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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/06/21

#介護#介護施設

つき指[私の治療] 駒沢病院整形外科部長・副院長 吉川泰弘先生解説

介護のみらいラボ編集部コメント

「つき指」とは、指先にボールや物が当たり、指先を突いた形で受傷するけがの総称のことです。ボール遊びのイメージがありますが、つき指は老若男女に関係なくよくするケガのひとつです。
軽症の場合は打撲・捻挫ですが、重症の場合は骨折・脱臼・軟骨損傷や靱帯断裂・腱断裂まで含むため、比較的早期に正しい診断と適切な治療が必要となります。どのようにケガをしたのか状況を聞くことが大切です。
今回の【私の治療】では駒沢病院整形外科部長で副院長の吉川泰弘先生が、診断のポイントや治療方針を細かい事例に併せて解説します。

つき指とは,指先にボールや物が当たり,指先を突いた形で受傷したけがの総称である。軽症の場合は打撲・捻挫であるが,重症の場合は骨折・脱臼・軟骨損傷や靱帯断裂・腱断裂まで含むため,比較的早期に正しい診断と適切な治療が必要である。

▶診断のポイント

指の腫脹,疼痛,変形などの外傷症状から,指の外傷部位と損傷状態を診察する。どのようにけがをしたのか,受傷機転を詳細に聞いておくことも大切である。疼痛が少ないと軽症と判断され,骨折や腱断裂などが見逃されることもあるので,注意を要する。

【画像検査】
X線撮影は骨折の有無を確認するために必要な検査である。単純2方向撮影で行い,骨折の判断が困難な場合は両斜位方向撮影を追加する。小児の場合は骨端離開の形になることも多い。軟骨損傷が疑われる場合は超音波やMRIを行うこともある。

▶私の治療方針

応急処置としては一般的なRICE(安静・冷却・圧迫・挙上)を行う。指をアルフェンスシーネ(アルミ製副子)等で固定するが,変形や不安定性が著しい場合は隣接指とともに固定する。

保存療法:打撲,捻挫,腱断裂〔腱性槌指(mallet finger)〕の新鮮例(約3週以内),転位のない骨折,中等度までの靱帯断裂が適応となる。

手術療法:転位のある骨折,軟骨損傷,腱断裂(腱性槌指。後述)の陳旧例(約4週以降),不安定性が強い靱帯断裂が適応となる。

▶治療の実際

部位別に指尖部から順に記載する。

【末節骨】
頭部の骨折:保存療法が原則である。仮に骨癒合が得られず偽関節となっても問題になることはほとんどない。
頸部から基部の骨折:基本的に転位がない場合は保存療法であるが,骨癒合が遷延化することもあるので,4週以上の固定が必要である。転位が大きい場合や保存療法中に転位が増大した場合は手術療法となる。手術は鋼線固定やミニスクリュー固定を行う。

【DIP関節】
槌指とは,遠位指節間関節(DIP関節)で伸展機構が損傷されて伸びなくなった状態を言い,つき指外傷の大半を占める。終止腱のみの損傷である腱性槌指と,骨折を伴う損傷の骨性槌指に分類される。

〈腱性槌指〉
新鮮例ではアルフェンスあるいは専用の伸展型スプリントを装着する。DIP関節は伸展位で固定期間は6~8週として,その後2~3週間は夜間のみの装着とする。仕事などの理由で外固定が困難な場合,経皮的鋼線固定術により外固定を行わないという選択もある。陳旧例では腱断裂部が瘢痕化しているため,手術療法として腱断裂部を新鮮化してpull-out法で縫合し,DIP関節を伸展位で6週間鋼線固定する。

〈骨性槌指〉
骨片には終止腱が付着しているため,確実に骨癒合させる必要がある。石黒法1)が有効かつ簡便な方法として広く行われている。DIP関節背側に伸展ブロック鋼線を刺入し,DIP関節を伸展させて骨片に圧迫力をかけ,DIP関節を鋼線固定する方法である。背側鋼線を2本にして骨片の回旋を防止する方法も有効である。鋼線は4~5週で抜去する。DIP関節が掌側に亜脱臼している場合は,亜脱臼を確実に整復する必要がある。ただし,微小骨片が大きく離開した場合は腱性槌指として扱い,手術療法として骨片と終止腱をまとめてpull-out法で縫合固定する。

【中節骨】
転位がない場合は,保存療法としてアルフェンス固定を3週行う。転位が大きい場合や整復位保持が困難な場合は手術療法とし,経皮的鋼線固定やスクリューによる観血的固定を行う。

【PIP関節】
〈背側脱臼〉

見た目の変形が大きいが牽引を加えれば容易に整復され,基本的に保存療法を行う。通常は(橈側)側副靱帯損傷を伴っているので,整復後は隣接指とともに固定するのがよい。指はほぼ伸展位で1~2週の固定とし,その後は隣接指とのテーピング固定(buddy taping)を2~3週行い,隣接指とともに運動療法を行う。関節不安定性が強い場合は手術療法の適応となり,専用の骨アンカーで靱帯を縫着する。

〈中節骨基部掌側骨折〉
関節掌側を構成する掌側板の剝離骨折でもある。関節面の1/3以下で脱臼なく転位がほとんどないものは,手指伸展位のアルフェンス固定を2週行う。背側脱臼位となる場合は,屈曲させたアルフェンス固定で屈曲運動のみ3週行う保存療法とすることもあるが,不安定にはなりやすいので伸展ブロック鋼線を刺入することが多い。

〈脱臼骨折〉
中節骨関節面の陥没や粉砕,離開を伴うので,大部分が手術療法の適応となる。陥没骨折だけの場合は関節面を展開せず,X線透視下に中節骨側面からの経骨髄的整復後に,背側から数本の鋼線固定を行う。転位のある粉砕骨折では,関節面を展開して整復後に鋼線固定を行う。最近では術後の関節面の安定化と早期可動域訓練の目的で,指用創外固定を併用することも多い。

【基節骨骨折】
骨幹部骨折が多く,この部分では掌側凸変形を生じる。指を屈曲させて徒手整復し,MP関節を強めに屈曲させたまま全指背側シーネ固定(幅広のアルフェンスでも可)を3~4週行う。骨折の回旋転位を起こさないように爪の向きを正しい位置に合わせ,隣接指とbuddy tapingしておくとよい。必ずPIP関節は固定せず完全伸展,屈曲できるようにして早期可動域訓練を行う。

▶偶発症・合併症への対応

一般的に単独手指の固定はぶつけやすく転位しやすいので,末節骨より近位の外傷では隣接指とともに固定するのが安全である。また,PIP関節は拘縮を起こしやすいので,3週以上の固定は行わないようにする。

▶非典型例への対応

手指をよく観察し,わずかな変形や明らかな腫脹が続く場合は手外科専門医に相談し,陳旧化させないことが大切である。

【文献】
1) 石黒 隆, 他:日手外科会誌. 1988;5(3):444-7.
吉川泰弘(駒沢病院整形外科部長/副院長)

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出典:Web医事新報

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