看取り介護とは?流れや大切な心構えも解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護現場で行われる「看取り介護」は、利用者さんが最期の時間を自分らしく過ごせるようにサポートする仕事です。看取り介護には、利用者さんやご家族の心に寄り添い、状態の変化に対して細やかに対応することが求められます。また、医療関係者ともきちんと連携を図ることが大切です。
とはいえ、介護職のなかには、利用者さんの死に直面することに対して不安を感じる方も少なくありません。当記事ではそうした介護職の方に向けて、看取り介護の定義やターミナルケアとの違い、介護職の心構えについてなどを詳しく解説します。
1.看取り介護とは
看取り介護とは「看取りの過程で日常的な生活のケアを行うこと」であり、利用者さんの肉体的、精神的な苦痛を緩和させつつ、日常生活のケアや援助を行うことが目的となります。
「看取り」とはそもそも、病状回復が見込めない人に対して無理な延命を行わず、自然に亡くなられるまでの過程を見守ることを指します。
これまでの日本では、死期が近い人に対しても人工呼吸器をつけたり、多くの薬を投与したりして延命治療が行われてきました。しかし近年では、「最期まで自分らしい時間を過ごすこと(=尊厳のある死)」を尊重する考え方が広まっています。
そうしたなかで少しずつ必要性が高まってきたのが、看取り介護なのです。
看取りが行われる場所
看取りの場所として最も多いのは病院で、全体の8割を占めます。病院で看取る際、多くの場合は点滴などの医療・看護的ケアを実施するターミナルケアが行われ、医師の指示に基づいた処置がとられます。
看取りが行われる、残り2割の場所は自宅や介護施設ですが、在宅での看取りは、ご家族や看護師、ケアマネージャー、訪問介護員など、周囲の関係者の連携がとても重要になります。看取りでは、多くの人が在宅で最期を迎えることを希望しますが、在宅での看取りは簡単ではなく、実際に在宅で最期を迎えられるのは全体の13%ほどしかいません。
そのため、ここ数年は介護施設での看取りが増加傾向にあります。医療での回復が見込めず、在宅介護もできないといった場合、「介護施設で最期を迎えたい」という方が多くいらっしゃるからです。特に介護老人福祉施設は、要介護度の高い方が入居するため、施設スタッフが入居者の看取り介護を行うケースが珍しくありません。
ちなみに、国際的にみても日本は病院での死亡率が高い傾向にあります。各国と比較した調査結果では、スウェーデンの42%、フランスの58.1%を大きく上回り、日本は81%でした。一方、自宅で亡くなる方の割合は、31%のオランダが最も高く、日本は13.9%と最も低い割合になっています。
看取り介護とターミナルケア・緩和ケアの違い
看取り介護と似た意味を持つ言葉に、ターミナルケアや緩和ケアがあります。ターミナルケアというのは、医療現場で使われる言葉で「終末期医療」とも呼ばれています。
看取り介護とターミナルケアの違いは、「医療行為を行うかどうか」という点です。看取り介護は、清拭や褥瘡のケア、体位変換など日常生活の支援が中心となりますが、ターミナルケアの場合は医師の判断に基づいた点滴や酸素吸入など、医療・看護ケアを重点的に行います。
一方の緩和ケアは、肉体的なケアだけでなく精神面のケアも含めたアプローチを基本とし、外科手術や化学療法、放射線療法などと連携しながら行われます。そのため、看取り介護やターミナルケアのように、必ずしも終末期に対応するものではありません。
2.看取り介護の流れ
看取り介護には段階があり、介護施設の場合なら入居から逝去までが介護の期間となります。以下では、介護施設における看取り介護の流れを解説します。
・適応期
施設に入居し、施設の生活に慣れてもらう段階です。最期の過ごし方について、利用者さんやご家族の希望を聞き取り、対応を確認します。併せて、利用者さんやご家族に、看取りに対する理解を深めてもらうことも大事です。
・安定期
施設での生活に慣れた段階です。ステージが進んだ時の希望や意向に変化がないかを再確認し、自分らしい最期を迎えられるように準備を行います。利用者さんだけでなく、ご家族の意向も確認しながら、ケアプランに反映させましょう。
・不安定・低下期
原疾患の進行、既往症の再発、食欲不振や体重減少といった衰弱傾向が出現する段階です。利用者さんとご家族に、今後予想される状況や施設で可能な医療などについて、分かりやすく説明します。
・終末期
病気の末期であり、衰弱が進行して回復が見込めない段階です。必要な方に連絡を取ったり、最期の時にご家族が立ち会えるように準備したりします。
・看取り
家族として過ごせる最後の時間です。ご家族の心情に寄り添いながら、エンゼルケアなどの処置を行ったり、葬儀会社に連絡を取って葬儀の手配を行ったりします。
