主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)とは?役割・年収・やりがいなどを詳細に解説
文/倉元せんり(社会福祉士)
主任ケアマネジャーは、高度な知識や技術によって、ほかのケアマネジャーの育成・指導、マネジメント業務などを担います。また、主任ケアマネジャーの仕事は、地域に住む利用者の支援だけにとどまらず、地域全体の介護課題の解決や多職種連携のための体制構築など広い範囲におよびます。
この記事では、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)の役割や資格取得要件などについて詳しく紹介します。スキルアップ・キャリアアップを目指して、主任ケアマネジャーの資格を取得したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
1.主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)とは
主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)とは、ほかのケアマネジャーへの指導や助言、マネジメント業務を行うケアマネジャーの上位資格です。2006年の介護保険制度改正のときに新設された資格で、ケアマネジャーの有資格者が指定の研修を修了することで取得できます。
主任ケアマネジャーとケアマネジャーの主な違いは、仕事内容にあります。ケアマネジャーは、要介護者のケアプラン作成や、サービス事業者との調整・相談などが主な業務です。一方、主任ケアマネジャーは地域のケアマネジャーの指導や育成、ケアプラン作成の助言なども行います。さらに、支援困難事例などにも対応し、複雑な状況の解決を図るのも重要な仕事です。
このように高度な業務を行うことから、主任ケアマネジャーは「介護相談のスペシャリスト」といってよいでしょう。
2.主任ケアマネジャーの役割
主任ケアマネジャーには、次の4つの役割があります。
ケアマネジャーの指導や育成
主任ケアマネジャーには、地域のケアマネジャーを指導・育成する役割があります。新人や経験の浅いケアマネジャーを支援したり、相談に乗ったりするのも重要な業務の一つです。
ケアマネジャーのための事例検討会を企画するなど、ケアマネジャー同士の交流やスキルアップを図る取り組みも求められます。
地域における介護課題の解決
認知症高齢者や独居高齢者の増加、介護サービスの不足など、それぞれの地域によって介護課題は異なります。主任ケアマネジャーは、それらの課題を解決するために、他の職種や行政と連携しながら解決案を考え、実行に移します。
主任ケアマネジャーは、地域の介護課題を解決し、高齢者が安心して暮らせる環境づくりに貢献する重要な職種だといえるでしょう。
社会資源の情報収集や開発
既存の社会資源だけでは対応できないニーズを発見した場合、主任ケアマネジャーは新たなサービスや支援体制の構築を提案・推進します。例えば、認知症カフェの設立や地域ボランティアの組織化などもその一つで、そうしたサービスの実現は、地域に住む高齢者の生活の質向上に大きく貢献するはずです。
地域のニーズに合わせた柔軟な支援体制を構築するにあたって、主任ケアマネジャーが果たす役割は大きいといえます。
他事業所との連携体制の構築
医療機関や介護サービス事業所、行政機関など、さまざまな組織や専門職とのネットワークを構築するのも主任ケアマネジャーの役割です。例えば、定期的に勉強会を企画したり、情報交換の場を設けたりするのも、大事な活動といえます。
そうやってスムーズな連携体制を構築すれば、利用者に対して切れ目のない支援が提供でき、地域全体の介護サービスの質が向上するでしょう。
3.主任ケアマネジャーの働く場所
主任ケアマネジャーは、さまざまな場所で活躍します。ここでは、主任ケアマネジャーの働く場所について詳しく紹介します。
居宅介護支援事業所
主任ケアマネジャーの主要な活躍の場として挙げられるのが、居宅介護支援事業所です。居宅介護支援事業所の管理者は、原則として主任ケアマネジャーであることが求められています(令和9年3月までは猶予期間)。また、居宅介護支援事業所では、主任ケアマネジャーを常勤専従で配置すると「特定事業所加算」がつきます。これらのことから、多くの居宅介護支援事業所が主任ケアマネジャーの採用に積極的です。
