介護福祉士の試験は簡単?「取得しやすい」といわれる理由と試験合格のコツを解説
文/渡口将生(介護福祉士・ケアマネジャー)
介護福祉士は、数ある介護系資格のなかで唯一の国家資格です。しかし、国家資格であるにもかかわらず、ときどき「介護福祉士の試験は簡単すぎる」という声を耳にするのも事実。介護福祉士の資格取得は、そんなに簡単なのでしょうか?
この記事では、介護福祉士が「簡単」「取得しやすい」といわれる理由と、試験内容の詳細について紹介します。介護福祉士の資格に挑戦したいと思っている方は、ぜひご一読ください。
1.介護福祉士が取得しやすいといわれる理由
介護福祉士の資格が「取得しやすい」といわれる理由として、次のことが挙げられます。
- 介護福祉士試験の合格率が高い
- 必要だとされる勉強時間が少なめ
- 受験資格が幅広い
- 実技試験の免除制度がある
- 国家試験の内容が実際の業務に即している
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
介護福祉士試験の合格率が高い
過去5回(2020~2024年)の試験データを見ると、介護福祉士の合格率は70~80%台と非常に高い傾向にあります。特に、2024(令和6)年1月に実施された第36回の試験では、82.8%という驚異的な合格率を記録しました。
一方、福祉系国家資格である社会福祉士の合格率は20~40%程度で、精神保健福祉士も60~70%程度です。
このように、ほかの国家資格と比較すると介護福祉士試験の合格率は高い傾向にあり、それが「取得しやすい」といわれる理由の1つとなっています。
必要だとされる勉強時間が少なめ
介護福祉士の取得に必要な勉強時間は、約250時間だとされています。数字だけを見ると多く感じるかもしれませんが、ほかの国家資格と比べると少なめです。
例えば、社会福祉士の資格取得には約300時間が必要といわれています。また、難易度が高いとされる行政書士は約600時間、司法書士は約3,000時間の学習が必要といわれています。
受験資格が幅広い
介護福祉士試験は受験資格が幅広く、そのことも「取得しやすい」といわれる理由となっています。
介護福祉士は、介護職として一定期間の実務経験を積むか、福祉系高校や養成施設でカリキュラムを修了することで受験資格が得られます。実務経験を積む場合、3年以上の実務経験と540日以上の従事期間が必要です。一方、福祉系高校や養成施設で学ぶ場合は、修了と同時に受験資格が得られるため、学歴や職歴にかかわらず、幅広い人が介護福祉士を目指すことができます。
実技試験の免除制度がある
介護福祉士国家試験には、筆記試験と実技試験がありますが、次のケースでは実技試験が免除されます。
- 実務経験が3年以上で、2012(平成24)年度以降に実務者研修を修了した人
- 介護技術講習を受講して修了認定を受けている場合
実技試験がなく筆記試験だけになるため、しっかり対策すれば合格の可能性は高くなるでしょう。
国家試験の内容が実際の業務に即している
介護福祉士国家試験の筆記試験では、基本的な介護の知識や技能、倫理についての問題が出題されます。
出題範囲は広めですが、過去問や模擬試験をくり返すことで、出題傾向をつかむことが可能です。また、試験内容が実際の業務に即しているため、介護現場での実務経験がある受験者は、比較的理解しやすいと感じるでしょう。
そのため、実務経験を生かしながら過去問や参考書で効率的に勉強を進めれば、合格のチャンスは高まるはずです。
以上が、介護福祉士の国家資格が「簡単」「取得しやすい」といわれる理由となります。
2.介護福祉士試験合格へのコツ
先に紹介したように、介護福祉士試験の合格率は比較的高めです。しかし、それでも毎年30%ほどの人が不合格になっているため、安心しすぎてはいけません。
介護福祉士国家試験に合格するためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。以下では、具体的な対策を5つ紹介しましょう。
試験範囲を把握する
