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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2023/09/19

機能訓練指導員とは?資格ごとの仕事内容からやりがいまで

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

「機能訓練指導員」は介護保険法によって定められているリハビリ分野の職種です。介護施設の求人情報でその名称を知ったり、自身が働く施設で機能訓練指導員の仕事について見聞きしたりして、どのような職種か気になっている方もいるのではないでしょうか。

当記事では、機能訓練指導員の概要や主な勤務先、配置基準に加え、保有資格ごとの仕事内容と役割についても解説します。介護職として働いている方、機能訓練指導員に関心のある方は、ぜひご一読ください。

1.機能訓練指導員とは?活躍できる職場と配置基準も紹介

機能訓練指導員とは、利用者さんの自立した生活を支援するため、一人ひとりの身体機能に合わせたリハビリ計画の立案・指導を行う職種です。ただし、機能訓練指導員は介護保険法によって定められた「職種」のことであり、機能訓練指導員という資格があるわけではありません。

機能訓練指導員の業務内容は、日常生活動作の訓練や福祉用具の選定、趣味活動の提供など多岐にわたります。

なお、機能訓練指導員の主な勤務先は、以下の通りです。

● デイサービス
● 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
● 介護老人保健施設
● 有料老人ホーム
● 病院併設型リハビリ施設

通所介護事業所や短期入所生活介護事業所、介護老人福祉施設、介護老人保健施設などでは、機能訓練指導員を1施設あたり1名以上は配置しなければならないという人員配置基準が定められています。

(出典:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第153回(H29.11.29) 資料5,介護人材関係について」
(出典:厚生労働省「介護人材関係について」

また、2021年の介護報酬改定によって通所介護の個別機能訓練加算が見直され、「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ」「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」の大きく2種類に分類されました。単位数の多い「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」では、1名以上の専従機能訓練指導員をサービス提供時間帯に配置する必要があります。

(出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

2.機能訓練指導員になるには?資格ごとの業務内容!

機能訓練指導員として働くには、以下のいずれかの国家資格を保有していることが要件となります。

● 看護師または准看護師
● 理学療法士
● 言語聴覚士
● 作業療法士
● 柔道整復師
● あん摩マッサージ指圧師
● 鍼灸師

機能訓練指導員としての役割は、保有する資格の種類によって異なります。ここでは、それぞれの資格ごとに具体的な業務内容や役割を紹介します。

看護師または准看護師

日常生活動作を維持・向上させるための運動指導に加え、看護師としての医療知識を生かした体調チェックや健康管理、病気・けがの処置などを行います。

通所介護事業所においては、機能訓練指導員と看護師を兼任するケースも見られます。ただし、看護師はリハビリ専門職ではないため、リハビリテーション業務全般の知識や実践スキルは、機能訓練指導員として働くなかで身に付けることが多いようです。

理学療法士

運動療法や物理療法などのリハビリテーション技術を用いて、日常生活動作の機能改善・悪化の予防を目指した機能訓練を行います。

理学療法士が行うリハビリテーションは、医師の指示に基づいた治療法の1つです。一方で、機能訓練は日常生活動作のサポートが目的であり、医師の指示なく行えるという違いがあります。理学療法士が行うリハビリテーションと機能訓練では性質が異なるものの、業務内容は非常に似ています。したがって、理学療法士資格を持つ機能訓練指導員は、自身のスキルを発揮しやすいでしょう。

作業療法士

立つ、歩くといった基本動作に加え、作業療法士の専門分野である食事、入浴、掃除などの応用動作についてのリハビリテーションを行います。

作業療法士は創作やレクリエーションを取り入れたリハビリテーションを得意としており、身体のケアと同時に心理的なケアもできるのが強みです。そのため、機能訓練指導員として日常生活動作の維持・向上をサポートしながら、利用者さんの精神面にもアプローチすることが可能です。

言語聴覚士

言語障害や高次脳機能障害などに関する機能回復訓練の他、口腔ケア、誤嚥予防などを目的としたリハビリテーション指導も行います。

高齢者の体力維持において、食事は非常に重要です。言語聴覚士資格を有する機能訓練指導員は、口腔機能の回復を通して、高齢者の「食べる力」を維持するためのサポートが可能です。

柔道整復師

骨折やねんざ、打撲といった身体の損傷に対して整復・固定等の手技を施し、機能回復や痛みの緩和を目指したケアを行います。

接骨院や整骨院では高齢者のケアをする機会も多いため、柔道整復師としての実務経験がある場合は、介護施設でも即戦力として重宝されるでしょう。

あん摩マッサージ指圧師

指圧療法やマッサージを行うことで、日常生活やトレーニングにともなう疲れや肩こり、腰痛、筋肉の張りなどの身体的不調をケアします。一人ひとりの症状に合わせた施術を実施する他、問診や検査を通して運動機能回復の指導・アドバイスを行うのも役割の1つです。