ケアマネジャーとしての豊富な経験や知識を生かしたい方は、居宅介護支援事業所で働くのも一つの選択肢でしょう。
(参考:厚生労働省「居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置及び地域区分について」)
地域包括支援センター
地域包括支援センターでは、原則として保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーの3職種の配置基準が設けられています。地域包括支援センターにおける主任ケアマネジャーの主な役割は、包括的・継続的なケアマネジメント支援です。具体的には、地域のケアマネジャーの指導や育成、地域の介護環境改善に向けた取り組み、複雑な事例への対応支援などを担います。
地域の介護課題に取り組みたい方や、ケアマネジャーの指導・育成に携わりたい方は、地域包括支援センターの業務が適しているといえるでしょう。
介護老人福祉施設
特別養護老人ホーム(特養)の主任ケアマネジャーは、入所者のケアプラン作成を行うほか、ケアマネジャーのリーダーとして指導や育成にも携わります。さらに、施設ケアマネジメントの統括も重要な業務です。
なお、一部の特養では、主任ケアマネジャーに介護業務との兼務を求めることがあります。そのため、ケアプラン作成やケアマネジメント以外の業務に携わる可能性もあるでしょう。
4.主任ケアマネになるための要件
主任ケアマネジャーになるためには、「主任介護支援専門員研修」の受講が必要です。また、研修を受講するには、ケアマネジャーの資格保有が前提となります。
ここでは、主任介護支援専門員研修の受講要件や、研修内容などについて説明します。
主任介護支援専門員研修の受講要件
主任介護支援専門員研修の受講要件は、自治体によって異なります。例えば東京都の場合、以下のいずれかの要件を満たしていなければなりません。
- 常勤専従の介護支援専門員として従事した期間が通算して5年(60か月)以上あること
- 国もしくは都道府県が実施したケアマネジメントリーダー養成研修を修了した者、または日本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであって、常勤専従の介護支援専門員として従事した期間が通算して3年(36か月)以上あること
東京都ではこれらの勤務要件のほかに、一定の研修受講や実務経験要件などを満たす必要があります。
ほかの都道府県でも、それぞれに受講要件が決められているので、勤務先の都道府県が実施する「主任介護支援専門員研修」の要件を確認してみましょう。
主任介護支援専門員の研修内容
主任介護支援専門員の研修は、以下のようなカリキュラムで行われます。
科目 | 講義時間 |
---|---|
主任介護支援専門員の役割と視点 | 5時間 |
ケアマネジメントの実践における倫理的な課題に対する支援 | 2時間 |
終末期ケアを含めた生活の継続を支える基本的なケアマネジメントおよび疾患別ケアマネジメントの理解 | 3時間 |
ターミナルケア | 3時間 |
人材育成および業務管理 | 3時間 |
運営管理におけるリスクマネジメント | 3時間 |
地域援助技術(コミュニティソーシャルワーク) | 講義および演習6時間 |
ケアマネジメントに必要な医療との連携および多職種協働の実現 | 講義および演習6時間 |
対人援助者監督指導(スーパービジョン) | 講義および演習18時間 |
個別事例を通じた介護支援専門員に対する指導・支援の展開 | 講義および演習24時間 |
(出典:厚生労働省「主任介護支援専門員研修 各科目のガイドライン)
主任介護支援専門員研修は都道府県が実施しており、研修日程や内容、費用などはそれぞれに違います。
また、多くの都道府県では年に1回程度の開催であり、受講要件を満たしていても、当該年度の研修をのがすと翌年まで受講の機会を得られなくなります。貴重な受講機会を逃さないためにも、あらかじめ研修日程や申込日を確認しておきましょう。
研修費用も各都道府県で異なります。令和4年度に実施された主任介護支援専門員研修費用の全国平均は、46,910円でした。都道府県によって30,000円から67,500円まで幅があるため、あらかじめ費用を確認しておくことが重要です。