まずは、試験範囲をしっかり把握してください。介護福祉士国家試験は11科目群から出題されますが、毎年出題されるテーマには一定の傾向があります。過去問を分析し、出題傾向をつかむことで効率的に学習を進めでしょう。
介護福祉士国家試験の範囲(11科目群)は以下の通りです。
1.人間の尊厳と自立、介護の基本
2.人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
3.社会の理解
4.生活支援技術
5.介護過程
6.こころとからだのしくみ
7.発達と老化の理解
8.認知症の理解
9.障害の理解
10.医療的ケア
11.総合問題
計画的な学習
試験対策は計画的に行うことが大切です。試験日から逆算したうえで学習計画を立て、毎日少しずつでも勉強を進めることが合格への近道になります。
特に、働きながら学ぶ人にとっては、無理のない範囲で継続的に学習することが重要です。以下に学習計画の一例を紹介しておくので、参考にしてみてください。
- 毎日の学習時間をできるだけ確保し、1日1~2時間程度の勉強を続ける。
- 分野ごとに目標を設定し、週ごとに進捗を確認する。
- 模擬試験を定期的に受け、自分の弱点を把握する。
- 直前期には過去問を中心に学習し、試験形式に慣れる。
短期集中で一気に知識を詰め込もうとすると、逆に効率が悪くなるため、長期的に継続できるスケジュールを立てましょう。
模擬試験の活用
さまざまなメディアやサービスで模擬試験を受けられます。模擬試験は、本番の試験形式に慣れるための絶好の機会なので、積極的に活用しましょう。
模擬試験を受けることで、自分の弱点が把握できるため、苦手な部分を重点的に学習できます。加えて、時間配分のコツもつかめるでしょう。
模擬試験を活用する際のポイントは、以下の通りです。
- 模擬試験を受けることで、本番の試験環境に慣れる。
- 自分の弱点を把握し、重点的に学習する。
- 試験形式や出題傾向をつかむために、過去問を繰り返して解く。
- 模擬試験の結果を分析し、学習計画を見直す。
実務経験の活用
介護福祉士試験の内容は、実務経験に基づくものが多いため、日常業務の経験が生かせます。実際の介護現場での経験を振り返りながら学習すると、知識がより定着しやすくなるので、ぜひ実践してみてください。
実務経験を生かすためのポイントは、以下の通りです。
- 日常の業務での経験を振り返り、試験内容に関連づける。
- 実際の介護現場での事例をもとに、学習内容を具体的に理解する。
- 現場での疑問点や課題を持ち帰り、学習材料として活用する。
- ほかの介護職員との情報共有やディスカッションを通じて知識を深める。
効果的な休息
長期間の学習を続けるためには、心身のリフレッシュも大切です。適度に休息をとりながら、効率的な学習を心がけましょう。
効果的な休息をとるためのポイントは、以下の通りです。
- 毎日の学習時間の後に、リフレッシュタイムを設ける。
- 週末や休日は、勉強から離れてリラックスする時間をつくる。
- 適度な運動や趣味の時間を取り入れて、ストレスを解消する。
- 睡眠をしっかりとり、心身の疲れをリセットする。
まとめ:今後、介護福祉士の重要性はますます高まる
介護福祉士の試験は合格率が高く、受験資格も幅広いことから、「取得しやすい」と感じる人も多いかもしれません。しかし、合格するためには、介護現場での実務経験や計画的な学習が必要です。過去問や模擬試験で試験の傾向をつかみながら、長期的・効率的な学習スケジュールを立てましょう。しっかりと準備をして試験に臨めば、きっと合格への道が開けるはずです。
介護福祉士は、高齢者や障害者の生活支援にとどまらず、家族や地域社会への貢献も求められる職種です。そのため、今後の高齢化社会において、介護福祉士の重要性はますます高まるでしょう。
みなさんが介護福祉士の役割を理解して、充実したキャリアを築いていくことを願っています。
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