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すごい介護 介護のみらい 2020/05/28

#サイバーダイン#先端技術#介護ロボット#佐野勝大

介護の未来を変える、装着型サイボーグ「HAL®︎」 「CYBERDYNE株式会社とつくばロボケアセンター」(1)

文:佐野勝大 編集者・ライター sugoikaigo_20200528_4_01.jpg

つくばロボケアセンターの展示室は見ているだけで楽しめる

世界初の装着型サイボーグで有名なCYBERDYNE株式会社の、「つくばロボケアセンター」取材レポート第1回。装着型サイボーグとはどういうもので、どう使われるのでしょうか。CYBERDYNE株式会社取締役の安永さんと、つくばロボケアセンターの貴志さんに話を聞きました。

介護現場で注目、身体を動かす神経の機能改善を目指す、画期的な技術

人間の脚に取り付けるタイプ・腰に取り付けるタイプなどさまざまな種類のHAL®︎がある

人間の脚に取り付けるタイプ・腰に取り付けるタイプなどさまざまな種類のHAL®︎がある

「HAL®︎」は、身体に取り付けて使うだけで、装着者をサイボーグ化する「装着型サイボーグ」です。例えば、病気や事故、加齢などによって身体の一部が不自由になった方たちでも、HAL®︎を使うことで、膝・肘を曲げる動作や歩行がしやすくなります。また、身体の脳・神経・筋系の機能改善を促すことで、HAL®︎を外した後でも、その効果が持続する可能性があると言われています。

脚に取り付ける下肢タイプ、腕や脚の関節に対応した単関節タイプなど、「HAL®︎」には取り付ける身体の部位や用途に合わせた複数のモデルが存在。では、どのような仕組みで身体機能の維持や向上を促すのでしょうか。

つくばロボケアセンター センター長代行 貴志浩通さん

つくばロボケアセンター センター長代行 貴志浩通さん

「人が身体を動かそうとすると、脳から神経に指令が送られます。その際にこの指令信号が、微弱な『生体電位信号』として皮膚表面に漏れ出てきますが、この信号をHAL®︎のセンサーでキャッチ。装着している人がどのような動きをしようとしているかをHAL®︎が読み取り、身体と同じタイミングで動きを実現してくれるため、思い通りの動作ができるのです」(つくばロボケアセンター センター長代行/貴志浩通さん)

例えば、脳が「腕を伸ばす」「膝を曲げる」といった指令を出すと、「HAL®︎」が反応。身体が動かしづらい方の場合でも、動きを補い、伸ばしたり曲げたりといった意思に従った動作を実現してくれるのだという。しかも、身体と同時に「HAL®︎」が動くため、動きが非常にスムーズだそうです。

「同時に、動作が実現されると、身体内部の感覚情報系の情報が脳に戻っていくと考えられております。運動意思と同期した動きと、脳へのフィードバックからなる、情報伝達ループを構成することによって、『HAL®︎』を外した後でも身体を動かしやすくなる可能性があります。つまり、『HAL®︎』は筋肉ではなく、脳神経と身体の機能を改善するための技術だと言えるでしょう」(貴志さん)

身体だけでなく、メンタルにも好影響を与える「HAL®︎」

取材時に「HAL®︎」を使ったプログラムに取り組んでいた女性。歩くスピード、フォームなどが自分で見られる。

取材時に「HAL®︎」を使ったプログラムに取り組んでいた男性。歩くスピード、フォームなどが自分で見られる。

身体の機能改善の一助となる「HAL®︎」は、すでに全国の病院やリハビリ施設のほか、介護施設などで活躍しています。では、具体的にはどういった方々が利用されているのでしょう。

(取締役 営業本部長/安永好宏さん)

(取締役 営業本部長/安永好宏さん)

「脳梗塞や脳出血などの脳疾患、脊髄損傷、パーキンソン病、脳性麻痺などで、身体を自由に動かせなくなった方のほか、加齢などの理由で身体機能が低下した高齢者の方などさまざま。種類がいくつかありますが、例えば下肢タイプのものは、現在673台(2020年4月時点)が、病院や介護施設などで使われています。ちなみに、導入いただく台数などによって変わりますがレンタル料金はだいたいHAL®︎医療用下肢タイプで月40万円、HAL®︎自立支援用下肢タイプで月25万です」(取締役 本部長/安永好宏さん)

では次に、「HAL®︎」を使った場合の効果について教えてもらいました。もちろん、ケースバイケースですが、大きな効果を得られた事例も少なくないそうです。

「脳卒中の後遺症で18年間、肘を曲げることができなかった方がいらっしゃいました。ところが、3カ月間トレーニングを続けたところ、自力で肘を曲げられるようになったのです。なかには、1回のトレーニングで以前よりも速く歩けるようになったという方もいらっしゃいました」(安永さん)

また、2歳のときに交通事故で完全脊髄損傷になった男の子が、数年後に「HAL®︎」をつけた状態で脚の曲げ伸ばしができるようになったケースもあるそうです。

「完全脊損の場合でも、『生体電位信号』をほんのわずかでもキャッチできれば、『HAL®︎』によって身体を動かせる可能性があるのです」(安永さん)

「HAL®︎」の大きな特長は、ロボットのように機械が主導して身体を動かしているのではなく、装着している人の意思に従って動作をサポートしていることです。それが、HAL®︎を使ったサービスの利用者の大きなモチベーションにつながるのだといいます。

「それまで動かなかった身体を、『HAL®︎』を使って思うように動かすことができる。これは、当事者からすれば、何ものにも代えがたい喜びだと言えるでしょう。『HAL®︎』を使ったプログラムは身体だけでなく、メンタルにも好影響を与えるのです」(安永さん)

最新テクノロジーが日本の介護の常識を変えていく

広い施設内ではさまざまな先端機器や健康機器が使用される。

広い施設内ではさまざまな先端機器や健康機器が使用される。

「HAL®︎」を開発したCYBERDYNE株式会社では、「HAL®︎」を使用した最先端のプログラムを、全国14カ所のロボケアセンターで展開。加齢や病気・怪我で身体機能の一部が動かしづらくなってしまった方の機能改善をサポートしています。

「ロボケアセンターは機能改善に向けたプログラムを提供する場としてだけでなく、『HAL®︎』の運用技術を広める場としての役割も担っています。そのため、実際に操作を行う理学療法士や看護師などへの研修も随時開催。病院やリハビリ施設、介護施設との人材交流も活発で、多くの医療・介護のプロがセンターで学びながら『HAL®︎』の運用スキルを高めています」(安永さん)

国内だけでなく、世界中から高い注目を集めている「HAL®︎」。その証拠に、ロボケアセンターにはアメリカやドイツ、イタリア、マレーシア、フィリピンなどから見学者や研修生が訪れるそうです。そう遠くない将来、「HAL®︎」が日本の、ひいては世界の医療や介護の、常識を変える日がやってくるかもしれません。

(2020年4月現在)

※コロナウイルス感染予防のため緊急事態宣言中の営業については各ロボケアセンターにお尋ねください。

つくばロボケアセンターその2へ続く

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プロフィール

佐野勝大

編集者・ライター

雑誌編集者を経て独立。多数のウェブサイト・雑誌でインタビュー記事などを執筆。介護雑誌『介護のことがよくわかる本』の編集ライター、介護施設情報サイト、マイナビ介護職ライターなど、介護現場の取材を多く行っている。

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