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仕事・スキル 介護士の常識 2022/08/22

バイスティックの7原則とは?それぞれの詳細と介護現場での必要性

構成・文/介護のみらいラボ編集部 5.jpg

「バイスティックの7原則」は、介護現場で働く上で知っておきたい大切な考え方です。近年、介護福祉士の国家試験でも頻繁に出題されているので、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。一方で「名前だけは知っているけれど、介護現場でどのように活用できるかまでは分からない」という方もいるかもしれません。

当記事では、バイスティックの7原則の詳細はもちろんのこと、バイスティックの7原則において重要な「3つの方向性」についても解説します。併せて、介護現場で活用するための方法についても触れていますので、介護の仕事に役立つ知識を増やしたい方は、参考にしてください。

1.バイスティックの7原則とは?介護現場で必要な理由!

バイスティックの7原則は、アメリカのケアワーカーであり、社会福祉学者でもあるフェリックス・ポール・バイスティックが提唱した対人援助の行動規範です(「バイステック」と訳されることもあります)。この原則は、1957年に出版されたバイスティックの著書『ケースワークの原則』で紹介されて以降、ケースワーカーの行動指針として世界各国で活用されています。

介護の現場で、バイスティックの7原則が役立つ理由は以下の3つです。

●利用者さんおよびその家族との良好な人間関係の構築に役立つ
●ともに仕事をする職員との関係構築に役立つ
●自分のケアを見直す指針になる

バイスティックの7原則は、すべての人が持つ基本的なニーズに基づいてまとめられています。そのため、バイスティックの7原則を実践することで、利用者さんやその家族、あるいはともに仕事をするメンバーと良好な関係を構築することができます。また、原則自体が、自分のケアのあり方を見直すきっかけになったり、仕事に悩んだ時の指針になったりもするでしょう。

2.【項目別】バイスティックの7原則の詳細!

バイスティックの7原則は、下記の7つで構成されています。

●個別化の原則
●意図的な感情表現の原則
●統制された情緒関与の原則
●受容の原則
●非審判的態度の原則
●自己決定の原則
●秘密保持の原則

ここでは、各原則の詳細や、介護現場での具体的な応用方法を解説します。

個別化の原則

個別化の原則とは、利用者さんを世界でたった一人の存在であるととらえ、「同じ人は存在しない」「同じ問題は存在しない」と意識して関わることです。

例えば、アルツハイマー型認知症と診断された利用者さんでも、支援が必要な部分は人によって千差万別です。そして、利用者さんに本当に必要なケアは、利用者さんそれぞれの人生を知ることで導き出されます。

ところが、介護職として経験を積むほど、過去の事例を基にパターン化されたケアを行いがちです。そうならないためにも、利用者さんに接する際は「要介護度や病名でラベリングやカテゴライズをしていないか?」について自分自身でチェックするようにしましょう。

大切なのは、利用者さんの情報を集め、利用者さんの状態、生活環境、人格形成の背景、価値観をひも解き、利用者さんが求める最適なケアを考えること。この点を忘れないようにしてください。

意図的な感情表現の原則

意図的な感情表現の原則とは、利用者さんが自由に感情を表出できるように、援助者が意図的に働きかけることです。利用者さんが感情を表に出せるようになると、次の3つのメリットが得られます。

●利用者さんが自分自身の状況を客観的に見直すきっかけになる
●利用者さんのストレスや悩みの解消につながる
●表に出した感情を介護職員が受け止めてくれたという経験が、介護職員への信頼につながる

介護職員は、介護現場で利用者さんが話しやすい雰囲気やリラックスできる環境を作るように心掛けましょう。介護職員が利用者さんに対して先に悩みを打ち明けるのも一つのアイデアです。利用者さんが心を開き、悩みを話すきっかけとなるかもしれません。

統制された情緒関与の原則

統制された情緒関与の原則とは、利用者さんと関わる際に冷静な判断ができるよう、援助者自身の感情をコントロールすることです。

例えば、介護職員が利用者さんに過度に感情移入しているとしましょう。そのような場合、利用者さんとその家族の間でトラブルが発生すれば、介護職員は利用者さんの肩を持つような対応を取ってしまうかもしれません。

しかし、介護職員の役割は、利用者さんに肩入れしたり同情したりすることではなく、利用者さんの問題を解決することです。そのためには、介護職員は自分の感情をコントロールできるようにならなければいけません。

