重度訪問介護とは?必要な資格・仕事内容・大変なこと
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子重度訪問介護とは、重度の障害を抱える方に対して、地域での生活を支援するサービスです。介護職や障害者支援に携わる方のなかには、「重度訪問介護の仕事に興味がある」という方が、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、重度訪問介護について、仕事内容や仕事を続けるためのコツ、必要な資格、今後の需要などを詳しく解説します。高齢者福祉における「訪問介護」との違いにも触れますので、重度訪問介護に関心のある方や、重度訪問介護の詳細を知りたい方は、ぜひご覧ください。
1.重度訪問介護とは?
重度訪問介護とは、重度の知的障害や精神障害、肢体不自由肢体を抱える方が、在宅での生活を続けられるように、生活の支援を行うサービスです。
重度訪問介護では、居宅における身体介護や家事援助、外出時の歩行介助など、日常生活全般の介護を提供します。事故や難病により、常に介護を必要とする方がサービスの対象となるため、細心の注意を払いながらサポートすることが大切です。
(出典:厚生労働省「重度訪問介護」)
重度訪問介護と高齢者福祉における訪問介護の違い
重度訪問介護と高齢者福祉における訪問介護では、求められる専門性が異なります。重度訪問介護では、重度の障害がある方へのサポートを行うため、より専門的な知識やスキルが求められます。そのため、重度訪問介護従業者になるためには「重度訪問介護従業者養成研修」を修了しなければなりません。
一方、高齢者福祉の訪問介護では、要介護認定を受けた高齢者へのサービス提供がメインとなり、重度訪問介護ほどの専門性が求められることはありません。ただし、1人で利用者さんの自宅を訪問し、身体介護を行うため「介護職員初任者研修」を修了することが必要です。
重度訪問介護の仕事内容
重度訪問介護の主な仕事内容はつぎのとおりです。
● 入浴、排泄、食事などの身体介護
● 調理、洗濯、掃除などの家事援助
● 外出・通院など移動中の介護
● その他生活全般における援助(洗面、歯磨き、買い物など)
● 生活に関する相談や助言、見守り
(出典:厚生労働省「重度訪問介護に係る報酬・基準について」)
重度訪問介護の仕事は、利用者さんへの直接的な介護・援助だけではありません。利用者さんの話し相手となることで精神的な支えとなったり、ご家族とコミュニケーションをとることで介護を円滑にしたりするのも、重度訪問介護における重要な役割と言えるでしょう。
有資格者もしくは研修修了者に限りますが、喀痰吸引などの特定の医療的ケアが必要な利用者さんを担当する際には、それらの処置を行うこともあります。
2.重度訪問介護の仕事で大変なこと
重度訪問介護の仕事は、やりがいがある一方で、「大変」と言われることが少なくありません。大変と言われる理由としては、次のようなものが挙げられます。
・長時間のサービス提供
重度訪問介護は、一般的な訪問介護よりもサービスの提供時間が長い点に特徴があります。重度訪問介護の場合、24時間態勢でのケアサービスを利用する方が多いため、8時間〜12時間といった長時間のサービスも少なくありません。状況によっては深夜までつきっきりでサービスを提供するケースもあるため、事業所のなかには8時間勤務の3交代制としているところも見られます。
・気難しい利用者への対応
利用者さんのなかには、「理想とする介護サービス」と「現実の介護サービス」が異なることにストレスを感じ、サービスの内容に対して不満をぶつける方もいらっしゃいます。また、病気や障害によってうまくコミュニケーションが取れない方も多いため、相手の気持ちに寄り添い、その思いをくみ取る必要があるでしょう。
・専門的な知識や技術が求められる
重度訪問介護の仕事では、重度障害を抱えている方が対象となるため、一般的な訪問介護よりもデリケートで繊細な介護技術が求められます。
重度訪問介護の仕事を続けるためのコツ
重度訪問介護の仕事は大変である一方、慣れると続けやすい仕事でもあります。ここからは、ストレスなく仕事を続けるコツを3つ紹介しましょう。
・利用者と親密になりすぎない
重度訪問介護の仕事で生じる精神的疲労の多くは、利用者さんとの人間関係によるトラブルが原因です。利用者さんと適度な距離感を保つことは、介護する側のメンタルの安定につながるでしょう。
・悩みを相談できる相手を見つける
重度訪問介護の現場では、1人で仕事をする時間が長いことから、分からないことや困ったことにぶつかって、悩みを抱え込んでしまう方も少なくありません。困ったときの相談相手がいると、いざというときに心の支えになるため、職場の同僚や学生時代の友人など、気兼ねなく話せる相手を見つけておきましょう。
・無理をしすぎない
利用者さんからの理不尽な要求やハラスメントを受けた際には、無理をせず、上司に相談し、担当を変更してもらいましょう。重度訪問介護は人間を相手にする仕事であるため、相性が合わない場合もあります。仕事である以上、ある程度の我慢は必要ですが、一人で抱え込んだり、無理をしすぎるのは禁物です。
3.重度訪問介護の仕事に必要な資格
重度訪問介護に従事する要件は、「介護福祉士、介護職員初任者研修などの資格所有者」および「重度訪問介護従事者養成研修修了者」となっています。
