介護職の個人目標はどう設定する?ポイントを具体的に解説【例文付き】
文/笑和(社会福祉士、介護福祉士)どのような仕事であっても、目標を持つことはとても大切です。なぜなら、個人としての目標がなければ、何のために、どこを目指して仕事をしているのか不明確になってしまうからです。介護の現場では、「利用者のため」という目標を掲げる介護従事者が多いものの、目標自体が漠然としており、具体的な内容まで落とし込んでいない例が少なくありません。
この記事では、介護職が個人目標を立てるうえでのポイントを紹介するとともに、目標が思いつかない場合の対処法や、新人、中堅、ベテランなどの経験年数や職位に応じた目標例を紹介します。
1.介護職が個人目標を立てる意義
介護施設に勤務する介護職の多くはシフト制で働いており、「8時までに離床介護する」「11時までに食堂へ移動介助する」など、時間的な流れのなかで業務にあたります。しかし、仕事内容がルーティン化してしまい、最も大切な仕事の目的・意義を深く考える機会が失われ、やりがいを見いだせない方も少なくないでしょう。
このような状態を改善する一つの方法として、個人目標を立てる方法があります。介護職が現場で行う介護にやりがいを見いだし、業界のなかでキャリアアップを図っていくためには、具体的な個人目標の設定が大切です。
では、介護職が個人目標を立てるメリットにはどのようなものがあるでしょうか。代表的なものとして、次の3点が挙げられます。
1. 仕事のやりがいを見いだせる
2. 提供する介護の質的向上
3. キャリアアップにつながる
以下、それぞれのポイントを解説しましょう。
仕事のやりがいを見だせる
勤務する施設の理念に沿って、個人の具体的な目標を設定することで、日頃の仕事に意味・意義を見いだすことができます。個人目標は、自分が何のために、どこへ向かって仕事をするのかを明確に示してくれる羅針盤のようなものです。また、目標の達成のために努力することで、日頃からやっている業務を修練することにもつながります。
提供する介護の質的向上
個人目標を立てるうえで参考とすべきポイントは、介護職自身が抱える仕事上の課題や不十分だと感じる点です。現在の自分には何が足りていないのか、利用者への介護場面では何に注意するべきか、具体的な課題を抽出することで、より客観的に自分自身を知ることができるでしょう。そうした課題を基に、日頃の業務に工夫・改善を加え、より丁寧な介護を提供できるように努力すれば、仕事の質の向上が期待できます。
キャリアアップにつながる
個人目標の達成に向けて日々努力すれば、結果として自身のスキルアップにつながります。また、昇進や給与アップ、転職の成功などのキャリアアップにもつながるはずです。転職の際には、ただ単に介護の現場経験年数を誇るよりも、個人目標の達成による成長度合いや、目標達成に伴って身に付いたスキルを明らかにする方が、より良いアピールとなります。目標を立て、達成につながった経緯などを客観視できるスキルそのものも、転職に役立つでしょう。
2.個人目標を立てるうえでの重要な視点
個人目標を立てる際には、抽象的でなく、より具体的に、焦点を絞ることが重要です。かつ達成可能で、定量評価ができるような目標とするようにしましょう。これらを踏まえた目標設定の方法を、それぞれの頭文字を取って「SMART目標設定」といいます。
1. Specific(具体的に)
2. Measurable(測定可能な)
3. Achievable(達成可能な)
4. Related(経営理念に関連した)
5. Time-bound(時間制約がある)
それぞれ、詳しく見てみましょう。
Specific(具体的に)
目標は誰が読んでも分かるように、明確で具体的な内容をまとめます。同じ文章でも読む人によって解釈が異なるような、抽象的な内容は目標設定には向いていません。また、目標に対する具体的なアクションをしっかり組み合わせることが重要です。
Measurable(測定可能な)
本人だけでなく上司もその進捗を把握できるよう、達成度合いや進度を数値化するなど、測定可能な目標を設定しましょう。
Achievable(達成可能な)
介護職の単なる希望や願望ではなく、達成できる可能性が高い目標を設定する必要があります。到底達成できないような目標は立てないようにしましょう。
Related(経営理念に関連した)
設定した目標が、勤務する施設の経営理念・サービス提供理念などに基づくものかどうかを確認しましょう。また、自身の属するフロアの共通目標や考え方に沿った内容になっているかも大切です。大きなずれが出ないように、注意しましょう。
Time-bound(時間制約がある)
期限を設定しない目標では、「いつかやる」「そのうちやる」と手を付けないまま時間だけが過ぎ去ってしまうかもしれません。いつまでにその目標を達成するのか、いつまでにどのようなアクションをするのかなど、それぞれに期限を設けて実行しましょう。
介護・福祉分野では個人目標を数値化することが難しい業界です。しかし、漠然とした目標設定では、方向性を見失ったまま仕事をすることになり、個人の成長にはつながりません。また、施設の発展に寄与できないでしょう。加えて、立派な目標を掲げても単なるお題目にならないようにするために、上記のSMART目標設定を参考にしながら、できる限り具体的かつ達成可能な目標を立てるようにしましょう。
3.目標が思いつかない場合の対処法
