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仕事・スキル 介護士の常識 2020/11/02

#介護保険#生活援助#訪問

訪問介護で行う生活援助とは?介護保険適応サービスと保険外サービスの違いを理解しよう

文:中村 楓(なかむらかえで) 介護福祉士・介護コラムニスト commonsense_20201102_1.jpg

ご利用者の生活を維持するために必要な掃除や洗濯、料理などの支援を行う訪問介護を、生活援助といいます。
「介護保険サービス」として行う生活援助の場合、利用できる内容に制限が設けられているためご利用者のニーズに対応しきれないこともあるでしょう。そのような場合に利用できるのが「保険外サービス」です。
とはいえ、ご利用者の立場からすると、この2つのサービスの区別がつきにくいため、折に触れて説明し了承を得ておくと安心でしょう。まずは訪問介護員(ホームヘルパー)として、それぞれの違いをしっかり理解しておくことが大切です。
今回は、介護保険サービスと保険外サービスの違いも含めて、生活援助について詳しくお伝えします。

訪問介護の生活援助とは

生活援助とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問して支援を行う訪問介護サービスのひとつです。掃除や洗濯、料理などの家事のほか、日用品の買い物サポートや薬の受け取りなど、利用者さんが日常生活を送るうえで必要な行為のお手伝いをします。
生活援助はあくまで利用者さんの日常生活を支援することが目的です。そのため、掃除や洗濯、料理の仕方は利用者さんに合わせることになり、実際には、利用者さん個々の意向を確認しながら一人ひとりに合わせた方法でサービス提供を行います。

訪問介護の生活援助というと、幅広いサービスが受けられると思われがちです。しかし、介護保険サービスにおける生活援助には、「利用者本人の自立を支援する」という目的があるため、行える生活支援には制限があります。例えば、空き部屋の掃除や花木の水やりなどは本人の生活に欠かせない家事とは言い難いため、介護保険サービスの対象外となります。また、家事を行える家族が同居している場合には、生活援助は利用することができません

生活援助を含む訪問介護に従事する訪問介護員は、次の資格のいずれかが必要です。

・介護福祉士
・実務者研修修了
・介護職員初任者研修修了

これらの資格に加えて、2018年度に新設された「生活援助従事者研修」を修了している人は、上記資格を保持していなくても生活援助に従事できるようになりました。ただし、ご利用者の身体に触れる「身体介護」を行うことはできません。

介護保険における生活援助の範囲や単位数

生活援助を介護保険サービスとして利用する場合、生活援助の範囲や単位数が決められています。また、生活援助の利用回数についても、上限の目安が定められています。

介護保険サービスで行える生活援助の範囲

介護保険内で行う生活援助は、家事代行サービスと違い「ご利用者本人の自立支援」を目的としています。そのため、以下のいずれかに当てはまらなければ介護保険サービスとしての生活援助を受けることはできません。

・単身者でご利用者本人が家事を行うことが難しい
・同居する家族はいるが、本人と家族の双方に障害や疾病があり家事ができない

また、介護保険内での生活援助の範囲は、「本人の代行的なサービスとしての位置づけで、仮に介護等が不要になった時には本人自身で行うことが基本となる行為」とされています。そのため、商品の販売や農業といった生業を援助するような行為や、本人の日常生活に直接関係しない活動は、介護保険の対象外となります。介護保険サービスとして行える生活援助には、具体的には以下のようなものがあります。

・本人の部屋やトイレの掃除、ゴミ出し
・収納やアイロンがけを含む洗濯
・衣替えなどの衣類の整理や、ボタン付けなどの補修
・ご利用者本人分の一般的な調理
・日常品等の買い物
・薬の受け取り など

生活援助の単位数はどれくらい?

介護保険制度では、サービスごとに設定された単位数で介護報酬を計算します。訪問介護で行う生活援助では、サービスを提供した時間によって単位数が決まります。具体的には「20分以上45分未満」と「45分以上」の2種類に分かれており、それぞれの単位数は以下の通りとなっています。

・20分以上45分未満:181単位
・45分以上:223単位

また、ご利用者の居住地域や事業所の体制などによっては、加算や減算もあります。生活援助を利用した場合に課される加算や減算には、主に次のようなものがあります。

・初回加算
初めて利用した場合に初月に限り月200単位が加算される。過去に利用があった訪問介護事業所でも、2ヶ月利用がなければ初回加算の対象となる。

・早朝、夜間、深夜加算
早朝(6~8時)、夜間(18~22時)、深夜(22時~翌6時)の間にサービス提供を行った場合に加算される。早朝と夜間は基本単位数の25%、深夜は50%が加算される。

・特定事業所加算
介護福祉士等の配置が一定水準以上、もしくは重度要介護者の利用割合が一定水準以上の場合に加算される。事業所の体制により、基本単位数の5~20%が加算される。

・特別地域訪問介護加算
国が定めた特別地域でサービスを提供する本単位数の15%が加算される。

・中山間地域等における小規模事業所加算
国が定める中山間地域等に小規模事業所がある場合、基本単位数の10%が加算される。

・中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
運営規定によって定められている「通常の事業の実施地域」を超えて、国が定める中山間地域等に居住するご利用者に対しサービス提供を行った場合、基本単位数の5%が加算される。

