介護予防運動指導員とは?需要の高さからなるための流れまで!
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
高齢化が進む日本において、介護予防に対するニーズは年々高まっています。介護予防運動指導員は、近年注目を集めている資格の1つであり、取得によって介護予防に関する専門知識・指導スキルを身に付けることが可能です。
当記事では、介護予防運動指導員の概要や仕事内容、資格取得のメリットに加え、介護予防運動指導員が活躍できる場所についても解説します。受験資格や試験の難易度なども併せて紹介しますので、介護現場で働く方はぜひご覧ください。
1.介護予防運動指導員とは?
介護予防運動指導員とは、東京都健康長寿医療センター研究所が認定している民間資格のことです。介護予防運動指導員は、高齢者ができる限り自立した生活を送れるように、あるいは要介護状態の発生をできる限り防ぐために、運動プログラムの作成・指導を通して介護予防のサポートを行います。
介護予防運動指導員の資格を取得するには、高齢者のためのトレーニングや運動、食事の取り方といった専門的な知識に加え、一人ひとりに最適なプログラムを提供するスキルなどを学ぶ介護予防運動指導員養成講座を受講する必要があります。
介護予防運動指導員の役割・仕事内容
介護予防運動指導員の役割は、介護予防の観点から運動プログラムの作成・指導を行い、高齢者の健康寿命を延ばすことです。
以下に、介護予防運動指導員の主な仕事内容を紹介します。
●介護予防のための運動プログラム作成
●高齢者への運動指導
●プログラムに関する事前・事後評価
●口腔機能訓練の指導
●栄養指導
●他職種との情報共有
効果的なプログラムを提供するには、プログラム立案前の事前評価、プログラム実施後の事後評価が重要です。
事前評価はアセスメントとも呼ばれ、高齢者本人の希望や身体状況、生活状況などを把握・分析することを指します。事後評価は、プログラム実施による効果を確認する役割を持ち、問題点があれば修正を重ねてプログラムの質を向上させます。
また、咀嚼力が落ちないようにするための口腔機能訓練や、栄養の偏りをなくして健康を維持するための食事指導(栄養指導)なども、介護予防運動指導員の仕事の1つです。
介護予防運動指導員の資格を取得するメリット3つ
介護予防運動指導員を取得するメリットは、下記の3つです。
・介護職としてスキルアップできる
介護予防運動指導員を取得すると、介護予防に効果的な運動や、高齢者一人ひとりの身体状態に合わせたプログラムの組み方など、さまざまな知識・技術が身につきます。そのため、介護職としてのスキルアップが実現でき、より質の高いサービスの提供につながるでしょう。
・就職や転職の際に有利になる
介護予防運動指導員の資格は、介護予防に関する専門知識・スキルを持っていることの証明になります。介護予防の専門知識を有する人材は、介護施設や医療機関、リハビリセンターなどさまざまな職場で重宝されるため、就職・転職の際にも有利に働くでしょう。
・給料アップが期待できる
介護予防運動指導員を取得し、専門的な知識・スキルを持っていることが評価されれば、職場での待遇がよくなる可能性もあります。資格手当がもらえる職場であれば、給料アップにつながることもあるでしょう。
2.介護予防運動指導員の需要は高い?介護予防の定義も
介護予防の定義は、「介護が必要な状態となるのを可能な限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」です。
現在の日本では、高齢化の進行によって介護予防へのニーズが高まっている一方で、介護に従事するスタッフ不足が問題視されています。
それを踏まえると、介護予防の専門知識・スキルを有する介護予防運動指導員は、今後さらに活躍の場が広がることが予想されるでしょう。
出典:総務省統計局「1.高齢者の人口」
出典:厚生労働省「介護予防の推進」
介護予防運動指導員は活躍の場所が多い!
介護予防運動指導員は、さまざまな職場で知識・スキルを生かすことが可能です。以下では、介護予防運動指導員が活躍できる職場を紹介します。
・病院やリハビリセンターなどの医療機関
要介護状態の高齢者のなかには、けがや病気による安静・寝たきりが原因で、日常生活の動作が困難になってしまう方も少なくありません。病院で働く介護予防運動指導員は、入院中の高齢者を対象に、運動機能の維持を目的としたプログラムの作成や運動指導を実施します。
また、リハビリセンターにおいては、リハビリのプロである理学療法士と連携して運動プログラムを作成し、高齢者一人ひとりに合わせた指導を行うことで、日常生活動作の機能回復をサポートします。
・介護施設や事業所
介護予防運動指導員は、介護施設においても重要な役割を担っています。
例えば、要介護の高齢者が入居している介護老人保健施設では、在宅復帰を目標として自立した生活を送るための運動プログラムを作成・指導するのが主な役割です。また、在宅での生活が困難な高齢者が入居する介護老人福祉施設(特養)では、体力の維持や回復、要介護状態の悪化防止を目的としたプログラムの作成・指導を行います。
場合によっては、理学療法士などと連携してリハビリのサポートを行ったり、デイサービスの利用者さんに向けて運動プログラムの作成・指導を行ったりすることもあります。
・ジムやスポーツクラブ
最近は、ジムやスポーツクラブを利用する高齢者が増えているため、そうした施設でも介護予防の需要が高まっています。
施設によっては、スタジオプログラムとして介護予防運動を取り入れているケースもあり、介護予防運動指導員は普段のトレーニング指導に加えて、スタジオプログラムのインストラクターとしても活躍できるでしょう。
3.介護予防運動指導員になるためには?
