介護職員の指導方法の流れ・指導者が押さえるべきポイントを徹底解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
介護職における新人職員の指導方法について、具体的な流れや指導者が押さえるべきポイントを分かりやすく解説します。「指導方法の具体例が知りたい」「新人職員を成長させたい」と考えている教育担当・指導担当の方は、参考にしてください。
2022年度における介護職の離職率を見ると、勤続3年未満の離職者が全体の6割を占めている状況です。「人材不足」という課題を抱える介護業界にとって、早期離職をどのように防ぐかは、人材を確保するための大きなポイントだと言えるでしょう。そしてそのためには、新人職員の育成・成長・定着の3つに配慮することが非常に重要です。
(出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査の結果」)
しかし、実際の介護の現場では、日々の業務に追われるあまり「新人職員が入ってきても、教育に時間をかけられない」「どうやって指導していいのかわからない」というケースが多く見られるのも事実です。
この記事では、「新人職員を順調に成長させたい」と思っている介護職員の方に向けて、指導のポイントを解説します。新人職員の指導に不安を感じている方は、記事の内容を現場での業務にお役立てください。
1.新人介護職員の教育でまず教えるべきこと
新人介護職員に「教えるべきこと」については複数の項目があるため、「実務面」と「心理面」とに分けて考えましょう。
実務面で教えるべきことは、以下の4点です。
- マナー
- 業務内容
- 介護技術
- 緊急時の対応
心理面で教えるべきことは、以下の3点です。
- 心構え
- 求める職員像
- 施設の経営理念
では、実務面、心理面における指導のポイントをそれぞれに解説しましょう。
マナー |
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介護の仕事は、人と人との関わりが業務の大部分を占めるため、最低限のマナーを身に付けることは非常に大切です。利用者さんへのマナーはもちろんのこと、施設で働く職員同士が気持ちよく働くためにも、「相手への思いやりの気持ちを持って対応すること」を第一に伝えましょう。 |
業務内容 |
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介護職の業務内容は、身体介護から生活援助まで多岐にわたります。実際の業務では、マニュアルにはない柔軟な対応が必要になるケースも少なくありませんが、新人職員にはまず基本的な業務の知識を身に付けてもらうことが大切です。基本的な介護業務などをきちんと行えることが、成長への近道になるでしょう。 |
介護技術 |
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介護技術の指導は、言葉での説明が難しいケースも多いため、現場での実践(OJT)を通して身に付けるのが基本となります。利用者さんの動作のタイミングに合わせた介助や、恐怖心を抱かせないための工夫など、コツや注意点を具体的に伝えながら進めましょう。 |
緊急時の対応 |
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事故やトラブルなどの緊急時は、素早く適切に判断・行動することが必要になります。また、事故やトラブルは自分1人で責任を取れるものではないため、必ず周囲のスタッフに報告するように指導しましょう。新人職員には、普段から報連相(報告・連絡・相談)を徹底させ、ささいな問題点も職員同士で共有しておくことが、事故・トラブルの防止につながります。 |
心構え |
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介護職員は、「利用者さんの命を預かる責任」と「快適な暮らしをサポートするおもてなしの心」の両方を兼ね備えていなければなりません。知識と技術を身に付けるだけではなく、利用者さんに敬意を払い、忙しい時でも「利用者さん第一」で寄り添う心構えが必要です。 |
求める職員像 |
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求める職員像を伝えておくことで、新人職員が自主性を持って行動できるようになるでしょう。なお、2019年から導入された介護指導の新カリキュラムによると、介護人材には「実践力の向上」に加えて「多様化したニーズに応えられる力」や「キャリアアップへの意欲」が求められています。 (出典:厚生労働省「介護実習指導の内容とポイント」) |
施設の経営理念 |
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経営理念には、「お客様に満足してもらう」「社会に貢献する」など、施設が目指す理想の姿が表現されています。そうした経営理念を理解することは、新人職員にとって「自分が何のために働くのか」を考えるきっかけにもなるでしょう。 |
2.新人介護職員の指導方法
指導する際に「ただやって見せるだけ」「必要以上に干渉する」などの極端な教育を行うと、新人職員の成長を妨げることになりかねません。着実に介護スキルを身に付け、早期に職場の戦力になってもらうためにも、新人介護職員の指導・教育における5つのステップを理解し、実践しましょう。
なお、新人介護職員の指導においては、1ステップずつ丁寧に進め、適切な評価をすることが大事なポイントとなります。
新人介護職員の育成計画を作成する
新人職員の教育はやみくもに進めるのではなく、育成計画を作成して、新人職員の経歴や理解度に合わせた指導を行うことが大切です。
育成計画では研修の期間を区切り、それぞれの育成期間に目標とゴールを設定します。それによって「いつまでに何を習得するのか」が明確になるため、日々の業務に追われるなかでも、時間を効率よく使った研修を行うことができるでしょう。
介護現場で手本を見せつつレクチャーする
実践的な研修を進める段階では、まず指導者が手本を示すようにしてください。「とにかくやってみて」と最初から任せるのではなく、正しい形を見て、理解してもらうことで、新人職員は安心して実践に入ることができます。
