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仕事・スキル 介護資格 2024/05/01

#認知症ケア#認知症ケアの資格

認知症ライフパートナーとは?役割・メリット・資格取得方法を解説!

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

「認知症ライフパートナー」は、認知症ケアに特化した民間の介護資格です。2009年に創設された比較的新しい資格ですが、日本の高齢化が進み認知症の患者数も増加するなか、「認知症介護に生かせる実践的な内容が習得できる資格」として、介護職の方や認知症の家族を支えている方からの注目を集めています。

とはいえ、みなさんのなかには「どのような資格なのか分からず、受験をためらっている」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

当記事では、認知症ライフパートナーの概要や役割、取得するメリットなどについて解説します。勉強方法や試験の難易度なども紹介するので、資格取得を検討している方はぜひご一読ください。

1.認知症ライフパートナーとは?

認知症ライフパートナーとは、認知症患者のケアに特化した民間資格で、2009年に「一般社団法人 日本認知症コミュニケーション協議会」によって創設されました。当初は、基礎検定と応用検定の2種類でしたが、現在は制度の見直しを経て、1級・2級・3級という3つのレベルに分かれています。

なお、認知症ライフパートナーは、認知症の方の心身を活性化させるアクティビティ・ケアやコミュニケーション手法に重点を置いている点に特徴があります。

(出典:日本認知症コミュニケーション協議会「最新情報」

認知症ライフパートナーの役割

認知症ライフパートナーの役割は、認知症によって意思の疎通が難しくなった方に寄り添い、本人の価値観や生き方を尊重しながら、自分らしく生きられるようにサポートすることです。

認知症の方がその人らしく生活するためには、音楽や運動、園芸、調理など、それぞれの嗜好に合ったアクティビティ・ケアを実施し、心身の充実や脳の活性化を図ることが有効だと言われています。

認知症の症状が進むと、言葉でのコミュニケーションが難しくなるケースもありますが、認知症ライフパートナーは傾聴法や回想法などを用いることで本人の好みを引き出し、それぞれに合ったアクティビティ・ケアを提供していきます。

また、高齢者の家族を日頃ケアしている方たちに適切なアドバイスを行い、介護の負担を減らすことも、認知症ライフパートナーの大切な役割です。

資格取得で身に付けられること

認知症ライフパートナー資格は、1級・2級・3級に分かれており、習得できる内容はそれぞれ異なります。

3級で習得できるのは、以下のような知識・技術です。

・認知症に関する基礎知識
・代表的な認知症の症状に対する対応やケア方法
・基本的なコミュニケーション手法
・アクティビティ・ケアを実践するために必要な基本知識や技術

2級では、以下のような知識・技術が習得できます。

・認知症ケアに必要な専門知識
・認知症の方に対するアセスメント(※)手法やコミュニケーション手法
・認知症の予防方法
・アクティビティ・ケアを実践するための専門知識や技術

※状況を適切に把握・分析し、認知症の方が求めていること、解決すべき課題などを明らかにすること

1級で習得できる知識は以下の通りです。

・認知症に関する深い専門知識
・地域包括ケアに関する知識
・アクティビティ・ケアを実践するためのより高い専門知識と技術

1級・2級・3級ともに、認知症ケアやアクティビティ・ケアに関する専門知識の習得、コミュニケーション能力の向上などが重視されているため、より実践的な知識を吸収したい方や、認知症の方とのコミュニケーション能力を磨きたい方にはおすすめです。

資格取得のメリット

認知症ライフパートナーの資格取得者には、以下のようなメリットがあります。

・より適切で質の高い認知症ケアが可能になる
認知症に対する理解が深まり、認知症の方の目線に立ったケアが行えるようになります。あわせて、実践的な知識や技術も身に付くため、介護職の方が認知症ライフパートナーを取得すれば、業務をより適切に進められるでしょう。認知症の家族を支えている介護者の方も、これまでより質の高いケアが可能になります。

・ケアする側・される側両方の負担が軽減する
認知症の方は、適切な介護を受けることでストレスが軽減され、拒絶、暴言などが減少すると言われています。また、そうした症状が改善されれば、介護する側もスムーズに対応できるようになり、心身の負担が減るでしょう。

2.認知症ライフパートナーの資格を取得するには?

