介護士の早期退職は多い?新人が辞めたいと感じたときにするべきこと
文/中村 亜美
仕事に就いて間もないのに、「もう辞めたい」と感じている介護士の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
筆者も働き始めて数か月で、「辞めたい」と思った時期がありました。そして、そのときは「辞めたいけど、今辞めて大丈夫?」「転職が不利にならない?」「辞めずに済む方法があるなら知りたい」など、さまざまな思いが頭のなかを駆け巡りました。
そこで本記事では、筆者の経験を交えながら「介護士が早期退職したくなる理由」や「辞めたいと感じたときにすべきこと」などを考察していきます。
1.介護士の早期退職は多い?
公益財団法人介護労働安定センターが行った「平成25年度介護労働実態調査」によると、離職者の73%が勤務年数3年未満でした。このデータを見るだけでも、介護士の早期退職の多さがおわかりいただけるのではないでしょうか。
では、なぜ介護士には早期退職者が多いのでしょう?
その理由は、介護士の心や体の負担が大きいことにあると考えています。筆者の介護施設勤務時代にも、早期退職していくスタッフが数多くいました。また、筆者自身も介護スタッフとして入社したてのころ、精神的・身体的につらさを感じて辞めたくなることがありました。
同じように、心身の負担からストレスを抱えている介護士は、けっして少なくないと思います。
2.新人介護士が辞めたくなる理由
ここからは、筆者の経験も交えながら、新人介護士が辞めたくなる理由をより詳しく見ていきたいと思います。
①仕事をこなしていく自信がない
介護士として働き始めて数か月は、先輩スタッフから説明を受けながら仕事を覚えていく期間です。
その期間を経ることで、介護の仕事が少しずつわかってくるのですが...。同時に、難しい作業をいとも簡単にこなす先輩スタッフを見ながら、「私にはこんなことができるようになれる自信がない」と途方に暮れてしまうこともあります。筆者もそうでした。
筆者が介護士として入社して、最初に挫折しそうになったのは入浴介助です。他フロアの利用者の入浴介助方法も身に付けなくてはいけなかったため、なかなか覚えられずにつらい思いをしました。
また、入浴介助時は常に危険と隣り合わせであり、緊張と不安で混乱していたことも、挫折しそうになった理由の1つです。
新人時代は、徐々に任される業務のハードルが上がります。そして、ハードルが上れば上がるほど「自分にはできないんじゃないか」と思い、逃げ出したくなってしまうのです。
②環境になじめない
新しい職場は、慣れないとどうしても居心地の悪さを感じてしまうものです。筆者も新人時代、職場環境になかなかなじめず、つらい思いをしました。
特に、休憩時間に先輩スタッフと一緒になったときの違和感は、今でも覚えています。「こちらから話かけたほうがいいのだろうか。でも、話しかけたら迷惑になるかもしれない」と悩みながらいちいち顔色をうかがい、家に帰るとぐったりしてしまう毎日。慣れない環境で働くのは、言葉では言い表せないほど居心地の悪いものでした。
こうした緊張感が苦痛で、介護士を辞めたくなってしまう人もいます。
③先輩スタッフが怖い
先輩スタッフが「怖い」と感じて、辞めたくなる人も多く見られます。
職場にはさまざまなスタッフがいて、なかにはきつい言い方をする人もいます。最初はできないことも多いため、きつく指摘されると心が折れてしまう場面もあるでしょう。
筆者も新人時代、先輩スタッフを「怖い」と感じて、辞めたくなったことがありました。しかし、逃げずにこちらから質問してみると、案外優しく教えてくれたりして、少しずつ先輩スタッフのいい部分が見えてきたのを覚えています。
④思い描いていた介護ケアと違った
思い描いていた「理想の介護ケア」と現実のギャップに悩んで、辞めたくなる場合もあります。
学校や講習では「理想的な介護ケア」を学び、自分なりに理想の介護ケアを思い描きます。しかし、いざ現場で働いてみると、実際に行われている介護が理想と違いすぎて驚いてしまうものです。
