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仕事・スキル 介護資格 2023/09/20

#社会福祉士

社会福祉士は仕事がない?需要や将来性を解説

文/倉元せんり(社会福祉士) thumbnail.jpg

みなさんのなかには、インターネットなどで「社会福祉士は資格を取っても仕事がない」という口コミを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

社会福祉士は、相談援助の専門家であり「ソーシャルワーカー」とも呼ばれる国家資格です。試験合格率は例年30%前後と低く、難易度の高い福祉系資格として知られていますが......。本当に仕事がないとすれば、「資格を取得する意味がない」と感じてしまいますよね。

そこでこの記事では、「社会福祉士は資格を取得しても仕事がないのか」や、「社会福祉士に将来性はあるのか」などについて詳しく解説します。資格を取得するメリットも紹介しますので、社会福祉士の資格に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.社会福祉士は仕事がないって本当?

結論からいうと、社会福祉士の仕事はたくさんあります。

事実、転職サイトやハローワークには社会福祉士の求人が多く出ており、例えばマイナビ介護職では8,084件+非公開求人、ハローワークでも9,498件の求人が見られます(ともに2023年7月現在)。

もちろん、希望する地域や待遇で職場を絞っていくと数は少なくなります。それでも、「社会福祉士には仕事がない」といった状況になることは、ほとんどないでしょう。

また、2020年度に公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行った調査では、約8割の社会福祉士が、「福祉・介護・医療の分野の仕事に就いている」と答えています。つまり、「社会福祉士の資格を取ったのに専門分野で働けない」というケースも、あまりないことがわかるでしょう。

では、なぜ社会福祉士は仕事がないといわれるのでしょう。考えられる理由を解説します。

実務経験を問われる

社会福祉士の求人には、実務経験を問われる職場が一定数あります。

特に即戦力を求める職場の場合、求人票に「実務経験3年以上」「相談援助の経験者優遇」などのコメントが書かれていることも少なくありません。そのため、実務未経験の人は希望する職場への就職が難しいと感じることがあるでしょう。

離職が多い

社会福祉士は、さまざまな価値観を持ったクライアントと真摯に向き合い、課題解決に向けた支援を行うため、心身にストレスがかかりやすい職種です。そのため、心身のバランスを崩して離職する社会福祉士も少なくありません。

実際、2020年度に公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行った調査では、約3割の社会福祉士が「心身の健康状態の不調」で離職しており、離職理由のなかで最も多い数値となっています。

実をいうと、過去にMSWとして8年間働いていた私も、「辞めたい」と思ったことが何度もあります。また、ほかのソーシャルワーカーが心身の不調で辞めてしまうケースも数多く見てきました。

このように資格を取得しても、心身の不調から仕事を続けられなくなるケースがあるため、社会福祉士の仕事をネガティブにとらえてしまう人もいるでしょう。しかし、社会福祉士にはさまざまな就職先があり、自分に合う職場はきっと見つかります。

ここからは、社会福祉士の就職先について解説します。

2.社会福祉士の就職先

社会福祉士の就職先は、主に以下の8つです。

分類 施設名称 支援の対象者
高齢者福祉関係 特別養護老人ホーム
介護老人保健施設 など
要支援・要介護の認定を受けた方
障害者福祉関係 障害者支援施設
相談支援事業所 など
身体障害者や知的障害者、精神障害者など
児童・母子福祉関係 児童相談所
児童養護施設 学校 など
18歳未満の児童とその保護者
生活保護関係 救護施設
更生施設 など
生活保護の受給者
地域福祉関係 地域包括支援センター
社会福祉協議会 など
地域に住むすべての方
司法関係 少年院
地域生活定着支援センター など
受刑者の方など
行政関係 市区町村役場 など 地域に住むすべての方
医療機関 病院
診療所 など
入院・通院患者とその家族

表を見てもわかる通り、社会福祉士の就職先は多岐にわたります。例えば、高齢者福祉関係に就職したとしても、「ほかの分野を経験してみたい」と思えば、障害者福祉関係などの分野に転職することができるでしょう。