認知症ライフパートナーの資格を取得するためには、検定試験を受けて合格する必要があります。1級は年に1回、2級・3級は年に2回実施されており、いずれの級も、合格ラインは100点満点中70点です。

(出典:日本認知症コミュニケーション協議会「検定試験」

受験の流れ

受験申込はインターネット・FAX・郵送で行えます。受験申込から合格発表までの流れは以下の通りです。

1.受験を申し込む
●インターネットから申し込む場合
日本認知症コミュニケーション協議会の公式サイトから「検定試験 お申込み」のページを開き、必要事項をすべて記入して送信します。
●FAX/郵送で申し込む場合
以下の方法で申込書を入手し、必要事項をすべて記載した上で、検定事務局宛てに郵送かFAXで送ります。

・日本認知症コミュニケーション協議会に電話して取り寄せる
・公式サイトの「資料請求」ページから請求する
・公式サイトから申込書をダウンロードして印刷する
TEL:03-5388-4134
FAX:03-3370-8061

2.受験料を払う
申込みの際に入力したアドレスにメールが届くので、そこに記載されている銀行・郵便局の口座に規定の受験料を振り込みます。期限は申込みから1週間以内。払込受領証は保管しておきましょう。

3.受験票が届く
受験票は受験票発送日に一斉に発送されます。

4.受験する
受験票で指定された会場に行き受験します。

5.結果発表
公式サイト上で結果が発表され、合格者には合格証が発送されます。

(出典:日本認知症コミュニケーション協議会「検定試験」

試験概要・費用

各級ごとの検定試験受験要項は以下の通りです。

認知症ライフパートナー検定試験 3級 受験要項

試験時間 10:00~(制限時間2時間)
※2・3級の併願受験も可能
受験会場(予定) 【8会場:夏期・冬期実施】 札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・岡山・福岡・熊本 ※
※受験会場の詳細は受験票で通達
※会場ごとに定員があるため、会場の希望に添えない場合もあります
受験料 6,500円
受験資格 学歴・年齢・性別・国籍による制限はありません
試験方式 マークシート式試験
合格基準 100点満点とし、70点以上をもって合格とします
出題基準 「改訂2版 認知症ライフパートナー検定試験 3級公式テキスト」から出題されます。

(出典:日本認知症コミュニケーション協議会「認知症ライフパートナー検定試験 3級」

3級では、代表的な認知症の種類や特徴的な症状、適切な対応方法などが問われます。認知症の方と円滑にコミュニケーションを取るための手法(傾聴技法など)について、進め方や効果を理解しておくことも必要です。

アクティビティ・ケアについても、基本的な知識や効果の把握が求められます。

認知症ライフパートナー検定試験 2級 受験要項

試験時間 14:00~(制限時間2時間)
※2・3級の併願受験も可能です
受験会場(予定) 【8会場:夏期・冬期実施】 札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・岡山・福岡・熊本 ※
※受験会場の詳細は受験票で通達
※会場ごとに定員があるため、会場の希望に添えない場合もあります
受験料 10,500円
受験資格 学歴・年齢・性別・国籍による制限はありません
試験方式 マークシート式試験
合格基準 100点満点とし、70点以上をもって合格とします
出題基準 「改訂2版 認知症ライフパートナー検定試験 2級公式テキスト」から出題されます。

(引用:日本認知症コミュニケーション協議会「認知症ライフパートナー検定試験 2級」

2級では、基本知識をベースに、より専門的な内容について問われます。認知症における特徴的な症状を知り、その原因や具体的なケア方法について理解しておくことが必要です。

あわせて、うつ病やせん妄といった認知症と間違えられやすい病気の特徴や、認知症と生活習慣病との関係などの把握も求められます。

認知症ライフパートナー検定試験 1級 受験要項

試験時間 前半10:00~(制限時間2時間)
後半14:00~(制限時間2時間)
受験会場(予定) 【5会場:冬期のみ】札幌・東京・名古屋・大阪・福岡 ※
※受験会場の詳細は受験票で通達
※会場ごとに定員があるため、会場の希望に添えない場合もあります
受験料 15,000円
受験資格 認知症ライフパートナー 2級 合格者
試験方式 前半:マークシート式試験 / 後半:記述式試験
合格基準 100点満点とし、70点以上をもって合格とします
出題基準 「改訂版 認知症ライフパートナー検定試験 1級公式テキスト」に準拠しますが、テキスト外からも出題されます。