介護の仕事は、スタッフ同士で連携しながら利用者さんをサポートすることが重要になるため、チームワークの大切さについても手本を示しながら指導・教育しましょう。
新人介護職員に業務の実践を繰り返してもらう
指導者が手本を示し、業務の流れを理解してもらったら、次は実際に実践してもらいましょう。その際、新人職員がうまく実践できなかったとしても、事故につながるような大きなミスでなければ、ある程度見守ることが大事です。
「次にどうつなげれば良いか」を新人職員の立場に立ってアドバイスし、意欲を失わずに前進できるようフォローしてください。
新人介護職員に実践後の感想を聞く
介護の仕事を実践させた後は、新人職員がどのようなことに疑問や不安を抱いたのか感想を聞きましょう。
指導者が、「新人職員にとって不安を感じるポイント」を正しく把握していないケースは、意外に多いものです。新人職員との間に認識のずれが生じないように、十分注意しましょう。また、新人職員は「自分からは相談しにくい」と感じている場合も多いため、指導者のほうから積極的にコミュニケーションをとり、感想を聞くようにしてください。
新人介護職員に業務のフィードバックをする
新人職員が行った業務に対しては、必ず「良かったところ」と「改善すべきところ」をフィードバックしましょう。フィードバックを行う時には、新人職員へのアドバイスだけではなく、指導者がどのような方針で指導しているのかを示すことも大切です。指導者の思いが分かれば、新人職員も安心して日々の業務を行うことができるでしょう。
3.新人介護職員の指導で押さえるべきポイント
新人職員の指導にあたっては、忙しさを理由に放置したり、何でも手助けして新人職員の自立を妨げたりするやり方はNGです。
また、介護の現場では臨機応変な対応が必要とされますが、新人職員が自力で「どういった場面で、どのような対応を行うのが適切か」を見極めるのは難しいため、慣れるまでは指導者が横についてサポートする必要があります。
なお、新人の指導においては、直接の指導者とは別の職員を相談役に据える「エルダー・メンター制度」の導入も効果的だと言われています。
(出典:厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」)
以下に新人職員の指導で押さえるべきポイントを解説しますので、エルダー・メンター制度と併せて活用し、より効果的な指導・教育を行ってください。
先入観を持たない
施設に新人として入ってくる職員には、まったくの未経験者もいれば、少し経験があるという方もいます。そのため、「新人だから何も分からないだろう」といった先入観は持たないことが大切です。
指導を行う時には、相互にコミュニケーションをとり、どこまで理解しているのか、何に不安を感じているのかを聞くことから始めましょう。それによって、分かっていることを何度も説明したり、分かっているだろうと思い込んで次のステップに進んだりするのを防ぐことができます。
指導内容は一貫する
指導内容に一貫性がなければ、新人職員は「何が正しいのか」「誰に相談すればいいのか」が分からなくなってしまいます。以下に、一貫性がない指導の例を示しておきますので、思い当たるところがないか見直してみましょう。
【一貫性がない指導の例】
- 昨日は「丁寧に」と言われたが、今日は「仕事が遅い」と怒られた
- 「何でも聞いて」と言われたので相談したところ、「自分で考えて」と言われた
- A先輩とB先輩とで教えられた介護方法が違う
頑張りや成長を具体的に褒める
新人職員の指導では、褒めることが非常に重要です。褒める時には「何がどう良かったのか」を具体的に伝えるようにしましょう。具体的に褒めることで、新人職員は「自分が認められた」と感じることができ、モチベーションを高く保つことができるはずです。
褒める時のポイントは、結果ではなく「努力」や「行動」に着目することです。スキルや技術を習得するまでの過程で努力したこと、良かったことを褒められると、新人職員は「自分が認められた」と実感できます。指導者が、新人職員の行動を常に見守っていることも伝わるため、信頼関係の構築にもつながるでしょう。
まとめ
介護業界の人材不足を解消するためには、新人介護職員の育成と定着が非常に重要です。自分の仕事に誇りや責任感を持ち、利用者さんから信頼される介護職員に成長してもらうためにも、今回紹介した「新人介護職員の指導・教育における5つのステップ」や「押さえるべきポイント」を、ぜひ現場でお役立てください。
「介護のみらいラボ」では、介護の現場で活躍する方に向けた有益な情報を掲載しています。現場で役立つ専門的な知識だけではなく、介護士のよくあるストレスや悩みの解消法なども紹介しているため、スキルアップ・キャリアアップを目指す方はもちろん、新人指導に悩む方も必見です!
※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
日本の高齢化率は年々進行し、介護を必要とする高齢者が増加しています。このような中にあって、介護人材確保は喫緊の課題とされ、厚労省もさまざまな対策を講じています。介護施設・事業所も介護人材不足に対して、真摯に取り組んでいかなければならない状況ですので、新人職員への指導はとても重要です。
介護業務は多岐にわたります。新人職員が介護未経験者であれば右も左もわかりません。新人職員の育成計画を立てるときは、介護の経験があるのか、経験がないのかなど、指導する対象者のレベルに合わせて無理のない計画を立てることが重要です。
「百聞は一見にしかず」といいますが、介護実践の場においても自分で実際に体験・経験することが成長につながります。失敗したとしても、自分が新人職員だったころのことを思い出し、あたたかい目で受け止め、なぜ失敗したのか、どうすればうまくいくと思うのかとフィードバックする習慣をつけてもらいましょう。うまくできたときは具体的に褒め、少しずつ自信をつけてもらい、介護の仕事に対するモチベーションを高めてもらえるような指導を行いましょう。介護のみらいラボ「OJTとは?介護現場での進め方と新人教育を成功させるポイントも」にも新人教育について述べています。新人職員の指導の参考にしてください。
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