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仕事・スキル 介護士の常識 2022/05/31

居宅療養管理指導とは?利用方法や費用について解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 8.jpg

「要介護状態となったものの、寝たきりなため通院が困難」という場合には、基本的に在宅介護を行います。家族が介護者となることもありますが、多くのケースで在宅介護サービスが利用されます。

在宅介護サービスにはいくつかの種類があり、「居宅療養管理指導」は在宅介護サービスのうちのひとつです。

今回は、居宅療養管理指導の基礎知識(概要・専門職)から利用方法、さらに必要な費用まで詳しく解説します。家族の介護を初めて行う人はもちろん、正しい知識を身につけて介護スキルの向上を目指しましょう。

1.居宅療養管理指導とは

居宅療養管理指導とは、通院治療が困難な利用者に対して医師をはじめとした医療専門職が利用者宅に訪問し、心身状況・置かれている環境を把握したうえで療養上の指導および管理を行う介護保険サービスです。要介護状態となっても、可能な限り自宅で利用者の能力に応じて自立した日常生活を営めること・利用者の療養生活の質の向上を目的に提供されます。

居宅療養管理指導のサービス対象者は、介護保険制度において要介護1以上の認定を受けた人です。要支援認定を受けた人は居宅療養管理指導のサービスを受けることはできませんが、居宅療養管理指導に準じた「介護予防居宅療養管理指導」は受けられます。

また、居宅療養管理指導を実施できる事業所は、病院・診療所(歯科診療所含む)・薬局と定められており、それ以外の事業所では実施することができません。

(出典:厚生労働省「居宅療養管理指導」

居宅療養管理指導を行う4つの専門職

居宅療養管理指導として、利用者の自宅に訪問し何らかのサービスを行える専門職は、「医師・歯科医師」「薬剤師」「管理栄養士」「歯科衛生士」の4つと規定されています。

●医師・歯科医師
医師・歯科医師は、居宅療養管理指導として利用者の自宅に訪問し、利用者の身体状況・精神状況に変化や問題がないかをチェックします。そのうえで医学的管理および歯科医学的管理にもとづいた計画的・継続的な指導を行います。居宅療養管理指導を行う日は訪問診療および往診を行った日に限定されており、訪問回数も月2回までと定められています。

また、ケアマネジャーをはじめとした居宅介護支援事業者に対して、ケアプラン作成時に必要となる情報収集・情報提供をしたり、家族・介護者に対して適切な介護方法や居宅サービス利用時の留意点をアドバイスしたりすることも、医師・歯科医師の重要な仕事です。

●薬剤師
薬剤師は、医師および歯科医師の指導・指示にもとづいて服薬管理や服薬指導を行います。複数の医療機関から処方された内服薬の飲み間違いを防ぎ、正しく服用できることを目的に、内服薬の一包化や形状の変更などを実施することも重要です。

また、薬剤師も医師・歯科医師と同様にケアマネジャーをはじめとした居宅介護支援事業者に対してケアプランを作成するための必要な情報提供が必要となります。

●管理栄養士
管理栄養士は、医師の指導・指示にもとづいて、栄養管理に関する指導・助言や情報提供を行います。具体的な指導・助言には、摂食・嚥下機能にも配慮した食事計画の作成や相談対応が挙げられます。

ときには、介護者である家族に対しても負担の少ない市販品の紹介を行うこともあります。また、居宅療養管理指導において管理栄養士の指導時間は1回につき30分以上と定められていることも特徴です。

●歯科衛生士
歯科衛生士は、歯科医師の指導・指示にもとづいて歯磨きや入れ歯の清掃方法を指導したり、摂食・嚥下機能に関する指導を行います。口から食べる楽しみを支援するために、口腔機能の低下を防ぐ日常的な口腔ケアや、介護者も気軽に扱える口腔ケア用品を紹介することもあります。

また、2018年までは看護職員(看護師・保健師・助産師)も居宅療養管理指導を実施する職員と定められていました。しかし「平成30年度介護報酬改定」によって、看護師による居宅療養管理指導は廃止となります。2022年現在では、看護職員による居宅療養管理指導は行われず、主に上記4つの専門職から行われています。

