介護疲れの原因は?疲れを軽減する方法・対策を紹介
文/中村亜美(介護福祉士)みなさんのなかに、「介護疲れを感じているけど、頼れる人がいなくて困っている」「知人が介護に疲れているようだけど、どうしてあげたらよいかわからない」と悩んでいる方はいらっしゃいませんか?
介護が必要な高齢者をサポートするのはとても重要で、大きなやりがいのある仕事です。しかし、負担が大きすぎるために、介護疲れに陥ってしてしまう方も少なくありません。
介護疲れを防ぐには、適切な対応をしていくことが大切です。この記事では、「介護疲れを感じている方の負担を軽減する方法」について、詳しく解説していきます。介護疲れに悩む人が身近にいる方も、ぜひ最後までご覧ください。
1.介護疲れとは
介護疲れとは、介護をしている人が精神的にも身体的にも疲れてしまう状態のことをいいます。
在宅介護は長期間に及ぶケースも多く、大切な家族のためにしていることであっても、負担が大きければ疲れてしまうものです。また、介護の仕事に就いているスタッフも、同様に心身の疲れを感じてしまうことがあります。
そうしたなかで、精神的なストレスからうつ症状などがみられるようになると、回復するのに時間がかかるため注意が必要です。
2.介護疲れを感じている人の割合
厚生労働省の調査によると、同居している家族を介護している人のうち、「日常生活での悩みやストレスがある」と答えた人は68.9%にたっしました。つまり、介護に携わる人の70%近くが、悩みやストレスを感じているわけです。
筆者のまわりでも、在宅での介護に悩みを抱えている方は多く、特に毎日の介護を1人でこなしている場合にストレスを感じやすくなる傾向があると感じます。
介護従事者で介護疲れを感じている方の割合
介護従事者の場合は、どのような状況で介護疲れに陥りやすいのでしょうか。
公益財団法人 介護労働安定センターの調査によると、「働く上での悩み、不安、不満等」に対する回答は、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」が31.3%、「精神的にきつい」が28.5%となっており、介護従事者が心身ともに疲れを感じていることが見てとれます。
また、「人手が足りない」が45.0%、「有給休暇が取りにくい」も34.5%となっており、仕事が多忙で心身に疲れが出ると、不満につながりやすいことがわかります。
3.介護疲れの原因
介護疲れは、具体的にどのようなことが原因で起きるのでしょうか? ここからは、介護疲れの原因を詳しく解説していきます。
介護疲れの原因には、「身体的な負担」「精神的な負担」「経済的な負担」の3つがあるといわれています。
身体的な負担
身体的な負担がかかる例として、以下のようなケースが考えられます。
- 要介護者の体よりも自分(介護者)の体のほうが小さく、介助のたびに大きな負担がかかる
- 介護の頻度が多い
介護は、自分の体を使うことも多いため、負担が大きくなるほど疲れやすくなります。なかには、腰痛などの慢性的な体の痛みを抱えてしまい、介護ができない状況になる場合もあります。
精神的な負担
精神的な負担が発生する例としては、以下のようなケースがあります。
- 家族や親せきが介護について口を出してくるが手伝ってはくれない
- 夜間、要介護者が家出してしまうのではないかと心配で眠れない
- 要介護者からの暴言がつらい
- 介護の大変さを理解してもらえない
介護による負担は、身体面だけでなく精神面にも影響することが多く、精神的な疲れがたまると「介護うつ」のような重い症状が出ることもあります(介護うつについては後述します)。
経済的な負担
介護にはお金がかかります。特に入居型施設での介護サービスを利用する場合は、要介護者本人の年金ではまかなえず、家族が負担することもあるでしょう。そうした経済的負担が、介護する家族を追い詰めるケースも見られます。
4.介護疲れによって引き起こされる問題
介護疲れは、最初は軽度なものであったとしても、慢性化すると深刻な問題につながりかねません。ここからは、介護疲れが原因で発生しやすい2つの問題を解説していきます。
介護うつ
「介護うつ」とは、介護疲れが原因でうつ症状が出ている状態のことです。特に在宅で家族の介護をする場合、協力してくれる人がいなかったり、介護による心身への負担が大きすぎたりすると、精神的にも疲れてしまい介護うつになってしまう可能性があります。
介護うつになると、介護される側だけでなく、介護者自身の生活にも大きな影響が出てしまうため、早期の対応が必要です。
