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高齢者レクリエーション 高齢者レクリエーションのノウハウ 2023/07/27

#認知症ケアの現場から

介護施設のレクに取り入れたい!造花と油粘土の生け花|認知症ケアの現場から(9)

文/安藤祐介(作業療法士) 5/thumbnail.jpg

介護施設では、余暇時間の充実を図るためにレクリエーションが行われます。特に、参加される方の昔の趣味を取り入れたものは興味・関心をひきやすく、非常に満足度の高いレクリエーションとなるでしょう。

当施設を利用されている方の趣味として多く見られるのが、カラオケ、グランドゴルフ、ハイキング(散歩)、畑仕事、将棋、御詠歌などです。昔と同じように行うのが難しい方でも、これらの要素を組み込んだレクリエーションを実施したり、日常会話の話題に取り上げたりすると笑顔につながることがあります。

本記事では、女性の利用者さんの趣味として挙げられることが多い「生け花」をテーマにして、介護施設のレクリエーションに取り入れるための準備や手順をご紹介します。

1.生け花に期待できる効果

  • 気分転換や楽しみの機会創出につながる
  • 日中の活動性が高まって生活のリズムが整う
  • 心身が賦活化して認知機能の維持につながる
  • 活動的な座位姿勢をとることで体力の維持につながる
  • 他者との交流を通して社会性が養われる

2.なぜ造花を使用するの?

生け花では、花や草木を花器に生けて作品を作ります。本来使用するのは生花ですが、それだと活動のたびに経費がかかったり、買い出しに行く必要があったりするので、介護施設で頻繁に行うにはハードルが高くなります。そのため、レクリエーションでは、本物の草花に似せて作られた造花を使用するのがおすすめです。
造花は枯れることがないので、一度用意すれば長く使用できます。また、利用者さんが活動を行いたいときにすぐ提供することができ、終了後の片付けも容易です。完成度の高い造花は生花と見間違えることもあり、利用者さんの中には、職員に言われてはじめて造花だと気付く方もいらっしゃいます。


3.造花を使った生け花の楽しみ方

①造花の準備
100円ショップやホームセンターなどで造花を購入します。その際、なるべく本物に近い色や形の草花を選ぶのがポイントです。できるだけ多くそろえると、利用者さんが選ぶときの楽しみが増えたり、作品に個性が出やすくなったりして活動の質が高まるでしょう。



②造花を整える
利用者さんが生けやすいように、造花の形を整えます。造花は茎や枝の部分がプラスチック製だったり、中に針金が入っていたりすることも多いので、一般的なハサミで切ると刃こぼれする可能性があります。切る際には、硬いものを切るのに適したニッパーやペンチを使用しましょう。すべてを同じような長さにそろえるのではなく、茎や枝が短いもの・長いもの、花や葉が多いもの・少ないものを用意するなど、バリエーションを増やしておくのも造花を整える際のコツです。そうすることで、利用者さんの「もう少し枝の長いものがほしい」「ここに花が付いているものはないの?」といった要望に応えやすくなります。



③花器の準備
造花を生けるための花器を準備します。一輪挿しのように口が狭いものだと短時間で活動が終わってしまうので、口が広くたくさんの草花が入るものを選ぶとよいでしょう。ちなみに、当施設では口が広く深さもある湯飲み茶わんを花器に見立てて使用しています。花器は購入してもよいですし、利用者さんやご家族、職員に使用していない器を寄付してもらってもかまいません。
花器が準備できたら、中に造花を固定するための粘土を入れます。生花に使用されるオアシス(生花用吸水スポンジ)は数回使用すると穴だらけになりますし、剣山のような花留だと利用者さんが狙ったところに挿しにくいもの。その点、粘土であればコストと挿しやすさが両立できます。粘土にはいろいろな種類がありますが、造花の生け花には時間が経っても固まりにくく、繰り返し使用できる「油粘土」が適しています。



④造花を生けてもらう
利用者さんを活動の場にお呼びして、好みの花器に造花を生けてもらいます。職員が付き添えるようであれば、一緒に活動を楽しみながら好きな花の名前を聞いたり、生け花の流派を聞いたりして(習っていた方の場合)、話題を広げるのもよいでしょう。利用者さんが造花の長さの調整を希望されたときは、職員がニッパーで切って差し上げると親切です。



4.実施時にスタッフが気を付けたいポイント

造花の生け花は利用者さんが直接手に取って行う活動であり、見た目も生花に近いため、認知症がある方の場合は、誤って口に入れてしまう「異食」のリスクがともないます。そうした方が参加される際は、職員が近くで行動を見守り、リスクの軽減を図る必要があるでしょう。
また、生花ではなく造花を使用しているので、プライドが高い方や教室で指導されていた方、本格的に習われていた方には稚拙に見えてしまい、活動への参加を断られるケースもあります。そうした場合は無理強いをせず、活動を見守ってもらったり出来上がった作品を品評してもらったりするとよいでしょう。また、その方の心の声に耳を傾け、「私は生徒を指導するくらいの先生だったのよ」「本当のお花なら参加したいの。誇りを持って生きてきたことをわかってほしい」といった気持ちをくみ取りながら、今後の対応に生かしていくことも大切です。

文/安藤祐介

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安藤祐介(Yusuke Ando)

作業療法士

2007年健康科学大学を卒業。作業療法士免許を取得し、介護老人保健施設ケアセンターゆうゆうに入職。施設内では認知症専門フロアで暮らす利用者47名の生活リハビリを担当し、施設外では介護に関する講演・執筆・動画配信を行っている。

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