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職場・悩み 介護の転職お役立ち 2021/03/18

#ケアマネ#人間関係#働き方#収入#退職理由

ケアマネジャーをやめたい理由は?そんなときどうするか

文:中村楓(なかむらかえで) 介護福祉士、介護コラムニスト 手を取り合う人々.jpg

ケアマネジャーは介護サービスの提供において、要となる重要な役割を担っています。利用者に深くかかわる仕事に、やりがいを感じている人も多いことでしょう。しかし、続けていくうちにケアマネジャーをやめたいと思う人もいるかもしれません。ケアマネジャーをやめたい理由について詳しくまとめるとともに、自分に合った働き方を考えるポイントを解説します。

すべてのケアマネジャーに共通するやめたい理由とは

ケアマネジャーの働き方は、施設と居宅、包括などの職場によって異なるため、やめたい理由もさまざまです。季刊家計経済研究(2011年)によると、介護業界で転職した人の「以前、働いていた介護事業所を辞めた理由」は、以下のようになっています。

介護業界内転職者の「以前、働いていた介護事業所を辞めた理由」

出典:「介護労働者の就業・離職状況に関する調査」について p.26

それぞれの理由を掘り下げてみましょう。

1.法人に問題あり(41.8%)

法人によって仕事の方針はさまざまであり、待遇や勤務条件も異なります。労働時間を適切に定めたいけれど、人材不足でどうしても1人が背負う仕事が多く、長時間労働になりやすい職場の場合は、法人そのものに問題があると感じるのではないでしょうか。

2.職場の人間関係(33.7%)

ケアマネジャーは、所属する事業所だけでなく、外部の介護サービス事業所や福祉サービス事業所など、さまざまな人と関わる機会が多くあります。接する人が多ければ多いほど人間関係で悩むことも増えてきます。また、利用者やその家族のなかには、理不尽な要求をしたり、何かあるとすぐに行政に訴えると言ったりするなど、対応に苦慮する人もいます。利用者や家族との関わり方に悩んで疲れてしまい、ケアマネジャーを辞めたいと考える人は少なくありません。

3.収入が少ない(27.6%)

令和2年介護従事者処遇状況等調査結果(特定処遇改善加算(Ⅰ)、(Ⅱ)を取得している事業所)によると、介護支援専門員(常勤)の平均基本給(月給)残業などの手当・ボーナス抜きだと218,130円。(年収を12で割った月平均だと362,510円)
この金額は、介護職員(常勤)の平均基本給183,450円(年収の月平均325,550円)に比べると高いものです。しかし、ケアマネジャーが作るケアプランが、利用者と家族の生活に大きくかかわってくるため、ケアマネジャーにかかる仕事の責任は重くなります。給与額と責任の度合いが釣り合わないと感じる人もいます。

4.ほかに良い仕事・職場(23.5%)

ケアマネジャーは看護師や介護福祉士とは違い、一度資格を取得したあとは5年ごとに資格を更新しなければいけません。資格更新のためには、数日間にわたる研修を受けることになり、かかる費用も数万円と決して安くはありません。事業所によっては、更新費用を支給してくれたり、研修日を出勤扱いにしてくれたりすることもあるでしょう。しかし、協力的でない事業所の場合には、費用は自己負担で、欠勤扱いとされてしまいます。更新研修を受けること自体に負担を感じてしまう人もいます。

5.自分に向かない(5.1%)

ケアマネジャーは思いのほか、書類業務が多い仕事です。利用者としっかり関わりたいと思っているのに、事務作業に追われて思ったような仕事ができないと悩む人もいます。特に、文章を書くのが苦手な人やパソコンが苦手な人にとっては、事務作業が大きなストレスとなり、「ケアマネジャーは自分に向いていないのでは?」と考えてしまうこともあるでしょう。

施設ごとに見るケアマネジャーをやめたい理由

上述したように、ケアマネジャーをやめたい理由は、勤務先によって異なります。ケアマネジャーが在籍する施設や居宅、包括など、それぞれの施設形態による辞めたい理由のちがいについて、詳しく見ていきましょう。

