仕事のモチベーションが上がらない! 原因と適切な対処法とは
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護職は、利用者が自分らしく生き生きと生活することに貢献できる仕事です。本人や利用者の家族から感謝されたり、人生経験豊富な利用者と接する中で多くの学びを得られたりと、他の職種にはない魅力があります。介護職はやりがいのある仕事ですが、ときに「モチベーションが上がらない」こともあるでしょう。
モチベーション(motivation)とは、動機づけを意味し、やる気や意欲という意味でも使われる言葉です。モチベーションには発生するプロセスがあり、正しく対処することで回復することも可能です。そこで当記事では、モチベーションが上がらない原因と適切な対処法について説明します。
1.仕事のモチベーションが上がらない原因
厚生労働省が実施した調査によると、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年4月以降、介護職(社会保険・社会福祉・介護事業)のモチベーションが低下傾向にあり、2021年に入ってからも回復していないことが明らかになりました。
調査結果によると、感染拡大以前の「モチベーション」は、「非常に低い」と「やや低い」を合わせても24.4%でしたが、2020年4~5月には32.6%、同年9~10月は31.6%と7%以上増加し、2021年1月時点には34.3%となりました。
感染症が拡大し、介護職員の負担が増加したことが近年のモチベーション低下の一因と考えられますが、それ以外にも複数の原因が考えられます。
同調査では、介護労働者の仕事に対する満足度は全体的に他の業種よりも低く、具体的には賃金や教育訓練、人事評価に不満を持っていることも明らかになりました。また、人手が足りない、身体的負担が大きいなど労働条件が厳しいことや職場での人間関係、利用者やその家族との関係も悩みの要因です。
このような不満や悩みが、モチベーション低下の原因になっている可能性もあります。
2.モチベーションが上がらない!意識したい2つのポイント
モチベーションが上がらない理由は、本人がはっきりと認識している場合もありますが、「なぜか分からない」という場合も多々あります。
心理学の分野では、モチベーションの仕組みが研究されており、これを理解することでコントロールも可能です。以下では、モチベーションの仕組みと意識するとよいポイントを説明します。
衛生要因の問題を解決して動機付け要因を満たす
モチベーションの仕組みを研究したものに、ハーズバーグの二要因理論があります。ハーズバーグはアメリカの心理学者で、人が仕事に対してモチベーションを持つには「動機付け要因」と「衛生要因」が必要であるという考え方を提唱しました。2つの要因は補完し合う関係であり、どちらか一方のみを満たしてもモチベーションは上がりません。
〈動機付け要因〉
「やりがい」のことを指す。達成感や周囲からの承認、自分の成長、昇進など満足感につながる要因。
〈衛生要因〉
不満要因とも言われる。給与や福利厚生、職場の人間関係、会社の管理体制及び職場環境など、満たしていないと不満につながる要因。
衛生要因は一定の水準をクリアすれば、以降はモチベーションを上げる効果はありません。そのため、動機付け要因を満たしていくことが重要です。また、従業員の立場からは衛生要因の解決が難しい場合がほとんどです。転職せずに今の職場でモチベーションを上げるためには、衛生要因の改善を職場に求めつつ、動機付け要因をいかに満たしていくかという観点で考える必要があります。
外発的動機付けではなく内発的動機付けを意識する
心理学の分野では、モチベーションを「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2つに分ける考え方もあります。外発的動機付けは効果が一時的であり、長続きしないという特徴を持ちます。モチベーションを維持するためには、内発的動機付けを意識することが重要です。
〈外発的動機付け〉
評価や報酬、罰則など、外部からもたらされる動機付けのこと。給与のために働く、怒られないために行動するなどがこれにあたる。
〈内発的動機付け〉
興味や関心、自己実現の欲求など自分の内面から発生する動機付けのこと。働くことが楽しいなど、働くこと自体が目的になる状態がこれにあたる。
内発的動機付けを意識しようとしても、興味や関心は自然に湧いてくるもののため、意識して得ることは困難です。このような場合には、外発的動機付けをして内発的動機付けが高まるのを待つ方法もあります。
