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仕事・スキル 介護士の常識 2024/04/24

常勤換算とは?計算方法・人員配置に注意が必要な介護サービスも

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

介護施設や事業所では、人員配置基準を守るために、「常勤換算」という方法で働き手の数を算出しています。常勤換算とは、施設・事業所で働くすべての職員の労働時間を「常勤の職員が何人働いているか」に換算した人数のこと。施設の所定勤務時間をフルで働く常勤職員を1とし、その他の従業員(パート、アルバイトなど)が常勤職員何人分に相当するのかを計算します。

当記事では常勤換算の定義や計算方法、注意点はもちろん、介護サービスごとの人員配置基準についても解説します。常勤換算は、健全な施設運営の基礎となる知識でもあるため、事業所の管理者を目指す方やこれから介護業界で働きたいと考えている方は、ご一読をおすすめします。

1.常勤換算とは?

常勤換算は、簡単に言うと「その事業所で働いている平均職員数のこと」です。介護保険法では、介護サービスの質を保つために、サービス内容に合わせた人員配置基準が定められています。しかし、介護施設・事業所で働く職員は、すべてが常勤勤務の正社員というわけではなく、パート、アルバイトなどさまざまな形態の働き方があります。

そのため、働く人の正確な人数を算出する際には、施設・事業所で働くすべての職員の労働時間を「常勤の職員が何人働いているか」に換算する必要があるのです。

なお、施設・事業所の種類や利用者さんの人数によって、必要とされる職種(管理者やサービス提供責任者、訪問介護員など)の人員配置基準は異なり、人員基準を満たしていない場合には、処分が科されるケースもあります。

常勤換算方法とは、非常勤の従業者について「事業所の従業者の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより、常勤の従業者の員数に換算する方法」(居宅サービス運営基準第2条第8号等)であり、また、「勤務延時間数」とは、「勤務表上、当該事業に係るサービスの提供に従事する時間(又は当該事業に係るサービスの提供のための準備等を行う時間(待機の時間を含む))として明確に位置づけられている時間の合計数」である(居宅サービス運営基準解釈通知第2-2-(2)等)。

(引用:厚生労働省「介護サービス関係 Q&A集」_引用日2022/07/07)

先に紹介したように、常勤換算では、施設・事業所の所定勤務時間にフルタイムで従事する常勤職員を1とし、その他の非常勤職員の勤務時間数が、常勤職員の何人分にあたるかを算出します。ただし、ここで定義する常勤・非常勤は、正社員や契約社員、パートといった雇用形態とは関係ありません。所定勤務時間に達している職員は常勤、それ以外の職員は非常勤として計算を行います。

計算方法

常勤換算の計算式は、「常勤職員の人数+(非常勤職員の実働時間の合計÷常勤職員の所定勤務時間)」です。計算を行うには、まず事業所に在籍している常勤職員の人数と、1カ月(4週間)あたりの所定勤務時間を把握する必要があります。次に常勤以外の職員全員について、1カ月あたりの実働時間を計算し、合計します。

以下は架空の事業所を使った計算例です。

P事業所

常勤職員の人数 2人
所定勤務時間 月160時間(8時間/日×5日×4週)

非常勤職員

・契約社員Aさん 月130時間
・パートBさん 月60時間
・パートCさん 月40時間
・アルバイトDさん 月50時間

2+{(130+60+40+50)÷160}
 =2+{(280)÷160}
  =2+1.75
   =3.7(小数点第2位以下は切り捨て)


P事業所では、所定勤務時間の月160時間働く常勤職員が2人、それ以外の非常勤職員が4人で合計6人の職員が働いています。非常勤職員それぞれの1カ月あたりの勤務時間を式に当てはめて計算すると、常勤換算によるP事業所の人員数は3.7人だと分かります。

2.常勤換算に関する注意点

上で常勤換算の例を示しましたが、実際の施設・事業所において、このように単純な計算ができるケースは滅多にないでしょう。特に在籍している職員のなかに、休暇中の職員や、複数の職務を兼任する職員がいる場合には、計算上の注意が必要です。

例外的な条件を無視して計算をすると、現場の実情と異なる結果が出てしまい、場合によっては、人員配置基準に違反するケースも出てくるでしょう。人員配置基準の違反は不法行為にあたるため、最悪の場合、介護事業の停止や指定取消といった、行政処分の対象となります。このような事態を防ぐためにも、人員配置基準に配慮した、正確な常勤換算を行うことが必要です。

以下に、扱い上の注意が必要な2つのケースを紹介します。

有休・産休などの場合

職員のなかに休暇中の方が含まれるケースでは、対象者の休暇の長さによって計算に入れるかどうかが異なります。

休暇中の職員が含まれる場合は、下記の条件を参考にしてください。なお、2021年度の介護報酬改定では、育児や介護による職員の離職を防止するために、条件付きで常勤換算の要件が緩和されました。

短期間(1カ月以下)の有休・出張の場合

・常勤職員は、計算に含む
・非常勤職員は、計算に含まない


1カ月を超える長期有休の場合

・常勤・非常勤職員ともに計算に含まない
・基本的に産休や育休、介護休業も計算に含まない


育児や介護による短時間勤務を行う場合

・基本的には非常勤職員として計算する
ただし、以下の3つの条件を満たしている場合には、常勤職員として計算する

・事業所の就業規則などで、短時間勤務を行っている職員の勤務時間が明確に定められている
・定められた短時間勤務を行っている職員の勤務時間が30時間以上である
・事業所の運営に支障のない体制が整備されている


