看取りケアパートナーとは?資格取得方法・終末期ケア専門士との違い
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
「歳をとっても住み慣れた環境で暮らし、自分らしい最期を迎えたい」という高齢者のニーズを受けて、近年は介護施設や自宅での看取りが増加しており、「看取りケア」の必要性が一段と高まっています。
そうしたなか、看取りケアに役立つ資格として注目されているのが「看取りケアパートナー」です。看取りケアパートナーの講座では、看取りに必要な介護や心のケア、自治体の制度・手続きなど、幅広い知識とスキルが学べるため、現職の介護職の方であれば、新たに得た知識を現場に生かしたり、スキルアップにつなげたりすることが可能でしょう。
当記事では、看取りケアパートナー資格の取得方法や、終末期ケア専門士との違いを詳しくご紹介します。看取り介護について、知識を深めたい方や、スキルアップを目指したい方は、ぜひご覧ください。
1.看取りケアパートナーとは?
看取りケアパートナーとは、看取り介護に必要な考え方やスキル、心理的な支援の方法といった専門知識を習得できる資格です。
看取り介護とは「病状の回復が見込めない人や老衰により死が近くなった方に対して、無理な延命を行わず、自然に亡くなられるまでの過程を支援すること」を指す言葉で、利用者さんの肉体的、精神的な苦痛を緩和させつつ、人としての尊厳をもって、穏やかな日常生活のケアや援助を最後まで寄り添いながら行うことが目的となります。
そのため、看取りケアパートナーには、人の死と向き合い、介護を受ける本人やご家族の意向を尊重しながら、穏やかな最期を迎えられるようにサポートすることが求められます。
なお、看取りケアパートナーは国家資格ではなく、一般社団法人みんなのプライドが認定する民間資格です。
「看取り」が重要視されている背景
看取り介護が重要視されている理由の1つとして、超高齢社会の進行に伴う「多死社会の到来」が挙げられます。厚生労働省の調査では、高齢化が進むなかで死者数も増加し、2040年頃には年間死亡数がピークに達すると予想されています。
そこで問題視されているのが、病床数の不足です。多死社会の到来によって病床不足が顕在化すれば、「限られた利用者さんしか介護サービスや看取り介護を受けられない」という状況になることも、十分考えられるでしょう。
また、「自宅などの住み慣れた環境で、自分らしい最期を迎えたい」という高齢者の希望が増えていることも、看取り介護が重要視されている要因となっています。しかし、核家族化や高齢単独世帯の増加、家族への負担といった問題から、在宅での看取りは決して簡単ではありません。
以上のような社会的背景から、看取り介護に対する注目度が高まり、需要も年々拡大しているのです。
資格が生かせる場面・メリット
看取りケアパートナーの資格は、介護の現場はもちろん、それ以外の場面でも生かすことが可能です。
・自分の家族や自身の老後にも生かせる
大切な家族や自分自身にも、死は必ず訪れるものです。そして、老いを実感するようになると、健康や介護、住まいのことなど、さまざまな心配事が出てきます。まだ差し迫った状況でなくても、事前に資格を習得しておけば、いざという時に知識を役立てることができるでしょう。
・緊急時の対応や社会保障制度などの幅広い知識が学べる
脈拍や体温の正しい測り方や、救急車を呼ぶタイミングといった緊急時の対応や、社会保障制度のこと、亡くなった後の葬儀や相続の手続きなど、普段の生活にも生かせる幅広い知識とスキルが身に付きます。
2.看取りケアパートナーの資格を取得するには?