例えば、給与アップの目的で資格の勉強をすると、知識が増えて仕事そのものへの関心が高まることもあるでしょう。そのため、ひとまず働くことは他の目的を達成するための手段に据え、働く中で仕事内容に興味や関心が出て来るのを待つことも一案です。
3.モチベーションが上がらないときの4つの対処法
何によってモチベーションが上がるかは人それぞれです。自分にとってどのような要素がモチベーションを上げるのかを理解し、複数把握するのがよい方法です。
以下では、モチベーションが上がらないときのおすすめ対処方法を、上げるためのコツと合わせて説明します。
尊敬する人をロールモデルにする
ロールモデルとは、自分が目指したい人や理想の人のことを言います。モチベーションを上げるためには、ロールモデルを持つことがおすすめです。理由は、ロールモデルがいることで、漠然としていた目標を具体的にできるためです。「あの人のようになりたい」と思う人がいれば、目指す場所や将来のビジョンがはっきりして、自分自身の課題も見えやすくなります。
ロールモデルは、有名人などの遠くの存在よりも身近な存在がよいと言われています。上司や先輩、同僚など身近にいる人たちの中で探してみましょう。
目指したい人が見つかったら、対象を細かく観察します。どのようなところが理想的なのか、どうしたら近づけるか、観察と分析を繰り返すことで目指したい人に近付くことができます。
小さな目標を設定する
小さな目標を設定することも有効です。成功体験はモチベーションを上げることにつながりますが、大きな目標だと挫折しやすくなります。例えば、「いつもより利用者の人にたくさん話しかける」や「レクリエーションに新しい作業や運動を入れてみる」など、達成しやすい小さな目標を設定することがコツです。
また、目標設定方法の1つに「SMARTの法則」があります。SMARTの法則とは「Specific」(具体的)、「Measurable」(測定可能)、「Achievable」(達成可能)、「Relevant」(関連性)、「Time-bound」(期限)の5つの法則によって目標を設定する考え方です。SMARTの法則で目標を設定する場合は、内容を具体的にし、数字で測れるようにします。さらに、達成が見込めるか、仕事との関連性があるかを検討し、期限を付けます。
以前の自分と比べて変化を考える
自分と他人を比べることはデメリットでしかありません。他人と比べてネガティブな気分になっても心理的によい影響はなく、目の前の状況を変えることはできないためです。
モチベーションを上げるためには、過去の自分と今の自分を比べることが大切です。日々の業務をこなしているだけでも、誰もが少しずつ成長しています。自分自身の変化や成果を感じると、前進している自分を客観的に捉えられ、前向きな気持ちが生まれます。
前向きな気持ちがモチベーションにつながる1歩です。具体的には「1年前より給与が上がった」「責任ある仕事を任されるようになった」というように、過去の自分と今の自分を比べることがモチベーションを上げるコツです。
仕事を忘れてゆっくりと休む
介護職は、人手が足りず常に忙しかったり、肉体的な負担が大きかったりするため、慢性的な疲労やストレスが溜まりがちです。自分でも気付かないうちに蓄積した心身の疲労が、集中力低下やモチベーション低下の原因になっているケースも多くあります。仕事を忘れてゆっくりと休むことも重要です。
心と体の疲れを癒すためには、快眠が欠かせません。そして、よく眠るためには睡眠の環境を整えることがとても大切です。具体的には、自分に合った寝具を選び、寝室の環境を整えます。起きたときに体のどこかが痛い場合は、寝具が合っておらず、眠りが浅くなっている可能性があります。
体の負担にならない枕やマットを選び、掛け布団は保温性と吸湿性、放湿性のあるタイプを選ぶのがポイントです。寝床内の温度は33℃、湿度は50%が最適です。
まとめ
モチベーションを上げるためには、衛生要因の問題を解決して動機付け要因を満たすこと、内発的動機付けを意識すること、つまり仕事そのものに興味を持つことが重要です。また、自分なりのモチベーション要素を複数持ち、自宅では心身ともにゆっくりと休んでください。
「介護のみらいラボ」では、介護の現場で活躍する人に有益な情報を掲載しています。日々の業務の中で生じる悩みや疑問を解決するヒントもご提供しています。ぜひ「介護のみらいラボ」をご参考ください。
【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む
SNSシェア