(引用:日本認知症コミュニケーション協議会「認知症ライフパートナー検定試験 1級」

1級では、認知症についての深い専門知識や判断力、コミュニケーション能力のほか、情報収集能力やマネジメント能力についても問われます。

アクティビティ・ケアの企画から運営、評価まで実施できる幅広い知識も必要です。

難易度・合格率

認知症ライフパートナーの試験の合格率は以下の通りです。

1級 2級 3級
2023年 冬期 35.3% 68.5% 82.3%
2023年 夏期 - 74.8% 80.8%
2022年 冬期 33.3% 62.1% 76.4%
2022年 夏期 - 67.1% 82.4%
2021年 冬期 27.6% 54.9% 71.3%
2020年 冬期 28.3% 40.6% 52.4%

※2021年夏期はコロナ禍により開催中止

(出典:日本認知症コミュニケーション協議会「最新情報」

実施回による差はあるものの、3級は比較的合格率が高く、回によっては8割を超えています。したがって、難易度はそこまで高くないと考えて良いでしょう。

2級の合格率は40.6~75.0%となっており、半数程度は合格できる難易度です。1級の合格率は25.0~35.3%で、2・3級に比べて難易度がかなり高いことが伺えます。

勉強方法

検定試験では、1級の一部を除いてすべて公式テキストから出題されるため、日本認知症コミュニケーション協議会が発行する、公式テキストと問題集を使った学習が欠かせません。

以前は、通信教育で受験対策講座を受講できましたが、現在は休講となっているため、公式テキストと問題集を使った学習がもっとも効果的な方法と言えるでしょう。

3.認知症に関するその他の公的資格・民間資格

認知症に関係する公的資格には、以下の3つがあります。いずれも、国が「認知症施策推進大綱」で推進している資格(研修)です。

・認知症介護基礎研修
・認知症介護実践者研修
・認知症介護実践リーダー研修


認知症介護基礎研修は、認知症介護の基礎を身につける研修です。認知症について知り、ケアに必要な基本知識や技術の習得を目指します。研修時間は6時間です。

認知症介護実践者研修では、認知症の方をケアするために必要な専門知識と技術の習得を目指します。受講するためには2年以上の実務経験が必要です。6日間の講義・演習と4週間以上の実習があります。

認知症介護実践リーダー研修は、事業所において認知症ケアのリーダーとして活躍するために必要な知識と技術を学ぶ研修です。認知症介護実践者研修の修了者を対象としており、8日間の講義・演習と4週間の実習があります。

認知症対応の民間資格には、認知症ライフパートナーのほかに以下のようなものがあります。

・認知症ケア専門士
・認知症ケア指導管理士
・認知症介助士


認知症ライフパートナー以外にも、認知症ケアの関連資格は数多く、それぞれに特徴が異なります。どのようなスキルを身に付つけたいのか、どのようなキャリアパスを目指しているのかを明確にした上で、希望に合った資格を選ぶようにしましょう。

まとめ

認知症ライフパートナーは、認知症に関する知識やケアの方法から、生活しやすい住環境の整え方、介護家族を支援する制度まで習得できる資格です。介護職員としてスキルアップやキャリアアップを目指す方、転職を検討している方は、ぜひ取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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※当記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

認知症ライフパートナーは、認知症がある人やその家族をサポートする役割を担う専門家や支援者として活躍できる資格です。
認知症は高齢になればなるほど発症しやすく、記憶力や判断力、認識力などが低下します。認知症を発症すると、症状が進行するにつれて、自立した生活が困難になり、家族の負担も大きくなります。そのようなときに、認知症ライフパートナーは、認知症がある人が可能な限り自立した生活を送ることができるように支援する役割を果たします。
具体的には、認知症の症状に応じた生活のアドバイスやサポート、外出やレクリエーション活動の支援、認知症に関連した情報を提供するなどがあります。
また、認知症ライフパートナーは、家族や関係者とのコミュニケーションを円滑にすることも重要な役割です。認知症状が進行すると意思疎通が難しくなることがありますが、認知症ライフパートナーは、そのような状況下でのコミュニケーションの方法やアプローチの方法をアドバイスしたり、サポートしたりします。認知症の症状に合ったサポートを提供してくれる認知症ライフパートナーは、認知症がある人やその家族にとって重要な存在であるといえます。
認知症は進行性であり、自立した日常生活に影響が及ぶ可能性があることから、認知症ライフパートナーには、認知症がある人の生活をトータルで考え、質の高い、最善のサポートを提供してくれることが期待されています。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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