介護業務やリハビリ業務の知識・スキルについては、実務を通して身に付けるケースが多く見られます。

鍼灸師

機能訓練指導員の人手不足から資格要件が緩和され、2018年の介護保険法改正からは、鍼灸師も機能訓練指導員として活躍できるようになりました。

鍼灸師の資格を有する機能訓練指導員の役割は、身体の痛みを取りのぞく知識・技術を生かしながら、身体機能の改善を目指した機能訓練を行うことです。

なお、鍼灸師が機能訓練指導員として働くための条件として、「鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍する施設・事業所にて6カ月以上の実務経験を積むこと」が定められています。

(出典:公益社団法人 日本鍼灸師会「機能訓練指導員「実務経験証明書」について」

3.機能訓練指導員の魅力・やりがいとは?

機能訓練指導員として働く魅力・やりがいは、以下の通りです。

・利用者さんを長期にわたってサポートできる
介護サービスは長期間継続して利用されることが多いため、1人の利用者さんを長いスパンでサポートすることが可能です。

「着替えができるようになる」「1人で買い物に行けるようになる」など、機能訓練を通して達成したい目標は利用者さんによって異なります。リハビリ計画の立案・指導を続けるなかで、少しずつ回復する姿が見られた時や、目標を達成できた時には、成果が実った喜びを感じられるでしょう。


・自身の知識やスキルを存分に生かせる
機能訓練指導員が行うリハビリテーションは、医師の指導を必要としないため、訓練内容の計画から実施までを1人で担うケースも少なくありません。自由度が高い分、責任は大きくなりますが、これまでの知識・スキルを存分に生かし、やりがいを感じながら働けるでしょう。


・需要が高く安定した収入を得られる
介護サービスを提供している事業者には、社会福祉法人や医療法人、大手企業などが多いため、個人経営のクリニック、接骨院などに比べて安定した収入を得られる傾向にあります。また、高齢化に伴って、介護福祉施設における機能訓練指導員の需要はますます高まると言われており、今後さらに求人が増加すると予想されます。


4.機能訓練指導員は総合的なスキルアップを目指したい方におすすめ!

機能訓練指導員になるには、看護師や理学療法士、作業療法士など、医療専門職種の資格が必要ですが、機能訓練指導員として働くことで、自身の持つ資格のスキルだけでなく、機能訓練に関する専門知識や実践力も身に付きます。そのため、医療・介護についての総合的なスキルアップが実現できるでしょう。

また、2021年9月に行われた厚生労働省の調査によると、機能訓練指導員の平均給与額は351,110円となっています。介護スタッフは給与が安いと言われることが多いなかで、機能訓練指導員は比較的高水準な収入が期待できるでしょう。

(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」

まとめ

機能訓練指導員は、利用者さんの自立した生活を支援するため、一人ひとりの身体機能に合わせたリハビリ計画の立案・指導を行う職種です。機能訓練指導員として活動するには、看護師や理学療法士、作業療法士などの国家資格が必要となります。

また、機能訓練指導員は、保有する資格の種類によって役割が異なります。自身の持つ資格の能力を生かしながら、機能訓練に関する知識・実践力を磨くことで、医療・介護の総合的なスキルアップが実現できるでしょう。

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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

機能訓練指導員は、介護保険法で定められた職種で、看護師(または准看護士)、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師(機能訓練指導員を配置した事業所で6ヶ月以上勤務)の資格を有している人が、生活機能の維持向上、QOL(生活の質)の向上を目指します。
機能訓練指導員が行う生活機能の維持向上、QOLの向上を目指した機能訓練は、医師の管理下で行われるリハビリテーションとは異なりますので、利用者さんやご家族の意向、多職種の意見なども取り入れながら、利用者の心身の状況に合わせた個別機能訓練計画書を作成し、適切な機能訓練サービスを提供します。個別機能訓練計画書は、利用者さん一人ひとりに適した目標と機能訓練を計画するために、利用者さんの心身の状況やニーズの把握が非常に重要となります。
機能訓練指導員は、介護保険法で定められた事業所や施設には配置しなければならない職種ですが、まだまだ人手不足といわれています。機能訓練指導員は定められた資格を取得している必要があるため、資格をお持ちでない場合は、資格取得までは長い道のりになる可能性がありますが、資格を活かした活躍が期待できる機能訓練指導員に関心がある方は、これから目指してみるのもいいと思います。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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