Produce by マイナビ介護職 マイナビ介護職

介護の未来ラボ -根を張って未来へ伸びる-

仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2023/01/16

#みんな知らない高齢者の世界#インタビュー

年を取ると視力はどう変化する?目の老化と高齢者が見えている世界|みんな知らない高齢者の世界

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) 1.jpg

年を取ると視力が低下し、目が見えづらくなってきます。「高齢者の目のトラブル」と聞くと、老眼をイメージする方も多いでしょう。もちろん老眼も多いですが、高齢者になると白内障や緑内障など、様々な目の病気になるリスクが高まります。

では、高齢者が見えている世界とはどのようなものなのでしょうか。高齢者の視力と目の老化について、『老人の取扱説明書』著者の平松先生にお話を伺いました。

1.年を取ると、どうして目が見えにくくなるの?

――高齢者になると、どうして目が見えにくくなるのでしょうか。

高齢者になると目が見えにくくなる原因は、目の病気が増えてくるほか、老眼が発生するためです。70代になると9割の人が白内障になるほか、1割が緑内障になります。

また老眼はほぼ100%の確率で発生するため、必ず視力は落ちていってしまいます。つまり、年を重ねるにつれて、見えにくくなる可能性が高まるということですね。

――中でも老眼はかなり一般的かと思いますが、なぜ老眼になるのですか。

老眼になる理由は、毛様体筋という筋肉が衰えるためです。この毛様体筋とは、目のピントをあわせる際に使う筋肉で、水晶体というレンズの厚さを調整する役割を果たしています。

しかし歳を取ると、水晶体が固くなることで弾力がなくなり、ピントの調節が難しくなります。また毛様体筋が衰えてくるため、近くにピントが合わなくなり、手元が見づらくなるのです。

2.高齢者が見えている世界

――高齢者と若い人では、見えている世界がどのように変化するのでしょうか。

高齢者になると、まず全体的に鮮明度が落ちます。例えば階段の段差などがわかりにくくなり、今までと同じように降りていたつもりでも、踏み外してしまうことが多くなりますね。

また暗いところが見えづらくなる傾向にあります。夕方など若い人は問題なく見えている時間でも、高齢者はもう見えなくなっていると考えた方が良いと思います。

さらに年を取ると、見ながら情報を処理する「有効視野」が狭くなるので、見える範囲が落ち、見落としが増加します。この「有効視野」は年齢を重ねるにつれて狭くなっていくため、結果として高齢ドライバーによる交通事故にも繋がってしまうのです。

3.目の老化によって生じるリスク

――目の老化によって生じるリスクはありますか。



目の老化によるリスクは、大きく3つあります。1つ目は、目が見えづらくなることで転倒し、骨が折れてしまったり、骨折が原因で寝たきりになったりしてしまうことです。足が悪くなるだけでなく、目が原因での転倒もあると覚えておいてください。

2つ目は、やる気の低下や生活範囲の減少です。目が悪くなり世の中が暗く見えると、どうしても心理的にも暗くなってしまい、何もやる気が起きなくなってしまうことがあります。また見えづらいと旅行などに行く機会も減り、趣味に取り組む時間も少なくなるため、結果として生活範囲の低下にも繋がってしまいます。

3つ目は、認知機能の低下です。目を使わないことで認知機能が低下し、場合によっては認知症を発症してしまうケースもあります。

4.周囲がサポートできること

――目に関する問題が生じてしまった高齢者に、周囲の人がすべき対応はありますか。

目が悪くなったと感じた際にまず思いつくのは、メガネ屋さんに行ってメガネを作ることだと思います。しかし高齢者の場合は、まずはメガネ屋さんではなく眼科に行くことをおすすめします。しっかりと原因を調べてもらい、適切な治療を行うことが大切ですね。
また文字を書く時に、太く大きく書いたり、色合いをハッキリさせたりすることもポイントの一つです。パソコンで文書を作成する場合は、最低でも12ポイント以上の大きさにすると良いでしょう。手書きの場合は、いつもよりも大きな字で書くことを常に意識してみてください。

文書に色をつける場合は、黒地に赤や、赤地に黄色などを用いるのは見えづらいため、避けた方がベターです。特に黄色の背景に赤文字は注意喚起の際に使ってしまいがちなので、できるだけ別の色の組み合わせを使ってみてください。目が悪くない人から見ても、見やすい様に工夫することが重要です。

プロフィール

平松類先生さん

愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。

平松類先生さん

現在、二本松眼科病院副院長・眼科専門医。のべ10万人以上の老人と接してきており、老人が多い眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事。主な著書に『老人の取扱説明書』『人生が変わる緑内障の新常識』など。
専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。NHK『あさイチ』、TBSテレビ『ジョブチューン』、フジテレビ『バイキング』、テレビ朝日『林修の今でしょ! 講座』、TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう一直線』、『読売新聞』、『日本経済新聞』、『毎日新聞』、『週刊文春』、『週刊現代』、『文藝春秋』、『女性セブン』などでコメント・出演・執筆等を行う。

【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む

最新コラムなどをいち早くお届け!
公式LINEを友だちに追加する

お役立ち情報を配信中!
X(旧Twitter)公式アカウントをフォローする

介護職向けニュースを日々配信中!
公式Facebookをチェックする

SNSシェア

タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

EGGOの執筆・監修記事

介護の仕事・スキルの関連記事

  • 介護士の常識

    2024/04/17

  • 利用者さんが亡くなったときのご家族への言葉のかけ方の基本と実例

  • 文/中村 楓(介護支援専門員・介護福祉士・介護コラムニスト)
  • 介護士の常識

    2024/04/16

  • 2024(令和6)年度介護報酬改定|処遇改善・職場環境の改善など徹底解説!

  • 文/福田明(松本短期大学介護福祉学科教授)
  • 介護士の常識

    2024/04/14

  • 共感疲労とは?介護職におすすめの対策方法5選も

  • 構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
もっと見る