どんな言葉で利用者さんを励ましていますか?|人間関係をガラリと変えるコミュニケーション技術(8)
文/大谷佳子
励ましの言葉には、利用者さんを前向きにする力があります。
介護職から励まされると、利用者さんは嬉しくなり、モチベーションが高まります。それは、自分を応援してくれる人の存在に、安心や心強さを感じて、勇気づけられるからです。
その一方で、利用者さんを励ますつもりで言った言葉が、知らず知らずのうちに、利用者さんのプレッシャーやストレスになっていることもあります。
今回は、利用者さんをエンパワメントする効果的な声かけについてです。
1.励ますときに注意したい言葉
利用者さんを励ますとき、どのような声かけをしていますか?
つい言ってしまいがちな言葉のなかには、利用者さんにとってプレッシャーやストレスになるものもあります。
利用者さんを励ますときに注意したい言葉として、次のようなものがあります。
励ますときに注意したい言葉
●「がんばって」「がんばってください」
●「もっとがんばらないと、××になりますよ」
●「みなさん、がんばっていますよ」
●「Aさんは、できるようになりましたよ」
●「それくらいのこと大丈夫ですよ」
「かんばって」「がんばってください」
「がんばって」や「がんばってください」は代表的な励ましの言葉ですが、この言葉がいつも利用者さんの意欲を高めるとは限りません。
介護職から「がんばって」と声をかけられると嬉しくなり、前向きな気持ちになる利用者さんもいます。その一方で、がんばる意欲が低下している利用者さんや、気持ちが落ち込んでいる利用者さんには、「がんばって」という言葉が励ましではなくプレッシャーになる可能性もあります。
「もっとがんばらないと、××になりますよ」
「もっとがんばらないと、××になりますよ」と最悪の事態をイメージさせるような言葉は、相手に与えるインパクトが強い分、利用者さんの反発を招きやすいので注意しましょう。
例えば、リハビリに消極的な利用者さんに対して、「もっとがんばらないと、寝たきりになりますよ」などと声をかけると、利用者さんは励まされたというより、脅されたと感じてしまうかもしれません。
「みなさん、がんばっていますよ」
「みなさん、がんばっていますよ」という言葉には、「他の人はがんばっているのに、あなたはがんばっていない」というメッセージが隠れています。
同じような状態であっても、利用者さんは1人ひとり異なる存在です。利用者さんを個別化して、その人自身のペースでがんばれるように励ますことが大切であり、他の人を引き合いに出して励ましても、利用者さんは前向きな気持ちにはなれないでしょう。「あなたよりもっと大変な人もがんばっていますよ」などと励ますこともNGです。
「Aさんは、できるようになりましたよ」
「Aさんは、できるようになりましたよ」のように、特定の利用者さんと比較するような言葉は利用者さんの自尊心を傷つけてしまいます。
ライバル意識を刺激することで、利用者さんの意欲を高めようとする意図が介護職にあったとしても、誰かの名前を出して比較するような発言は逆効果になることが多いので注意しましょう。
「それくらいのこと大丈夫ですよ」
「それくらいのこと大丈夫ですよ」の"それくらいのこと"という表現には要注意です。介護職にとっては"それくらいのこと"でも、利用者さんにとっては大きな負担を感じることかもしれません。
介護職から"それくらいのこと"などと安易に言われると、利用者さんは励まされるどころか、私の大変さをわかってくれないと感じて、悲しい気持ちになるでしょう。
2.利用者さんをエンパワメントする言葉
利用者さんを励ますときは、その人をエンパワメントする言葉を心がけましょう。
エンパワメントという言葉には、その人自らの力を取り戻すという意味があります。介護の現場でのエンパワメントとは、利用者さんが本来持っている力を引き出して、前向きな気持ちになってもらえるように支援することといえるでしょう。
利用者さんをエンパワメントする言葉には次のようなものがあります。
利用者さんをエンパワメントする言葉