利用者さんと関わる中で自身の心が波立った時は、感情を俯瞰し冷静さを取り戻すように努めましょう。相手の話に共感しつつも、状況を冷静に分析する姿勢が重要です。

受容の原則

受容の原則とは、利用者さんの「ありのまま」を受け入れることです。利用者さんと接する際は、以下の点を意識しましょう。

●利用者さんに先入観を持たない
●利用者さんの言動を否定しない
●利用者さんに命令しない

利用者さんは1人ひとり、異なる性格、意見、人生観を持っています。なかには介護職員の立場から見て、好ましくない言動や価値観もあるかもしれません。けれど、それを頭ごなしに非難したりせず、まずは「ありのまま」受け止めましょう。

そしてその上で、利用者さんがなぜその行動に至ったのか原因を推測し、対応策を練ることが重要です。ありのままの自分を受け入れてもらうことで、利用者さんは承認欲求が満たされたと感じ、介護職員への信頼につながります。

非審判的態度の原則

非審判的態度の原則とは、利用者さんの言動に対し、援助者が善悪の判断をしないことです。

例えば、ある利用者さんが暴力、暴言、ハラスメントなど、他者を害する行為をしたとしましょう。もちろん、そのような振る舞いは許容されるべきではありません。しかし、だからといって、介護職員の価値観で利用者さんを評価したり、善悪を決めたりすると、かえって問題解決が難しくなります。

大切なのは、利用者さんをジャッジすることではなく、問題解決を手助けすることです。利用者さんが自分自身で問題を解決できるよう声かけやケアをしたり、利用者さんを取り巻く環境を分析したりして、問題行動を解決する手立てを考えましょう。

自己決定の原則

自己決定の原則とは、利用者さん自身の意思決定を尊重することです。利用者さんの人生は利用者さん自身のものであり、利用者さんは「自分で決める」権利を持っています。そして、利用者さんが自ら決定できるように、情報提供や助言を行うのが介護職員の役割です。

例えば、衣類の着脱介助の際に衣服を2枚見せ、どちらを着るか利用者さんに選んでもらう。これも、利用者さんの自己決定をサポートすることにつながります。そして、利用者さんの意思決定を促すことは自立支援にもつながります。利用者さんの状態に合わせて、利用者さんが自分自身で考え、選び取れる選択肢を提示することを心掛けましょう。

秘密保持の原則

秘密保持の原則とは、利用者さんの個人情報を外部に漏らさないことです。個人情報が漏えいした場合、利用者さんとの信頼関係を失う可能性があるため注意が必要です。そうならないためにも、職場で個人情報の取り扱いに関するルールを決め、徹底しましょう。職場だけでなく、職場の外でのうわさ話もご法度です。

また、利用者さんによっては、デイサービスなどの利用を周囲に知られたくない方もいるかもしれません。そのようなケースに備え、送迎方法などについて利用者さんと事前に相談しておくと良いでしょう。

プライバシーが守られていると実感できれば、利用者さんの介護職員への信頼はより強まります。

3.バイスティックの7原則が持つ「3つの方向性」

最初に述べたように、バイスティックの7原則はすべての人が持つ基本的なニーズに基づいてまとめられています。ここでの「基本的なニーズ」とは、次のようなものです。

●一個人として扱われたい
●自由に感情表現したい
●共感してほしい
●価値のある人として認められたい
●一方的に非難されたくない
●自分で選び自分で決めたい
●秘密を守りたい

バイスティックの7原則を介護現場で活用する際は、利用者さんは上記のニーズを持っていることを意識すると良いでしょう。

あわせて、バイスティックの7原則の実践においては、利用者さんと介護職員の間に生じる、「3つの方向性」と呼ばれる相互作用を上手に活用することが大切です。「3つの方向性」は「第1の方向」「第2の方向」「第3の方向」からなり、それぞれの詳細は下記の通りです。

第1の方向 利用者さんは上記の7つのニーズを抱いており、介護職員に向かって発信します。これが「第1の方向」です。
第2の方向 「第1の方向」で利用者さんが発信したニーズを介護職員がくみ取り、利用者さんに適切に反応します。この「介護職員の反応」が「第2の方向」です。
第3の方向 介護職員の反応を認識した利用者さんは、言葉、態度、行動といった反応を介護職員に返そうとします。利用者さんから介護職員に向けられる「利用者さんの反応」が「第3の方向」です。

まとめ

介護職員がバイスティックの7原則と「3つの方向性」を活用し、利用者さんと反応のキャッチボールを繰り返すことで、利用者さんとの間に信頼関係を築くことができます。

また、バイスティックの7原則はすべての人が持つ基本的なニーズに基づいているため、利用者さんだけでなく、同僚や上司、取引先など、仕事上関わる人とのコミュニケーションを円滑に進める上でも役立つ知識です。

「介護のみらいラボ」ではこのほかにも、介護の現場で活躍する方に向けた有益な情報を多数掲載しています。現場で役立つ知識を知りたい方は、ぜひ「介護のみらいラボ」をご覧ください。

※当記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています

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