施設ケアマネジャーの場合

特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療施設に勤務するケアマネジャーの場合、相談員や介護職と兼任しながら、ケアマネジャー業務を行っているケースが多くあります。ケアマネジャーと他職種の兼務割合は所属する法人によって異なるものの、他の仕事の合間を見てケアマネジャーの業務を進めることになるため、仕事量は当然多くなってしまいます。
また、施設ケアマネジャーは、担当件数が多い傾向にあるのも特徴の一つです。施設ケアマネジャーは一人で100件まで担当できるため、その施設にケアマネジャーが自分一人だけというケースもあります。同僚や先輩がいないため、ケアマネジャーの仕事について悩んでいても相談する相手がおらず、悩みを一人で抱えやすい環境です。仕事量は多いのに誰にも助けを求められない、という状況が負担になり、ケアマネジャーをやめたいと感じる人もいるでしょう。

居宅ケアマネジャーの場合

居宅ケアマネジャーは、利用者の自宅に行く機会が多いものです。同日にまとめて数名の利用者宅を訪問することも多く、日によっては訪問だけで一日が終わってしまうこともあるでしょう。事業所に帰ってからは事務作業が待っており、残業が続く人も少なくありません。プライベートの時間が確保できず、ストレスを抱えてしまえば、仕事を辞めたくなることもあるでしょう。
また、利用者や家族からの連絡が夜間や休日に入ることが負担に感じる人もいます。緊急連絡の場合は、すぐに対応しなければならないこともあり、家に帰っても気が休まらないと感じてしまうかもしれません。 本来のケアマネジャーの業務ではない仕事をすることがつらいと感じる人もいるでしょう。例えば、身寄りがない人や家族と疎遠な人を担当したときには、病院受診の付き添いをせざるを得ないケースもあります。また、さまざまな介護サービスを展開している法人の場合には、「自社提供のサービスをまずは勧めるように」という方針の会社もあります。利用者に合わせたケアプランを作成したいという気持ちと、会社の方針との板挟みになり、強いストレスを感じ、転職を考える人もいます。

包括ケアマネジャーの場合

地域包括支援センターで働くケアマネジャーは、基本的には要支援者のみを担当します。要介護者と比べて、要支援者が必要とするサービスは少ない傾向にあり、ケアマネジャーとしてのやりがいを感じにくいこともあるでしょう。
また、ケアマネジャー以外の業務が多いのも包括の特徴です。地域包括支援センターは、地域とのつながりを重視することもあり、地域の会議や会合に出席を求められることがあります。地域の方と交流する機会も多く、施設や居宅のケアマネジャーに比べると、人間関係が複雑になりがちです。コミュニケーションを取るのが苦手な人にとっては負担を感じやすくなります。
さらに、包括のケアマネジャーは、居宅以上に事務作業が多くなります。地域包括支援センターだけでは地域の要支援者を担当しきれないため、居宅介護支援事業所に要支援者の担当を委託しますが、委託した分の報酬請求は包括が行うため、事務作業の割合も多くなります。人間関係の複雑さや業務負担へのストレスで、ケアマネジャーをやめたいと感じるケースがあります。

ケアマネジャーとしてのやりがいを取り戻すために

話し合いが必要な時も

ケアマネジャーをやめたいと思う理由があっても、感情に任せて退職してしまうのは考えものです。まずは現状を変えることから始めてみてはいかがでしょうか。やめる前に考えたいポイントをまとめます。

業務を効率化する

仕事量が多すぎることを負担に感じているなら、業務の効率化を考えてみましょう。例えば、朝一番にその日のスケジュールを立て、仕事の優先順位や時間配分を考えます。そのなかで、最も効率的に動けそうな流れにそって業務を進めてみましょう。もし優先順位や時間配分が妥当かわからないときには、上司や先輩に相談してアドバイスをもらうのも一つの手です。施設内で他の仕事を兼任している場合には、何を優先すべきかを明確にし、ケアマネジャーの業務にしっかり時間を確保できるように多職種との連携を進めてみましょう。職員間の協力が得られるのであれば、一日の流れのなかであらかじめケアマネジャーの業務に専念する時間をもらう方法も有効です。

