会話を感じよく終わらせていますか?|人間関係をガラリと変えるコミュニケーション技術(10)
文/大谷佳子よいコミュニケーションは、気持ちのいい挨拶から始まります。だからこそ、「利用者さんと会話を始めるときは、いつも笑顔で挨拶することを心がけている」という介護職も多いでしょう。
では、会話を終わらせるときは、どうでしょうか? 「では、また」と一言だけ伝えて、その場をそそくさと去ったり、慌ただしく会話を切り上げたりしていませんか?
会話を始めるときだけでなく、終わらせるときも気持ちのいい挨拶を心がけると、コミュニケーション力がさらにレベルアップします。
連載の最終回は、会話を感じよく終わらせる方法についてです。
1.終わりよければすべてよし
挨拶は、コミュニケーションの基本です。
気持ちのいい挨拶とともに、「昨晩はよく眠れましたか?」などと利用者さんを気遣う質問や言葉があると、その後のコミュニケーションも円滑になります。その一方で、挨拶もそこそこに本題に入ろうとすると、利用者さんは少し不快な気持ちになり、その後の会話にもマイナスな影響を与えかねません。
挨拶が大事なのは、会話を始めるときだけでなく、会話を終わらせるときも同じです。
素っ気ない終わらせ方をすると、それまで楽しく会話をしていたとしても、冷たい印象が利用者さんに残ってしまうでしょう。"終わりよければすべてよし"ということわざのとおり、最後に好印象を残すことができると、短い時間であっても、利用者さんにとって満足度の高い会話になります。
2.会話を終わらせるときの3ステップ
会話を終えるときは、要約、共感、ポジティブな言葉の3ステップを意識しましょう。
話の内容によっては、ステップ1の要約だけで十分な場合もありますが、ステップ2で共感を示したり、ステップ3でポジティブな言葉を添えたりすると、利用者さんの会話への満足度をさらに高めることができます。
ステップ1:要約
利用者さんの話を、うなずいたり、あいづちを打ったりしながら聴きます。そして、話の区切りのよいところで、「~ということがあったのですね」と利用者さんがもっとも言いたかったポイントを整理して伝えます。
「そうですか」とあいづちを打つだけでなく、話の内容を言葉にして確認することで、利用者さんは「言いたかったことがちゃんと伝わった」と安心することができます。
ステップ2:共感
ステップ1で要約したら、次に共感を示して利用者さんの気持ちに寄り添います。例えば、「それは、嬉しい出来事でしたね」「そんなことがあったらびっくりしますよね」などと、利用者さんの気持ちに理解を示します。
このときに、「お気持ち、わかります」の一言だけでは、利用者さんは「何をどのようにわかったのだろう」と介護職に不信感を抱くかもしれません。共感を示すときは、利用者さんの気持ちをどのように理解したのかを、きちんと言語化して伝えることが重要です。
ステップ3:ポジティブな言葉
最後に、ポジティブな言葉で会話を締めくくります。代表的なのは、「お話しくださって、ありがとうございました」という感謝の言葉ですが、「素敵なお話を聴かせていただいて、私も嬉しくなりました」というポジティブな感想を伝えるのもよいでしょう。
この一言が会話の余韻となって、利用者さんの心に残ります。会話の最後に好印象を残すことができると、会話への満足度が高まるだけでなく、介護職への好感度も増して、より良い関係を築くことができるでしょう。
<ポジティブな言葉の例>
「お話しくださって、ありがとうございました」
「素敵なお話を聴かせていただいて、私も嬉しくなりました」
「〇〇さんとお話ができて、楽しかったです」
「またお孫さんのお話を聴かせてくださいね」
「〇〇さんのお話、とても参考になりました」
3.上手に話を切り上げる方法
会話を終わらせるときの3ステップを実践しても、利用者さんの話が続いてしまうこともあります。次の業務や予定の時間が気になって、つい時計をチラチラ見たり、ソワソワしたりしがちですが、このような態度は利用者さんに誤解を与えてしまうことがあります。
介護職の「そろそろ終了したい」という態度を見て、利用者さんは、「私の話を聴きたくないのかな」「私の話がつまらないのかな」などと勘違いしてしまうかもしれません。その結果、利用者さんが悲しい気持ちになったり、嫌な思いをしたりしていることもあるので注意しましょう。
ここでは、上手に話を切り上げる方法を3つ紹介します。
自分の予定を残念そうに伝える
次の予定を残念そうに伝えて、会話を終わらせます。
このとき、上手に伝えるポイントが2つあります。1つは、「すみません」「もっと聴きたいのですが」などのクッション言葉を入れること、もう1つはなるべく具体的に予定を伝えることです。
「あの、ちょっと時間がないので」のような曖昧な言い方や、「そろそろ会議が始まるので、もういいですか」のような事務的な言い方はNGです。
<Goodな例>
「もっとお話を聴きたいのですが、○時から会議があるんです」
「すみません。そろそろ○○の時間なので行ってきますね」
続きを聴きたい気持ちを伝える
話の途中で切り上げるときは、続きを聴きたい気持ちを伝えます。
<Goodな例>
「このお話の続きは、今度また聴かせてください」
「続きが気になるので、また来ますね」
相手を気遣う言葉をかける
話が途切れるタイミングを待って、「喉、乾きませんか? お茶をお持ちしましょう」という利用者さんを気遣う言葉や、「今日は午後に○○の予定がありましたよね。そろそろ準備を始めましょうか」と利用者さんの都合を気にかけている言葉を伝えます。
このとき、利用者さんが「大丈夫」と言っても、「気が利かなくて、すみません」などと伝えてすぐに席を立ちましょう。
<Goodな例>
「たくさんお話されたので、お疲れではないですか?」
「喉、乾きませんか? お茶をお持ちしましょう」
「今日は午後に○○の予定がありましたよね。そろそろ準備を始めましょうか」
まとめ
●"終わりよければすべてよし"ということわざのとおり、最後に好印象を残すことができると、短い時間であっても、利用者さんにとって満足度の高い会話になります。
●会話を終えるときは、要約、共感、ポジティブな言葉の3ステップを意識しましょう。
●会話を終わらせるときの3ステップを実践しても、利用者さんの話が終わらないときは、話を上手に切り上げることも必要です。
●自分の予定を残念そうに伝える、続きを聴きたい気持ちを伝える、相手を気遣う言葉をかけるなどを試してみましょう。時計をチラ見するなど「そろそろ終了したい」という合図を送って、話を切り上げようとするのはNGです。
参考文献
『対人援助の現場で使える 聴く・伝える・共感する技術便利帖』大谷佳子(翔泳社)
『マンガとイラストでユル~く学ぶ介護 利用者・家族の心をひらく「聴き方」「声かけ」のコツ』大谷佳子、大塚紗瑛(中央法規出版)
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