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職場・悩み 介護の転職お役立ち 2023/05/12

#社会福祉士

地域包括支援センターで働く社会福祉士の役割とは?業務内容や向いている人について紹介

文/倉元せんり thumbnail.jpg

「地域包括支援センターに転職したいけれど、忙しそうで気が引ける」
「経験が浅いからついていけないかもしれない」

地域包括支援センターに興味を持ちながらも、こうした思いを抱えている社会福祉士の方は、意外に多いのではないでしょうか。

地域包括支援センターは、地域に住む高齢者を介護、医療、保健、福祉などの面からサポートする施設です。さまざまな相談対応が必要とされ、社会福祉士として幅広い経験が積める一方で、「多忙で離職率が高い」とも言われるため、前述のような不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、地域包括支援センターで働く社会福祉士の役割や、どんな方が地域包括支援センターに向いているかについて解説します。地域包括支援センターでの仕事に興味のある方、就職・転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.地域包括支援センターとは

地域包括支援センターとは、地域に住む高齢者のための総合相談窓口です。利用対象者は、65歳以上の方やその家族、あるいは介護や支援を担っている方で、「高齢者が住み慣れた地域で、心身の健康を保持しながら、安定した生活を送るための支援」を行うのが主な役割となっています。

地域包括支援センターは、すべての市町村への設置が義務付けられているほか、人口2~3万人の日常生活圏域に1か所ずつ設置することになっています。

2.地域包括支援センターの業務内容

地域包括支援センターの主な業務は、以下の4つです。

  • 介護予防ケアマネジメント
  • 総合相談支援
  • 権利擁護
  • 包括的・継続的ケアマネジメント

ここでは、それぞれの業務の概要について解説します。

介護予防ケアマネジメント

要支援1、2の高齢者を対象に、介護予防ケアプランの作成や状況の把握、課題の分析などを行います。アセスメントや介護保険サービスの調整をすることで、対象者が要介護状態になるのを防ぎ、自立した生活を継続できるように支援するのが、介護予防ケアマネジメントの目的です。

総合相談支援

高齢者やその家族から、困りごとを総合的に受け付けるのも、地域包括支援センターの重要な業務です。相談を受けた際は、内容に応じて必要な制度やサービスの紹介を行います。初めて介護問題に直面した方からの相談も多いため、1人ひとりに寄り添った丁寧な支援が求められるでしょう。

権利擁護

高齢者に対する虐待防止や、金銭管理ができなくなった方への支援など、「高齢者の権利を守るための取り組み」を行います。虐待を疑った近隣住民からの相談の対応や、高齢者に対する消費者被害(各種詐欺など)への対応、成年後見制度の手続き支援なども業務の1つです。

包括的・継続的ケアマネジメント

高齢者が安心して地域で暮らしていけるように、地域のネットワークづくりを行います。具体的には、居宅介護支援事業所や高齢者施設、病院などさまざまな関係機関との連携したり、高齢者の個別課題の解決を図る「地域ケア会議」を主催したりすることで、高齢者を取り巻く課題の解決・調整を図ります。

3.地域包括支援センターで働く職種

地域包括支援センターには、専門の知識を持った以下の職種が常駐しています。

  • 社会福祉士
  • 保健師
  • 主任ケアマネジャー

原則として、各職種がそれぞれ1人以上配置されていますが、地域の人口規模によっては、3職種のうち1人もしくは2人になるケースもあります。

保健師の役割は、地域で暮らす高齢者の健康を守ることです。健康管理や保健指導を通じて、要介護状態になることを予防する取り組みを行います。

主任ケアマネジャーは、地域のケアマネジャーの支援や指導などを行います。地域ケア会議を開催して、地域の介護における課題を抽出することも重要な役割です。

社会福祉士は、保健師、主任ケアマネジャーと協働しながら、住民の各種相談対応、高齢者に対する虐待防止、権利擁護などの業務を担当します。

4.地域包括支援センターで働く社会福祉士の役割や業務内容

地域包括支援センターで働く社会福祉士の役割や、業務内容を紹介します。

社会福祉士の役割

地域包括支援センターにおける社会福祉士の主な役割は、総合相談の受付や権利擁護への対応です。

社会福祉士は、高齢者を取り巻くさまざまな課題に対して適切な助言を行うとともに、必要な支援を受けられるように調整します。具体的な相談内容としては、「介護予防サービスを利用したい」「虐待を疑っている人がいる」などが挙げられます。

介護予防サービスについては、実際に自宅を訪問し、アセスメントをした上で支援体制を整えます。

なお、虐待に対する対応は、支援の迅速さが求められます。身体的虐待や経済的虐待、ネグレクトなどは、ときに高齢者の命にもかかわる問題です。「自分らしく暮らす」という権利を守るためにも、関係機関と協働し、スピーディに対応する必要があるでしょう。

