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仕事・スキル 介護資格 2021/12/08

音楽療法士とは?仕事内容からメリット・将来性までを解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 音楽療法士.jpg

介護業界で働いていると、「音楽療法士」という仕事を耳にすることがあるでしょう。しかし、あまり知名度が高い職業ではないため、音楽療法士について把握している人は多くありません。

音楽療法士の仕事には、メリット・デメリットが存在します。実際に音楽療法士を目指すときは、仕事そのものについて詳しく知っておきましょう。

当記事では、音楽療法士の詳細について、仕事内容や主な職場などを解説します。将来性なども解説するため、音楽療法士を目指す人は参考にしてください。

音楽療法士とは?

音楽療法士とは、音楽が持つ効果を活用しながら高齢者や障がい者などの心身をサポートする仕事です。統合医療において近代西洋医学と組み合わせる療法の1つとしても音楽療法が挙げられています。

(出典:厚生労働省「統合医療において近代西洋医学と組み合わせる療法」

歌を歌ったり楽器を演奏したりするリハビリテーション方法は、言語での治療が難しい人にも有効とされています。そのため、近年では徐々に音楽療法士の認知度とニーズが高まっている状態です。

音楽療法士は専門的な知識を求められることから、簡単にできる仕事ではありません。しかし、音楽が好きな人や誰かのためになりたい人にとっては、やりがいを感じられる仕事といえるでしょう。

音楽療法士の仕事内容

音楽療法士の仕事は、音楽の力で人々のリハビリテーションをサポートすることです。音楽には不安やうつ状態を和らげたり、運動機能の維持・改善が期待できたりするなど、さまざまな効果が証明されています。また、認知症の行動・心理症状(BPSD)にも音楽療法が有効であるといわれています。

リハビリテーションとしては、ウォーキングや体操などの運動療法、リアリティ・オリエンテーション(常に問いかけを行い、場所・時間・状況・人物などの見当識を維持する)、簡単な楽器演奏などの音楽療法、過去を回想することも有効とされています。

(引用:厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス 総合サイト」

音楽療法の方法は下記の2種類です。

  • 一緒に歌を歌ったり楽器を演奏したりするなどの能動的な方法
  • 音楽を聞かせることでリラクゼーション効果や精神治癒をねらう受動的な方法

活動を行うにあたって複数人で施設を回ることもありますが、基本的には単独での訪問が多くなります。複数人で実施する場合は、司会進行をする人やピアノを演奏する人などの役割分担が可能です。1人で実施するときは、施設のスタッフに協力してもらいながら進めます。

音楽療法士の主な職場

音楽療法士の主な職場は、以下の通りです。

・高齢者福祉施設
デイサービスや特別養護老人ホームは、音楽療法士の主な職場の1つです。高齢者福祉施設での音楽療法は、利用者の心身の活性化や認知症予防、利用者やスタッフ間のコミュニケーションの促進を目的としています。

・障がい福祉施設
障がい者施設での音楽療法の目的は、知的障がいがある人の自立支援や社会性の向上です。音楽を使ったコミュニケーションを通して、利用者の自己表現や感情表現を引き出すことをサポートします。

・児童福祉施設
児童福祉施設や特別支援学校での音楽療法の目的は、歌唱やダンスをしながら子どもの心身の発達を支援することです。情緒の安定を図ることやコミュニケーションを学ぶ機会として活用されています。

・医療機関
医療機関での音楽療法は、患者さんの恐怖心を和らげることを目的に、外科・内科・産婦人科などさまざまな診療科で行われます。時には患者さんだけではなく、看取りをする家族の心のケアをするために取り入れられる事例もあります。

音楽療法士になるメリット・デメリット

音楽療法士は魅力とやりがいに溢れた仕事である一方、苦労することも少なくありません。音楽療法士になるメリット・デメリットは下記の通りです。

<メリット>

  • 楽器や歌の音楽スキルを生かせる
  • 介護系の資格と併せて活用できる
  • 病気や障がいに対する医学的な知識を幅広く身につけることができる
  • 利用者と特別な時間を共有できる
  • さまざまな年齢の利用者と関わりが持てる