兼務している場合

介護施設・事業所に勤務する職員の場合、複数の事業所を兼務したり、同一施設や系列内で複数の業種を兼任したりするケースもあります。

兼務についてのルールは自治体によって異なりますが、1つの法人が同一敷地内で運営する施設で、並行的に業務を行っても差し支えがないと判断される場合は、常勤換算が可能です。一方で、事業所間の距離が離れている場合や、並行して行うことが困難な業務については、それぞれ時間を分けて計算しなければなりません。

3.介護サービスごとの人員配置基準

介護施設・事業所ではさまざまな形態で職員を雇用しており、配置基準にのっとった運営をするためには常勤換算が不可欠です。そして、24時間体制の老人ホームや、多くの利用者さんを抱えるデイサービス、在宅サービスを行う訪問介護など、施設・事業所の形態やサービス内容によって人員配置基準は異なります。

ここでは「通所系サービス」「訪問介護サービス」「居宅介護支援事業所」それぞれの概要や配置基準を紹介します。

通所系サービス

通所系の介護サービスは、自宅で生活する利用者さんが施設に通って受けるサービスで、要介護や要支援認定を受けていることが利用条件となります。通所系の介護サービスには、運動やレクリエーションを通して他者との交流を図るデイサービス、専門家によるリハビリを目的としたデイケアなどがあり、利用者数によって介護職員の人員配置基準が異なります。

通所系サービスの人員配置基準

生活相談員 専従で1人以上
看護職員 専従で1人以上
介護職員(常勤換算)
・利用者数が15人以下の場合、専従で1人以上
・利用者数が15人以上の場合、5名増えるごとに専従の介護職員を1人追加
機能訓練指導員 1人以上

(出典:厚生労働省社会保障審議会(介護給付費分科会)「通所介護及び療養通所介護 (参考資料)」

訪問介護サービス

訪問介護は、要介護者の生活する自宅を訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問するサービスです。主に食事や入浴、排泄などの身体介護と、食事作り、掃除、洗濯などの生活援助を行います。サービス提供責任者は常勤専従で、訪問介護員は常勤換算で2.5人以上必要です。

訪問介護事業所の人員配置基準

訪問介護員(常勤換算) 2.5人以上(サービス提供責任者を含む)
サービス提供責任者 利用者数40人に対して1人以上(原則、常勤専従)
※特定の条件を満たす場合のみ、利用者数50人に対して1人以上
管理者 常勤・専従

(出典:厚生労働省社会保障審議会(介護給付費分科会)「訪問介護の報酬・基準について」

居宅介護支援事業所

居宅介護支援では、自宅で生活する利用者さんの依頼に基づいて、介護支援専門員(ケアマネジャー)がケアプランを作成。適切なサービスが行われるように、サービス提供事業者などと連絡・調整を行います。管理者は基本的に常勤職員が担当しますが、利用者さんが35人以上で、介護支援専門員を追加する場合は非常勤職員でも構いません。

居宅介護支援事業所の人員配置基準

管理者 常勤の介護支援専門員
介護支援専門員 利用者数35人に対して1人以上
※2021年4月以降開設の事業所では、介護支援専門員ではなく主任介護支援専門員

(出典:厚生労働省社会保障審議会(介護給付費分科会)「居宅介護支援(参考資料)」

まとめ

常勤換算は、介護保険法に定められた人員配置基準を満たすために、施設・事業所で働くすべての職員の労働時間を「常勤の職員が何人働いているか」に置き換えて計算する方法です。適切な介護サービスを提供するためにも、職員の休暇や兼務などに配慮しながら、正確な常勤換算を行いましょう。なお、人員配置基準に違反すると、行政処分の対象となる可能性もあるため注意が必要です。

「介護のみらいラボ」では、介護の現場で活躍されている方々に向けて、有益な情報を発信しています。現場で役立つ専門的な知識から、スキルアップを目指すためのポイント、ストレスや悩みの解消法など、幅広い情報を網羅しているので、介護の現場で疑問や迷いを感じた際には、ぜひご活用ください。

※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

介護保険法では、それぞれの事業ごとに人員基準が定められています。その事業所で働いている職員の平均人数を導き出すための計算を「常勤換算」といいます。常勤換算とは、パートタイムなどの短時間労働の職員の労働時間を合計した時間数で常勤職員とみなすというものです。
一般的に、常勤とは勤務している事業所のフルタイム労働時間に到達している職員を指しますが、フルタイムで働いている職員は正規・非正規の方でも常勤扱いとなります。
介護業界では離職率の高さなどから人手不足に陥る施設や事業所が多く、また、職員の家族の介護・育児などによりフルタイムで勤務できないなどの理由から、介護保険法で定められている基準を下回っている場合があります。
このようななか、令和3年度の介護報酬改定により常勤換算要件が緩和されました。これは育児介護休業法との整合性を図るための改正でもあります。
常勤換算要件の緩和について、例えば、もともとフルタイムで勤務していた職員が家族の介護のために短時間労働勤務制度を利用し、週30時間勤務した場合でも常勤1名として換算されるというものです。
この常勤換算要件緩和は介護職員だけでなく、管理者やサービス提供責任者、生活相談員などにも適用されるため、事業者、職員双方にとってメリットがあるといえます。
常勤換算は、質の高い介護サービスを提供するためには必要な職員を確保するためのものですので、基準を満たしていない事業所は、指定の取り消しやサービス停止、新規受け入れ停止、介護報酬の減額などの行政処分が科されます。指定取り消し処分は重い罰則ですので、日ごろからの確認が必要です。
常勤換算の基本的な計算方法は厚労省がサンプルを提供していますので、参考にされてみてはいかがでしょうか。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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