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仕事・スキル 介護士の常識 2020/09/15

#ランキング#介護施設#介護業界

FPが決算書から計算! 上場介護企業 トップ10社ランキング2020

文:斉藤 勇 ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士 commonsense_20200915_1.jpg

意外と知らない介護業界の大手企業ランキング

株式市場には、介護事業を手掛けている企業がいくつも上場しています。そこで今回は、上場介護企業の連結売上高上位10社をランキング形式で紹介します。これから転職を考えている方はもちろんのこと、介護職として働いている方や、投資を始めたいとお考えの方にも参考になると思います。開示されている決算情報をもとに「なぜ売上高が増えているのか」「どんな事業展開を検討しているのか」など、気になる視点から企業をチェックしてみましょう。

上場介護企業・連結売上高トップ10社 ランキング表

上場介護企業 連結売上高  TOP10

連結売上高は、事業規模をチェックする際に参考となる指標のひとつです。
今回は、各社がホームページなどで開示している「決算報告書」をもとに、2020年3月期(2019年4月~2020年3月)の介護部門の連結売上高上位10社をランキングしました。

※決算月が異なる企業については、中間決算をもとに予想しています

連結売上高 TOP10
順位企業名・証券コード売上高(百万円)
1位ニチイ 9792153,796
2位SOMPOホールディングス 8630134,473
3位ベネッセ 9783122,914
4位ツクイ 239891,196
5位セコム 973576,438
6位学研HD 947059,310
7位ユニマット リタイアメント・コミュニティ 970750,111
8位セントケアHD 237442,178
9位ソラスト 619735,085
10位ケア21 237329,190

表1:連結売上高TOP10

※ケア21は10月決算のため、前期は2019年10月期,今期(2020年10月期)は中間決算の結果を通期に変換(2倍)して予想しています

※学研は9月決算のため、前期は2019年9月期、今期(2020年9月期)は中間決算の結果を通期に変換(2倍)して予想しています

上場介護企業 連結売上高増加率 TOP10

連結売上高増加率は、企業の成長をチェックする際に参考となる指標のひとつです。

上場介護企業・連結売上高増加率ランキングトップは、積極的にM&Aを実施したソラストで、増加率は30%を超えて他社を圧倒しました。

連結売上高増加率 TOP10
順位企業名・証券コード売上高(百万円)
1位ソラスト 619732.69
2位ケア21 23737.64
3位ツクイ 23985.61
4位セコム 97355.51
5位SOMPOホールディングス 86305.46
6位ユニマット リタイアメント・コミュニティ 97075.16
7位セントケアHD 23745.16
8位ベネッセ 97835.01
9位学研HD 94701.97
10位ニチイ 97921.55

表2:連結売上高増加率

※連結売上高増加率...(最新期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

上場介護企業 営業利益率 TOP10

営業利益率は、企業の収益力(かせぐ力)をチェックする際に参考となる指標のひとつです。
上場介護企業・営業利益率ランキングトップは、ユニマット リタイアメント・コミュニティで、2位のニチイに僅差で競り勝ちました。

営業利益率 TOP10
順位企業名・証券コード売上高(百万円)
1位ユニマット リタイアメント・コミュニティ 970710.35
2位ニチイ 979210.31
3位ベネッセ 97839.25
4位ケア21 23738.05
5位セコム 97357.18
6位ソラスト 61975.79
7位ツクイ 23984.65
8位学研HD 94703.98
9位セントケアHD 23743.11
10位SOMPOホールディングス 86300.98

表4:営業利益率 TOP10

※営業利益率...最新期営業利益÷最新期売上高×100
※営業利益は会社が本業で稼いで得た利益のことで、売上高から販売費や管理費などを差し引いて求めます

上場介護企業 営業利益増加率 TOP10

営業利益増加率は、企業の成長や収益力(かせぐ力)をチェックする際に参考となる指標のひとつです。

上場介護企業・営業利益増加率ランキングトップは、黒字転換したSOMPOホールディングスで、上位10社中4社は減益(営業利益が減っている)となりました。マイナスの理由はさまざまですが、事業所の新設など、積極的に事業拡大をしている企業は、売上が増えても人件費や広告宣伝費などの経費が増えてしまい、減益になることがあります。こうした企業は、新規事業が収益拡大に貢献しているのか、来期以降の決算報告書も続けてチェックすると、企業の成長度合いをさらに深く知ることができます。