音楽療法士は、介護業界の中でも音楽の専門性を求められる特殊な仕事です。音楽スキルと福祉関連の資格を両方兼ね備えている人は、自身の強みを活用できる魅力があります。利用者と一緒に音楽を通して1つの目的に向かうことは、大きなやりがいにつながるでしょう。

<デメリット>

  • 日本での認知度が低く、求人情報が少ない
  • 音楽療法を必要としている施設と実施できる人がマッチングしづらい
  • 報酬が高くない上に、給料が上がりづらい
  • 楽器の購入や講習会への参加費など金銭面の負担が増える

日本では、音楽を治療法として扱う認識があまり広がっていません。音楽療法士の仕事に対する認知度の低さが活動の大きなハードルになっている状態です。楽器の購入などの出費が多い上、収入が上がりづらいこともあり、他の仕事と掛け持ちしながら働く人もいます。

音楽療法士になるためには?

音楽療法士になるための公的な認定資格は存在しないため、誰でも音楽療法士として働くことが可能です。しかし、音楽療法士は専門的な知識が必要な仕事でもあります。音楽療法士を目指す人は、全国で取得可能な民間の認定資格を取得しておきましょう。

ここでは、音楽療法士になるための方法を2つ紹介します。

日本音楽療法学会「音楽療法士」の資格を取る

日本音楽療法学会は、音楽療法を通して健康の維持・促進など広く社会に貢献することを目的とした組織です。音楽療法が国家資格として扱われるよう制度化を推進したり、講習会を開催したりといった業界の発展につながる活動に取り組んでいます。

日本音楽療法学会が認定する資格は、認定校に入学することで取得できます。認定校コースは、学会が認めている認定校で資格取得を目指すコースです。認定校は全国各地にあり、入学したら試験を受けるために必要なカリキュラムを受講します。カリキュラム終了後に受けられる音楽療法士(補)試験に合格すると最後に面接試験があり、面接試験の合格者は資格取得となります。

認定校は、関東であれば「東京心理音楽療法福祉専門学校」「国立音楽大学」、関西であれば「同志社女子大学」「武庫川女子大学」などが指定されています。日本音楽療法学会の資格取得を考えている場合は、近くに認定校がないか公式ホームページで確認してみてください。

全国音楽療法士養成協議会「音楽療法士」の資格を取る

全国音楽療法士養成協議会は、音楽を通して、高齢者や障がい者などの心身の機能回復を図るための人材養成を目的とした組織です。全国音楽療法士養成協議会でも、音楽療法士の国家資格化を目指した活動を行っています。

全国音楽療法士養成協議会が認定する資格を習得するには、全国にある加盟校の大学・短期大学で実施されているカリキュラムの受講が必要です。各加盟校では協議会による指定のカリキュラムに沿った、特色あるそれぞれの養成カリキュラムが用意されています。

協議会が認定する音楽療法士の資格は3種類です。

・音楽療法士(専修)
音楽療法士(専修)は、協議会の定める養成課程を91単位以上修めて大学院などを修了した人が取得できます。

・音楽療法士(1種)
音楽療法士(1種)は、協議会の定める養成課程を95単位以上修めて大学などを卒業した人が取得できます。

・音楽療法士(2種)
​​音楽療法士(2種)は、協議会の定める養成課程を53単位以上修めて短期大学などを卒業した人が取得できます。

音楽療法士の将来性

近年では音楽の持つ効果が科学的に検証されるようになり、日本でも音楽療法士のニーズが高まっています。音楽療法士は医療・福祉・療育といった多方面で、今後より注目を浴びることが期待されている仕事です。

現在介護業界で働きながらも、音楽を専門としていたバックグラウンドを持っている人は、ぜひ資格取得を考えてみてください。

まとめ

音楽療法士は、音楽の効果で人の心と体を元気にする仕事です。音楽が好きな人や人との関わりが好きな場合は、たくさんのやりがいを感じられるでしょう。今後、日本でも音楽療法が浸透することを見据え、今から資格取得や情報収集に動き出すこともおすすめです。

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