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仕事・スキル 介護士の常識 2024/02/22

#介護保険

介護保険料はいくら払う?計算方法や支払いが始まる時期・支払い方法を解説

文/中谷ミホ(介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士) thumbnail.jpg

介護保険は、社会全体で保険料を負担する公的な「社会保険」の1つです。そのため、一定の条件を満たす国民は原則として加入し、介護保険料を負担する義務が生じます。
しかし、介護保険料について「いつから支払い始めるの?」「いくら支払うの?」など、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、介護保険料の支払いが始まる時期や支払い方法、保険料の計算方法などを解説します。「滞納した場合にどうなるのか」や、支払いを免除されるケースなども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.介護保険料とは?

介護保険料は、市町村が介護保険を健全に運営するための大切な財源です。

介護保険は、保険者である市町村(および特別区)が被保険者から介護保険料を徴収し、被保険者が要介護認定を受けた際に、介護サービスなどの保険給付が受けられるようにする仕組みです。
そして、この保険給付の財源の半分は介護保険料、残りの半分は国や自治体からの公費(税金)でまかなわれています。

介護保険の財源の内訳は、以下の通りです。

・公費=市町村(12.5%)+都道府県(12.5%)+国(25%)
※施設等給付の場合は、国が20%、都道府県が17.5%
・介護保険料=第1号被保険者の保険料(23%)+第2号被保険者の保険料(27%)


上記の負担割合は、第1号被保険者と第2号被保険者の人口比にもとづき、3年ごとに見直されています。

また、被保険者が保険給付を受けられるのは、介護サービスにかかる費用のうち、利用者が1〜3割を自己負担した残りの9〜7割の部分です。

2.介護保険料はいくら払う?

介護保険料は、原則として40歳になると支払いが始まります。

ただし、支払う金額は、65歳以上の第1号被保険者と40〜64歳の第2号被保険者(健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの健康保険加入者)で異なります。以下で詳しく見ていきましょう。

65歳以上(第1号被保険者)の介護保険料

2021〜2023年度における、65歳以上の介護保険料の全国平均は月額6,014円です。介護保険料は、各市町村で3年ごとに見直されますが、今回初めて6,000円を超えました。

ちなみに、介護保険制度が始まった2000年の介護保険料は月額2,911円ですので、この20年間で約2倍になった計算です。その主な理由としては、少子高齢化や高齢化の進展に伴う要支援・要介護認定者数の増加や、介護サービスの利用者数の増加が挙げられます。

介護保険料は地域差も大きく、最も高い地域で9,800円、最も低い地域で3,300円と約3倍もの差があります。

40〜64歳(第2号被保険者)の介護保険料

40〜64歳の方の介護保険料は、加入している健康保険によって金額が異なります。

国民健康保険の加入者の介護保険料は、前年の所得や世帯の被保険者の人数、資産などに応じて決まる仕組みです。

一方、会社員など社会保険に加入している人の介護保険料は、医療保険者ごとに設定される介護保険料率と給与の金額によって決まります。なお、会社員の方の介護保険料は会社と折半するため、負担する金額は半額です。

3.介護保険料の計算方法

介護保険料の計算方法も、65歳以上(第1号被保険者)と40〜64歳(第2号被保険者)で異なります。

65歳以上(第1号被保険者)の場合

65歳以上の人の介護保険料は、自治体の「基準額」と「前年度の所得」などをもとに算出され、所得の多い人ほど保険料が高くなる仕組みになっています。

所得段階の標準は9段階ですが、自治体によって6段階から15段階とさまざまです。基準額や保険料率は自治体ごとに異なります。

ここでは、出雲市の例を挙げて説明しましょう。出雲市の月額基準額は6,260円です。所得段階は12段階に分けられています。段階別の金額詳細は出雲市ホームページをご確認ください。

■計算例
出雲市の「第4段階」に該当する被保険者の介護保険料は、以下の通りです。
6,260円×0.9×12か月分=67,608円(年額)

40〜64歳(第2号被保険者)の場合

第2号被保険者の介護保険料の算出方法は、加入する健康保険によって異なります。

国民健康保険の場合
国民健康保険の介護保険料(国民健康保険料の介護分)は、所得割額、均等割額、平等割額、資産割額をもとに算出されます。

ここでは、東大阪市を例に挙げて説明しましょう。東大阪市の介護納付金分保険料の計算方法は以下の通りです。

・介護納付金分保険料=①所得割額+②均等割額
①所得割額:対象となる被保険者の1年間の所得に対する世帯の賦課標準所得金×2.61%
②均等割額:対象となる被保険者数×19,552円