社会福祉士の業務内容

地域包括支援センターの社会福祉士が行う業務内容は、次の通りです。

  • 電話連絡(担当している利用者や家族、関係機関、老人会の地域団体など)
  • 相談対応(窓口、電話、訪問など)
  • 利用者宅訪問(自宅、入院中の病院、入所中の施設など)
  • 安否や状況確認のための訪問(独居、高齢者世帯、虐待防止の対応など)

相談は窓口でも行われますが、多くは電話での対応です。電話相談は表情が見えず、パンフレットを提示しながらの説明もできないため、正しく相談内容を聞き取り、適切な対応を提案するスキルが求められるでしょう。

相談内容によっては、保健師や主任ケアマネジャーと役割分担しながら、協力して業務を行うことが必要です。

5.地域包括支援センターで働くのは大変!? 元MSWが外から見た所感

インターネットで、地域包括支援センターで働く社会福祉士に関するクチコミを調べると、「多忙」「離職率が高い」などのコメントが目立ちます。実際のところはどうなのでしょうか。

筆者は、急性期病院で約8年医療ソーシャルワーカー(MSW)として勤務していた経験があり、地域包括支援センターの社会福祉士と協働する場面も多々ありました。そのときに外部から見ていたイメージや実態は、次の通りです。

  • 多くの利用者の支援が同時進行している
  • 仕事の内容が幅広い
  • 利用者との信頼関係が築けている

地域包括支援センターで働く社会福祉士は、常に多くの高齢者の支援を担当しており、多忙であることは間違いありません。

筆者が医療機関で勤務していた際は、地域包括支援センターの社会福祉士が担当する利用者が、同時に何人も入院している場面がありました。入院のたびに利用者の情報を提供していただくことになるので、1日に数回、社会福祉士と連絡を取っていたことを覚えています。

また、多忙であることから、病院の退院前カンファレンスなどの日程がなかなか合わず、苦労した記憶もあります。

こんなふうに忙しい話ばかりを紹介すると、「やっぱりきつい仕事なんだ」と思われるかもしれませんが、地域包括支援センター勤務にはよい点もあります。

高齢者が介護問題で困ったとき、初めて相談する相手が地域包括支援センターであるケースはとても多いです。そして、そうやって初期から対応することで、相談者と社会福祉士との信頼関係は、強固になりやすい傾向にあります。自分が困ったときに、初めて助けてくれた方、あるいは相談に乗ってくれた方への信頼は、自然と厚くなりますよね。

また、長く付き合いを続けることで、介護問題以外の情報を聞く機会が増えれば、より深く利用者の状況を把握できます。

多忙ではあるものの、地域に住む高齢者にしっかりと寄り添い、力になれることは、地域包括支援センターで働く社会福祉士の大きな魅力ではないでしょうか。

6.地域包括支援センターに向いているのはこんな人

筆者独自の視点で、地域包括支援センターの仕事に向いている社会福祉士像を考えてみました。

  • 心身ともにタフな人
  • 客観的に物事を見られる人
  • スピード感をもった支援ができる人

最後に、それぞれのタイプが、地域包括支援センターに向いていると考えた理由を紹介します。

心身ともにタフな人

繰り返しになりますが、地域包括支援センターの仕事は多忙です。日々あらゆる相談が舞い込み、緊急訪問しなければいけない場面も多くあるでしょう。そのため、心身ともにタフな方が向いていると言えます。

多様な価値観を尊重できる人

地域に住む高齢者は、1人ひとりさまざまな価値観を持っています。そのため、ときには自分と大きく異なる価値観を持った方を支援することもあるでしょう。しかし、社会福祉士に求められるのは、すべての方の尊厳を大切にし、多様性を尊重する姿勢です。

そのため、高齢者の価値観を尊重し、「地域でよりよく過ごせるためには、どのような支援が必要か」を冷静に考えられる方は、地域包括支援センターに向いているでしょう。

スピード感をもった支援ができる人

高齢者虐待の防止早期発見、通報への対応は、地域包括支援センターで働く社会福祉士の重要な役割です。通報があった場合は、緊急で対応しなければいけないケースも多いため、支援にはスピード感が求められます。

スピーディかつ適切に支援計画を立てられる方は、地域包括支援センターでの仕事にも、しっかり対応できるでしょう。

7.地域包括支援センターの社会福祉士はやりがいのある仕事

社会福祉士にとって、地域包括支援センターは非常にやりがいのある職場です。高齢化が進む現在、高齢者が年々増えている地域も数多く見られます。そのなかで、地域包括支援センターの役割はますます大きくなっていくでしょう。

また、地域包括支援センターは、地域の高齢者に頼りにされたり感謝の言葉をもらえたりする場面も少なくありません。地域包括支援センターへの転職や就職を検討している方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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倉元せんり(Senri Kuramoto)

社会福祉士

大学卒業と同時に社会福祉士の資格を取得。約8年、医療ソーシャルワーカーとして勤務。出産・育児と同時に退職し、現在は福祉・金融系webライターとして、福祉やお金にまつわるさまざまな記事を執筆している。

倉元せんりの執筆・監修記事

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