・介護職員処遇改善加算
事業所の体制により、所定単位数の5.5~13.7%が加算される。

・介護職員初任者研修修了者がサービス提供責任者の場合の減算
事業所のサービス提供責任者が初任者研修のみの修了者の場合には、基本単位数が70%に減算される。

・共生型訪問介護を行う場合の減算
共生型訪問介護を行う事業所の場合、介護保険法もしくは障害者総合支援法における訪問介護の要件のどちらかを満たしていない場合には、基本単位数が70~93%の減算となる。

・同一建物減算
訪問介護事業所と同一建物に居住するご利用者にサービスを提供した場合、提供した人数によって基本単位数が85%もしくは90%に減算される。

生活援助は利用回数の目安がある

介護保険内で提供される生活援助は、ご利用者の自立支援や重度化防止の観点から2018年10月より利用回数の上限目安が定められました。ただし、この上限目安はご利用者のサービス利用を制限するものではなく、上限目安に至ったケアプランに対して見直しを促すことを目的としています。上限を超える利用が必要な時には、市町村に届け出すればケアプランに組み込むことができます。介護度別の利用上限目安は次の通りです。

要介護1:27回
要介護2:34回
要介護3:43回
要介護4:38回
要介護5:31回

介護保険外サービスの生活援助

家事している女性

年末の大掃除や庭木の手入れなど、介護保険内では支援できない生活援助が求められる場合には、介護保険外サービスを提案する方法があります。ただし、自己負担額が1~3割となる介護保険内サービスとは異なり、保険外サービスは実費の全額負担となります。
では、実際に介護保険外のサービスには、どのようなものがあるのでしょうか。大手訪問介護事業所で実際に受けられる保険外サービスを例に、介護保険サービスとの違いも含めて詳しく見ていきましょう。

シニア対象のお手伝いサービス

高齢期になると、要介護認定を受けていなくても、日々の家事が辛くなったり億劫になったりする人がいます。また、介護保険のサービスでは使えない家族分の家事をお願いしたい場合にも活用できるのが、シニア対象のお手伝いサービスです。
シニア対象のお手伝いサービスでは、掃除や料理などの家事だけでなく、公共料金の支払い代行なども依頼できます。お米のように重い物やトイレットペーパーのように大きな物の買い物も可能になるなど、対応できる範囲が広いのが保険内サービスとの大きな違いです。
また、定期的な利用だけでなく、体調が悪い時だけといった単発利用がしやすい点も魅力といえます。特に庭の手入れといった屋外作業は、夏場や冬場だけ依頼することで心身の負担を軽くできるでしょう。

掃除代行サービス

介護保険内の生活援助として行う掃除は、居室とトイレ、お風呂など、利用者が日常的に使う場所に限定されています。また、同居家族が家事を担える環境にある場合には、介護保険の対象外です。しかし、家族が仕事で忙しく掃除が行き届かない場合もあるでしょう。
そんな時に利用できるのが、掃除代行サービスです。掃除代行サービスでは、普段の掃除だけでなくレンジフードなどの高い位置の掃除や大掃除なども依頼できます。高齢になって掃除が億劫になってきた人や、もともと掃除が苦手という人にもよく利用されているサービスです。

お片付けサービス

高齢者の一人暮らしや夫婦世帯の家では、必要以上に物が多いということがよくみられます。使わない食器が何人分もあったり、使わない部屋が倉庫状態になっていたり。思い入れのある物が多く、片づけたくても整理できないという人も多いでしょう。気が付けば、物が多すぎてキッチンの使い勝手が悪くなっている家や、動線に物があって危険な状態になっている場所もあるかもしれません。
しかし、ご利用者が使いやすくするための片付けや動線確保のための模様替えは、介護保険内の生活援助では行うことができません。そのような時に使えるのが、お片付けサービスです。お片付けサービスでは、食器や押し入れ、クローゼットの整理や掃除、使っていない部屋の片づけなども依頼できます。

高齢者・障がい者ケア

介護保険内での利用枠を超えてしまい新たなサービスを利用できない場合や、生活援助では難しい刻み食やミキサー食の調理などを支援してもらえるのが、高齢者・障がい者ケアです。専任の介護職員が訪問してさまざまなサービスを行ってくれるため、安心して任せられます。介護保険サービスでは利用が難しい冠婚葬祭の付き添いや、旅行や外出時の支援が行える点も魅力的です

介護保険が適用できる生活援助の範囲をしっかり把握しよう

木製の家芸術品を包んでる手

自立支援や重度化予防などの観点から、介護保険サービスの生活援助には制限があります。実際に介護保険で利用できる生活援助の範囲は、ご利用者にはわかりにくい部分もあるので、介護従事者がしっかりと理解し、必要に応じてダスキンライフケアやニチイライフなど保険外のサービスを請け負う別の会社や部門があることも説明できるようにしておきましょう。

●関連記事:訪問介護は何ができて、実際どれくらいの料金がかかる?

●関連記事:身体介護と生活援助の違いは?それぞれのサービス内容を解説!

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中村楓(Kaede Nakamura)

介護福祉士・介護コラムニスト

現役介護支援専門員。介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級、認知症介護実践者研修の資格を持つ。病院や通所リハビリ、デイサービスで介護福祉士として働き、生活相談員や介護認定調査員の経験も持つ。「介護の未来を明るくする」をモットーに、現場感ある記事を書く介護コラムニストとしても活動中。

中村楓の執筆・監修記事

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