■計算例
国民健康保険の加入者4名(夫41歳・妻38歳・子11歳・母66歳)の場合

夫 41歳 給与収入320万円(給与所得216万円) 賦課標準所得=173万円
妻 38歳 給与収入103万円(給与所得48万円) 賦課標準所得=5万円
子 11歳 収入なし
母 66歳 年金収入180万円(年金所得70万円) 賦課標準所得=27万円

①所得割額 1,730,000円×2.61%=45,153円
②均等割額 1人×19,552=19,552円
①+②= 64,705円(年額)

出典:東大阪市ホームページ

国民健康保険以外の医療保険の場合

「標準報酬月額・標準賞与額」に「保険料率」をかけて計算されます。計算方法は以下の通りです。
・(標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率

ここでは、全国健康保険協会(協会けんぽ)を例に挙げて計算してみましょう。

全国健康保険協会の介護保険料率1.82%、月収25万円、賞与45万円の場合、次のようになります。
・25万円+45万円×1.82%=12,740円

ただし、上記で算出された金額は会社との折半となるため、実際に負担する介護保険料の自己負担額は、6,370円となります。

4.介護保険料はいつから払う?

次に、介護保険料の支払い時期について確認しましょう。

支払い開始月は?

介護保険料の支払いは、40歳になった月から始まります。これは、満40歳に達すると第2号被保険者となるためです。

ちなみに、第2号被保険者となる基準日は、法律で「誕生日の前日」と決められています。例えば、誕生日が1日生まれの方は前日が基準日となるため、誕生月の前月から支払いが始まります(誕生日が6月1日の方であれば、5月分から介護保険料を支払うことになります)。

なお、65歳に到達し、第1号被保険者に切り替わるときも同様の基準日です。

いつまで払う?

介護保険料の支払いは、一生涯続きます。要介護認定を受けて介護サービスの利用を始めても、介護保険料の支払いは免除されません。

「要支援・要介護状態になっても、支払いが続く」ということは、しっかり覚えておきましょう。

5.介護保険料の支払い方法

介護保険料の支払い方法も、65歳以上(第1号被保険者)と40〜64歳(第2号被保険者)で異なります。

65歳以上(第1号被保険者)

65歳以上の方の支払い方法は「特別徴収」と「普通徴収」の2通りがあります。

特別徴収とは、年金から保険料が天引きされる支払い方法で、老齢年金や遺族年金、障害年金を年額18万円以上受給している方が対象です。

普通徴収は、銀行振込や口座振替により自分で支払う方法です。こちらは、年金の受給額が年額18万円未満の方と年金を受給していない方が対象となります。

40〜64歳(第2号被保険者)

40〜64歳の方の介護保険料は、加入する健康保険によって支払い方法が異なります。

介護保険料は医療保険料とあわせて徴収され、銀行振込や口座振替によって自分で支払います。一方、社会保険に加入する人は、給料から天引きされるため自分で支払う必要はありません。

6.介護保険料を滞納してしまうと?

介護保険料を滞納すると、保険者である市町村から督促状が届きます。その後、納付期限までに支払わなければ、滞納保険料に延滞金が加算され、財産(貯金、年金、給与、不動産など)を差し押さえられることがあります。

また、特別な事情がないにもかかわらず、介護保険料を滞納したままでいると、介護サービスを利用するときに、次のようなペナルティが課せられます。

1年以上滞納した場合

通常、介護サービスを利用した場合の支払いは、利用料の1〜3割の自己負担で済みます。しかし、1年以上の滞納がある場合はいったん利用料の全額を自己負担し、後日、申請によって保険給付分(費用の9割〜7割)を返還してもらうことになります。

1年6か月以上滞納した場合

1年6か月以上滞納した場合は、保険給付が一時差し止められ、本来は返還されるはずの保険給付分(費用の9割〜7割)が滞納保険料に充当されます。

2年以上滞納した場合

介護保険料を納める期間は、2年間と定められています。そのため、滞納から2年を経過した場合、その期間の保険料の納付は認められません。

2年以上滞納した方が、介護サービスを利用するときには、未納期間に応じて自己負担が3割(もともと3割の人は4割)に増加する措置がとられます。また、高額介護サービス費などの支給も受けられなくなります。

7.介護保険料を払わなくていいケースは?