営業利益増加率 TOP10
順位企業名・証券コード売上高(百万円)
1位SOMPOホールディングス 8630黒字転換
2位ケア21 237326.96
3位ソラスト 619719.13
4位セコム 97357.00
5位ツクイ 23982.79
6位ユニマット リタイアメント・コミュニティ 97070.14
7位ベネッセ 9783-0.19
8位ニチイ 9792-3.21
9位学研HD 9470-20.91
10位セントケアHD 2374-22.67

表5:営業利益増加率 TOP10

※営業利益増加率...(最新期営業利益-前期営業利益)÷前期営業利益×100

上場介護企業・連結売上高トップ10社の紹介

1位 ニチイ学館(ニチイ) 9792

2020年3月期連結売上高 1,537億9,600万円(内部売上800万円含む)
※ニチイ学館の介護部門の連結売上高です

連結売上高1位
連結売上高増加率10位
営業利益率2位
営業利益増加率8位

表6:ニチイ学館

※連結売上高増加率...(最新期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100
※営業利益率...最新期営業利益÷最新期売上高×100
※営業利益増加率...(最新期営業利益-前期営業利益)÷前期営業利益×100

★業界トップの安定成長、訪問介護は1,405拠点体制に

ニチイ学館の介護部門は、在宅系介護サービスや居住系介護サービス、福祉用具の販売・レンタル、障がい福祉サービス、介護関連講座、介護職員の派遣サービス、ヘルスケア商品の販売などで構成されています。

介護部門の2020年3月期連結決算は増収減益でした。増収の主な要因は、居住系介護施設で有料老人ホームとグループホームがそれぞれ1拠点開設し、利用者が増加したことです。また、施設利用者退去後の空き期間の短縮が進み、稼働率が向上したことも一因となりました。減益となった主な要因は、在宅系介護部門で訪問介護拠点の分割新設による再整備を進め、収益が圧迫されたことです。しかし、2020年3月末時点で402拠点の分割・新設を完了させ、訪問介護1,405拠点体制となりました。成長に向けた体制が整ったことで、今期(2021年3月期)の収益がどの程度改善するのか、決算発表時にチェックしたいところです。

なお、ニチイ学館は、経営陣による自社買収(MBO)が成立したため、所定の手続きを経て上場廃止になる予定です。

2位 SOMPOケア (SOMPOホールディングス 8630)

2020年3月期連結売上高 1,344億7,300万円(内部売上1億8,400万円含む)
※SOMPOホールディングスの介護・ヘルスケア事業の連結売上高です

連結売上高2位
連結売上高増加率5位
営業利益率10位
営業利益増加率1位

表7:SOMPOケア

★SOMPOグループの一員で安心感トップクラス、課題は低い営業利益率,405拠点体制に

SOMPOケアは、国内損害保険事業を中心に事業を展開するSOMPOグループの一員で、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームの運営や、居宅サービス事業を展開しています。現在の会社は、2018年7月にSOMPOケア(旧SOMPOケアメッセージ)、SOMPOケアネクスト、ジャパンケアサービス、プランニングケアの4社が合併して新たなスタートを切りました。

介護・ヘルスケア事業の2020年3月期連結決算は増収増益で、営業利益については黒字に転換しています。しかし、営業利益率は他社と比較すると低く、今後は収益力の向上が課題になりそうです。

3位 ベネッセスタイルケア (ベネッセホールディングス 9783)

2020年3月期連結売上高 1,229億1,400万円(内部売上4,600万円含む)
※ベネッセホールディングスの介護・保育事業の連結売上高です

連結売上高3位
連結売上高増加率8位
営業利益率3位
営業利益増加率7位

表8:ベネッセスタイルケア

★施設数の増加で増収、既存施設の入居率は95%に

ベネッセスタイルケアは、進研ゼミでおなじみのベネッセグループの一員で、高齢者介護サービス事業やサービス付き高齢者向け住宅の運営に加え、保育事業や学童クラブ事業も展開しています。

介護・保育事業の2020年3月期連結決算は増収減益でした。増収の主な要因は、高齢者向けホーム及び住宅数が前期比で8ホーム増えて330施設となり、入居者数が順調に増加したことです。既存施設の入居率は95%で、前期から1%低下したものの、高い入居率を維持しました。しかし、販売費や求人費用が増えたことで、営業利益は減益となりました。また、職員の処遇改善を進めたことも減益の一因になっています。