(出典:厚生労働省「居宅療養管理指導」

2.居宅療養管理指導の利用方法

居宅療養管理指導を希望する利用者が、実際にサービス利用を始めるまでの基本的な流れは、下記の通りです。

STEP1 主治医や担当ケアマネジャーにサービス希望の旨を相談する
STEP2 ケアマネジャーが希望者の身体状況・心身状況・環境を把握する
STEP3 STEP2で確認した状況に応じて、ケアマネジャーが適切な介護支援事業所を探し手配する
STEP4 利用者が契約内容やサービス開始日を確認し、同意を経て決定する
STEP5 居宅療養管理指導サービスを開始する

居宅療養管理指導サービスの開始前は、必ず利用者がサービス内容を確認し、同意を得ます。ここで問題が起きてしまうと、場合によってはケアマネジャーがまた1から事業者を探す必要があるため、サービス開始時期が遅れてしまうかもしれません。スムーズに進めるためにも、利用者はあらかじめ事業者を選ぶポイントをおさえておきましょう。

事業所を選ぶポイント
●契約内容の説明時において、料金やトラブル発生時の対応、個人情報の取扱いに関する説明があったか
●利用者やその家族に対して丁寧な対応をしてくれていたか
●実際に利用している人からの口コミ・評価はよいか
●訪問時間をきちんと守れていたか

3.居宅療養管理指導の費用

居宅療養管理指導のサービス利用料は、「対象者の所得」によって負担割合が異なります。基本的に介護保険を利用すれば自己負担額は1割でサービス利用が可能です。しかし、65歳以上の高齢者でも、所得によっては自己負担額が2~3割となることに加えて、ケアマネジャーへの情報提供が必須条件となるので注意しましょう。

また、居宅療養管理指導をどの職種が行うか・対象者が何人で住んでいるかによっても1回における利用料が異なります。下記は、自己負担額1割の場合の実施職種別・単一建物居住者数別サービス利用料(目安)です。

実施職種 料金(単一建物居住者数別)
医師
(月2回まで)
在宅時医学総合管理料等を算定している場合 1人:514円
2~9人:486円
10人以上:445円
在宅時医学総合管理料等を算定していない場合 1人:298円
2~9人:286円
10人以上:259円
歯科医師
(月2回まで)
1人:516円
2~9人:486円
10人以上:440円
薬剤師 病院・診療所薬剤師の場合 1人:565円
2~9人:416円
10人以上:379円
薬局薬剤師の場合 1人:517円
2~9人:378円
10人以上:341円
管理栄養士 1人:544円
2~9人:486円
10人以上:443円
歯科衛生士 1人:361円
2~9人:325円
10人以上:294円

なお、上記の金額はあくまでも目安であり、実際の料金は住んでいる地域によっても細かく異なることに注意しましょう。

自己負担額は医療費控除の対象となる

前述の通り、居宅療養管理指導のサービスを受けるためには、利用料金として1~3割の自己負担額が必要です。しかし、自己負担分として支出した費用は、医療費控除の対象となります。

そもそも医療費控除とは、年間10万円以上の医療費に対して受けられる所得控除制度です。国税庁ホームページでは、居宅サービスのうち、医学的管理下における療養上の世話などに相当するサービスの対価として利用者が負担しなければならない金額は医療費控除の対象とされています。したがって、居宅療養管理指導のサービス利用に支払った自己負担額は医療費控除の対象となります。

医療費控除を受けるために、特別な申請は必要ありません。しかし、確定申告書に医療費控除の明細書を提出する必要があることや、領収書は自宅で5年間の保存が義務付けられていることにも注意が必要です。

(出典:国税庁「No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」
(出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

まとめ

居宅療養管理指導とは、通院治療が困難な利用者に対して医師をはじめとした4つの専門職が利用者宅に訪問し、心身状況・置かれている環境を把握したうえで療養上の指導および管理を行う介護サービスです。4つの専門職には、「医師・歯科医師」「薬剤師」「管理栄養士」「歯科衛生士」が挙げられます。

居宅療養管理指導の費用は、利用対象者の所得によって自己負担割合が異なり、実施する職種・利用者宅の居住人数によって具体的な費用も異なります。なお、自己負担分は医療費控除の対象となるので、明細書・領収書は必ず保管しておくようにしましょう。

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※当記事は2022年3月時点の情報をもとに作成しています

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