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年を取るとなぜ耳が遠くなるの?加齢性難聴の原因とコミュニケーションのコツ|みんな知らない高齢者の世界
取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー)「大きな声で話しかけているのに、話の内容を分かってもらえない」「何度話しかけても返事がない」など、高齢者とのコミュニケーションに困っている方も多いでしょう。年を取ると耳が遠くなり、段々と音が聞こえにくくなるため、会話も難しくなってしまいます。
では、耳が遠い人とコミュニケーションを取るにはどうすれば良いのでしょうか。『老人の取扱説明書』著書の平松類先生に、年を取ると耳が遠くなる理由や、効果的なコミュニケーションの方法について伺いました。
1.年を取ると、どうして耳が遠くなるの?
――そもそも、どうして年を取ると耳が遠くなるのでしょうか。
加齢性の難聴が生じる理由は、「伝音性」といって、耳から音を伝えることが不得意になるためです。具体的に言えば、音が鳴っていること自体は分かっても、その音が普通よりも小さく感じてしまうんですね。結果として、今までと同じ音を聞き取れなかったり、話の内容が分からなくなってしまったりと、日常生活にも支障が出てきます。
なので、話しかけても返事をしないのは無視している訳ではなく、本当に聞こえていないケースが非常に多いです。加齢性の難聴は60代くらいから見られるようになり、70代では50%、80代では70%以上が難聴となります。80代以上の方と話す際には、話はほとんど聞こえていないと思った方が良いかもしれません。
2.聞こえづらくなる音・なりにくい音
――年を取ると、具体的にどのような音が聞こえづらくなるのですか。
年齢を重ねると「キーン」とするような、高音域の音が聞き取りにくくなることが多いです。「じゃあ低音域の音なら聞こえるの?」と思うかもしれませんが、低い音はそれほど聞こえにくくなりません。
つまり、年を取ると一律に音が聞こえなくなる訳ではなく、聞こえなくなる音に違いがあるんですね。たとえばある高齢者の方がいたとして、若い女性が話しかけた際には返事をしないのに、声の低い男性が話しかけた際には返事をするケースがあります。これは女性を無視している訳ではなく、そもそも女性の声が高いため聞こえていません。
なので低音域が聞こえている高齢者の方を見て、「この人は聞こえているはずだから、わざと無視しているんだ!」と考えるのは誤りです。耳が遠くなると全ての音が聞きづらくなると思わず、聞こえやすい音に差があることを理解するのが重要です。
3.耳が遠くなることで生じるリスク
――耳が遠くなることで生じるリスクはありますか。
耳が遠くなることで生じる大きなリスクは、認知機能が低下してしまうことですね。難聴だと認知症になりやすいことが分かっており、難聴の人は聴覚に問題がない人と比べると、認知機能が6.8歳年齢を重ねた状態と同様になると考えられています。
また当然ですが、会話が成立しづらいことも難聴のリスクの一つです。相手が喋っていることが分からないため、周りとのコミュニケーションも少なくなり、話しかけられることが億劫になったり、テレビを見ても内容が理解できなくなったりしてしまいます。
さらに、介護に不快感や不満を持ちやすいことも挙げられます。介護者は本人に説明したつもりでも、本人には全く聞こえていないケースも多いので。すると高齢者は「突然身体を触られた」などと感じるため、結果として不快感に繋がりやすくなります。
4.耳が遠くなった人とのコミュニケーションのコツ
――耳が遠くなった人とのコミュニケーションのコツがあれば教えてください。
コツは大きく3つあります。まずは声をなるべく低くして、ゆっくり話すことです。先程も触れたように高い声は聞き取りづらいため、なるべく低い声で話しかけてみてください。
もちろん、ゆっくり話すことも重要です。耳が悪い人に早口で喋っても、なかなか聞き取ってもらうことはできません。相手が話すスピードと同じ速さで話したり、単語を区切って話したりすると聞きやすくなりますね。
また滑舌良くハッキリと喋ることも重要です。滑舌良く話す方が聞こえやすいのは若い人も同じで、なるべく口の動きを大きくした方が聞き取りやすくなります。聞こえやすい方の耳が分かっている場合は、そちら側から話しかけるのも良いでしょう。
さらに書いて伝えるなど、聴覚ではなく視覚から訴えることも効果的です。ただ認知機能が低下している場合もあるので、長文ではなくなるべく短文にすると良いですね。全体的に「どううれば伝わりやすくなるか」を意識することがポイントだと思います。
取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー
平松類先生さん
愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。
現在、二本松眼科病院副院長・眼科専門医。のべ10万人以上の老人と接してきており、老人が多い眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事。主な著書に『老人の取扱説明書』『人生が変わる緑内障の新常識』など。
専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。NHK『あさイチ』、TBSテレビ『ジョブチューン』、フジテレビ『バイキング』、テレビ朝日『林修の今でしょ! 講座』、TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう一直線』、『読売新聞』、『日本経済新聞』、『毎日新聞』、『週刊文春』、『週刊現代』、『文藝春秋』、『女性セブン』などでコメント・出演・執筆等を行う。
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