●「一緒にがんばりましょう」
●「〇〇さんを応援しています」
●「私たちがついていますよ」
「一緒にがんばりましょう」
「一緒にがんばりましょう」は、利用者さんに寄り添いながら励ますときに使いたい言葉です。「がんばりましょう」だけでなく、そこに一言"一緒に"を付けることで、利用者さんとともにがんばろうとする介護職の気持ちが伝わります。自分には味方がいるという心強さが、利用者さんの気持ちを前向きにするのです。
利用者さんに限らず、同僚や部下・後輩を励ますときにも、"一緒に"を付けた言葉を使ってみましょう。例えば、「目標達成に向けて一緒にがんばろう」「よい方法を一緒に考えていきましょう」などの言葉には、仲間意識を高める効果(バディ効果)があります。「一緒にがんばろう」と声をかけ合うことで、職員間の関係も良好になることが期待できるでしょう。
「〇〇さんを応援しています」
「〇〇さんを応援しています」は、利用者さんを励ましたい、けれどプレッシャーをかけたくないときにおすすめの言葉です。誰かと比較したり、他の利用者さんと一般化したりせず、その人自身に向けた個別の応援メッセージであれば、利用者さんを唯一無二の存在として尊重していることが伝わるでしょう。
「私たちがついていますよ」
「私たちがついていますよ」は、利用者さんに安心してチャレンジしてもらいたいときに適した言葉です。何かにチャレンジしようとするときは、自分にできるだろうかと不安な気持ちになりがちです。そのような不安を和らげることが、利用者さんを温かく励ますことにつながります。
3.励ますときの3つのポイント
利用者さんを励ますときは、次の3つのポイントを心がけましょう。
ポイント1:肯定的な表現を心がける
介護職は励ましているつもりでも、「寝たきりになりますよ」「そのうち動けなくなりますよ」などと否定的な意味合いを含んだ言葉を使うと、利用者さんは脅されているような気持ちになります。肯定的な表現を心がけて、利用者さんにとって良いことや嬉しいことがイメージできるように声をかけましょう。
例えば、「もっとがんばらないと、寝たきりになりますよ」と言う代わりに、「また旅行に行けるように、一緒にがんばりましょう」と伝えるほうが、利用者さんは前向きな気持ちになれるはずです。
ポイント2:がんばることを押しつけない
がんばることを一方的に求めると、利用者さんが孤独感を覚えたり、ストレスを感じたりすることもあります。
「がんばって」とエールを送ったら、「私たちがついているから大丈夫ですよ」という一言をプラスしたり、「私も一生懸命がんばります」と自分の気持ちを伝えたりすると、利用者さんの心に届く励ましの言葉になるでしょう。
ポイント3:共感的に励ます
努力してもなかなか上手くいかない場合には、「がんばって」と励ますより、利用者さんの努力を肯定的に認める言葉をかけましょう。自分を認めてくれる人の存在は、利用者さんの気持ちを前向きにします。
例えば、「よくがんばっていて、○○さんはすごいなあって思っています」「○○さんが努力されていること、ちゃんとわかっていますよ」などと、共感的に励ますことが大切です。
まとめ
●介護職は励ましているつもりでも、利用者さんにプレッシャーをかけたり、利用者さんを脅すような表現をしたり、誰かと比較したりするような言葉は逆効果です。
●「一緒にがんばりましょう」「〇〇さんを応援しています」「私たちがついていますよ」など、利用者さんをエンパワメントする言葉で励ますことを心がけましょう。
●上手に励ますためには、肯定的な表現を心がけて、がんばることを押しつけないことがポイントです。上手くいかないときでも、利用者さんの努力を肯定的に認めて、共感的に励ます言葉をかけましょう。
参考文献
『対人援助の現場で使える 傾聴する・受けとめる技術便利帖』大谷佳子(翔泳社)
『マンガとイラストでユル~く学ぶ介護 利用者・家族の心をひらく「聴き方」「声かけ」のコツ』大谷佳子、大塚紗瑛(中央法規出版)
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