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仕事・スキル 介護士の常識 2022/11/30

LIFE(科学的介護情報システム)とは?使い方や導入のメリットも

構成・文/介護のみらいラボ編集部 1.jpg

LIFE(科学的介護情報システム)は、「科学的に効果が裏付けられた自立支援・重度化防止に資する質の高いサービス提供の推進」を目的に、2021年度から運用が開始されました。

LIFEは、厚生労働省が推進する「科学的介護」のために必要なツールですが、現状では未導入の施設も多く見られます。しかし、2021年度の介護報酬改定において、LIFEの活用が要件に含まれる加算が始まったことで、今後は介護事業所が積極的に取り入れるべきシステムの1つとなるでしょう。

当記事では、LIFEの具体的な使用方法やメリット・デメリットについて紹介しますので、ぜひご覧ください。

1.LIFE(科学的介護情報システム)とは?

LIFE(科学的介護情報システム)は、厚生労働省により、以下のように定義されています。

〇 介護サービス利用者の状態や、介護施設・事業所で行っているケアの計画・内容などを一定の様式で入力すると、インターネットを通じて厚生労働省へ送信され、入力内容が分析されて、当該施設等にフィードバックされる情報システム
〇 介護事業所においてPDCAサイクルを回すために活用するためのツール

(引用:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について」_引用日2022/08/14)

簡単に言えば、LIFEとは「さまざまな介護事業所から、利用者さんの介護データを収集・分析し、フィードバックを実施するシステム」のことです。介護事業所では、フィードバックされたデータをもとに、利用者さんの状態やケアの実績、変化などを客観的に把握し、計画書をブラッシュアップします。

また、2021年度の介護報酬改定によって、通称「LIFE加算」と言われる「科学的介護推進体制加算」をはじめ、LIFEの活用を要件とする加算が新設されました。

科学的介護推進体制加算の単位数・算定要件は、以下の通りです。

<施設系サービス>
科学的介護推進体制加算(Ⅰ) 40単位/月(新設)
科学的介護推進体制加算(Ⅱ) 60単位/月(新設)
(※加算(Ⅱ)について、服薬情報の提供を求めない特養・地密特養については、50単位/月)

<通所系・多機能系・居住系サービス>
科学的介護推進体制加算 40単位/月(新設)

〔算定要件〕
イ 入所者・利用者ごとの心身の状況等(加算(Ⅱ)については心身、疾病の状況等)の基本的な情報を、厚生労働省に提出していること。
ロ サービスの提供に当たって、イに規定する情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること。

(引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」_引用日2022/08/14)

この他にも、個別機能訓練加算(2)など、LIFEの活用が要件となる加算があり、今後の介護報酬改定でもこうしたケースが増えていくと予想されます。そうした加算が増えることによって、LIFEの登録事業所数も増加していくでしょう。

ちなみに、個別機能訓練加算(2)とは、「高齢者が望む豊かな生活が送れるように、日常生活活動(ADL)や家事動作(IADL)などの目標を立案し、その目標達成に必要な機能訓練を提供するための加算」となっています。

●関連記事:厚生労働省担当官に聞く(1)科学的介護情報システムLIFE「介護100年の計、その狙いとメリットは? 」

科学的介護とは?

科学的介護とは、「科学的裏付け(エビデンス)に基づく介護」のことです。エビデンスとは、「根拠」「証拠」「形跡」を意味する言葉で、医療業界においては「根拠」と訳される場合が多く見られます。

医療業界では、「どのような検査をするのか」「どのような治療が最適なのか」「本当にこの治療が有効なのか」などを研究することで、エビデンスを蓄積してきました。ちなみに、エビデンスにもとづく医療は、次のように定義されています。

「診ている患者の臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索し、それらを批判的に吟味した上で、患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考慮した上で臨床判断を下し、専門技能を活用して医療を行うこと」と定義できる実践的な手法

(引用:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について」_引用日2022/08/14)

一方、介護業界で行われる「科学的介護」では、以下の流れを繰り返し実施します。

① 科学的裏付け(エビデンス)に基づいた介護の実践
② 科学的に妥当性のある指標等を現場から収集、蓄積し、分析
③ 分析の成果を現場にフィードバックし、更なる科学的介護を推進

(引用:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について」_引用日2022/08/14)

医療業界と異なり、介護業界では事業所や介護士の経験にもとづいて、ケアを実施するケースが多いのが実情でした。しかし、今後は科学的根拠に基づいてケアを実施することで、施設や介護士を問わず質の高いケアの提供が可能となるでしょう。また、そうした科学的介護は、利用者さんの重度化防止にもつながるとされています。

