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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/05/13

#介護施設#介護経営#認知症#認認介護

老老介護・認認介護 和田忠志 いらはら診療所在宅医療部長

介護のみらいラボ編集部コメント

日本への超高齢化社会(65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている社会)の到来により、今や「老老介護」や「認認介護」の世帯も珍しくはありません。
それらの世帯は介護力の点で困難は多いものの、独居世帯よりは有利であると、和田忠志いらはら診療所在宅医療部長が解説しています。
互いが助け合って介護できる点、介護保険のサービスなど、2人分を合わせるとかなりの量のサービスを世帯に導入できるなど具体的なメリットがありますが、危険回避などの注意点として、一日一回は外部の目を入れたほうがいいなど具体的なアドバイスが語られています。

老老介護・認認介護世帯は介護力に恵まれない点で困難が多いが,独居世帯よりは有利である。互いが助け合って介護できるからである。介護保険のサービスなどは,2人分を合わせるとかなりの量のサービスを世帯に導入できる。

長期生存する高齢者が多くなり,夫婦2人が生存し,日常生活活動(ADL)が低下しても,ともに生活する例が多い。このほか高齢者のみの世帯には,きょうだいが暮らす例,超高齢の親と70歳代などの子どもが同居する例などがある。いずれの場合も,老老介護・認認介護世帯は,圧倒的多数が2人世帯である。そこで本稿では2人世帯を想定して記載する。

医療者としての対応

【病状の安定化】

医療従事者に課せられた最大の役割は,「病状を安定的に保つこと」である。病状が不安定では,自宅生活維持が困難になっていく。医師の診療や訪問看護は,比較的頻度高く行い,急性増悪を予見して回避し,対症療法も積極的に行い,病状を安定的に維持することが望ましい。

【服薬管理】

多くの例で正確な服薬が困難で,訪問薬剤指導(医療保険では訪問薬剤管理指導,介護保険では薬剤師による居宅療養管理指導)導入が望ましい。訪問薬剤師には,服薬カレンダーなどの「服薬を円滑にするツール」等を考案してもらうとよい。

【医療処置】

老老介護・認認介護世帯では家族が医療処置を行うことが難しい場合がある。たとえば,褥瘡処置,インスリン注射などである。訪問看護を頻回に導入するのは良い方法である。下記のように世帯当たりのサービス量を潤沢にでき,訪問看護を頻回に行えることも多い。

社会資源の活用

【潤沢な給付額を利用する】

医療保険による在宅医療等,介護保険制度,障害福祉制度,年金保険制度,生活保護制度を基本とし,認知症の場合には成年後見制度を必要に応じて利用する。事例によっては,長期生活支援資金貸付制度などを組み合わせる。

老老介護・認認介護世帯支援で特筆すべきは,「介護保険や障害福祉制度は個人給付」であるため,2人合わせると世帯で多額の給付を得られることである。たとえば,夫婦ともに要介護4であれば,2人合わせて60万円を超える介護保険支給限度基準額を世帯内で使用できる。要介護4・5の場合,障害者自立支援法によるサービスも加えて受けられることもあり,使用可能なサービス量はさらに大きくなりうる。そして,パーキンソン病などの神経難病等がある場合,訪問看護や訪問リハビリテーションが医療保険で使用できるため,さらに利用サービス枠が大きくなりうる。重度の褥瘡などがある場合には,特別訪問看護指示書を発行すると,同様の効果が期待できる。

【自宅生活を充実させる】

デイサービスやショートステイを頻回に行うケアプランは自宅生活継続には有害なことが多い。利用してもよいが,それらがケアプランの主体になるべきではない。デイサービスやショートステイは「自宅外生活を充実させるケア」であり,自宅生活環境を改善せず,自宅生活支援を充実させず,また,家族介護者のスキルアップにもつながらない。自宅環境が向上し,自宅生活支援が手厚くなり,家族介護者がスキルアップすることが自宅生活継続につながる。ケアマネジャーには,自宅生活環境や自宅生活内容をアセスメントでき,その充実に注力できる人材を配置すべきである。

多職種連携のポイント

【療養環境整備】

訪問看護師やリハビリテーション専門職に関わってもらい,清潔の維持,ベッドの導入,屋内家具の配置,食事場所やトイレへの移動動線の適切な設定,医療器具の設置場所の考案などを行ってもらうことで,適切な療養環境を整備できる。

【危険回避】

老老介護・認認介護世帯は,リスク管理において,もう1人が見守りが可能な点において,独居より有利である。とはいえ,老老介護・認認介護世帯では,家族が同居家族の危機的状況を必ずしも適切に把握できるとは限らない。そのため,老老介護世帯には必ず,1日に1回程度は他者の目を入れる支援を行うことが望ましい。

また,医師は,在宅医療を受ける患者のみならず同居介護者の健康管理も行うことが望ましい。時には,レスパイト入所・入院などを使用して,家族が疲弊しない配慮も必要である。

【残存能力の活用】

老老介護・認認介護世帯では,どちらか一方でも,ある程度の残存能力があれば,曲がりなりにも家庭介護を続けられることが多い。たとえば,一方は身体機能が温存され,一方は認知機能が温存されていれば相補的に介護ができる。認知症のある家族は介護力がないと言われるが,「見守る」ことができる。筆者は「認知症の配偶者が在宅患者を看取った例」を複数経験している。認知症の人は時間の感覚が失われているため,うまずたゆまず配偶者に寄り添って居ることができる(not doing, but being)。認知能力の保たれた家族介護者は時間に追われて行うべき作業があるため,患者にずっと寄り添うことは簡単ではないが,認知症の配偶者はそれができるからである。

【福祉用具の活用】

老老介護世帯では体力に恵まれない者同士が介護を行うため,リフトなどを利用する価値が大きい。福祉用具を利用することで,家族介護者は「腕力がなくても介護が可能」なことを自覚でき,介護に自信を持つことができる。スライドシートやスライドボードよりもリフトのほうが操作を覚えやすいため,レンタル料金はやや高価であるが,潤沢な支給限度基準額を利用して導入したい。

和田忠志(いらはら診療所在宅医療部長)

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出典:Web医事新報

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