なお、勤務先によっては研修費用が職場負担となる場合もあるので、職場に費用支給の有無を確認してみましょう。
更新研修
主任ケアマネジャーは、5年ごとの更新が必要です。そのため主任ケアマネジャーとして継続して勤務するには、有効期限内に「主任介護支援専門員更新研修」を受講しなければなりません。
定期的な更新制度は、継続的な自己研鑽を促すための措置でもあります。常に最新の知識とスキルを維持することが主任ケアマネジャーの責務となるので、忘れずに受講しましょう。
なお、都道府県ごとに研修日程や費用などが異なるので、受講する際は都道府県のホームページなどで確認が必要です。
5.主任ケアマネジャーの給料・年収
主任ケアマネジャーの平均給与のデータは公表されていませんが、関連情報から推測することは可能です。例えば、厚生労働省が発表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、ケアマネジャーの平均月収は361,770円となっており、これを年収に換算すると約430万円となります。
主任ケアマネジャーになると、資格手当や管理者手当などがつく職場が多いため、ケアマネジャーの年収を上回る可能性が高くなります。具体的な金額は勤務先や地域によっても異なりますが、賞与を含めた年収は450万円〜500万円程度と推測できるでしょう。
6.主任ケアマネジャーのやりがい
主任ケアマネジャーになるには、時間や費用がかかるため、日々の業務と両立して資格を取得するのは大変かもしれません。しかし、資格を取得した先には、主任ケアマネジャーならではのやりがいがあります。
最後に、主任ケアマネジャーのやりがいについて紹介しましょう。
質の高いケアマネジャーを育成できる
主任ケアマネジャーのやりがいの一つとして、自身の経験や知識を活用して、新人や経験の浅いケアマネジャーの成長を支援できることが挙げられます。利用者への支援に行き詰まったり、悩んだりしているケアマネジャーを支え、指導することで、ケアマネジャーの力量を高めていくわけです。
質の高いケアマネジャーを育成することは、利用者に対する支援の質の向上につながるため、社会的にも大きな意義を持ちます。指導を通じて、主任ケアマネジャー自身の知識やスキルも磨かれるでしょう。
支援困難事例に関われる
さまざまな課題が絡み合った複雑なケースでは、ケアマネジャーも頭を悩ませます。そうした支援困難事例の支援計画立案において、中心的な役割を果たすのが主任ケアマネジャーです。例えば、地域ケア会議では、主任ケアマネジャーが中心となって多職種連携を促進し、複雑な事例の解決策を協議します。
主任ケアマネジャーになると、高度な知識や豊富な経験を生かして支援困難事例に取り組む機会も増えますが、活動を通じて地域全体の課題解決能力の向上に貢献することは、専門職としての大きなやりがいになるでしょう。
給与が上がる可能性がある
主任ケアマネジャーにキャリアアップすることで、給与が上がる可能性があります。職場の給与体系にもよりますが、資格手当の支給や基本給の増額などが期待できるでしょう。
給与が上がることは、仕事に対するモチベーションアップにつながります。また、経済的に安定することで、より仕事に集中できるようになるでしょう。
就職や転職で優遇される
主任ケアマネジャーの資格を取得すると、就職や転職の際の大きな強みとなります。例えば、地域包括支援センターでは、主任ケアマネジャーの配置が義務付けられており、資格保有者の需要が常に高い状態です。
資格取得によって職場の選択肢が広がれば、長期的なキャリア設計もしやすくなります。さまざまな職場で経験を積むことで、専門性を高める機会も増えるでしょう。
まとめ:将来のキャリアを広げるための選択肢に
主任ケアマネジャーは、地域における介護課題の解決やケアマネジャーの指導・育成を担当する専門職です。主任ケアマネジャーになることで、質の高いケアマネジャーの養成や支援困難事例への対応など、やりがいのある業務に携われるでしょう。
さらに、給与が上がったり、就職・転職が有利になったりする可能性もあります。将来のキャリアの選択肢を広げたい方は、ぜひ主任ケアマネジャーを目指してみてください。
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