介護職としての目標設定は、自身の現在地や課題を確認することから始まり、施設の経営理念などと関連して考える必要があるため、時間と手間がかかる作業です。上司から個人目標を立案するように指示されても、「具体的な目標が思いつかない」「目標の書き方が分からない」という方もいるでしょう。ここでは、目標が思いつかない場合の対処法についてお伝えします。
キャリアパスを描く
3年後、5年後の自分が介護職としてどのような状態になりたいのか、具体的なビジョンを明確にしましょう。「私は3年後にフロアリーダーになる。そのために、2年後までに実務者研修を修了しておき、年収○万円UPを目指す」というように、具体的な期限や数値目標を掲げたうえで、将来像をイメージし、達成に向けて、ショートゴールに切り分けながら、個人目標に落とし込んでみましょう。
自身をアセスメントする
これまでに従事した介護現場・経験を振り返り、自分自身にアセスメントして、自身の強みや弱みを抽出しましょう。このプロセスを踏めば、自分の課題(改善すべき、努力すべき点等)が明確になり、それが個人目標の基礎となります。
まず自分のキャリアパスを描いたうえで、長所・短所を洗い出して課題を抽出するプロセスを踏めば、目標が全く思いつかない方でも、ヒントになるのではないでしょうか。
4.個人目標の具体例(新人~中堅~ベテラン)
個人目標の立て方や考え方は分かったけれど、結局、どのような内容にすればよいのか悩んでいる方もいることでしょう。ここからは、具体的に、勤続年数や職位に応じた目標例を紹介します。目標設定は、経験年数や職位などと関連させる必要があるため、自身のキャリアや求められる役割と結びつけながら参考にしてください。
新人~初任者(介護の経験年数が1~3年程度)
経験が1~3年程度の新人~初任者は、介護の仕事に慣れつつある段階で、実践的な知識や技術が身に付いている途上にあります。そのため、目標には介護職に求められる基本的事項を含めるとよいでしょう。
【具体例】
- フロアの全利用者の顔・名前を覚えるだけでなく、生活歴や趣味嗜好、ご家族の要望を把握するため1日1回以上利用者台帳を閲覧する(5分/回)。
- 上司への報告・連絡・相談を確実に行うため、自身の1日の振り返りを簡単にまとめ、(2~3分ほどの短い時間で)上司と話す機会を作る。
- 初任者研修(または実務者研修)を取得するため、○月から情報収集し、○月から受講のための勤務調整を行い、○~○月頃から受講を開始し、○月までに受講を完了する。
中堅~リーダー候補(介護の経験年数が3年~7年程度)
3~7年の経験年数がある場合、施設では中堅にあたり、リーダー候補となる人材です。そのため、目標には提供する介護の質的向上を目指すために、どのようなスキルを身に付けるべきかを含めるとよいでしょう。
【具体例】
- ○月までに××が主催する中堅職員向けの研修(例:職員間連携の実践的展開、介護記録作成の質的向上等)を受講し、得られた知識・技術を自身の業務で実践する。そのうえで研修資料をフロア職員と共有する。
- 利用者満足度を向上させるため、1ヶ月に1回以上、自分でレクリエーション内容を立案し、上司・職員に相談・調整したうえで実行する。終了後に振り返りを行い、上司からフィードバックを貰い次のレクリエーション実施に役立てる。
- 介護福祉士資格を取得するため、○月から情報収集し、○月までに受験申込みを完了する。○~○月の間で1日あたり○時間以上の受験勉強に励み、初度合格を目指す。
ベテラン~管理職(介護の経験年数が8年以上)
勤務する施設にもよりますが、8年以上の経験があればベテランとしてリーダー職を担うことがあります。自身の提供する介護の質の確保はもちろんのこと、フロア全体の業務がスムーズに流れるようにシステム化したり、部下となる新人や中堅を育成・指導したりするなど、管理者としての役割を求められます。そのため、目標には労務管理、人材育成、多職種との連携などを含めるとよいでしょう。
【具体例】
- ○月までに××が主催する管理者向けの研修(例:人材マネジメント、コーチングコミュニケーション技術等)を受講し、得られた知識・技術を自身の業務で実践する。
- フロア職員の職場満足度を向上させるため、1ヶ月で1回以上の面談機会(30分/回)を設け、課題の吸い上げのためのヒアリングを行う。
- 業務改善・経費節減に関して、他フロアの管理職と2ヶ月で1回以上の面談機会(30分/回)を設け情報交換を行い、必要に応じて介護長へ現状報告・意見具申を行う。
- 認定介護福祉士資格を取得するため、○月から情報収集し、○月から受講のための勤務調整を行い、○~○月の間で受講を開始し、○月までに受講を完了する。
まとめ:目標を持って介護に従事しよう
介護職が個人目標を立てることは、仕事にやりがいを見いだせるだけでなく、提供する介護の質的向上につながります。また、介護現場においてキャリアアップを目指すためには、欠かせない作業です。実際に目標設定を行うときには、介護の経験年数や職位によって仕事の内容や求められる役割が異なるため、必要に応じて上司や同僚と相談・協議することが大切です。まずは具体的なキャリアパスを描くことから始め、アセスメントを通して自身の課題を抽出し、経験年数や職位に応じた目標を設定してみましょう。
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