4位 ツクイ 2398

2020年3月期連結売上高 911億9,600万円
※株式会社ツクイの連結売上高で、内部売上はありません

連結売上高4位
連結売上高増加率3位
営業利益率7位
営業利益増加率5位

表9:ツクイ

★主力事業がけん引して増収増益、ポイントは収益力の向上

ツクイグループは「デイサービス事業」「住まい事業」「在宅事業」「人材事業(株式会社ツクイスタッフ)」「リース事業(株式会社ツクイキャピタル)」など、介護分野において様々な事業を展開しています。事業規模は拡大を続けており、2020年3月現在の全事業所数は700カ所、従業員数は2万1,200人を超えています。

ツクイの2020年3月期連結決算は増収増益でした。売上高の約6割を占める「デイサービス事業」で利用率と顧客数が伸び、セグメント別売上高が前期比で6.1%増加。また、有料老人ホーム「ツクイ・サンシャイン」などを展開する「住まい事業」(売上構成比約2割)では、グループホームの開設(2カ所)や入居者の増加によってセグメント別売上高が同8.1%増加するなど、主力事業がけん引する形で増収増益となりました。ただ、営業利益の推移をみると、2020年3月期は42億4,000万円で、2018年3月期の51億5,400万円に届いていません。今後は、収益力の回復が課題となりそうです。

5位 セコムのメディカル事業(セコム 9735)

2020年3月期連結売上高 764億3,800万円(内部売上2億2,000万円含む)
※セコムのメディカル事業の連結売上高です

連結売上高5位
連結売上高増加率4位
営業利益率5位
営業利益増加率4位

表10:セコム

★医療・介護・セキュリティのノウハウが強み、今後の事業展開に注目

セコムのメディカル事業では、ケアスタッフが自宅を訪問して身の回りのお世話をする「訪問介護サービス」を中心に、趣味活動を支援する「セコムシニア倶楽部」や、セコムの医療・介護・セキュリティのノウハウを結集した「シニアレジデンス」などを各地で展開しています。

メディカル事業の2020年3月期連結決算は増収増益でした。増収の主な要因は、メディカル事業で展開している医薬品・医療機器・薬剤提供サービスの販売が好調だったことにあります。今後は、訪問介護サービスをはじめ、シニアレジデンスで展開している介護付有料老人ホームなど、介護分野で売上を伸ばしていけるのか、注目しておきたいところです。

6位 学研ホールディングスの医療福祉サービス事業(学研HD 9470)

2020年9月期連結売上高予想 593億1,000万円(内部売上1,200万円含む)
※学研ホールディングスの医療福祉サービス事業の連結売上高です
※9月期決算のため、2020年9月期中間決算をもとに通期予想(中間決算の連結売上高を2倍)しています

連結売上高6位
連結売上高増加率9位
営業利益率8位
営業利益増加率9位

表11:学研ボールディングス

★施設の新設で増収増益、課題は利益率の向上

医療福祉サービス事業は、主にサービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームなどの介護施設や、子育て支援施設の設立・運営、看護師及び医師などを対象とした専門書の発行などを行っています。

医療福祉サービス事業の2020年9月期連結決算は、増収増益の予想です。2020年9月期中間決算報告書によると、サービス付き高齢者向け住宅を直近1年間で13事業所(累計143事業所)開設したほか、介護保険サービスの増加などにより、中間期も増収増益となっています。また、2020年第3四半期決算報告書によると、2019年10月~2020年6月のセグメント売上高は451億800万円で、中間決算をもとに計算した通期予想を上回るペースで推移しています。気になるのは営業利益率が他社よりも低いこと。投資を先行していることが原因と思われますが、今後は利益率向上が課題になりそうです。

7位 ユニマット リタイアメント・コミュニティ 9707

2020年3月期連結売上高 501億1,100万円(内部売上1,263万円含む)
※ユニマット リタイアメント・コミュニティの介護事業の連結売上高です

連結売上高7位
連結売上高増加率6位
営業利益率1位
営業利益増加率6位

表12:ユニマット リタイアメント・コミュニティ

★積極的な事業領域拡大で増収、営業利益率はランキング1位

ユニマット リタイアメント・コミュニティは、ユニマットのグループ企業。介護事業では、デイサービス、ショートステイ、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、居宅介護支援、訪問介護などの運営を行っています。