介護離職
家族の介護によって仕事の継続が難しくなり、結果として「介護離職」してしまう方も少なくありません。
介護離職は、経済的な打撃になるだけでなく、社会とのつながりを希薄にし、孤立を招くこともあります。その結果、介護うつなどを発症する可能性もあるため注意が必要です。
5.介護疲れを軽減する方法・対策
ここまでお話してきたように、介護疲れが積み重なると、介護うつや介護離職など、より大きな問題に発展してしまう可能性があります。
そこでここからは、介護疲れを軽減する3つの方法を紹介していきます。
介護の協力者を見つける
介護は1人で抱え込むと大きな負担となり、その状態が長期間続くと疲れ果ててしまう可能性があります。そうならないように、「協力してくれる人」をつくっておきましょう。
身内に協力者がいない場合には、近隣の地域包括支援センターやケアプランセンター(居宅介護支援事業所)に相談してみるのがおすすめです。介護サービスをうまく活用して、介護者の負担を軽減してください。
相談する
相談できる相手を見つけておくことも重要です。とはいえ、「相談する相手がまわりにいない」という方もいると思います。その場合は、次の場所を利用してみてはいかがでしょうか。
- ケアプランセンター(居宅介護支援事業所)
- 地域包括支援センター
- 認知症カフェ
被介護者が要介護認定されているなら、ケアプランセンターに行ってケアマネジャーに相談してみましょう。ケアマネジャーが状況を聞き取り、適切な介護サービスを提案してくれるはずです。
介護疲れに悩んだときに受けられる介護サービスは、主に次のようなものになります。
- 訪問介護サービス
- 入居型の施設での介護サービス
- 通所介護サービス(デイサービス)
- 福祉用具貸与サービス
上記のサービスを介護保険内で受けられない場合には、保険外サービスの利用を検討してみるのもよいでしょう。保険外サービスは価格が高くなる傾向にありますが、その一方で、幅広いサービスが利用できるというメリットがあります。
被介護者が要介護の認定を受けていないなら(要支援1~2の場合など)、地域包括支援センターに行ってみましょう。地域包括支援センターは、高齢者の暮らしや健康に関する相談に幅広く対応しているため、生活上での困りごとを話してみるのもよいかもしれません。
認知症カフェは、認知症の人やその家族、地域住民、介護や福祉の専門家など、誰でも気軽に集える場所です。 そして、訪れるのも帰るのも自由です。お茶をするだけでもよいので、近くにあれば立ち寄ってみましょう。
リフレッシュする
介護の疲れを癒す時間も大切です。自分の好きなことに没頭する時間やゆったりとする時間をつくるように意識してください。
介護が忙しくて自分の時間がなかなかつくれない場合には、介護サービスの利用がおすすめです。先に触れたケアプランセンターなどに相談し、適切な介護サービスを提案してもらいましょう。
6.介護疲れを感じている介護者への適切な対応
「周囲に介護疲れを感じていそうな介護者がいて心配だけど、何をしてあげたらよいかわからない」と思っている方に向けた対策も紹介しておきます。
疲れを感じている介護者への対応の仕方は、相手との関係性によっても異なります。介護疲れを感じている方が身内であれば、介護への協力を申し出てあげるとよいでしょう。
友人や知人など、関係がそこまで親密でない相手であれば、立ち入っていい領域は限られます。そんなときは、ケアプランセンターや地域包括支援センターに相談するようすすめてみましょう。介護のプロに相談することで、現実的な解決方法が見つかるかもしれません。
また、介護は長期間にわたるケースも多いため、その都度、介護者の話をゆっくり聞いてあげることも大切です。
まとめ:1人で抱え込まずに、介護サービスをうまく活用しよう
介護疲れの回避方法は、「1人で負担を抱え込まないこと」に尽きます。
介護疲れは、介護を受ける側にとっても望ましくありません。介護者の心身の負担が大きいままでは、要介護者の気持ちに寄り添った介護をすることは難しいからです。
要介護者を適切にサポートできる環境をつくるためにも、まずは相談できる場所をつくることが大切です。その上で、介護サービスなどをうまく活用して、心のゆとりを維持できるよう工夫していきましょう。
●関連記事:介護問題とは?9つの問題と背景を大学教授が解説
【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む
SNSシェア