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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2023/09/27

#心理学ベースのコミュニケーション術

コミュニケーション力を高める方法を知っていますか?|介護現場で使える心理学ベースのコミュニケーション術(1)

文/大谷佳子 thumbnail.jpg

介護職にとって、コミュニケーションは利用者さんとの関係を築くための大切な手段です。
「だからこそ、コミュニケーション力をもっと高めたい!」と思っている介護職の皆さんに、この連載では介護の現場ですぐに実践できるコミュニケーション・スキルをご紹介します。

初回は、ちょっと心がけるだけで、会話でのコミュニケーション力をぐんとアップさせる方法についてです。

1.「話す」と「聴く」のバランス

会話は、双方向のコミュニケーションです。

講演会などでは話し手(話をする側)と聴き手(話を聴く側)が固定されていますが、会話では話し手・聴き手という役割が決まっているわけではありません。相手が話し手になれば自分が聴き手になり、自分が話し手になれば相手が聴き手となって、言葉をやりとりします。

そこで大切になるのが、自分が話し手になる時間と聴き手になる時間のバランスです。「話す」と「聴く」の割合は、必ずしも5:5が理想とは限りません。ベストバランスは会話の目的や相手の特性、状況によって変わりますが、日常の会話では、「話す」3割、「聴く」7割を目安にするとよいでしょう。

つまり、自分が話し手になる時間より、聴き手になる時間を増やすと、会話でのコミュニケーション力がアップします。

2.会話で聴き手になる3つのメリット

聴き手になる割合を増やすことで、どうしてコミュニケーション力が高まるのでしょうか。その理由は、介護職が聴き手になることで得られる3つのメリットにあります。

会話で聴き手になる3つのメリット

1:相手を知る機会になる
2:相手に満足してもらえる
3:相手に良い印象を与える

メリット1:利用者さんを知る機会になる

会話で聴き手になると、利用者さんの話にしっかりと耳を傾けることができます。人柄やその人らしさなど、記録や書類を読むだけではわからなかった情報が得られることもあるでしょう。利用者さんがどのような人なのかが理解できると、より適切な対応が可能になり、コミュニケーションの質を高めることができます。

メリット2:利用者さんに満足してもらえる

話を聴こうとする介護職の姿勢から、利用者さんは自分が尊重されていることを感じ取ります。熱心に耳を傾ける介護職には、利用者さんも心を開いて、話したいと思っていることを安心して語ることができるでしょう。このような会話ができれば、短時間であっても、利用者さんの満足度は高くなります。

メリット3:利用者さんに良い印象を与える

利用者さんは、自分の話を親身に聴いてくれる介護職に好意と信頼を感じます。それは、聴くという行為が、利用者さんときちんと向き合い、その人を理解しようとすることにつながるからです。聴き手になることで、利用者さんに良い印象を与えることができると、利用者さんとの関係も良好になるでしょう。

介護職が聴き手になることで、以上のようなメリットが得られます。 ただし、会話の中で黙っている時間を多くするだけでは、聴く割合を増やしたことにはなりません。単なる聞き役から聴き上手へとスキルアップするためには、「聴き方のか・き・く・け・こ」を参考にしてみましょう。

3.「聴き方のか・き・く・け・こ」

「聴き方のか・き・く・け・こ」とは、聴き上手になるために欠かせない5つの要素のことです。

聴き方のか・き・く・け・こ

か(環境を整える)............ 話しやすい雰囲気をつくる
き(共感する).................. 相手の気持ちに理解を示す
く(繰り返す).................. 繰り返しなどの応答をする
け(結論を急がない)......... 介護職のペースで進めない
こ(肯定する).................. 肯定的な関心をもって聴く

か:環境を整える

利用者さんが話しやすいと感じる雰囲気をつくりましょう。
介護職の表情や振る舞いは、その場の雰囲気を作り出す重要な要素です。笑顔や穏やかな表情を絶やさずに、相手のほうに顔と体を向けて聴くことを心がけましょう

同時に、心地よく会話ができる環境にも配慮が必要です。暑すぎる場所や寒すぎる場所、騒音がうるさい場所では、利用者さんは話しにくさを感じてしまい会話が弾みません。快適な温度・湿度になるように空調を調節して、お互いの声が無理なく届く距離で話を聴きましょう。

き:共感する

利用者さんの気持ちに理解を示しながら聴きましょう。
話には「内容」と「感情」の2つの構成要素があります。「内容」とは相手の発言内容そのもののことであり、「感情」とは話の内容に伴うその人の気持ちや思いのことです。

話の内容だけでなく、その人の感情にも理解を示しながら聴くと、利用者さんは「親身になって聴いてくれた」と感じることができます。

<話の構成要素>

「内容」 相手の発言内容そのもののこと
「感情」 話の内容に伴うその人の気持ちや思いのこと

く:繰り返す

ただ黙って聞き役になるのではなく、適切に応答しながら聴きましょう。
利用者さんの目を見て、うなずきながら話を聴くことが基本です。介護職が大きくうなずくことで、利用者さんは「ちゃんと聴いてくれている」と感じ、安心して話を続けることができます。

うなずきを基本にして、ときどき「なるほど」「そうですね」というあいづちを入れたり、利用者さんの言葉を「〇〇なのですね」と短く繰り返したりするのも効果的です。

け:結論を急がない

利用者さんの話を、介護職のペースで先に進めないように留意しましょう。
介護職が「それで、それで?」「だから何?」などと結論を急ぐ聴き方をすると、利用者さんは焦ってしまい、気持ちよく話をすることができません。

できるだけ相手のペースで話をしてもらい、聴き手はそのペースに合わせてうなずいたり、応答したりしながら聴くことが大切です。

こ:肯定する

利用者さんに肯定的な関心をもって話を聴きましょう。
その人に関心をもつと、相手のことをもっと知りたいという気持ちが生まれます。自然と、その人の言葉に耳を傾けたくなり、その人の表情や行動にも注目するようになって、ちょっとした変化や相手が望んでいることにも気づくことができるようになるでしょう。

相手に関心をもつことが、聴き上手になる第一歩です。

まとめ

●日常の会話では、「話す」3:「聴く」7の割合を心がけましょう。
●介護職が聴き手になることで、利用者さんを知る機会になる、利用者さんに満足してもらえる、利用者さんに良い印象を与える、というメリットがあります。
●「聴き方のか・き・く・け・こ」を実践して、聴き上手な介護職を目指しましょう。

参考文献
『対人援助の現場で使える 傾聴する・受けとめる技術便利帖』大谷佳子著(翔泳社)

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大谷佳子(Yoshiko Ohya)

Eastern Illinois University、Honors Program心理学科卒業、Columbia University、 Teachers College教育心理学修士課程修了。昭和大学保健医療学部講師などを経て、2023年4月よりNHK学園社会福祉士養成課程講師。

大谷佳子の執筆・監修記事

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