レスパイトとは?介護の息抜きに利用できるレスパイトケア4選
構成・文/介護のみらいラボ編集部
介護の現場で働くスタッフの役割は、高齢者に介護を提供することだけではありません。介護を担う家族に対しての適切な支援、すなわち「レスパイトケア」を提供することも、介護スタッフの大切な役割です。
なぜなら在宅介護を支える家族が心身ともに疲弊してしまうと、家族と高齢者の共倒れにつながるおそれがあるためです。
そこでこの記事では、レスパイトの意味や目的、さらにはレスパイトケアに利用できるサービスについて、分かりやすく解説します。「レスパイトの基礎知識を身に付けたい」「高齢者の家族を適切に支援するノウハウを習得したい」と考える方はぜひご覧ください。
1.レスパイトケアとは?
レスパイトは英語で「respite」と書き、「一時中断」「小休止」「猶予」などを意味する言葉です。介護においては、「介護する側が一時的に介護を離れて、リフレッシュすること」を指します。
近年、レスパイトケアという言葉を聞く機会が増えましたが、これは介護する家族をケアするためのサービスのこと。在宅介護を支える家族に対して介護から離れる時間を提供し、心と体を休めてもらうことを目的に実施されています。
レスパイトケアは、高齢者と家族両方にとって重要な意味を持っており、主に下記のような効果が期待されています。
・介護を担う家族の負担を軽減し、在宅介護の継続を可能にする
・高齢者にも家族と離れて過ごす時間を提供し、リフレッシュできるようにサポートする
先に、「レスパイトケアは在宅介護を支える家族のケア」と紹介しましたが、実は要介護者の側にも有効です。なぜなら、在宅介護を受けている高齢者のなかには、家族に対して「世話をさせてしまって申し訳ない」などの感情を持っている方も多く、そのせいで精神的に疲弊することがあるからです。
だからこそ、レスパイトケアでお互いに離れて過ごす時間を持つことは、高齢者と家族両方の精神的な疲労を解消し、リフレッシュしてもらうことにつながるのです。
2.レスパイトケアとして利用できるサービス4選
レスパイトケアとして利用できるサービスの一部は医療保険や介護保険が適用されるため、経済的な負担を軽減することも可能です。ただし、医療保険や介護保険の適用を受けるには、対象者などの条件を満たす必要があるので注意しましょう。
以下では、医療保険や介護保険が適用となるサービスの具体例を紹介します。
レスパイト入院
レスパイト入院(介護家族支援短期入院)は、医療保険が適用される短期入院のサービスのことです。レスパイト入院では食事・排せつなどの介助に加えて、必要な医療管理が提供されます。また、体の状態によってはリハビリを受けることもできます。
レスパイト入院を利用するには、下記の条件を満たす必要があります。
・介護保険によるショートステイの利用が困難で、在宅療養している方
・医療的な管理や介助を常時必要としている方
医療的な管理を常時必要としている方のなかには、人工呼吸器を装着している方や、点滴・胃ろう(胃瘻)による栄養摂取を行っている方などが含まれます。ただし、受け入れ対象となる高齢者の状態については医療機関によって条件が異なるため、事前の確認が必要です。
レスパイト入院の期間は、最長2週間程度が一般的です。入院期間の経過後は自宅などに戻り、従来の生活を継続する必要があります。
また、レスパイト入院は治療目的の入院とは異なるため、血液検査・レントゲン検査などは原則的に実施されません。ただし、医師の判断により必要と判断された場合には、例外として実施されることがあります。
デイサービス
デイサービス(通所介護)とは主に日中、介護を必要とする高齢者などがデイサービスセンターに通って受けるサービスです。日帰りで実施されるデイサービスは、介護保険が適用されます。
デイサービスでは、入浴や排せつなどの介助や機能訓練、健康チェック、レクリエーションなどが提供されます。また、デイサービスセンターには1名以上の看護職員が常駐するため、医療的なケアを受けることも可能です。
下記は、介護保険が適用されるデイサービスを利用するための条件です。
・居宅(自宅もしくは有料老人ホームなどの居室)で生活している方
・要介護認定を受けている方
デイサービスは民間企業によって運営されることが多く、費用やサービス内容は、施設ごとに異なるため事前の確認が必要です。なお、施設によっては夜間を含めた、宿泊スタイルの預かりに対応しているところもあります。ただし、宿泊スタイルの預かりの場合、介護保険が適用されないので注意しましょう。
(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」)
ショートステイ
ショートステイ(短期入所)とは、介護を必要とする高齢者などが短期間、老人短期入所施設や特別養護老人ホームに宿泊するサービスです。ショートステイでは、食事や入浴、排せつ、更衣、移乗などの介助、機能訓練、レクリエーションなどが提供されます。介護保険が適用されるショートステイの対象となるのは、居宅で生活しており、要介護認定を受けている方です。ショートステイは最短1日から利用でき、30日までの連泊に対応しています。
