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仕事・スキル 介護士の常識 2020/09/01

#料金#生活援助#訪問#身体介護

訪問介護は何ができて、実際どれくらいの料金がかかる?

文:中村楓(なかむらかえで) 介護福祉士・介護コラムニスト commonsense_20200903_1.jpg

月間の訪問介護代は、いくらくらいなの?

自宅で生活する高齢者にとって、訪問介護は自立した生活を送るために必要な介護保険サービスの一つです。しかし、実際に訪問介護を利用する方々のなかには、「どのようなサービスを受けることができるの?」、「どれくらい料金がかかるの?」といった疑問を感じている人もいることでしょう。今回は、介護従事者として知っておきたい訪問介護の内容と、実際にかかる料金について詳しくお伝えします。

訪問介護のサービス内容とは

訪問介護とは、ご利用者が可能な限り自立した生活を送れるよう、訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、食事や入浴の介助、掃除や洗濯などの援助などを行う介護保険サービスの一つです。要支援認定を受けていれば、介護予防・日常生活支援総合事業の一環として、訪問介護が利用できます。通院等乗降介助は要介護者のみで、要支援の場合は利用できません。

ヘルパーとして訪問介護に従事するには資格が必要です。介護福祉士か実務者研修、もしくは介護職員初任者研修を修了していれば、訪問介護を行うことができます。また、2018年に新設された生活援助従事者研修を修了している人は、生活援助中心型であれば訪問介護に携わることができるようになりました。
訪問介護で提供されるサービスには、次の3つがあります。

・身体介護

ご利用者の体に直接触れて行う訪問介護サービスを「身体介護」といいます。身体介護には、排泄や入浴、食事などの介助が該当します。具体的な介助内容には、例えば次のようなものがあります。

排泄入浴食事
・トイレやポータブルトイレへの誘導、介助
ポータブルトイレの掃除
・オムツ交換
・認知症の人に対する排泄面の見守りや声掛けなど
清拭
・部分浴
・洗髪
・全身浴の準備、見守り、一部介助、片付けなど
・食事に関する一連の動作(食事の姿勢を整えることから片付けまで)
・嚥下が悪い人のための流動食の調理など、特段の専門的配慮をもって行う調理など

このほか、整髪や爪切りなどの整容、着替えや移動の介助なども身体介護となります。また、ご利用者が適切に薬を飲めるようにそばで見守り声をかける服薬介助も、身体介護に含まれます。

・生活援助

ご利用者が日常生活を送るために必要な掃除や洗濯、調理といった家事の支援を「生活援助」といいます。介護保険における生活援助は「ご利用者本人の自立支援」が目的であるため、単身世帯の高齢者や、病気などを理由に本人や家族が家事を担うことが難しい場合のみ利用できます。また、日常家事の範囲を超えるものや、家族分を含めた家事は介護保険の生活援助では利用できません。
介護保険サービスとして利用できる生活援助には、次のようなものがあります。

掃除洗濯調理買い物や薬の受け取り
・自室やトイレなどの掃除
・ゴミ出しなど
・洗濯機や手洗いでの洗濯
・洗濯物を干す
・洗濯物をたたむ、収納するなど
・配膳、後片付け
・一般的な調理など
・品物やつり銭の確認を含む日用品などの買い物
・薬の受け取りなど

このほか、ご利用者不在時のシーツ交換や衣服の整理・補修なども生活援助に含まれます。

●関連記事:訪問介護で行う生活援助とは?介護保険適応サービスと保険外サービスの違いを理解しよう

・通院等乗降介助

通院等乗降介助とは、要介護であるご利用者が通院などのために輸送を必要とする際、その車を運転する訪問介護員が乗降の介助を行うものです。いわゆる介護タクシーが行うサービスも、これに該当します。通院等乗降介助を行うには、介護福祉士の資格もしくは実務者研修・介護職員初任者研修を修了している必要があります。
通院等乗降介助では、次のような介助や支援を実施します。

通院等乗降介助
・車に乗降する際の介助
・乗車前後の移乗介助
・受診の手続きや受診のための移乗介助など

ただし、診察中の衣服着脱や体位変換などは基本的に医療サービスとして提供されるため、通院等乗降介助として行うことはできません。

訪問介護の料金構造を理解しよう

介護保険では、全てのサービスの料金を単位数で計算します。1単位当たりの料金は基本的に10円です。ただし、地域ごとの賃金等の差を考慮し、地域によって1単位当たりの金額が変わります。地域は8区分に分かれており、1単位10~11.40円となっています。

