介護の着付けは無資格でもOK?車いすのまま着付けする方法とは
構成・文/介護のみらいラボ編集部
日本の伝統が息づく華やかな着物は、年代を問わず多くの人に愛されています。昔懐かしい着物を着ることは、介護施設の高齢者にも喜ばれる取り組みです。そのため、介護業界で働いている人の中には、利用者に着付けをしてあげたいという人もいるでしょう。しかし、「自分で着付けできる自信がない」「資格がないと着付けしてはいけないのでは」と思い、資格取得を検討している人は少なくありません。
そこで当記事は、介護職に従事する人が着付けの資格を取る必要性やメリット、現場で特に役立つ車いす着付けの資格について解説します。
介護現場での着付けには資格が必要?
特に資格を持っていなくても、着付けをすることは可能です。しかし、資格を取得するほうが、正しい方法で美しい着付けができるでしょう。
着付けの方法は、参考書や動画を参考に独学で学ぶこともできます。独学は、お金がかからず、手軽に始められることが魅力です。ただし、独学で正しい着付けを習得できるとは限りません。動画は限られた角度でしか見られず、詳しい説明が省かれていることもよくあります。また、書籍は専門用語が出てくることが多く、内容を理解できないことも。
そのため、着付けに必要なスキルを着実に身に付けたいときは、着付け教室や着付け講座に通って資格を取ることをおすすめします。相応のお金と時間が必要となりますが、着付け教室・講座では知識や技術を順序立てて教えてくれます。不明点はすぐに質問できるため、間違ったやり方がそのまま身に付く心配もありません。
着付けは、着姿だけでなく、着心地や着崩れにくさも重要です。実践的な部分を養う意味でも、資格取得は大いに効果があるでしょう。
着付け師とは?どんな仕事内容?
着付け師とは、着付けを専門的に行う職業のことです。七五三や結婚式、成人式など、さまざまな場面で需要があります。
着付け師の仕事内容は、着物や衣装を美しく、かつ迅速に着付けることです。依頼者と打ち合わせをしたり、着物や小物類の状態を確認したりもすることも仕事の1つ。ヘアメイクをセットで行う着付け師も少なくありません。着付け師の主な就職先は、写真館・美容室・結婚式場・葬祭場・呉服屋などです。
介護職に従事する人が着付け師の資格を取ると、下記のようなメリットが得られます。
- 着付けに関する正しいスキルが身につくことで自信や余裕を持って着付けられる
- 利用者が安心して着付けを依頼できる
- 仕事の活躍の場が広がる
利用者の多くは和装に馴染みが深いため、着付けができると喜ばれるでしょう。
【着付け師】資格の種類と取得方法
着付け師の資格はいくつかの種類があり、それぞれ取得方法が異なります。ここでは、代表的な資格を6つ紹介します。
【着付け技能士】
着付け技能士は、2009年に制定された唯一の国家資格です。初級向けの2種と上級向けの1種があります。資格取得は、全日本着付け技能センターが実施する学科・技能試験に合格することが条件となります。受験するには、専門校卒業者を除き、最大5年の実務経験が必要です。
(出典:厚生労働省「令和3年度技能検定」)
【着付師】
着付師は、創業1955年の老舗・長沼静きもの学院による着付けの民間資格です。未経験者でも即戦力として活躍できる、高度な知識と技能を習得できます。資格は3級~1級があり、いずれも養成コースのカリキュラム(12か月)を修了すると取得できます。
【着物免許】
着物免許は、財団法人民族衣裳文化普及協会が推薦している、京都きもの芸術文化協会が認定する民間資格です。資格はレベルに応じて5級~1級に分かれています。着物免許は、ハクビ京都きもの学院のレッスン(6か月・12か月)を修了することで取得可能です。
【着付講師認定証】
着付けだけでなく、着物教室の講師も目指せる資格が着付講師認定証です。着付け全般を習得できる3級と2級、生徒指導や教室運営の知識を習得できる1級があります。認定証は、彩きもの学院の養成コース(6か月~9か月)を受講し、修了試験に合格すると付与されます。
【着付け講師】
着付け講師は、一般社団法人日本伝統技術インストラクター協会が認定する資格です。和装師3級~和装師高等師範の5つに資格が分かれており、順次進級していく流れとなります。全国にある認定校でレッスン(3か月~8か月)を修了すると、資格が取得できます。
【きもの講師】