そうした場合、使われる制度や支援の対象者は異なりますが、社会福祉士として求められる価値・援助技術は共通です。社会福祉士として仕事に悩んだ場合は、他分野に目を向けて転職を考えてみるのもよいでしょう。

3.社会福祉士の資格を取得するメリット

続いて、社会福祉士の資格を取得するメリットを3つ紹介します。

相談援助の国家資格として社会的信用が上がる

社会福祉士は「相談援助のエキスパート」として、高度な専門知識・技術を持っているため、資格を取得することで社会的信用が上がります。

社会福祉士は業務独占(※1)ではなく名称独占(※2)の資格であるため、社会福祉士の資格を持たない人でも相談援助業務に就けます。しかし、クライアントから見ると、社会福祉士の資格を持っている人のほうが、安心して相談できるのではないでしょうか。

国家資格を持つことは、高い知識やスキルがあると公的に認められることでもあるので、クライアントだけでなく、その家族や職場、他職種などからも信頼を得やすいでしょう。

※1 資格を持っている人だけが、独占的にその仕事を行える資格
※2 資格を持っている人だけが、その名称を名乗れる資格

就職や転職の幅が広がる

先に紹介したように、社会福祉士には活躍の場が数多くあります。子どもから高齢者まで、あらゆる年代への支援が行えるため、自身にとって興味のある分野に就職・転職できる可能性は高いでしょう。

また、職場によっては「社会福祉士の資格を取得していること」が就職の条件となる場合もあります。例えば、医療機関で働くMSWの求人では、社会福祉士の資格を採用条件としているケースが多く見られます。

社会福祉士の資格を持っていれば、「実務未経験でも可」の求人も少なくないので、有資格者は就職や転職に有利といえるでしょう。

AIに代替されにくい

デジタル技術が発達した現在、多くの仕事が人工知能やロボットなどに取って代わられるといわれています。しかし、社会福祉士の仕事はコミュニケーションが非常に重要であり、すべての業務をAIで代替することは難しいでしょう。

2015年に野村総合研究所が発表した研究では、「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能」になるとの推計結果が出ました。一方で、「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担う」という考察も発表されています。

社会福祉士は、目の前にいるクライアントの困りごとに対して臨機応変に対応していくことが求められます。また、必要な社会資源がなければ、新たに創っていくような働きかけもしなければなりません。それを踏まえれば、社会福祉士の業務は「将来においても人が担うもの」だと考えられるでしょう。

4.社会福祉士の将来性

前述したように、社会福祉士はメリットの多い仕事であり、その需要は今後ますます高まっていくと考えられます。その理由は以下の通りです。

・少子高齢化が進む
・活躍の場所が増えている

少子高齢化が進む日本では、日常生活に課題を抱える方が多くいらっしゃいます。介護施設や障害者施設、医療機関などでも福祉の専門知識を持った人材の需要が高まっているため、社会福祉士は将来性の高い仕事といえるでしょう。

また、近年では児童福祉分野や司法分野、行政でも社会福祉士の活躍の場が増えています。社会福祉士の仕事に興味のある方は、どの分野で働きたいかを考え、関連する制度について把握しておくのがおすすめです。

まとめ:社会福祉士は仕事が多く将来性も高い職業

社会福祉士は将来性が高く、さまざまな分野で専門知識を生かせる職業です。「社会福祉士は仕事がない」という口コミを見かけることもありますが、実際は多くの求人が出ており、今後も需要は増えていくと考えられます。

福祉の専門家としての社会的信用も上がるので、福祉の仕事に興味のある方は、社会福祉士の資格取得を検討してみるとよいでしょう。

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倉元せんり(Senri Kuramoto)

社会福祉士

大学卒業と同時に社会福祉士の資格を取得。約8年、医療ソーシャルワーカーとして勤務。出産・育児と同時に退職し、現在は福祉・金融系webライターとして、福祉やお金にまつわるさまざまな記事を執筆している。

倉元せんりの執筆・監修記事

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