高齢者に寄り添うコミュニケーションの方法と5つのポイントとは?
構成・文/介護のみらいラボ編集部人は高齢になると視覚や聴覚が衰え、思考力が低下するため、コミュニケーションが難しくなるといわれています。介護現場においては、介護職員と高齢者が円滑にコミュニケーションがとれなければ、介護サービスの質にも影響を及ぼします。
高齢者と円滑なコミュニケーションをとるためには、具体的な方法やポイントを知ることが大切です。当記事では、高齢者に寄り添うコミュニケーションについて詳しく解説します。
1.高齢者とのコミュニケーションでは相手に寄り添うことが大切
介護現場では、高齢者とコミュニケーションをとり、相手を尊重して寄り添うことで介護の質が高まります。介護の質を高めることはもちろん、相手に寄り添うコミュニケーションが大切となる理由は他にもあります。
相手に寄り添ったコミュニケーションをとることで、高齢者の満足度を高めることが可能です。言語能力などが低下した高齢者は、意思疎通が難しいことがあります。「ああしたい」「こうしてほしい」という自分の意思をうまく伝えることができない状況に置かれると、高齢者はストレスがたまり介護者への満足度が低くなるでしょう。
また、聴力や視力が低下すると、話しかけられても話の内容を理解しにくくなります。介護職員の話を理解できなければ、高齢者は不安を抱きます。不安を抱いた高齢者の満足度は高くなるはずがありません。
つまり、高齢者との間に信頼関係を築き、個々の状況に応じたコミュニケーションを実践すれば、適切な介護は可能です。結果として高齢者の生活環境が向上し、満足度は高まるでしょう。
高齢者に寄り添ったコミュニケーションは、介護事故の予防にもつながります。身体機能や認知機能が低下している高齢者の介護には、転倒や転落、誤えんなどの介護事故が起こる可能性が伴います。
介護事故を完全に防止することは容易ではありません。しかし、日ごろから相手に寄り添うコミュニケーションをとっていると、高齢者のちょっとした異変にも気づきやすく、大きな介護事故の予防につながります。
2.高齢者に寄り添うコミュニケーションの2つの方法
コミュニケーションと言えば、「会話」をイメージする人が多くいます。しかし、コミュニケーションとは、言葉を使った会話のみを意味するわけではありません。言葉を使わないコミュニケーションのとり方も存在します。
ここでは、高齢者に寄り添うコミュニケーションの方法として、「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」について、詳しく解説します。
言語的コミュニケーション
言語的コミュニケーションとは、会話など言葉を使ったコミュニケーションの方法です。
介護現場では、声掛けや挨拶、通常の会話など言語的コミュニケーションは欠かせません。言語的コミュニケーションにおいては、明るくハキハキと肯定的な言葉で高齢者に話しかけることが大切です。
また、話を聞くことも言語的コミュニケーションに含まれます。介護職員は、聞き手になることを心がけてください。介護職員が聞き手となり高齢者の話を親身に聞くことで、言語能力が低下している高齢者も心を開きます。心を開いた高齢者とは信頼関係を築きやすく、介護をしやすくなるため、介護の質も高まるでしょう。
非言語的コミュニケーション
非言語的コミュニケーションとは、言葉以外の視覚や聴覚を通してコミュニケーションをとる方法です。
厚生労働省によると、話し手が聞き手に与える情報の割合は、言語による情報が7%で、90%以上を視覚と聴覚による情報が占めています。日常生活の中では、非言語的コミュニケーションは言語的コミュニケーションよりも圧倒的に多いことが特徴です。
非言語的コミュニケーションには、下記の要素が含まれます。
・身振り手振り
・表情
・顔色
・視線
・姿勢
・声のトーン
・話の速度
・服装
・髪型
・におい
例えば、明るくおしゃべりだった高齢者がある日突然、表情がさえなく静かになってしまった場合、心身になんらかの異変や変化があったことが想定できます。声のトーンや服装の乱れなども異変を判断する材料です。
高齢者の中には、自分の意思や心身の不調などを言葉に出して表現できない人もいます。介護職員は高齢者が発する非言語的コミュニケーションに気を配り、対応することが大切です。
