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ニュース 介護業界ニュース 2021/05/20

#インタビュー#LIFE#厚生労働省

厚生労働省担当官に聞く(1)科学的介護情報システムLIFE「介護100年の計、その狙いとメリットは? 」

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介護のみらいラボ編集部コメント

感染者ゼロにはならないまま、長期化する "withコロナ"の時代。
「施設内に1~2人くらいは感染する方が出ても仕方ないという心構えでのぞんでほしい」 ―――大曲貴夫先生から第1回目にいただいたアドバイスです。どんなに感染対策にしっかり取り組んでいても、感染のリスクはゼロにはなりません。インタビュー最終回は「もしかしたらあのご利用者(職員)は新型コロナかも?」、そのとき介護職はどう対応すればよいのか、アドバイスをいただきました。

LIFEによる「標準介護」構想を語る田邉和孝地域情報分析支援専門官

解説/厚生労働省老健局老人保健課介護保険データ分析室 田邉和孝地域情報分析支援専門官(医師)
取材・文/横井かずえ・横河麻弥子 写真/立崎 雄一郎

エビデンスに基づく介護を推進し、ケアの質の向上を目的とした科学的介護情報システム「LIFE(ライフ)」が2021年4月からスタートしました。データの収集・分析・フィードバック・プランへの反映というPDCAサイクルによって介護の質を向上させるのがLIFEです。導入によって介護現場はどのように変わるのでしょうか? 厚生労働省老健局老人保健課介護保険データ分析室の田邉和孝地域情報分析支援専門官に伺いました。

(2021年4月現在)

エビデンスに基づいたケアで、介護の質の向上を目指す

――まずLIFEの概要について教えてください

LIFE(Long-term care Information system For Evidence)は日本語でいうと「科学的介護情報システム」です。導入の最大の目的は「エビデンスに基づいた介護(客観的結果に基づいた介護)」を推進すること。介護に関するさまざまなデータを収集し、それを分析してフィードバックすることで、介護の質の向上を図るのが大きな狙いです。医療においては1990年代からエビデンス・ベースド・メディスンが浸透し、治療の標準化が進んできました。一方で介護分野においては、エビデンスに基づくケアはまだまだ十分とはいえず、ベテランスタッフの経験などに頼っているというのが実情です。そこで、介護にもエビデンスを導入し、全国どこでも質の高い介護(ケア)が受けられるように、介護の質の向上を目指すのがLIFEの主な狙いになっています。

――すでに導入されているVISITやCHASEとは、どのような点が異なるのですか?

VISITはリハビリテーションに特化したもので、通所リハと訪問リハを対象に、リハビリプランなどを収集したデータベースです。ここではリハビリに関するデータのみを集めていますから、介護全体のデータベースを作るには不十分です。VISITを補完するために2020年5月から稼働したのがCHASEです。CHASEでは栄養や口腔、認知症など幅広い介護データを収集していますが、2020年度の段階では介護報酬と紐づいておらず、モデル事業等を通じて、任意での参加をお願いしてきました。2021年4月からはVISITとCHASEを統合し、介護全般に関するデータを一体的に収集・分析できるシステムとしてLIFEがスタートしました。

――具体的にはどのようなイメージで運用されるのでしょうか?

例えばある利用者にリハビリテーションを実施しているとします。ひとつの事業所内だけでは、リハビリの効果が十分かそうでないかを客観的に判断することは難しいかもしれません。しかしLIFEでは事業所から寄せられたデータを分析し、フィードバックします。フィードバックされた情報を見れば、同じくらいの介護度の人の平均と比較して、どの程度、リハビリ効果が出ているか客観的に把握できるのです。

例えばこの利用者のケースで同時に栄養状態を見ると、BMIが低く低体重であることがわかりました。そこでリハビリ効果を上げるには、まずは栄養面の改善から行うべきだ、ということがわかるわけです。このように介護に対する気付きを与えて、1人1人の利用者に対してどのようにサポートを行っていくかを考えていく、その一連の流れを作り出すことをLIFEは目指しています。

図表1:個別化された自立支援・科学的介護の推進例(イメージ)

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厚生労働省ホームページ資料 PDF2ページ目より引用

データの収集からフィードバックまで
PDCAサイクルを回すのがひとつのパッケージ

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LIFEでは事業所の取組について、フィードバック等を通じて点検し、ケアプラン等の改善につなげることで加算ももらえる

――LIFEは各種加算の算定要件となっているなど、介護報酬と紐づいているのですね。

科学的介護推進加算や自立支援促進加算、栄養マネジメント強化加算を始めとして多くの加算の算定要件になっています。
ただ、ご注意いただきたいのは、これらの加算は、単にLIFEへデータを送付して終わりではありません。データを送付し、こちらからそのデータを分析して事業所にフィードバックしますので、提出したデータや、受け取ったフィードバックをケアプラン等の見直しに反映させ、PDCAサイクルを回して介護の質を向上させていく一連の取組を評価するものです。

ケアプランや支援計画を作成(Plan)し、それに基づいたケアを行い(Do)、その結果をチェックして(Check)、LIFEからのフィードバック等を参考により良いプランに変更していく(Action)。このすべてをひとつのパッケージとして実施して、初めて加算を算定できる仕組みとなっていますので、そこはきちんとご理解いただきたいと思っています。

図表2:LIFEのPDCAサイクル

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社会保障審議会資料 PDF1ページ目より引用

――LIFEを導入することによって、どのようなメリットが期待できますか?