以下に当てはまる場合は、介護保険料を納付する必要がありません。

40〜64歳未満の社会保険被扶養者

40〜64歳未満で、社会保険の被扶養者(専業主婦・専業主夫など)の介護保険料は、加入する健康保険組合が負担するため、納付する必要がありません。

ただし、第1号被保険者に切り替わる65歳になると、介護保険料の支払い義務が生じます。

なお、健康保険組合によっては、40歳未満の被保険者に40歳以上の被扶養者がいる場合に、介護保険料の支払いを求められることがあります。このことを「特定被保険者制度」といいます。

生活保護の受給者

40歳以上65歳未満の生活保護受給者は、介護保険の被保険者資格がないため、介護保険料の支払い義務がありません。介護保険サービスを受ける場合は、生活保護における介護扶助として支給されます。

また、65歳以上の生活保護受給者は、介護保険の被保険者となりますが、生活保護費の生活扶助費を介護保険料としてまかなうため、こちらも支払う必要がありません。

海外居住者(日本国内に住所がない人)

生活の本拠を海外に移すなど住民登録の国外転出届を提出した場合は、介護保険被保険者の資格を喪失するため、介護保険料を納付する必要がありません。

ただし、被保険者本人の住民登録が抹消されても、国内に第2号被保険者の被扶養者がいる場合は、引き続き保険料が発生する場合があります。該当する場合は、加入する保険組合に確認しましょう。

在留期間3か月以下の外国人

外国籍の方でも、住んでいる地域に住民票がある場合は、介護保険の被保険者となり、介護保険料を支払う義務が生じます。

ただし、在留資格または在留見込期間が3か月以下の短期滞在の方は、介護保険料を支払う必要がありません。

適用除外施設に入所している人

障害関連法・生活保護法などの適用を受けて「介護保険適用除外施設」に入所している期間は、介護保険の被保険者にならないため、介護保険料を納める必要はありません。

これらの施設では介護保険と同等以上のサービスが提供されており、将来的にも介護保険の給付を受ける可能性が低いからです。

そのため、適用除外施設に入所している方には「介護保険被保険者証」が発行されません。

【介護保険適用除外施設】(介護保険法施行法第11条、介護保険法施行規則第170条)

① 児童福祉法に規定する医療型障害児入所施設
② 児童福祉法に規定する厚生労働大臣が指定する医療機関(当該指定に係る治療等を行う病床に限る)。
③ 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法の規定により独立行政法人国立重度知的障害者施設のぞみの園が設置する施設
④ 国立及び国立以外のハンセン病療養所
⑤ 生活保護法に規定する救護施設
⑥ 労働者災害補償保険法に規定する被災労働者の受ける介護の援護を図るために必要な事業に係る施設(同法に基づく年金たる保険給付を受給しており、かつ、居宅において介護を受けることが困難な者を入所させ、当該者に対し必要な介護を提供するものに限る)。
⑦ 障害者支援施設(生活介護を行うものであって、身体障害者福祉法の規定により入所している身体障害者又は知的障害者福祉法の規定により入所している知的障害者に係るものに限る)。
⑧ 障害者総合支援法に規定する指定障害者支援施設(支給決定(生活介護及び施設入所支援に係るものに限る)を受けて入所している身体障害者、知的障害者及び精神障害者に係るものに限る)。
⑨ 障害者総合支援法に規定する指定障害福祉サービス事業者である病院(療養介護を行うものに限る)。

出典:厚生労働省資料

特別な理由がある場合は減免申請も

以下のような、特別な理由によって介護保険料の支払いが困難となった場合には、介護保険料の減免(免除)を申請できます。

  • 失業や長期入院などにより収入が著しく減った場合
  • 災害により著しい損害を受け、一時的に収入が減った場合
  • 産前産後休業や育児休業を取得した場合

減免措置の対象や内容は自治体によって異なるため、詳しくはお住まいの市町村に確認してください。

まとめ

介護保険に加入する満40歳を迎えると、介護保険料の支払いが始まります。支払いは一生涯続き、介護サービスを利用するようになっても免除されることはありません。

介護保険料の計算方法や支払う金額、支払い方法は、65歳以上の第1号被保険者と40〜64歳の第2号被保険者で異なるため、理解しておきましょう。

なお、介護保険料を滞納すると、財産を差し押さえられたり、滞納年数によっては自己負担割合が増えたりするなどのペナルティが課せられます。滞納しないように、きちんと納期限内に納付することが大切ですが、特別な理由で支払いが難しい場合は減免申請を行うことが可能です。早めにお住まいの市町村へ相談しましょう。

※本記事の内容は2023年11月時点の情報をもとに執筆しています

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中谷ミホ

介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士

福祉系短大を卒業後、介護職員、相談員、ケアマネジャーとして、障害者支援施設、介護老人保健施設などの介護現場で活躍。現在は介護業界での経験を生かしながら、ライターとして活動しており、介護・福祉に関わる記事を数多く手がける。保育士、福祉住環境コーディネーター3級も取得。

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