訪問介護では、提供するサービス内容、「身体介護」、「生活援助」、「通院等乗降介助」によって料金設定が変わります。身体介護と生活援助の場合は、時間によって基本料金が決まりますが、通院等乗降介助は1回当たりの料金となります。また、さまざまな条件によって加算と減算があります。それぞれの基本料金と加算、減算は以下の通りです。

・基本料金の単位

訪問介護の基本料金は、介護保険制度によって決められています。
介護保険制度は3年ごとに見直されており、直近では2018年に改正されました(2020年7月現在)。今回の改正では、自立支援や重度化予防を推進し評価する観点により、身体介護の単位数が増えた一方で、生活援助の単位数が減少しています。
実際の基本料金について、まず身体介護から見ていきましょう。

身体介護の場合、基本料金の単位は時間によって以下の4段階に分かれます。

  • 20分未満:165単位
  • 20分以上30分未満:248単位
  • 30分以上1時間未満:394単位
  • 1時間以上:575単位

1時間以上の場合は、さらに30分増すごとに83単位を加算します。

一方、生活援助の場合は次の2段階です。

  • 20分以上45分未満:181単位
  • 45分以上:223単位

なお、身体介護に引き続き、生活支援を行った場合には、所要時間20分から起算して25分ごとに66単位を加算します。ただし、上限は198単位までで、身体介護が20分未満の時には算出することができません。
最後に、通院等乗降介助の基本料金の単位数は時間でなく回数で計算します。単位数は1回98単位となります。

・加算要件

基本料金に上乗せされる料金にあたる加算要件には、次の10種類があります。

  • 1.  2人の訪問介護員等によるサービス提供
    体重が重いご利用者などのため、2人で訪問介護を実施した際に加算。基本料金を2倍で計算する。
  • 2.  早朝、夜間、深夜のサービス提供
    早朝(6~8時)と夜間(18~22時)にサービス提供した場合は基本料金を25%上乗せ。深夜(22~翌6時)のサービス提供は50%上乗せ。
  • 3.  特定事業所加算
    介護福祉士等の配置が一定水準以上の場合や、重度要介護者の利用割合が一定水準以上かつ研修等の実施が行われている場合に算定。条件によって、5%・10%・20%上乗せ。
  • 4.  特別地域訪問介護加算
    国が定めた特別地域でサービスを提供する場合、基本料金に15%上乗せ。
  • 5.  中山間地域等における小規模事業所加算
    国が定める中山間地域等に事業所がある小規模事業所の場合、基本料金に10%上乗せ。
  • 6.  中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
    運営規定によって定められている「通常の事業の実施地域」を超えて、国が定める中山間地域等に居住するご利用者にサービス提供した場合、5%を上乗せ。中山間地域等であっても、通常事業の実施地域内であれば加算しない。
  • 7.  緊急時訪問介護加算
    ご利用者や家族の要請に基づき、ケアプランに位置付けられていない訪問介護を緊急で利用した場合、1回に100単位を加算。
  • 8.  初回加算
    2ヶ月利用がなければ初回加算を取得できる。要介護者が要支援になったとき、初回加算の対象となる。
  • 9.  生活機能向上連携加算
    訪問リハビリもしくは通所リハビリ事業所のリハビリ専門職に同席し自宅を訪問したサービス提供責任者が、ご利用者にアセスメントを行い、計画書を作成した場合に算定される。2018年度の改定により加算要件が見直され、満たす要件によって100もしくは200単位を加算できるようになった。
  • 10.  介護職員処遇改善加算
    介護職員の処遇改善を目的に設置された加算。要件によって5.5~13.7%の加算ができる。

・減算要件

基本料金から減算される要件は次の3種類です。

  • 1.  初任者研修修了者の減算
    事業所のサービス提供責任者が介護福祉士や実務者研修修了者ではなく、初任者研修修了者の場合、基本料金が70%に減算。
  • 2.  共生型訪問介護の実施
    共生型訪問介護を行う事業者のうち、介護保険もしくは障害者総合支援法の基準のどちらかを満たしていない場合は、基本料金が70~93%に減算。
  • 3.  事業所と同一建物内に居住するご利用者にサービス提供した場合
    事業所と同一建物内に居住するご利用者、または、これ以外の同一建物のご利用者20人以上に対してサービス提供を行った場合には、ご利用者の人数に応じて基本料金を85%もしくは90%に減算。

訪問介護で実際にかかる料金

食事介助をする訪問介護員(ヘルパー)