介護事業の連結売上高は増収増益でした。2019年4月に食事宅配サービス「食のそよ風」、同6月に介護保険デイサービスと保険外リハビリサービス、就労支援を組み合わせた同時一体施設「ウェルビスタ ケアスタジオ」、同11月にがんや難病の看取りに特化した複合施設「西上尾ホスピスケアそよ風」などの運営を開始するなど、積極的に事業領域を拡大したことなどが寄与しました。また、他社と比較して営業利益率の高さが目立ちました。ただ、新規事業開始に伴う人件費・広告宣伝費などの増加や、既存施設における修繕費の発生などにより、2020年3月期の営業利益の伸びはわずかにとどまっています。

8位 セントケア・ホールデイング 2374

2020年3月期連結売上高 421億7,800万円(内部売上360万円含む)
※セントケア・ホールデイングの介護サービス事業の連結売上高です

連結売上高8位
連結売上高増加率7位
営業利益率9位
営業利益増加率10位

表13:セントケア・ホールディングス

★事業所の新設で増収も、人件費の増加で減益に

介護サービス事業は同社の主力事業で、訪問介護や小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護を全国的に展開。持分法適用会社を含め、26都道府県で541か所の営業所を展開しています。

介護サービス事業の2020年3月期連結決算は増収減益でした。増収の理由は営業所・施設の新規開設で利用者が増えたこと。2020年3月期には訪問介護で営業所を16か所、小規模多機能型居宅介護で施設を3か所、看護小規模多機能型居宅介護で施設を10か所開設しています。その一方で、新規施設における採用で人件費が上昇するなど経費が増え、営業利益は減益となりました。今後は収益力の回復が課題になりそうです。

9位 ソラスト 6197

2020年3月期連結売上高 350億8,500万円
※ソラストの介護・保育事業セグメントのうち、介護事業の売上高です
※内部売上はありません

連結売上高9位
連結売上高増加率1位
営業利益率6位
営業利益増加率3位

表14:ソラスト

★積極的なM&Aで大幅な増収、収益力強化は今後の課題

介護事業では、訪問介護、通所介護、介護付有料老人ホーム、ケアハウス、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ショートステイ、居宅介護支援、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護などを展開しています。

介護事業の2020年3月期連結決算は増収増益で、連結売上高については前期比32.69%増と大幅増収となりました。増収の主な要因は積極的なM&Aにあり、2020年3月期は10件実施しています。また、2020年3月19日に株式を取得した「恵の会」の売上は2021年3月期に反映される予定。こうしたことから、2021年3月期の連結売上高を、同社では400億円と予想しています。

10位 ケア21 2373 

2020年10月期連結売上高予想 291億9,000万円
※ケア21の在宅系介護事業と施設系介護事業の連結売上高です
※10月決算のため、2020年10月期中間決算をもとに通期予想(中間決算の連結売上高を2倍)しています
※内部売上はありません

連結売上高10位
連結売上高増加率2位
営業利益率4位
営業利益増加率2位

表15:ケア21

★事業所・施設を積極的に新設して増収増益、課題は収益力の強化

ケア21は総合福祉企業として、訪問介護や訪問看護、居宅介護支援、介護付有料老人ホームなどを展開しています。

ケア21の2020年10月期連結決算は増収増益の予定です。在宅系介護事業では、2020年10月中間期(2019年11月~2020年4月)において、宮城県に1拠点、東京都に3拠点、京都府に1拠点、大阪府に3拠点、兵庫県に2拠点の計10拠点出店。また、施設系介護事業では千葉県に1施設、兵庫県に1施設をオープンしており、増収増益に貢献しています。今後は新設した事業所・施設における収益力の強化が課題となりそうです。

さいごに

今回は、介護事業を手掛けている上場企業の連結売上高上位10社を、決算報告書をもとにさまざまな視点からランキングしました。決算報告書は各企業のホームページで開示されているので、気になる企業が見つかったらチェックしてみるといいでしょう。

2021年版はこちら! FPが決算書から計算! 上場介護企業 トップ10社ランキング

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斉藤勇(Isamu Saito)

ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

オフィスISC代表。保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施している。

斉藤勇の執筆・監修記事

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