利用者から見れば、全国どこでも質の高い介護を受けることができるようになります。
標準医療があるように、介護もどの地域のどの施設に行っても、同様な質の高いサービスを受けやすくなります。
また、各種加算の算定状況を確認することによって、リハビリなどを積極的に実施している施設やそうでない施設など、自分に合った施設を選びやすくなることも予想されます。

現場で働く介護職の方にとっては、ケアの質が上がることによって、自信を持ってケアを提供することができるようになります。
またLIFEを導入するにあたっては、同時に各種ICT化のサポートも行われます。補助金もありますし、介護事業所のICT化が進めば、事務作業の省力化や時間外業務の削減など、スタッフの負担も軽減することが期待できます。

ライフマイスターが運用をサポート
3月末時点で5万件近くの申し込み

――導入にあたってのサポート体制はどのようになっているのでしょうか。

ハード面では、タブレットやWi-fi、LIFE対応の介護記録ソフトなど、LIFEを行うのに必要な各種の設備を導入するために「ICT導入支援事業」の補助金を使うことができます。この補助金は介護事業所の業務効率化と職員の負担軽減を目的としたものです。
もともとは上限50%までの補助でしたが、LIFEへの対応に関しては4分の3を下限として補助金が活用できるようになりました。

図表3:ICT化イメージ

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ICT導入支援事業イメージ図・厚生労働省ホームページ資料 PDF100ページ目より引用

―― 一方、外国人ケアワーカーが現場の新たな介護力として期待されています。

「新型コロナ禍の影響もありましたが、各事業者団体が人材招聘に向けて積極的に動いていることもあり、今後、海外からの人材が入ってくると期待しています。迎える側の私たちとしても、外国人ケアワーカーにとって勉強の場にもなり、日本でよい生活ができるようフォローしてさしあげたいと思います。もちろん、介護の質が低下しては困りますので、日本の生活にまだなじんでいない外国人ケアワーカーを精神的に支えたり、生まれ育った文化が違うことによる意思疎通のすき間を埋めたりすることが大切だと思います」

ICT導入支援事業イメージ図・厚生労働省ホームページ資料 PDF100ページ目より引用

ソフト面では「ライフマイスター」と呼ばれる人を中心に、データの集め方からフィードバックされた情報の解釈の仕方まで、サポートする仕組みを構築する予定です。
電話などのサポートセンターとは別に、専門家が実際に介護事業所を訪問してアドバイスすることも想定しています。
エビデンスを構築するためには、まずは正確なデータを収集する必要があるため、その収集の仕方をレクチャーします。さらにフィードバックされた情報を的確にケアへ反映させるため、データの活用方法もサポートします。

――スタートにあたって、事業所からはどのような質問が寄せられていますか?

「申し込みをしたら、必ずデータを送らなければならないのか」といった質問を多くいただいています。しかし、決してそのようなことはありません。「データの送付はあくまで任意のものですから、まずは使ってみてください」とお伝えしています。

厚労省に申し込むとなると、どうしても「何らかの義務が発生するのでは」と思われてしまいますが、そのようなことはありません。加算を算定するしないに関わらず、無料ですからまずは使ってみてください。

その他、LIFEのみについてではないインターネットやメールの使用法に関する基本的な質問も多い傾向があります。
介護事業所ではまだ主に紙の資料だけで運用しているところも存在するため、経理以外のパソコンやタブレットの導入自体が新しい挑戦という事業所もあります。導入に苦労する部分はデメリットかもしれませんが、将来を考えると有益ではないでしょうか。
例えば今回、LIFEの申請にあたってはすべてオンライン申請としていて「このURLにアクセスしてください」と案内しています。しかしURLをヤフーなどの検索窓に入力してしまい「アクセスできない」などの問い合わせや、インターネット自体の操作についての問い合わせも多く寄せられています。
そういった問い合わせにもできるだけこたえようと、職員スタッフが奮闘しています。

4月からはLIFE全般に関する問い合わせに対応できるよう、ヘルプデスクを用意しました。
電話:042-340-8819 (平日 10:00 ~ 16:00)です。
こちらは電話で対応できるようになっています。

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LIFEへの質問はパソコンの使い方から入力すべき要件まで多岐にわたる

――介護事業所からの申し込み状況について教えてください。

3月末時点で約5万件の申し込みがありました。同一事業所で複数のサービスを展開している場合の重複もあるため、正確な数字ではありませんが、数万件単位で申し込みがあるのは間違いありません。介護事業所が全国で20万から30万あるとして(サービス事業が複数の事業所は重複して登録されているため)、3月末時点で単純計算で全国の2割強の事業所が申し込みを完了していることになります。やはり介護報酬と紐づけることによって、多くの事業所がLIFEに関心を持ってくれたのだと手ごたえを感じています。しかしこの数字で満足はしていません。将来的には100%の事業所のLIFEへの参加を目指し、今後もさまざまな取り組みを展開していきたいと考えています。

<LIFEのヘルプデスク>
LIFE Webサイト(https://life.mhlw.go.jp)の「LIFE問合わせフォーム」から問い合わせ可能 。
電話:042-340-8819 (平日 10:00 ~ 16:00)
※(混雑が予想されるため「LIFE問合わせフォーム」の方がおすすめです)

[後編]
>>厚生労働省担当官に聞く(2)「LIFE集積データから、日本発の標準介護を世界に発信したい!」

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