ショートステイの費用は、基本料金、サービス加算料金、自費負担を合計した金額です。
自費負担分には、介護保険が適用されないので注意してください。
基本料金 | 食事や入浴の介助など、基本的な介護サービスに対してかかる費用 |
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サービス加算料金 | 送迎や専門スタッフによる機能訓練など、基本的な介護サービス以外に対してかかる費用 |
自費負担 | 滞在費、食費、施設が用意する備品を使用する場合の日用品代など |
ショートステイをサービス内容でより詳細に区分すると、短期入所生活介護・短期入所療養介護に分類できます。介護老人保健施設などで実施される「短期入所療養介護」では、基本的な介護サービスに加えて、医療サービスを受けることが可能です。
(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」)
ホームヘルプ
ホームヘルプ(訪問介護)とは、訪問介護員等が時間単位で高齢者の自宅を訪問し、食事、排せつ、入浴などの介助や家事などを提供するサービスです。介護保険が適用となるホームヘルプは、居宅で生活し、要介護認定を受けている方が利用できます。
ホームヘルプで提供されるサービスには、身体介護、生活援助、通院等乗降介助の3つに分けられます。
身体介護 | 食事、排せつ、入浴、体位変換など、高齢者の身体に直接触れて行う介助 |
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生活援助 | 掃除や洗濯、調理など、高齢者の日常生活に必要な家事の援助 |
通院等乗降介助/th> | 高齢者が通院する際の車両への乗車・降車の介助や受診手続き、薬の受け取りなどの介助 |
ホームヘルプの費用は、サービス内容と所要時間に応じて決定される仕組みです。居宅で介護サービスを受けられるため、施設に抵抗のある高齢者も抵抗なく利用できるでしょう。
ただし、ホームヘルプを長時間利用すると費用がかさみやすいため、1〜2時間程度リフレッシュしたい家族に適したサービスだといえます。冠婚葬祭への参加などの事情で、数時間自宅を留守にする際の手段として検討するのも良いでしょう。
(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」)
3.レスパイトケアを利用する際の注意点
高齢者とその家族が、レスパイトケアを効果的に利用できるようにするには、ケアマネジャーの十分な事前説明や準備、適切なサービスの選択が不可欠です。ケアマネジャーや介護スタッフは、下記にまとめた注意点を把握し、高齢者と家族両方にとって意義のあるレスパイトケアを提供できるように心がけましょう。
・「後ろ向きな選択ではない」と理解してもらう
なかには「介護を休んでいいのだろうか」「自分たちだけ楽しんでいいのだろうか」と後ろめたさを感じてしまう家族もいます。しかし、リフレッシュする時間を持つことは、介護疲れを防止するための良い手段です。また、レスパイトケアは高齢者にとっても精神的な負担から解放される良い機会です。ケアマネジャーや介護スタッフは双方とよく話し合い、レスパイトケアの利用が後ろ向きな選択ではないことを理解してもらいましょう。
・基本的には事前に予約が必要となる
レスパイト入院やショートステイを利用するには、多くの場合、事前の問い合わせや予約が必要です。希望する施設に空きがない場合も考慮し、早めに準備を進めましょう。
・民間サービスの利用も検討する
介護保険適用施設の予約が取れない場合には、民間企業が提供する有料サービスの利用も検討しましょう。一部の有料サービスでは、高齢者の話し相手や外出の付き添いなど、介護保険でサポートできない内容の支援も提供されます。また、有料サービスであれば、要介護認定を受けていない高齢者もサービスの対象となる可能性があります。
まとめ
介護におけるレスパイトとは、在宅介護を支える家族が介護から一時的に離れ、リフレッシュすることを指します。レスパイト入院やデイサービスなどを活用した「レスパイトケア」を定期的に取り入れることは、高齢者と家族が円満に在宅生活を継続するための良い手段となるでしょう。
なお、介護の現場で実践できる高齢者や家族のためのサービスは、レスパイトケア以外にも多数あります。高齢者や家族の支援に役立つ知識を深め、さらなるステップアップを目指したい方は、ぜひ介護のみらいラボを参考にしてください。
※当記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています
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