相談相手を見つける

仕事の悩みは、身近な人に相談するのが一番です。同僚や上司、先輩であれば、仕事の状況を理解してもらいやすいため、的確なアドバイスを受けられるでしょう。近くに相談する相手がいなければ、他社のケアマネジャーさんに相談するという手もあります。自分の事業所ではあまり例のないような利用者に関わる悩みでも、他の事業所では対応したことがあることも考えられます。特に、一人ケアマネジャーの場合は、他社のケアマネジャーとのつながりが心の支えになることもあるでしょう。普段から研修会や事例検討会などの同業者が多く参加するところに顔を出し、ケアマネジャー同士の横のつながりを作っておくと安心です。

異動ができる場合は異動を申し出てみる

所属する事業所が、複数の居宅介護事業所や介護サービスを提供しているのであれば、異動を申し出てみるのも良い方法です。同じ居宅ケアマネジャーの仕事であっても、場所が変わるだけで雰囲気が変わることがあります。特に職場内の人間関係で悩んでいる場合には、異動によって問題が解決することもあるでしょう。
また、施設ケアマネジャーが居宅に異動することで、ケアマネジャーの仕事に集中できるようになったという例もあります。自分が施設ケアマネジャーに向くのか、それとも居宅ケアマネジャー向きなのかはやってみないとわかりません。現職をつづけながら、他の形態に挑戦できるのであれば、そのチャンスを生かしましょう。

どうしても現在の職場をやめたいときには

いろいろと対策を練ってみても、やっぱり現在の職場をやめたいと思うかもしれません。そんなときは、新たな働き方を考えてみましょう。

ケアマネジャーとして違う職場に転職する

ケアマネジャーとして今後もがんばっていきたいなら、資格を生かした転職を考えてみましょう。施設と居宅、包括にはそれぞれに特色があります。転職を機に、違った形態に挑戦してみるのも一案です。自分では居宅に向いていると思っていたけど、やってみたら施設ケアマネジャーの方が楽しくできた、ということもあるかもしれません。
居宅ケアマネジャーへの転職を考えるときは、事業所に在籍しているケアマネジャー数に着目してみましょう。規模が大きいところであれば、新人からベテランまでさまざまな経験を積んだ人が在籍しており、相談する相手を見つけやくなります。
施設ケアマネジャーを希望している場合は、施設の特性を理解しておくことが大切です。具体的には、自宅復帰を目指す利用者の支援に関わりたいのであれば老健、要介護度が高い方の生活をケアマネジャーの立場から支えたいのであれば特養など、自分のやりたいことに合う施設を選びましょう。居宅と施設で迷う場合や、どのような施設がいいかわからないときには、複数の形態を運営している法人であれば、職場が合わなかったときに異動できる可能性が高く、今後の選択肢が増やせます。

介護職や看護師などの基礎資格を生かした職種に転職する

ケアマネジャーの仕事自体がつらいと感じるなら、別の職種への転職を考えてみてはいかがでしょうか。ケアマネジャーになる前に取得していた介護や看護の資格を生かせば、未経験の分野であっても働きやすいでしょう。ケアマネジャーとしての経験を生かし、利用者への対応もケアプランの目標達成を念頭に置いた支援が自然とできるのではないでしょうか。個別計画を立てる際にも、ケアプラン作成の経験が生かせます。

自分に合った働き方をみつけよう

やりがいを感じられる職場を探す

ケアマネジャーが活躍する現場には、施設と居宅、包括があり、それぞれに違った役割があります。今の職場が合わないと感じても、他の形態であれば働きやすいこともあるでしょう。今できることをやってもうまくいかないと思うときには、働きやすい職場への転職を考えてみるのも一つの手です。どんな職場が自分に合っているのか悩んでいるなら、転職エージェントを活用してもいでしょう。プロの視点で転職サポートをしてもらえるため、自分に合った職場を見つけやすくなります。先輩や、キャリアアドバイザーなど色々な人に相談しながら、これからの働き方を考えてみてはいかがでしょうか。

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中村楓(Kaede Nakamura)

介護福祉士・介護コラムニスト

現役介護支援専門員。介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級、認知症介護実践者研修の資格を持つ。病院や通所リハビリ、デイサービスで介護福祉士として働き、生活相談員や介護認定調査員の経験も持つ。「介護の未来を明るくする」をモットーに、現場感ある記事を書く介護コラムニストとしても活動中。

中村楓の執筆・監修記事

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