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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2023/06/14

"高齢者向けフラダンス"が生まれたきっかけは?座ったまま歌って踊れる「健康フラ・介護フラ」|みんな知らない高齢者の世界

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) thumbnail.jpg

ゆったりとした動きや、心地よい音楽などが特徴的なフラダンス。そのような優雅なイメージのフラダンスを介護向けにアレンジしたのが、座ったまま歌って踊れるフラダンスの「健康フラ・介護フラ」です。誰でも取り組める介護向けのフラダンスは、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。「一般社団法人 健康フラ・介護フラ協会」の指田睦生氏に話を聞いてみました。

1.健康フラ・介護フラが生まれたきっかけ

――「健康フラ・介護フラ」はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

当法人の代表である栗原が、「祖母が介護施設で楽しく過ごせる方法を見つけたい」と考えたことがきっかけです。栗原がある日、栗原の祖母が利用している介護施設を訪れたときのこと。そこには、つまらなそうにしている祖母の姿があったそうです。また、その施設で働いているスタッフも、楽しく仕事に取り組んでいる様には見えませんでした。

そこで「介護施設の全員が楽しめる方法を見つけたい」と考えた栗原は、スタッフも含めて、誰もが楽しく幸せに踊れるフラダンスが適しているのではと思いつきます。さらに、元々フラダンスは感謝の気持ちを伝える踊りであることを知り、「全員で感謝の気持ちを込めながら楽しく踊りたい」「介護が必要な人でも取り組める踊りを広めていきたい」との考えから、当法人を作りました。

当法人は2016年の12月から活動を始め、介護施設への訪問は1,000回を超えています。またイベントへの参加も積極的に行っており、健康フラ・介護フラの累計参加者は2万人から3万人程度にもなりました。さらに新型コロナウイルスの流行によりオンラインでの開催もスタートしたので、20施設同時開催などもできるようになり、コロナ禍でより多くの施設に広まっています。お陰様で、2018年にはグッドデザイン賞を受賞することもできました。今後も多くの方に、健康フラ・介護フラの魅力を感じていただきたいと考えています。

2.振り付けの担当者と考え方

――フラの振り付けはどなたが考えているのですか。

振り付けは私、指田が考えています。最初の頃はフラダンスの先生に振り付けを考えてもらっていたのですが、高齢者の方々が取り組むには少し難しいところがあったので、途中から私が考えることになりました。振り付けを担当していると聞くと、指田はフラダンスに詳しい人なのだなと思われるかもしれませんが、実をいえば、この活動を始めるまでフラダンスをやったことはありませんでした。

そのため、フラダンスの先生に色々なことを教えてもらいながら、それぞれの曲に合った動きを考えています。「フラダンスに詳しくないことはマイナスでは?」とも思ったのですが、元々のフラダンスの動きを少し変えて、体操的な動きを取り入れやすい点については、プラスに働いているのではないかと思いますね。私が振り付けを考えた後は、それを整形外科医や心理学の研究者などに見てもらい、心身への効果についての意見を聞きながら振り付けを改良しています。

普段はあまりレクリエーションに参加しない方が積極的に踊ることも多い

普段はあまりレクリエーションに参加しない方が積極的に踊ることも多い

3.健康フラ・介護フラを指導する際の注意点

――介護施設で「健康フラ・介護フラ」を指導する際に気をつけていることを教えてください。

入居者さんや利用者さんの反応を見て、踊りや歌のスピードを変化させることです。介護施設を訪問した際には、いきなりフラを始めるのではなく、まずは簡単な準備体操をしています。準備体操はとても簡単なので、この体操ができているかどうかで、ある程度の判断ができるんです。

たとえば準備体操でグーとパーを繰り返す動きをしている時に、途中でいきなりチョキを入れてみるとします。すると変化に対応できている人と、できていない人の差が生じます。できていない人が多い場合は、「この施設はかなりスピードを落とした方が良さそうだな」などの判断をしていますね。健康フラ・介護フラを踊る際は、基本的には私の歌に合わせて踊っていただくので、状況に応じて歌声を大きくしたり、ゆっくり歌ったりするように心がけています。

4.参加者が気をつけたいポイント

――「健康フラ・介護フラ」に取り組むにあたり、参加者が気をつけたいポイントはありますか。

参加者の皆さんには、いつも「間違えても良いので大きく踊りましょう」とお伝えしています。大きく身体を動かすと、様々な筋肉を使うことになるので、その分リハビリ効果も高くなります。間違えることはマイナスではないので、気にせず楽しく踊って欲しいですね。

また可能な範囲で参加することも、重要なポイントだと思います。たとえば片手が痛い、腕が途中までしか上がらないなどの場合は、できる範囲で真似をしてみて欲しいですね。それも難しい場合は、音楽に合わせて身体を揺らすだけでも大丈夫です。特に介護施設の場合は、スタッフさんが楽しそうに踊っていると、前向きに参加される入居者さんや利用者さんが多いと感じています。できれば、スタッフさんも含めて全員で取り組んで欲しいですね。

5.参加者からの反応

――介護施設の入居者さんや、利用者さんからの反応はいかがでしょうか。

過去にアンケートを実施し、1,000件以上の様々なご感想をいただきました。中でも印象に残っているのは、参加者さんからのお喜びの声です。100歳近い方から「最後にこれを踊れてよかったよ」や、「天に昇る気持ちでした」とコメントをいただいたこともあります。また施設のスタッフさんからは、「普段レクリエーションに参加しない方が、とても楽しそうに踊っていて驚きました」などのお言葉をいただくこともあり、フラダンスによって多くの方が幸せな気持ちになっているのは、とても嬉しいと感じています。

施設を訪れると、最初はあまり乗り気ではなかった方が、なんだか楽しそうだからと参加してくださることもあります。フラダンスを踊っていると50分があっと言う間に経ち、入居者さんや利用者さんの「まだやりたい」との声に、追加でもう一曲踊ることもあるんです。これからも様々な施設を訪れて、多くの方に健康フラ・介護フラの魅力を広めたいです。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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