先に紹介したように、看取りケアパートナーの資格は、一般社団法人「みんなのプライド」が認定している民間資格です。資格を取得するには、「ユーキャン」の通信講座で「看取りケアパートナー講座」を受講し、試験に合格する必要があります。
資格取得までの流れは、以下の通りです。
1.テキストで学習開始する |
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ユーキャンの教材を使用して学習を開始します。 |
↓
2.添削課題を受ける |
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テキストで学習した内容が理解できているか確認するため、添削課題を2度受講します。 |
↓
3.認定試験に挑戦する |
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2度の添削課題を終えたら、認定試験にチャレンジします。 |
↓
4.合格する |
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70点以上の得点で合格。合格すると資格が認定されます。また、希望者には認定証が発行されます。 |
(出典:ユーキャン「看取りケアパートナー講座」)
講座と試験の概要
看取りケアパートナーの講座と試験の概要は下記の通りです。
・講座概要
講座では、2冊のテキストと副教材を使用して、看取りとは何か、大切な人の死とどう向き合っていくのかといった基本的な学習をはじめ、日常生活のケアや社会保障制度、お金に関する知識までを幅広く学びます。受講資格はなく、年齢、学歴、職歴に関わらず誰でも受講することが可能です。スマホやパソコンからでも、動画やWebテストを利用して学習ができることも大きなメリットと言えるでしょう。なお、最短3カ月で資格取得を目指すことができ、3カ月を過ぎても最大で6カ月まで指導してもらうことが可能です。
・試験概要
認定試験は、在宅でいつでも受験可能なため、家事や仕事などで忙しい場合でも、自身のペースで取り組むことができます。費用は、講座と試験費用込みで29,000円(税込)。10回の分割払いにも対応しています。ただし、教育訓練給付制度の認定講座ではないため、講座受講費用の助成が出ない点に注意してください。
取得の難易度
認定試験はマークシート形式となっており、講座の添削課題をすべて提出した上で、70点以上獲得すれば資格取得となります。制限時間も設けられていないので、じっくり落ちついて自分のペースで取り組めるのも、この試験の特徴です。
もし不合格でも、2回までは再試験が可能なため、受講期間内に合計3回試験を受けるチャンスがあります。また、テキストで学んだ知識を整理して普通に学習を進めていけば、合格できる程度の難易度と言われているため、間違えたところや苦手なところをしっかりと見直すなど、準備を徹底して望めば、比較的取得しやすい資格と言えそうです。
(出典:ユーキャン「看取りケアパートナー講座」)
3.看取りケアパートナーと終末期ケア専門士の違い
看取りケアパートナーと同じように、看取りの場面で役に立つ資格として「終末期ケア専門士」があります。
終末期ケア専門士とは
終末期ケア専門士とは、臨床ケアのスペシャリストを目指すための資格です。高齢化社会のさまざまな課題(要介護者の増加、多死社会の到来など)を見据え、「終末期ケアの専門家」の育成を目的として2020年に一般社団法人日本終末期ケア協会によって創設されました。
終末期ケアとは、病気や老衰によって回復の見込みがなく、死が近いと判断された方に対して行われるケアです。肉体的や精神的な苦痛に対して緩和ケアを行い、最期までその人らしい生活が送れるよう支援を行います。終末期ケア専門士は、終末期ケアの基礎知識からエビデンスに基づいたケアの実践、倫理観育成のカリキュラムまでを学ぶことで、より専門性の高い知識を身に付けることができます。
終末期ケア専門士の資格を取得するには、医学系・介護系の実務経験が必須であり、その点が看取りケアパートナーとの大きな違いとなっています。そのため、終末期ケア専門士の資格は、看護や介護などの専門職に従事している方のキャリアアップを想定した資格であると言えるでしょう。
4.看取りケアについての知識を深める方法
看取りケアに関する知識を深めるには、看取りケアパートナーの資格取得以外にも、下記のような方法が挙げられます。
・看取りケアに関する研修会に参加する
自治体や公的機関が主催する、看取りケアに関する研修会に参加したり、自ら勉強会を開催して他の方と知識を共有したりする方法もあります。
・看取りに関する本を読む
自分で看取りに関する本を読み、知識を深める方法もおすすめです。ただし、書籍は現職の介護従事者を対象とした内容が多いため、初心者の方では少し難しく感じる場合もあるかもしれません。
・他の関連資格を取る
終活やエンディングノートについて学ぶ「終活アドバイザー」や、介護予防を学ぶ「介護予防健康アドバイザー」といった、他の関連資格を取る方法もあります。
まとめ
看取りケアパートナーは、看取りに必要な介護や心理的なサポートなどの知識・スキルが身に付く資格です。介護職の方はもちろん一般の方でも受験しやすく、資格講座を受講すれば最短3カ月で取得できます。これから看取りケアに本格的に携わりたいと考えている方や、介護職に関心のある方は、資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
厚生労働省によると2025年には死者数は150万人、2040年には170万人と増加し、この状況は今後数十年続くと予測されています。死者数のうち90%が高齢者で、約30年後にはその比率が95%になると推計されています。これから到来する多死社会は高齢者を中心としたものになると思われます。
このような中にあって、「看取り」の介護をしっかりと学び、終末期の利用者さんや患者さん、そのご家族に寄り添い、穏やかな最期を支援する「看取りケアパートナー」の資格を取得しようと思っている方は増加傾向にあるようです。
「看取りケアパートナー」講座の受講にあたって、受験資格の要件はありません。関心のある方は誰でも受講でき、通信教育なので仕事をしながらでも自分のペースで学習を進めることができます。試験も在宅で受けられるので、介護の現場で終末期の利用者さんたちとかかわることが多い方にはおすすめの講座といえると思います。
受講する中で、終末期にある利用者さんや患者さんとその家族に寄り添い、安心して人生の最期を迎えるための支援が行える知識や技術を身に付け、介護の現場で実践していただければと思います。
最後に、介護施設や在宅サービスなどで看取り介護に携わる介護職のみなさんが、自分なりの死生観を持ち、看取り介護の理念を高めていってくれることを願っています。
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