例えば、利用者のペースに合わせてゆっくりとコミュニケーションを取るのが理想だと思っていても、実際には多忙でゆっくりとコミュニケーションが取れないことがあります。そうしたギャップを受け入れられないと、辞めたいと感じてしまうかもしれません。
3.辞めたいと感じたときにすべきこと
辞めたいと思ったときにすべきことを、以下にまとめました。
①自分がなぜ辞めたいと思うのかを整理してみる
辞めたいと思ったものの、その原因が自分でもよくわからず、モヤモヤしてしまうことがあります。
しかし、辞めたい理由がわからないまま悶々としていても、解決方法は見つかりません。まずは、自分の気持ちと向き合い、「なぜ辞めたいと思ったのか」「具体的に何がつらいのか」を考えてみましょう。
②悩んでいることは本当に解決できないのかを考えてみる
辞めたい原因や自分の気持ちと向き合ったら、「悩んでいることは本当に解決できないのか」を冷静に考えてみてください。
例えば、仕事を覚えられないことで不安になっている場合は、「仕事を覚えるためにできることは何だろう」「何から始めればいいのだろう」と考えてみるのです。
③解決方法が見つかったら、具体的に何をいつまでに行うかを決めて実践してみる
自分なりの解決方法が見つかったら、期限を決めて実践してみましょう。
仕事が手早くできないことに悩んでいるのなら、「〇月〇日までに仕事を適切なスピードでできるようになる」と目標を立て、それを達成するための計画を立てます。計画は「仕事が手早くできるまで、毎日業務の手順を家で復習する」など、ちょっとしたことで大丈夫です。まずは継続できるような計画を立て、それでも達成できない場合は次の方法を考えるようにしましょう。
4.早期退職者が多い職場、少ない職場の違い
早期退職者が多いのは、自身の問題だけでなく、職場の環境が影響している可能性もあります。そこで、筆者の介護職経験をもとに、早期退職者が多い職場と少ない職場の違いを以下にまとめてみました。
早期退職者が多い職場 | 早期退職者が少ない職場 |
---|---|
人間関係が悪く連携しにくい | 人間関係がよく連携が取れている |
待遇に対する不満の声が多い | 待遇に対する不満の声が少ない |
常に人手不足 | 人手が足りている |
スタッフ1人が負担する仕事量が多い | みんなで連携するため、スタッフ1人が負担する仕事量が比較的少ない |
早期退職が多い職場は、もともといるスタッフも職場に対して不満をもっているケースが少なくありません。そして、多くの人が「待遇に納得がいかない」「1人ずつの負担が多すぎる」「人間関係が悪い」などの環境に不満をもちながら働いているため、新人が雰囲気の悪さに気づき、早期退職が増えてしまう傾向にあるのです。
一方で、もともといるスタッフが環境に満足し、納得しながら働いている場合は、職場の雰囲気が良好です。そのため、新人も居心地の悪さを感じずに働き続けることができるでしょう。
5.早期退職は転職に不利?
早期退職は転職に不利なのでしょうか?
筆者の経験を踏まえると、「状況による」というのが結論です。不利といえば不利ですが、介護施設を早期に退職したからといって、再就職できないわけではありません。
事実、ある介護施設の採用担当者は「なぜ、早期退職したのかは確かに気になる。けれど、介護施設にはいろいろな環境があって、合う・合わないがあるのも事実。人柄がよければ早期退職していても雇い入れたい」と話していました。
この事例からもわかる通り、早期退職が不利かどうかは、それぞれの介護事業者の考え方によるでしょう。ただし、なかには早期退職をよく思わない採用担当者がいることも覚えておいてください。
6.勤め続けるための方法をまずは考えよう
早期退職によるその後の影響を考えると、可能な限り勤め続けるのがよいと思います。
そのため、「辞める」という決断を下す前に、まずは今悩んでいることを明確にし、それに対する解決策を考えて実行してみましょう。退職を検討するのは、その後でも遅くありません。
自分の人生を長期的に考え、最善の選択をしてくださいね。
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