介護予防運動指導員の資格を取得するには、「介護予防運動指導員養成講座」の受講が必要です。養成講座の受講後、修了試験に合格することで資格を取得できます。
ここでは、介護予防運動指導員の受験資格や、介護予防運動指導員養成講座の内容について詳しく解説します。
受験資格
介護予防運動指導員の受験資格は、下記の通りです。
・医師
・歯科医師
・薬剤師
・保健師
・助産師
・看護師
・准看護師
・臨床検査技師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・社会福祉士
・介護福祉士
・精神保健福祉士
・歯科衛生士
・あん摩マッサージ指圧師
・はり師
・きゅう師
・柔道整復師
・栄養士
・介護支援専門員
・健康運動指導士等
・介護職員基礎研修課程修了者
・訪問介護員2級以上で実務経験2年以上の方
・実務者研修修了者
・初任者研修修了者で実務経験2年以上の方
・および上記国家資格の養成校等の卒業見込みかつ資格取得見込み者(国家試験受験者)
参考:東京都健康長寿医療センター「介護予防運動指導員養成事業について」_引用日2022/7/27
受講内容
介護予防運動指導員養成講座の受講内容は、下記の通りです。
章番号 | 科目(講座)名 | 形式 | eラーニング | 時間 |
---|---|---|---|---|
1 | 老年学 | 講義 | ○ | 0.75 |
2 | 介護予防概論 | 講義 | ○ | 0.75 |
3 | 地域づくりによる介護予防論 | 講義 | ○ | 0.75 |
4 | 高齢者の社会参加と介護予防 | 講義 | ○ | 0.75 |
5 | 介護予防・日常生活支援総合事業と介護予防コーディネーション | 講義 | ○ | 0.75 |
6 | 行動科学特論 | 講義 | ○ | 0.75 |
7 | 介護予防評価学特論 | 講義 | ○ | 1.5 |
介護予防評価学実習 | 実習 | 1.5 | ||
8 | 介護予防統計学 | 講義 | ○ | 1.5 |
9 | リスクマネジメント | 講義 | ○ | 1.5 |
10 | 高齢者筋力向上トレーニング特論 | 講義 | ○ | 1.5 |
高齢者筋力向上トレーニング実習 | 実習 | 4.5 | ||
11 | 転倒予防特論 | 講義 | ○ | 1.5 |
転倒予防実習 | 実習 | 1.5 | ||
12 | 尿失禁予防特論 | 講義 | ○ | 1.5 |
尿失禁予防実習 | 実習 | 1.5 | ||
13 | 高齢者栄養改善活動特論 | 講義 | ○ | 1.5 |
14 | 口腔機能向上特論 | 講義 | ○ | 1.5 |
口腔機能向上実習 | 実習 | 1.5 | ||
15 | フレイル・サルコペニア予防特論 | 講義 | ○ | 0.75 |
16 | 認知症予防特論 | 講義 | ○ | 1.5 |
認知症予防実習 | 実習 | 1.5 | ||
17 | うつ・孤立・閉じこもり予防特論 | 講義 | ○ | 0.75 |
引用:東京都健康長寿医療センター「介護予防運動指導員養成事業について」_引用日2022/7/27
合格率
介護予防運動指導員の正式な合格率は発表されていません。しかし、修了試験は養成講座で学んだ知識を問う内容であるため、養成講座の内容を十分に理解し、基本的な試験対策を行うことで、合格ラインに到達できるでしょう。
更新手続きの流れ
介護予防運動指導員の登録期間は3年間であるため、3年ごとに更新手続きが必要です。
登録期限が近づくと、東京都健康長寿医療センターから案内が郵送されるので、申請用紙を返送して更新料(3,100円、2023.4現在)を振り込み、後日新しい登録証が届いたら更新手続きは完了となります。
まとめ
介護予防運動指導員は、介護予防プログラムの作成・実践を通して、高齢者の自立した生活をサポートするための資格です。具体的な仕事内容には、高齢者一人ひとりに合わせた運動指導やプログラムの事前・事後評価、栄養指導、口腔機能訓練などがあります。
介護予防運動指導員の資格を取得することで、介護士としてのスキルアップが実現できるほか、資格の保有によって、就職・転職の際の選択肢も広がるでしょう。
「介護のみらいラボ」は、介護現場で働く方に向けて、有益な情報を掲載している介護情報サイトです。介護業界の最新ニュースや高齢者向けレクリエーションの紹介コラムなど、さまざまなコンテンツを用意していますので、介護現場で働いている方は、ぜひご活用ください。
※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
介護予防運動指導員は、高齢者が要介護状態になるのを予防する、また、要介護状態にある人は介護度が高くならないように、自立した健康的な生活を送ることができるよう心身の状況に合わせたサポートを行う、今後需要が高まると思われる資格です。
介護予防運動指導員は受講資格要件をクリアすれば講習を受けることができます。講習内容は、受講内容に記載されているように老年学、高齢者の社会参加と介護予防、高齢者筋力向上トレーニング、認知症予防などを講習と実習によって学びます。ですから、高齢者1人ひとりの心身機能を理解した適切な介護予防プログラムを作成し実践を行うことができるのです。
健康状態や活力の低下はライフスタイルや体力と関連することが明らかになっており、中でも運動不足は体力の低下をきたし、健康状態を阻害する要因になっています。運動や栄養改善などの有効性はすでに明らかになっており、生活習慣病予防対策として国民健康づくり運動「健康日本21」の柱にもなっています。
このような意味からも、介護予防運動指導員は超高齢社会に寄与できる資格だといえます。
介護予防運動指導員はeラーニングで受講できる講義もあるようです。関心がある方は東京都健康長寿医療センター研究所にアクセスしてみてください。
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