高齢者の側にも、介護職員が発する非言語的コミュニケーションが伝わります。介護職員が不機嫌な表情や態度で対応したり、視線も合わせずにうわの空で話を聞いたりしていれば、高齢者はよい感情を抱かないでしょう。介護職員は、自分自身が発する非言語的コミュニケーションにも敏感であるように心がけてください。
3.高齢者に寄り添うコミュニケーションの5つのポイント
人は高齢になるにつれて、心身のさまざまな機能や能力が衰えていきます。コミュニケーションに欠かせない認知機能や思考力も例外ではありません。
認知機能や思考力が衰えた高齢者とのコミュニケーションは、容易ではなくなります。認知症の高齢者とは、さらにコミュニケ―ションの難しさが増します。
ここからは、高齢者に寄り添ったコミュニケーションをとるときのポイント5つを解説します。
沈黙を恐れない
会話をしていると、話が途切れて沈黙が訪れる瞬間があります。沈黙を恐れて、適当に話題を探して沈黙を破ろうとする人もいるでしょう。しかし、高齢者とは沈黙を恐れずにコミュニケーションをとることが大切です。
高齢者の中には、脳梗塞などの病歴があったり、他人と話すことが苦手だったりと、さまざまな理由で言葉によるコミュニケーションがとりにくい人もいます。無理に言葉を交わそうとすると、かえって高齢者の負担となります。
しばらく隣に座っていたり、一緒に散歩をしたりなど、言葉を交わさずに同じ時間を過ごすだけでも十分です。沈黙を恐れないでください。
否定しない
高齢者や認知症の人も当然のことながら、羞恥心や自尊心を持っています。対等の大人として接し、高齢者の行為や言葉を否定したり、叱ったりしないことが大切です。
例えば、昔話を繰り返す人に「何回も聞いた」と言ったり、食後すぐに食事はまだしていないと言い張る人に「記憶違いだ」と否定したりすることは避けてください。否定ばかりされると、高齢者に嫌悪や恐怖、怒りなど負の感情が積み重なります。
高齢者が介護職員に対して信頼感や安心感を持って生活できるように、高齢者の行為や言葉を否定しないように努めてください。
「会話」に頼りきらない
高齢者とのコミュニケーションでは、「会話」を中心とする言語的コミュニケーションに頼りがちです。しかし、実際には、身振り手振りや表情などによる非言語的コミュニケーションが重要な役割を果たすケースが多くあります。
おだやかな笑顔で高齢者に接することは、非言語的コミュニケーションの1つです。また、高齢者の話を聞くときに、身を乗り出したりうなずいたりして興味があることを示す姿勢も、非言語的コミュニケーションです。
スキンシップは非言語的コミュニケーションです。ただし、身体の場所によって触られることを嫌がる高齢者もいるため、スキンシップは個々のケースに合わせて使い分けてください。
相手を軽視しない
介護現場では、介護職員は高齢者を意図的に軽視していなくても、高齢者が軽視されていると感じてしまうことがあります。
例えば、介護職員が高齢者と「○時に一緒に散歩しよう」と約束したものの、日常業務が忙しくて約束を果たせないと、高齢者は自分が軽視されていると感じてしまいます。高齢者の気持ちを傷つけないためにも、約束は守るように努めてください。
また、話し方にも注意が必要です。介護職員の中には、幼児に話しかけるように高齢者に話しかける人がいます。しかし、高齢者は幼児ではありません。信頼関係を築くためには、介護職員は高齢者を1人の大人として接することが必要です。
偏見を持たない
「高齢者は演歌が好きだ」「時代劇ファンだ」などと、偏見を持つことは禁物です。人それぞれに個性があり、好き嫌いも異なります。生まれ故郷や家族との関係、仕事、趣味なども千差万別です。
厚生労働省は、「その人の歴史を教えてもらう」ことを認知症の人とのコミュニケーションにおける大切なポイントの1つとして挙げています。個々の歴史そのものをコミュニケーションの道具にせず、歴史から価値観を理解し、情報を広げることをすすめています。
高齢者をひとまとめにして決めつけるのではなく、高齢者それぞれの個性や人生経験を尊重することが大切です。
まとめ
高齢者に寄り添うコミュニケーションの方法は、2つに大別できます。言葉を使った言語的コミュニケーションと、身振り手振りや表情、声のトーンなどの非言語的コミュニケーションです。
コミュニケーションのポイントは「沈黙を恐れない」「否定しない」「偏見を持たない」などです。介護の際は、心身の状況や人生経験など、高齢者それぞれの事情を考慮して1人の大人として対応することをおすすめします。
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