介護職の夜勤回数の上限は?施設や勤務形態による夜勤の違いも
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護業界で働く場合、職場によっては夜勤シフトをこなす必要があります。夜勤で働くと基本給に加えて夜勤手当・時間外手当が支給されることから、介護職のなかには「少しでも給料を上げるために夜勤で働きたい」と考える方もいらっしゃいます。
しかし、介護職における夜勤には、労働基準法や労働組合の基準によっていくつかの制限や決まりがあることを忘れてはなりません。そのため、「夜勤で働きたいけど、回数に上限はあるのだろうか」「どの施設でも夜勤の回数は同じなのだろうか」など、夜勤回数に関する疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、介護職の夜勤回数に関して、労働基準法や夜勤協定によるルールから、介護施設における平均夜勤回数、夜勤のある介護職の働き方まで詳しく解説します。
1.介護職の夜勤回数は決まっている?
介護業界だけに限らず、夜勤のシフトに入ると時間外手当・深夜手当といった手当が支給されます。つまり、計算上は「夜勤に入れば入るほど手当が加算される」ということになるため、「夜勤の回数には上限があるのではないだろうか?」と思っている介護職の方も少なくないでしょう。
結論から言うと、介護職の夜勤には回数に関する制限がありません。しかし、だからと言って「好きな時に好きなだけ夜勤に入る」という働き方ができないことも事実。その理由は何なのでしょうか?
ここからは、介護職の夜勤に関する制限や決まりについて、詳しく解説します。
労働基準法における夜勤の労働時間
労働基準法において、労働者の勤務時間は基本的に「1日8時間」と定められています。しかし、2交代制で働く介護職員の場合、1回の夜勤における労働時間が16時間(午後4時から翌朝9時までなど)になるケースが多く見られます。
では、1日8時間という労働時間の決まりがあるにもかかわらず、夜勤では16時間勤務が認められている理由は何でしょう。それは、「変形労働時間制」が適用されているからです。
変形労働時間制とは、一定期間における労働時間の平均を割り出し、1週間あたりの労働時間が法定労働時間(40時間以内)を超えない範囲内で調整すれば、特定の日・週に法定労働時間を超えて労働させられる制度のこと。そのため、変形労働時間制を設けている施設・事業所で働く場合は、1週間あたりの労働時間が40時間を超えなければ、16時間の夜勤をしても問題がないのです。
ただしその場合は、一定期間における労働時間の平均を超えないように、別の週の労働時間を短く調整されることになります。
深夜労働の制限があるケース
介護職においては夜勤の回数には上限がなく、かつ変形労働時間制を導入している場合は、法定労働時間となる8時間を超えて勤務することができると説明してきましたが、一部では深夜労働、つまり夜勤そのものができないケースがあることも覚えておきましょう。
深夜労働の制限をされるのは、「家庭で育児や介護に携わる方の夜勤」です。「介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の第19条・第20条には、下記のように記載されています。
■介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第十九条
第十九条 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、午後十時から午前五時までの間(以下この条及び第二十条の二において「深夜」という。)において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者
二 当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族その他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者
三 前二号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの
■介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第二十条
第二十条 前条第一項から第三項まで及び第四項(第二号を除く。)の規定は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について準用する。この場合において、同条第一項中「当該子を養育する」とあるのは「当該対象家族を介護する」と、同項第二号中「子」とあるのは「対象家族」と、「保育」とあるのは「介護」と、同条第三項及び第四項第一号中「子」とあるのは「対象家族」と、「養育」とあるのは「介護」と読み替えるものとする。
つまり、1年以上雇用されている「未就学児を養育する保護者」または「要介護状態の家族を介護する者」で、1週間に2日以上出勤する介護職員は、深夜労働の制限に関する書面などを用意して事業主に請求すれば、午後10時から午前5時までの時間帯に勤務する必要がなくなるのです。
ただし、夜勤専従で働く介護職員や、事業主への請求を行わなかった場合は、対象者であっても深夜労働が制限されることはありません。
夜勤協定が締結されている職場も
職場によっては、「夜勤協定」が締結されているケースもあります。夜勤協定とは、事業主と労働者の間で夜勤に関する基準を定めた協定のことで、「夜勤回数の上限」や「1回の夜勤に就く職員数」といった基準が、1カ月単位で定められます。
夜勤協定を結んでいる職場では、ルールが定められていることから、夜勤がらみのトラブルが起こる可能性は低いと言えるでしょう。ちなみに、2020年介護施設夜勤実態調査結果によると、アンケートに回答のあった127施設のうち、79施設が「夜勤協定がある」と答えています。割合にすると約62.2%で、これは前年度よりも約3%高い数値です。
