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ニュース 介護業界ニュース 2023/11/22

#インタビュー

高齢者も猫を飼う喜びを感じられる「永年預かり制度」とは?|NPO法人が行う高齢者と保護猫を繋ぐ取り組み

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介護のみらいラボ編集部コメント

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北海道札幌市にあるNPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」では、高齢者に保護猫を預ける「永年預かり制度」を実施しています。永年預かり制度とは、高齢者に保護猫を譲渡するのではなく、預けることで、万が一の際にはツキネコ北海道が猫を引き取る制度のこと。年齢を理由に猫の飼育を諦めていた方も、猫との生活を楽しめるシステムです。永年預かり制度の概要や利用の流れについて、「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」の代表吉井美穂子氏と、滝沢礼奈氏に話を聞いてみました。

1.活動開始から13年で5,000匹以上の猫を保護

――NPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」の活動内容を教えてください。

滝沢:北海道札幌市を拠点として、北海道全土の猫を助ける活動を行うNPO法人です。「猫と人を繋ぐ」ことを目的として、行き場のなくなった猫を保護し、新しい家族を見つける活動に取り組んでいます。活動開始から13年目となる2023年までに、5,000匹以上の猫を保護してきました。現在は札幌市内に5ヶ所ある保護猫シェルターのほか、一時預かりボランティアの方と共に、常に320匹ほどの猫を抱えながら譲渡促進を行っています。

2.「永年預かり制度」とは?

――「永年預かり制度」とは、どのような制度なのでしょうか。

滝沢:猫を「飼う」のではなく、「預かる」という形で、猫と一緒に暮らしていただけるシステムです。所有権をツキネコ北海道に残したまま猫を迎えてもらい、その猫の面倒を見られなくなるまでお世話をしていただきます。そして預かり者さんの入院などで飼育継続が困難になった際は、無条件でツキネコ北海道に猫を戻すことができます。シニア世代を中心として、年齢や持病などのさまざまな理由で猫の飼育を諦めている方は多く存在します。永年預かり制度は、そのような方々にも猫を飼う喜びを感じていただける制度です。戻ってきた猫は、また別の永年預かりさんのお家に行ったり、一般譲渡をされたりします。

――「永年預かり制度」を利用して、高齢者が猫を飼うまでの流れを教えてください。

滝沢:特別なことはほとんど行っていません。基本的には、
1)まずツキネコ北海道にお電話をいただく
2)担当スタッフと面談のうえ、預かる猫を決める
3)預かりが決まった後は、保護にかかった費用の一部である譲渡費用(3万円~猫によります)をツキネコ北海道にお支払いいただき、証明書と共に猫を引き取る
4)猫と生活する
5)預かり者さんの入院や病気などで飼育困難になった場合は、ツキネコ北海道が猫を引き取る
という流れです。

永年預かり制度の特徴は、証明書を発行することです。必ず「預かり証明書」を発行し、猫と共にお渡ししています。この「預かり証明書」とは、預かり者さんが倒れて意識不明になったり、急に亡くなったりした際に、猫の行き場がなくならないようにするための書類です。例えば、猫を預かっていた一人暮らしの高齢者の方が、ある日急に亡くなったとします。この場合、離れて住む家族は猫を飼っていることを知らず、猫を今後どうすべきか戸惑ってしまうケースが非常に多いです。このようなトラブル防止のために、ツキネコ北海道では猫の預かり証明書を発行し、万が一の際の連絡先がすぐに分かるようにしています。特に、一人暮らしの方はリビングなどの目立つ場所に証明書を貼っていただき、預かっている猫だと誰が見ても把握できるようにしていますね。

預かった猫が生きがいになっている高齢者も多い

預かった猫が生きがいになっている高齢者も多い

3.年齢を理由に猫を渡さないのはもったいない

――猫を預ける際に審査は行わないのですね。

吉井:保護猫活動を行っている団体では、譲渡の際に厳しい審査を実施している所がほとんどです。この審査は猫を安全に飼えるかどうか判断するために行うものですが、60歳以上の方や一人暮らしの方には猫を譲渡しない、持ち家の方のみに猫を譲渡するなど、条件がとても厳しい団体も数多く存在します。確かに猫は15年近く生きるため、高齢者は猫を最期まで飼いきれない可能性があります。しかし60歳以上でもまだまだ元気な方はたくさんいらっしゃいますし、年齢を理由に猫を渡さないのはもったいないと感じています。もちろん面談の際にお話はしますが、基本的にはその方を信用して猫を預けています。

――預ける猫はどのように選んでいるのですか。

吉井:人に慣れている猫を中心に選ぶことが多いです。また、預かり者さんの希望をお聞きして、その希望に近い猫を選ぶこともあります。以前猫を飼っていた方であれば、昔飼っていた猫と似た子を探す方も多いですし、茶色や白など色や柄で決める方もいらっしゃいますね。女性であれば、抱っこをしやすい3kgくらいの小柄な猫を希望される方も多く見られます。

4.猫も高齢者の方も幸せになるために

――今までにどのくらいの方が「永年預かり制度」を利用したのでしょうか。

滝沢:2015年から永年預かり制度の取り組みを始め、2023年の8月までに376匹の猫が新しいお家へと旅立っていきました。永年預かり制度によって、年間80匹前後の猫に新しい家族が決まっています。これまでにツキネコ北海道に戻ってきた猫は13匹で、ほとんどのお家で最期までかわいがってもらっています。猫も高齢者の方も幸せになるために、これからも活動を続けていきたいです。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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