3.看取り介護の種類
看取り介護で行われる主な支援としては、利用者さんへの身体的ケア、精神的ケア、そしてご家族へのサポートが挙げられます。
身体的ケア
身体的ケアでは、トイレの利用やおむつ交換などの排せつ介助、食事介助や健康チェック、入浴介助や清拭(せいしき)といった日常的なケアが基本です。看取り介護の方針が決まったら居室を整備して、利用者さんができるだけ安らかに過ごせる環境を作りましょう。身体的苦痛や不快感がある場合は、それらを和らげるための対処を行うほか、利用者さんの変化にすぐ気づけるように配慮することも重要です。
終末期の利用者さんの場合、食事の量が減ることがありますが、そうした際は原因を探りながら、無理なく食べられる方法を見つけてください。
歩行が困難な場合や、転倒のリスクがある場合の排せつ介助では、ポータブルトイレを利用します。また、利用者さんの体の状態によってはおむつを使う場合もあり、状態に適した方法で支援することが大切です。利用者さん本人の意向を尊重しつつ、ストレスや苦痛を軽減できるような細やかな対応を心がけましょう。
精神的ケア
精神的ケアでは、人生の終わりに直面する不安や恐怖といった精神的な苦痛を緩和するためのサポートを行います。こまめに声かけを行ったり、悩みを聞いたりしながら、孤独を感じさせないようにしましょう。気持ちに寄り添いながら、利用者さんが喜ぶようなケアを心がけ、自分らしい最期を迎えられるように支援することが大事です。
ご家族へのケア
看取りのケアでは、ご家族もサポートの対象となります。近いうちに大切な方が亡くなるという状況は大きな不安や寂しさにつながり、精神的な負担となります。強いストレスにさらされているご家族のサポートも、しっかり行いましょう。
ご家族への支援としては、身体面、精神面への配慮の他、心配事への対応や専門機関に相談できるような環境の整備、看取り後のサポートなどがあります。気持ちに寄り添うためにも、できる限り希望や心配事を聞いたり、こまめにコミュニケーションを取ったりしながら、信頼関係の構築に努めてください。
4.【介護職向け】看取り介護への心構え
人の死に関わることから、看取り介護に不安を感じる介護士は少なくありません。介護職が看取り介護に携わる際の心構えとして、以下のポイントを押さえておきましょう。
・看取りの知識をつける
看取り介護への不安が大きくなる原因の一つに、「知識不足」が挙げられます。事前に看取り経験のある先輩介護士から話を聞いたり、現場で起こった状況を詳しく聞かせてもらったりして、基本的な知識を身に付けておくと良いでしょう。書籍などで情報を集めるのもおすすめです。また、看取りに関する研修が行われていたら、積極的に参加するようにしましょう。
・業務内容を把握する
看取り介護への不安を取り除くには、看取り介護の大まかな流れや自分が行う業務の内容、状況に合わせた対処方法などを、事前に把握しておくことが大事です。とはいえ、業務の全体像は常に変化するので、対処方法に正解はありません。あくまで参考程度にとどめておくのが良いでしょう。
・記録をつけて振り返る
日々の介護記録をつけておくのもおすすめです。できたこと、できなかったこと、学びにつながったことなど、看取り介護に携わった経験を詳細な記録として残しておけば、情報を整理したり、支援の全体像を見直したりする際に役立つでしょう。また、自分自身が他の介護士を指導する立場になった時に、説得力のある経験談として伝えることもできます。
・1人で悩まずチームで助け合う
何かしらの不安を抱えている場合は、同僚や先輩など周囲の人に相談することが大切です。緊急時の対応についてスタッフ同士で話し合い、チームの結束を深めておくだけでも、不安の軽減に役立ちます。自分以外に悩んでいるスタッフがいれば、逆に相談に乗るなどして、チーム同士での支え合いを意識しましょう。
まとめ
看取り介護は利用者さんやご家族の希望をかなえ、納得のいく最期を過ごすために必要なサポートです。看取り介護に携わる介護士には、利用者さんの意思や尊厳を尊重し、気持ちに寄り添ったケアを心がけましょう。
高齢化が進む日本社会では、ますます看取り介護の必要性が高まるといわれています。介護職が看取りに対する知識やスキルを求められる機会も、今以上に多くなるでしょう。不安がある場合は1人で抱え込まず、周囲のスタッフに相談するなどして、看取りへの理解を深めていくことが重要です。
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※当記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています
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