年を取ると怒りっぽくなる理由は?高齢者メンタルの秘密|みんな知らない高齢者の世界
取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー)
「普通に話しかけているだけなのに、突然怒り出すことが増えた」「年を取ったらなんだか怒りやすくなった気がする」など、高齢者のメンタル事情について疑問に感じている方も多いでしょう。
「高齢者になると怒りっぽくなる人が増える」と良く耳にしますが、本当にそうなのでしょうか?そこで、高齢者のメンタル事情や怒りとの関連性について、『老人の取扱説明書』著書の平松先生にお話を伺いました。
1.年を取ると怒りっぽくなる人が増えるのはなぜ?
――そもそも、なぜ年を取ると怒りっぽくなる人が増えるのでしょうか。
実は、「年を取ると怒りっぽくなる人が増える」という考えは誤りなんです。高齢者の中には元から怒りっぽい人がいるだけで、統計的に見れば、年齢を重ねるにつれて怒りっぽくなる訳ではありません。
「そうは言っても、高齢者が怒っているところを見かけることが多い」と感じる方もいるかもしれません。このようにお年寄りが怒っていると感じる理由は、守る対象である高齢者が怒ると目立つためなんです。
たとえば、Aさん(60代)がいたとします。このAさんは会社で働いており、同じ会社に勤めている人からは、尊敬や畏怖の対象として見られていることも多いです。すると多少不機嫌でも、「Aさんは仕事の件で機嫌が悪いんだな」と周囲の人から認識されます。
でもAさんが退職して、70代・80代になり高齢者の仲間入りを果たすと、周囲の人から守られる対象となります。家庭で過ごす時間が増え、会話をする相手も家族になることがほとんどでしょう。会社では「尊敬や畏怖の対象」として見られていたAさんも、家族や周囲の人にとっては「守るべきおじいちゃん」として認識されるようになります。
このように加齢によって立場が変わったAさんが怒ると、家族や周囲の人にとっては「高齢者=本来守られる対象」である人が怒るので、怒っているシーンだけが目立ってしまい、結果として怒りっぽいように感じられてしまうのです。「年を取ると怒りっぽくなる人が増える」と感じる原因は、加齢による立場の変化により、周囲の人々の受け取り方が変わるからだと言えますね。
2.高齢者が怒る理由
――では怒りっぽい高齢者は、なぜ怒るのでしょうか。本当はどのような気持ちを表現したくて怒っているのですか。
その怒っている人の気持ちやケースにもよりますが、多いのは若い頃と対応が異なるため腹立たしいというものですね。年を取るとどうしても高齢者扱いをされることが増え、周囲の人からの対応が異なっていると感じる機会が多くなります。
たとえば高齢者と会話をする際に、子どもをあやす様な対応をする人がいます。若い人は良かれと思ってやっているつもりでも、本人はプライドを傷つけられた、年寄り扱いされたと思い、不快に感じてしまうことがあります。すると、結果として怒りに繋がってしまうのです。
さらに突然「うるさい!」などと怒鳴る場合は、耳に問題があって怒っている可能性もありますね。高齢者の耳は音を不快に感じやすくなっており、高音域が聞きにくいにもかかわらず、一定の音域を超えると急にうるさく感じてしまうのです。
この現象はリクルートメント現象と呼ばれ、70歳以上では音をうるさく感じる人が、なんと7割も増加することが分かっています。はしゃいでいる子どもに対して急に「静かにしろ!」など怒鳴る際は、突然音がうるさく感じられている可能性が高いですね。高齢者が大声を出しているからといって怒っていると決めつけず、高い音域は苦手であることを理解することが重要です。

3.怒りっぽい高齢者とのコミュニケーションのコツ
――怒りっぽい高齢者とのコミュニケーションのコツがあれば教えてください。
そもそも、本当にその人が怒りっぽいのか疑うことがポイントです。先程も触れたように、周囲には怒りっぽく見えても、本当は怒っている訳ではないケースも多いので。話しかける時にいくつかの事を意識するだけで、スムーズな会話ができる可能性は高まると思います。
まずは、相手を敬う気持ちを忘れないことです。高齢者に話しかける際に、理解してもらおうと気を遣うあまり、まるで小さな子に話しかけるように対応してしまう方もいますよね。
でも高齢者からすると、若い頃は同じ状況でも丁寧に扱われていたのに、年を取ったら扱われ方が変わってしまったと感じるのです。なので、分からないだろうと思って子ども扱いをするのではなく、相手を敬う気持ちを忘れずにコミュニケーションを取ることが重要です。
また、こちらの話がちゃんと伝わっているのかについても意識すると良いでしょう。高齢者の中には、話が途中で分からなくなってしまったことで、怒り出す人も見られます。高齢者は耳が悪い人も多いため、そもそも話したことがうまく伝わっていないこともあります。
相手と同じスピードでゆっくり話す、単語を区切って話すなどを意識するだけでも、会話がうまくいく可能性が高まります。怒りっぽい人だと決めつけずに、丁寧なコミュニケーションを取ることが重要ですね。
取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー
平松類先生さん
愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。
現在、二本松眼科病院副院長・眼科専門医。のべ10万人以上の老人と接してきており、老人が多い眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事。主な著書に『老人の取扱説明書』『人生が変わる緑内障の新常識』など。
専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。NHK『あさイチ』、TBSテレビ『ジョブチューン』、フジテレビ『バイキング』、テレビ朝日『林修の今でしょ! 講座』、TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう一直線』、『読売新聞』、『日本経済新聞』、『毎日新聞』、『週刊文春』、『週刊現代』、『文藝春秋』、『女性セブン』などでコメント・出演・執筆等を行う。
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