ここでは、「重度訪問介護従業者養成研修」について紹介しましょう。重度訪問介護従業者養成研修には、次の3つの課程があります。
●基礎課程:重度訪問介護従業者に必要な基礎的な介護技術や職業倫理について学ぶ課程
●追加課程:医療的ケアを必要とする重度訪問介護利用者の障害及びケア方法、コミュニケーション、リスク管理、緊急時の対応方法などを学ぶ課程
●統合過程:基礎課程・追加課程の内容に、喀痰吸引や経管栄養の演習を加えたもの
(参考:介護のみらいラボ「重度訪問介護従業者とは?資格取得のメリットと研修課程の詳細」)
重度訪問介護従業者養成研修は、都道府県により指定された事業所にて受講可能です。地域によって研修を行う場所が異なるため、各都道府県のホームページで事前に確認すると良いでしょう。
重度訪問介護従業者養成研修を取得するメリット
重度訪問介護従業者養成研修を取得することで、以下のようなメリットがあります。
● 専門的な介護知識・技術が身に付く
● 有資格者として優遇される傾向にある
● 新しい職場でも即戦力として活躍できる
● 受講資格不要で、誰でも取得できる
● 知識やスキルを家族の介護にも生かせる
重度訪問介護従業者養成研修の統合課程を修了すると、喀痰吸引や経管栄養といった医療的なケアを行うことができるため、仕事の幅が広がります。
また、実際の介護現場では、障害に精通した人材が不足しており、重度訪問介護従業者のニーズは今後も高まっていくと予想されます。より専門性の高い介護を実践したい方や、介護職に興味がある方は、重度訪問介護従業者養成研修を積極的に取得しておくと良いでしょう。
4.重度訪問介護の需要は高まっている
近年は、重度訪問介護の対象者が拡大しています。2006年度施行の障害者自立支援法において、重度訪問介護の対象者は「重度の肢体不自由者のみ」でしたが、2013年度の障害者総合支援法の改正により「知的障害者・精神障害者」が、重度訪問介護の対象者として追加されました。2018年4月からは、入院先の医療機関における重度訪問介護も可能となっています。
(出典:厚生労働省「重度訪問介護」)
(出典:厚生労働省「障害福祉サービスについて」)
以上のように、重度訪問介護へのニーズは年々高まっています。介護職の方には高齢者福祉の介護現場で働く以外に、重度訪問介護従業者としてキャリアアップしていく選択肢もあります。重度訪問介護の現場経験を生かしつつ、事業所全体のマネジメントを学べば、より多くの方に良質なサービスを提供できるようになるでしょう。
まとめ
重度訪問介護とは、重度の障害を抱える方が、在宅での生活を続けられるように生活支援を行うサービスです。重度訪問介護では、重度の障害がある方へのサポートを行うため、高齢者福祉における訪問介護よりも、専門的な知識やスキルが求められます。
また、身体的な負担だけでなく精神的な負担も大きいため、利用者さんとの距離感や無理のない働き方を意識することも大切でしょう。
重度訪問介護に従事する要件は、「介護福祉士、介護職員初任者研修などの資格所有者」および「重度訪問介護従事者養成研修修了者」となっていますが、重度訪問介護従事者養成研修を修了することで、より専門性の高い知識・スキルを身に付けることができます。重度訪問介護は、今後さらに需要が高まると予想されるため、関心のある方は資格取得を目指すと良いでしょう。
「介護のみらいラボ」では、介護職のスキルアップや転職に役立つ情報を多数掲載しています。重度訪問介護をはじめとするさまざまな職種・資格についての情報や、介護の手法、注目のキーワードなどの解説も掲載しておりますので、介護職として働く方はもちろん、介護職に興味がある方も、ぜひご活用ください。
※当記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
重度訪問介護は、障害者福祉サービスの介護給付の中の1つです。重度訪問介護は重度の肢体不自由や重度の知的障害、精神障害があるため、常に介護を必要とし、1人で生活するのが難しい方に対して、住み慣れた地域や場所で、自分らしく生活していけるようサポートしていくサービスです。身体介護や家事援助、移動介護、生活などに関する相談助言、見守りなど生活全般をサポートします。
重度訪問介護を必要としている人は、筋ジストロフィーや筋委縮性側索硬化症(ALS)などの難病や脳性麻痺、脊椎損傷といった重い障害がある方ですが、重度障害があっても、重度訪問介護の長時間連続のヘルパー制度を利用し社会参加している方が増えています。また、精神障害者がある人も重度訪問介護を利用し地域での生活支援体制が整えば病院から退院し、地域で生活していくことができるでしょう。
重度訪問介護はまだまだ認知度は低い状況ですが、重度障害者に寄り添って在宅生活を支える介護のエキスパートとしてこれから注目される仕事ではないかと思います。
重度訪問介護従業者養成研修は、通学で基礎課程1日、追加課程1日、統合過程2日間が目安のようです(通信制度もあり)。受講にあたって保有資格や実務経験などの条件はないため関心がある方は受講を検討してみてはいかがでしょうか。
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