます。実務者研修が始まる前は、介護に関する資格が複数存在し、複数の資格を取得しようとすると学習内容が重複することもありました。また、さまざまなルートから介護福祉士資格が取得できたため、介護職員の質や能力にばらつきがあることも課題となっていました。
そうした理由から、2012年に従来の介護職員基礎研修をはじめとする一部の資格制度を廃止。よりわかりやすい仕組みを特徴とする現行の研修制度へと移行したのです。職員の能力を均一化し、サービスの質を確保することは、介護保険制度を安定的に運用するための重要なテーマであるため、現行制度への移行は介護保険の理念に沿ったものだと言えるでしょう。
介護職員基礎研修の廃止時には、以下の見直しも行われ、キャリアパスの仕組みが一本化されています。
・介護職員基礎研修とホームヘルパー1級を廃止→介護福祉士実務者研修に一本化
・ヘルパー2級を廃止→介護職員初任者研修に移行
※上記によって、介護職員基礎研修廃止後の資格取得とキャリアパスのルートは「介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士」へと変更
2.介護職員基礎研修と関連資格の関係
介護職員基礎研修は、前述したような経緯で廃止されたものの、過去に取得した資格については現在でもキャリアアップに活用できます。
以下では、介護職員基礎研修の修了が、現行制度ではどのような位置付けになるのかを解説します。資格をお持ちの方は、キャリアパスを考える際の参考にしてください。
ヘルパー2級との違い
2012年の介護資格制度改正に伴いヘルパー2級が廃止され、介護職員初任者研修に移行しました。ヘルパー2級と介護職員初任者研修の違いは、学習の目的にあります。
「訪問介護員2級養成研修課程終了」という正式名称を持つヘルパー2級は、訪問介護職員に必要な知識や技術の習得を目指す研修でした。一方、介護職員初任者研修は、すべての介護事業所の介護職員に必要な知識や技術を習得することを目的としています。
研修における学習時間はともに130時間ですが、施設実習や修了試験の有無などには違いが見られます(ヘルパー2級には修了試験がありませんでした)。しかし、現在もヘルパー2級は介護職員初任研修修了と同等の資格として扱われており、取得者は介護職員や訪問介護員としての就労が可能です。また、給料などの待遇面でも、介護職員初任研修修了者との差はありません。
なお、介護職員基礎研修から移行した介護福祉士実務者研修は、介護職員初任研修の上位資格という位置づけになります。
介護職員基礎研修修了者は介護福祉士実務者研修受講に有利
先に紹介したように、介護福祉士実務者研修は、福祉資格制度改正前の「ヘルパー1級」や「介護職員基礎研修」に相当する資格です。
学習内容も重なるため、介護職員基礎研修修了者が介護福祉士実務者研修を受講する場合は、多くの研修科目が免除となります。医療的ケアの学習(座学/50時間)に加えて、医療的ケアの演習を受講すれば修了できるため、無資格から介護福祉士実務者研修を受講する場合と比べて有利です。
介護職員基礎研修修了者は介護福祉士も目指しやすい?
介護士としてのキャリアは、介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士の流れでステップアップするのが一般的です。介護職員基礎研修修了者は、介護福祉士実務者研修において多くの科目が免除されるため、「介護福祉士を目指しやすくなる」と言えるでしょう。
介護職員基礎研修を修了済みの場合は、2つのルートで介護福祉士資格の取得を目指せます。それぞれのルートにおいては、以下の要件を満たせば介護福祉士の受験が可能です。
1. 喀痰吸引等研修を受講する場合
・実務経験3年以上
・喀痰吸引等研修の基本研修と実技研修を修了
2. 実務者研修を受講する場合
・実務経験3年以上
・実務者研修の医療的ケアと演習の受講
3.介護職として活躍したい方におすすめの現行の資格
近年は、介護に対するニーズがますます高まっており、今後も制度などが変わる可能性があります。そのため、介護職を目指す方や介護職の方は、最新の情報を知っておくことが大切です。
以下では、2022年時点の「介護現場で役立つ資格」を紹介します。資格取得支援制度を設けている職場もあるため、働きながらスキルアップを目指すのも良いでしょう。
介護職員初任者研修(初任者研修)
介護職員初任者研修は、すべての介護職員が働く上で必要な知識や技術を身に付けることを目的とした研修です。介護職の入門編とも言うべき資格であり、取得後は高齢者施設、訪問介護事業所などで、正規職員やパートとして働くことができます。
受講要件は特に設けられておらず、誰でも受講できるのが特徴です。最近では、家族の介護やボランティアのために、介護職員初任者研修を修了する方も増えています。
研修内容は、基礎から介護を学べる講義と実技演習によって構成されており、すべての学習カリキュラム終了後に、1時間程度の筆記試験を受けます。筆記試験はカリキュラムに準じる問題を各研修実施機関が作成する形式です。
介護福祉士実務者研修(実務者研修)
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上級資格で、介護福祉士資格の受験要件でもあります。質の高い介護サービスを提供するために、より実践的な知識と技術の習得を目的としており、介護の専門家としてのスキルを磨くことが可能です。介護士としてキャリアアップしていくための重要な資格と言えるでしょう。
実務者研修も、受講要件は特に設けられていません。ただし、介護の基礎知識がないと内容が理解できない場合もあるため、未経験から習得を目指す際は、初任者研修から受講するのがおすすめです。
また、実務者研修は初任者研修と比べて科目が多く、受講期間も長いのが特徴です。しかし、初任者研修の9科目は実務者研修の内容と共通しているため、初任者研修を経て受講する場合の研修期間は最短で2カ月程度と言われています。筆記試験は義務ではありませんが、研修実施機関により設けられている場合があります。
介護職員初任者研修 | 介護福祉士実務者研修 | |
---|---|---|
受講科目 | 9科目 | 20科目 |
受講時間 | 約130時間 | 約450時間 |
受講期間の目安 | 約2カ月 |
約6カ月 ※無資格の場合 |
介護福祉士
介護福祉士資格は、社会福祉士及び介護福祉法に基づいて設けられた、介護資格で唯一の国家資格であり、高齢者施設や訪問介護事業所などの現場で働く介護士の資格として、最上位に位置します。
介護従事者としての確かな知識やスキルを証明できる介護福祉士資格は、老人ホームなどの施設のサービス提供責任者や管理職、ケアマネジャーなどを目指す上でも重要です。社会福祉士の資格を取得する方法としては、3つの代表的なルートがあります。
1. 介護施設などで実務経験を積んで取得するルート
2. 福祉系高校を卒業して取得するルート
3. 介護福祉士養成施設を卒業して取得するルート
国家試験の内容は、マークシート方式の筆記試験と実技試験の2種類です。ただし実技試験は、実務経験受験ルートによって行われないこともあります。
ここ数年の合格率は約70%と、決して困難な資格試験ではありませんが、受験科目や出題範囲が幅広いため、過去問などでしっかり対策を行うことが求められます。介護福祉士合格を目指す場合は、独学以外に通信講座や通学コースの受験対策講座を活用するのがおすすめです。
まとめ
介護職員基礎研修を含む従来の資格制度は、資格制度の複雑さや、職員能力のばらつきなどを背景に廃止されました。しかし、過去に取得した介護職員基礎研修修了の資格は、現在も介護業務や上位資格の取得に活用できます。
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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています
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