訪問介護には身体介護・生活援助・通院等乗降介助がある。

前述の単位数によって算出された料金に自己負担割合をかけたものが、実際にご利用者が負担する金額となります。この項目では、自己負担額の具体的な例を詳しく見ていきましょう。

・自己負担額は1~3割

ご利用者本人の1年間の合計所得によって、自己負担額は1割・2割・3割に分かれます。各割合の要件は以下の通りです。

  • 1.  1割負担
    本人の合計所得が160万円未満。もしくは合計所得は160万円以上だが、年金収入とその他の合計所得の合計額が単身で280万円未満、2人以上の世帯で346万円未満の場合。
  • 2.  2割負担
    本人の合計所得が160万円以上220万円未満かつ、年金収入とその他の合計所得の合計額が単身で280万円以上、2人以上の世帯で346万円以上の場合。もしくは、本人の合計所得は220万円以上だが、年金収入とその他の合計所得の合計額が単身で280万円以上340万円未満、2人以上の世帯で346万円以上463万円未満
  • 3.  3割負担
    本人の合計所得が220万円以上かつ、年金収入とその他の合計所得の合計額が単身世帯で340万円以上、2人以上の世帯で463万円以上。

具体的な訪問介護料金例を見てよう

では、実際に訪問介護を利用した場合の料金はどれくらいになるでしょうか。以下の条件で1か月間、訪問介護を利用した際の料金を計算してみます。

<条件>
・身体介護30分を週3回、生活援助30分を週2回利用
・1単位当たり10円で計算

<計算式>
身体介護30分は394単位で、週3回利用では、1か月では12回。
394単位×12回=4,728単位
生活援助30分は181単位で、週2回利用の場合、1か月では8回。
181単位×8回=1,448単位

それぞれを合算したうえで、金額を計算します。 (4,728単位+1,448単位)×10円=61,760円 それぞれの負担割合を計算すると、月当たり

  • 1割負担の場合......61,760円×1割=6,176円
  • 2割負担の場合......61,760円×2割=12,352円
  • 3割負担の場合......61,760円×3割=18,528円

となります。

では、加算が発生する場合はどうでしょうか。
週1回、身体介護の日に生活援助を20分行った場合、身体介護30分394単位に66単位が加算されます。

(394単位+66単位)×4回=1,840単位

残りの週2回の身体介護と生活援助を合算すると、
(1,840単位+3,152単位+1,448単位)×10円=64,400円となり、月当たりの負担割合別の料金は以下のようになります。

  • 1割負担の場合......64,400円×1割=6,440円
  • 2割負担の場合......64,400円×2割=12,880円
  • 3割負担の場合......64,400円×3割=19,320円

次に、週1回夜間に身体介護を行った場合を計算してみましょう。
夜間加算は25%増しとなるため、

394単位×4回=1,576単位
1,576単位×125%=1,970単位

となります。

残りの週2回の身体介護と生活援助を合算すると、
(1,970単位+3,152単位+1,448単位)×10円=65,700円となり、月当たりの負担割合別の料金は以下のようになります。

  • 1割負担の場合......65,700円×1割=6,570円
  • 2割負担の場合......65,700円×2割=13,140円
  • 3割負担の場合......65,700円×3割=19,710円

緊急時訪問介護加算が発生した場合、1回につき100単位を加算するため6,276単位となります。合算後の負担割合別の料金は以下のようになります。

  • 1割負担の場合......62,760円×1割=6,276円
  • 2割負担の場合......62,760円×2割=12,552円
  • 3割負担の場合......62,760円×3割=18,828円

訪問介護の料金を計算する場合、事業所の体制やご利用者の居住地域などによっても加算や減算が発生するため、同じ条件でも金額が変わる可能性があります。

訪問介護の料金はサービス内容と時間で決まる

家の模型と計算機とペン

訪問介護は施設入居よりずっと安価でサービスが受けられる

訪問介護の料金は、介護度別ではなく利用時間や内容によって決められています。また、身体介護と生活援助でも基本単位数が異なります。加えて、さまざまな条件によって加算や減算が発生するため、事前に確認しておくとよいでしょう。訪問介護の料金について考える際には、サービス内容と時間に加え、加算や減算についてもよく理解しておくことが大切です。

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吉田匡和(Masakazu Yoshida)

社会福祉士・介護支援専門員・ 社会福祉主事

老人保健施設、特別養護老人ホーム、デイサービス等で勤務し、事務長代行など管理職も経験。その後社会福祉士及び介護福祉士養成校教員。人材育成に携わってきた経験を活かし、実践的で的確な情報を発信している。 Write House Bule Orca(ブーレオルカ)代表。

吉田匡和の執筆・監修記事

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