きもの講師は、一般社団法人日本きものファッション協会が認定する資格です。着物のコーディネートから講師としての心得までを幅広く習得できます。きもの講師の資格は、協会主催の養成コース(4か月)を修了し、学科・技能の試験に合格すると取得できます。
介護職におすすめの資格は「車いす着付け師」
介護現場では、車いすに座っている高齢者も少なくありません。そのため、介護職で着付けの資格を取りたい場合は、車いすに座ったまま行うことができる着付けに特化した「車椅子着付け講座」や「福祉車いす着付師資格講座」を検討するとよいでしょう。最後に、それぞれの講座の概要やコースの種類、受講料について解説します。
車椅子着付け講座の受講方法
車椅子着付け講座は、一般社団法人日本ラポール福祉協会が運営する専門講座です。専門講座を受講することで、着物や帯を加工したり、特別な道具を使ったりしなくても、安心・安全な着付けサービスが提供できるようになります。
車椅子着付け講座は、いくつかのコースに分かれています。
コース | 学習内容 |
---|---|
基礎コース | ・高齢者や障害者への対応の仕方 ・車いすの操作や移乗介助 ・車いす着付け(浴衣・小紋・訪問着等) ・作り帯(お太鼓・二重太鼓) |
応用コース | ・車いす着付け(袴・振袖) ・作り帯(飾り結び) ・寝たままの着付け |
発展コース | ・基礎コース・応用コースの復習 |
基礎コースは車いす全般の内容を扱い、応用コースは高度な着付けに特化していることが特徴です。学習内容の「作り帯」とは、あらかじめ帯結びの形に仕上げておく帯のことです。基礎コースにはオンライン受講もあるほか、個別指導を受けられる「個別コース」もあります。
受講料および講座の開催場所は下記の通りです。
コース | 受講料(税込) |
---|---|
基礎コース | 16,500円(オンラインも同じ) |
応用コース | 16,500円 |
発展コース | 一般5,500円(会員3,300円) |
(出典:一般社団法人日本ラポール福祉協会「車椅子着付け講座)
開催場所の例 |
---|
・埼玉県浦和市 ・東京都板橋区 ・東京都豊島区 ・栃木県宇都宮市 ・北海道札幌市 ・和歌山県岩出市 |
開催場所は年度により異なるため、直近の情報は公式サイトで確認してください。
福祉車いす着付師資格講座の受講方法
福祉車いす着付師資格講座は、認証NPO法人日本理美容福祉協会が運営している講座です。講座には10年以上の車いすボランティア活動で培ったノウハウが凝縮されており、車いすの操作から座ったままの着付けまでを幅広く習得できます。
福祉車いす着付師資格講座には、下記のコースがあります。
コース | 学習内容 |
---|---|
初級コース | ・車いす着付け(浴衣) |
中級・上級コース |
・福祉や介護について ・車いすや介護ベッドの操作 ・車いす着付け(小紋) |
プロコース |
・作り帯(お太鼓・二重太鼓) ・寝たままの着付け |
袴コース | ・車いす着付け(袴) |
プロコースは中級・上級コースの修了者が、袴コースはプロコース修了者がそれぞれ受講できます。着付けの知識を介護現場で活かすには、中級・上級コース以上が望ましいでしょう。受講時間は、各コース6時間が目安です。
受講料と講座の開催場所は、下記の通りです。
コース | 受講料(税込) |
---|---|
初級コース | 13,000円 |
中級・上級コース | 20,000円 |
プロコース | 20,000円 |
袴コース | 18,000円 |
(出典:認証NPO法人日本理美容福祉協会「福祉車いす着付け講座」)
開催場所の例 |
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・愛知県名古屋市 ・大分県大分市 ・大阪府大阪市 ・神奈川県横浜市 ・熊本県熊本市 ・滋賀県米原市 ・東京都赤羽区 ・長崎県長崎市 ・新潟県上越市 ・北海道札幌市 ・和歌山県和歌山市 |
日程や会場住所などの詳しい内容は、公式サイトで確かめてみましょう。
まとめ
介護現場での着付けに資格は必須ではありません。しかし、資格を取得することで「自信を持って着付けできる」「活躍の場が広がる」などのメリットが得られます。着付け師の資格は1つの国家資格と、複数の民間資格があります。介護職が資格取得を目指す場合は、車いす着付けに特化した車椅子着付け講座や福祉車いす着付師資格講座がおすすめです。
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