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ニュース 介護業界ニュース 2023/11/27

#インタビュー

年齢を気にせずに猫と生活できる「永年預かり制度」の魅力|NPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」の活動

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介護のみらいラボ編集部コメント

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北海道札幌市にあるNPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」では、高齢者に保護猫を預ける「永年預かり制度」を実施しています。永年預かり制度とは、高齢者に保護猫を譲渡するのではなく、預けることで、万が一の際にはツキネコ北海道が猫を引き取る制度のこと。年齢を理由に猫の飼育を諦めていた方も、猫との生活を楽しめるシステムです。制度を始めようと思ったきっかけやメリットについて、「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」の代表 吉井美穂子氏と、滝沢礼奈氏に話を聞いてみました。

1.年齢を理由に、猫を飼うことを諦めて欲しくない

――「永年預かり制度」を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

吉井:年齢を理由に、猫を飼うことを諦めて欲しくないと考えたことがきっかけです。私は今から20年近く前に保護猫活動を始めたのですが、当時は他の保護猫団体と同様に、60歳以上の方への猫の譲渡は断っていました。しかしお断りした方のなかには、「猫を譲ってもらえないのだったらペットショップに行って子猫を買ってくる」と言う方もいて、高齢者でも猫を飼う良い方法はないだろうかと悩んでいたのです。そこで猫を譲渡するのではなく、ツキネコ北海道に所有権を残して「預ける」形であれば、猫の寿命を考えずに猫との生活を楽しんでいただけるのではないかと考えました。

――「永年預かり制度」のメリットには、どのようなものが挙げられますか。

吉井:やはり、年齢を理由に猫の飼育を諦めなくて良いことは、非常に大きなメリットではないかと思います。高齢になってから猫を飼いたいと考えても、譲渡を断られるケースは非常に多いです。その点、永年預かり制度は、もし飼えなくなった際には無条件で猫を戻せるため、入院や施設の入居などのリスクに備えることが可能です。

また、健康寿命を伸ばせる点もメリットの1つだと考えています。現在永年預かり制度を利用している方で、77歳の方がいらっしゃるのですが、猫を預かってからとても前向きに活動できるようになったと仰っていました。この方は早くにパートナーを亡くされて気力を失っていたものの、永年預かり制度で猫を飼い始めたことにより、仕事も精力的になり、生活にハリが出たそうです。永年預かり制度は、人にとっても猫にとってもメリットばかりの制度だと感じていますね。

2.高齢者の方に猫を預けるうえで、気をつけていること

――「永年預かり制度」で高齢者の方に猫を預けるうえで、気をつけていることはありますか。

吉井:高齢者だからといって、高齢の猫のみを渡さないようにすることです。永年預かり制度を開始したばかりの頃は、高齢者の方には落ち着いた高齢の猫が良いのではと考え、高齢の猫を中心に預けていました。しかし、預けた猫がすぐに看取り状態になってしまったことがあり、預かり者の方の非常に辛そうな様子を見て、高齢の猫だけを渡すことは間違っているのではと考えるようになったのです。現在は、できるだけ健康な1歳以上の猫をお渡しするように心がけています。

「永年預かり制度」を利用して、人生ではじめて猫と生活する方も

「永年預かり制度」を利用して、人生ではじめて猫と生活する方も

3.預かり者さんからの感想は?

――「永年預かり制度」を利用した方からの感想やエピソードを教えてください。

吉井:「もう猫は絶対飼えないと思っていたから、こうして再び飼えてとても嬉しい」といったお言葉をいただくこともあり、こちら側としても非常に嬉しく感じています。現在永年預かり制度を利用して猫と暮らしている方で、最高齢は85歳です。その方は年齢を感じさせないほどお元気で、預かった猫をかわいがってくださっていますね。

滝沢:預かり者さんのなかには、アルツハイマー型認知症を発症している方もいます。最初は猫を預けることに不安もありましたが、比較的近所にお住まいだったことや、とても猫好きなこと、買い物などはご自分で行けることが分かったので、預かっていただくことにしました。現在はツキネコ北海道の担当者がヘルパーさんと定期的に交流することで、猫を飼い続けられる状態かどうかを確認しています。サポート体制を充実させることで、多くの方に猫との生活を楽しんでいただければと感じています。

4.永年預かり制度を全国に広めたい

――今後の展望を教えてください。

吉井:永年預かり制度を全国に広めることです。できれば他の保護猫団体でも同じ制度に取り組んでいただきたいのですが、組織の規模がある程度大きくないと難しいようで、8年経っても全く広まっていないのが現状です。そのため、ツキネコ北海道が全国の方に猫を預けられるようになればと考えました。全国展開の取り組みはすでに動き始めていて、福岡や沖縄の保護猫団体と提携を始めたほか、今年に入って埼玉や千葉、大阪などにお住まいの預かり希望者さんから連絡があり、猫を預けることになりました。今後も一人でも多くの方や猫を幸せにするために、制度を広めていきたいと考えています。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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