2.介護施設における平均的な夜勤回数
公益財団法人 介護労働安定センターが行った介護労働実態調査によると、2020年度における介護施設全体の1カ月あたりの平均夜勤回数は、約5回でした。
また、同データでは夜勤回数が「5回以上7回未満」と答えている方が40.1%と最も多く、次いで「3回以上5回未満」が27.6%という結果となっています。平均夜勤回数は約5回ですが、人によって大きく異なっているのが実情だと言えそうです。
施設ごとの夜勤回数と働き方の違い
介護現場の平均夜勤回数は約5回ですが、介護施設によってその数値に多少の違いが出ています。下記は、介護保険サービスの区分ごとに夜勤回数の平均値です。
施設形態 | 夜勤回数の平均値 |
---|---|
訪問系 (訪問介護ステーション・訪問介護ステーションなど) |
約5.1回 |
入所型施設系 (特別養護老人ホーム・介護老人保健施設など) |
約5回 |
通所型施設系 (デイサービス・認知症対応型通所介護など) |
約4.6回 |
居住系 (サービス付き高齢者向け住宅・グループホームなど) |
約5.2回 |
居宅介護支援 | 約4.7回 |
上記データを見ると、通所系施設や居宅介護支援サービスで働く介護職員の夜勤回数は、平均値よりも少ないことが分かります。
通所リハビリテーション(デイケア)や、日常生活を送るのに必要最低限のサポートを行う居宅介護支援サービスは、日中の対応がメインとなるため基本的には夜勤が発生しません。しかし、何らかのトラブルが発生した時などには、突発的な夜勤が発生する可能性があることも覚えておきましょう。
3.介護職の夜勤|3つの働き方
介護職の夜勤は、働く施設のほか、勤務形態によってもその回数が違います。介護職には基本的に下記3つの勤務形態があり、それぞれに働き方や休日の考え方が異なるのが特徴です。
● 夜勤専従
● 2交代制
● 3交代制
介護求人サイトには、基本的な業務内容や待遇、福利厚生に加え、これらの勤務形態についても記載があります。就職・転職の際は、各勤務形態について理解したうえで、自分に適した働き方ができる施設を選びましょう。
ここからは、それぞれの働き方における働き方や休日、勤務日数の目安を紹介します。
夜勤専従
夜勤専従とは、その名の通り夜勤専門で働く勤務形態のことです。日勤に加えて夜勤もこなすと、生活リズムが乱れるおそれがありますが、夜勤専従であれば一定の生活リズムを保つことができるでしょう。
なお、夜勤専従の働き方には「ロング夜勤」「ショート夜勤」の2つがあります。ロング夜勤は「午後4時~5時から翌朝の9時~10時まで」といったように、勤務時間が長時間に及ぶ夜勤のことで、ショート夜勤は「午後10時~翌朝9時まで」のように、勤務時間が比較的短い夜勤を指します。
いずれも夜勤明けの日は公休となりますが、ロング夜勤の場合は一度の出勤で「2日分勤務した」とみなされるため、1カ月あたり10日程度しか勤務できません。
2交代制
2交代制とは、日勤・夜勤の2パターンに分けて、それぞれのパターンで勤務する形態のことです。同様の形態で働く介護スタッフと交代しながら、定期的に夜勤をこなす勤務体制となります。
日本医療労働組合連合会が発表した、2020年における介護施設夜勤実態調査結果によると、2交代制勤務の導入率が82.0%(施設単位での集計)となっており、ほとんどの施設でこの勤務形態が取り入れられていることが分かります。
2交代制を導入する介護施設では、変形労働時間制が採用されているため、夜勤の勤務時間は基本的に16時間となります。この勤務体制における夜勤の平均回数は4.3回ですが、小規模多機能型は4回以内、グループホームは4.9回と、働く施設によっても回数は異なります。
また、2交代制の夜勤(16時間勤務)の場合は、夜勤専従のロング夜勤と同じく翌日は公休扱いとなり、一度の出勤で2日分の勤務時間とみなされるため、1週間あたりの勤務時間が調整されることになります。
3交代制
3交代制とは、日勤・準夜勤・夜勤の3パターンに分けて、それぞれのパターンで勤務する形態のことです。時間帯が細分化されており、準夜勤・夜勤はそれぞれ8時間と、日勤と同じ勤務時間になるのが特徴です。
2022年における介護施設夜勤実態調査結果を見ると、3交代勤務における平均夜勤回数は5.8回であることが分かります。なお、ここで言う夜勤には、午後4時~深夜0時などの時間帯で働く準夜勤も含まれています。
3交代制は2交代制よりも夜勤回数が多く、同調査では「施設で働くすべての職員の夜勤日数が8日以内に収まった」という施設がゼロでした。これから先、医療・介護需要がさらに高まることを考えれば、夜勤回数が徐々に増加することも予想されるでしょう。
まとめ
夜勤のある職場で働く介護職の場合、夜勤をこなすことで手当が支給されます。介護職の夜勤には、「月〇回まで」といった回数の上限はありませんが、「労働基準法」や「変形労働時間制」「夜勤協定」による制限・決まりによって、「好きな時に好きなだけ夜勤に入る」という働き方はできません。
介護施設全体のひと月あたりの平均夜勤回数は約5回ですが、施設形態や勤務形態によっても平均値は多少異なります。「できるだけ夜勤に入って効率よく収入を得たい」という方は、3交代制の入所型・居住型介護施設を選ぶのが良いでしょう。
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※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています
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