VISITとCHASEとは

LIFEが運用される以前は、「VISIT」と「CHASE」という2つのシステムが運用されていました。

・VISITとは
VISITとは、「monitoring&eValuation for rehabllitation Servlces for long-Term care」の略称です。これは、通所・訪問リハビリテーション事業所から、「リハビリ計画書」や「リハビリ会議議事録」などの情報を収集するシステムのことで、2017年度より運用がスタートしました。

(出典:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について」

・CHASEとは
CHASEとは、「Care Health Status&Events」の略称です。こちらは、従来のデータベースでは難しかった、「高齢者の状態」や「ケアの内容」などの細かな情報を収集するためのシステムで、2020年度より運用が開始されました。

なお、CHASEではデータ収集だけでなく、収集したデータの分析・フィードバックも実施されています。

(出典:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について」

厚生労働省は、科学的介護を実現するために、まず通所・訪問リハビリテーション事業所向けに、リハビリテーションの情報収集を目的としたシステム・VISITの運用をスタート。その後、対象事業所を通所・訪問リハビリテーション事業所から全事業所へと拡大し、高齢者の状態やケア内容の情報収集を目的として、CHASEの運用をスタートさせました。

そして、VISITとCHASEが統合され、2021年度に新たに誕生したシステムがLIFEというわけです。

2.介護職向け|LIFEの使い方

LIFEを使用する場合、利用申請手続きをした上で、ログインのID設定やユーザー登録を行う必要があります。パソコンとインターネット環境があれば、無料で使用可能ですが、事前にインターネットオプションの設定(Cookieの設定)が行われていないと、LIFEを正常に利用することができません。その点には注意しましょう。

ここでは、LIFEの具体的な導入手順と利用方法について紹介します。

ログイン

LIFEの運用を開始するには、まずパソコンからLIFEのサイトにアクセスして、新規利用申請を行う必要があります。利用申請を行うと、厚生労働省から「ダウンロード用URL」などが記載されたはがきが届くので、はがきに記載された情報をもとに、起動アイコンをダウンロードしましょう。

起動アイコンからログイン画面を起動し、ログインIDとパスワードを入力すれば、LIFEの利用が可能です。

VISIT、CHASEの利用案内はがきを持っている場合は、新規利用申請をせずに、利用案内はがきに記載された情報をもとに手続きを行ってください。

データ登録

ログインが完了したら、ユーザー登録を行います。ユーザー登録には、施設・事業所を指す「管理ユーザー」と、実際にLIFEを使用する介護士を指す「操作職員」の登録が必要です。

管理者ユーザー、操作職員のユーザー登録が完了した後は、利用者情報の登録を実施します。利用者情報の登録方法は、介護記録ソフトに記録したデータをCSV連携でLIFEに取り込む方法と、LIFEの入力フォームから直接データを登録する方法の2種類です。

なお、CSVとは「カンマで区切られた」という意味を持つテキストデータの形式で、LIFEでは介護業務ソフトから作られた情報をCSV形式で取り込み、システムに登録しています。

フィードバック

介護施設・事業所が入力したデータは、匿名化されて厚生労働省でデータベース化され、各事業所の情報を確認することでフィードバックが受けられます。フィードバックは、管理ユーザー、操作職員のどちらからでも取得できるので、メニューから「フィードバックダウンロード」を選択し、必要なファイルをダウンロードしましょう。

フィードバックでは、提供される分析結果を踏まえて、施設・事業所が定められた計画書を見直し、日々のケアを改善していくことが期待されています。

(出典:厚生労働省「LIFE 操作説明書(本編)」

3.介護現場におけるLIFEのメリットとデメリット

LIFEには、「質の高い介護を全国のどこにいても受けられる」「LIFE加算を取得することで事業所の収入アップにつながる」など、さまざまなメリットがあります。介護士の視点から見れば、ケアに自信が持てるようになり、意欲や技能の向上にもつながるでしょう。

一方、「介護士によっては、利用者さんとの関わりが希薄になる可能性がある」という点がデメリットとして挙げられます。

また、LIFEを導入する場合は、細かなデータ入力などが必要となるため、介護士が数人で対応しているような小規模施設では、活用が進みにくい傾向にあります。今後は、小規模事業所も積極的にLIFEに登録し、データを閲覧・活用することが望まれるでしょう。

まとめ

LIFEとは、全国の介護事業所から、利用者さんの介護データを収集・分析し、フィードバックを実施するシステムのことです。2021年度から運用が開始され、これによって利用者さんに、「エビデンスにもとづく質の高いケアを提供すること」が期待されています。

現状では未導入の施設も多く見られますが、今後の介護報酬改定では、LIFE活用を要件とした加算が増えていくと予想されます。そのため、LIFEの登録事業所数も増加していくでしょう。

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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています

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