秋の季語と有名な秋の俳句を紹介|季節の区切りやレクリエーションも
構成・文/介護のみらいラボ編集部俳句は、季語を盛り込みながら、五・七・五の17音で作る日本の定型詩です。季語とはそれぞれの季節を表す言葉であり、季語を使うことで季節ごとの特徴や美しさ、季節に関わる人間の感情をより豊かに表現できます。
この記事では、季語のなかから秋の季語をピックアップ。三秋、初秋、仲秋、晩秋という時期ごとの季語や、それぞれの季語が使われている俳句について解説していきます。さらに、俳句を使った楽しいレクリエーションも紹介するので、この機会に俳句や季語の知識を深め、その魅力を再発見してみましょう。
1.そもそも俳句の季語とは?
季語とは、俳句や連歌を作るときに用いられる「特定の季節を表す言葉」です。日本は四季がはっきりしているため、それぞれの季節ならではの情景が楽しめます。そして、それらを俳句で表現する際は、秋や冬といった言葉をそのまま使うより、具体的なイメージを喚起させる言葉や驚き・感動などが伝わる言葉を使ったほうが、句に情緒や深みを与えることができます。
つまり、季語は作者と読者が、感情を共有するための言葉でもあるわけです。
俳句に使われる季語を集めた書物は「歳時記」と呼ばれ、一般的な歳時記には4,000~5,000もの季語が記されているといわれます。俳句を詠むときには、歳時記で季語を確認し、詠みたい情景や感情に合ったものを選ぶとよいでしょう。
秋の季語が使われる時期
俳句の世界では、二十四節気(※)に基づいて四季を区分しており、8月8日ごろの立秋から、11月7日ごろの立冬の前日までが秋にあたります。そのため、秋の季語が使えるのは8月、9月、10月ごろであり、この3か月は「三秋」とも呼ばれます。
※1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けたもの。「春分」や「夏至」「秋分」「冬至」なども二十四節気を表す言葉です。
現代では9月~11月ごろを秋と呼ぶことが多いため、秋の季語が使われる時期と私たちが認識している秋との間には、1か月程度のズレがある点に注意しましょう。
2.秋の季語の例と有名な俳句を紹介
秋の季語には、「台風」「稲」「蜻蛉」「秋刀魚」といった言葉があります。
ただし、秋の季語のすべてが、秋全般を通して使えるわけではありません。季語によっては一部の時期でしか使えないものがあるため、時期に合った季語を知ることが大切です。
以下では秋を4つの時期に分けて、それぞれの時期に合った季語とその意味、例句について解説します。
三秋(秋全体)
先に紹介したように、立秋から立冬の前日までを「三秋」と呼びます。三秋の季語は日づけを問わず、秋全般で使えます。
三秋の季語(例)
天文 | 秋風/秋曇/秋の夕焼/秋の雨/鰯雲/月/釣瓶落し |
---|---|
生活 | 鰯引く/案山子/砧/鹿垣(ししがき)/秋耕/鳴子/虫売 |
行事 | 秋遍路/秋祭/運動会/美術展覧会 |
地理 | 秋の海/秋の田/秋の波/秋の山/花野/水澄む/山粧ふ |
動物 | 秋鰹/秋鯖/鰯/稲雀/啄木鳥/渡り鳥/蜻蛉/蟋蟀(こおろぎ) |
植物 | 秋草/秋の七草/稲/荻/露草/青蜜柑/梨/芋 |
以下では、代表的な三秋の季語とその意味、それぞれの季語を使った俳句を紹介します。
月(つき) | 澄んだ秋空には月が明るくはっきりと見えるため、月は三秋の季語となっています。 |
【例】
・われをつれて 我影帰る 月夜かな (山口素堂)
・鎖あけて 月さし入れよ 浮御堂 (松尾芭蕉)
・月の庭 ふだん気附かぬ もの見えて (高浜虚子)
月を季語にした俳句には、澄んだ空気のなかで美しく輝く月や、月の光に照らし出された幻想的な風景を詠んだものが多く見られます。
秋祭(あきまつり) | 秋の収穫を祝い、神に感謝する風習です。地方ごとにさまざまな秋祭があります。 |
【例】
・かいとりや 木綿鹿子の 秋祭 (槐本之道)
・一日の 秋にぎやかに 祭りかな (正岡子規)
・真つ青き 蜜柑も売るや 秋祭 (西山泊雲)
上記は秋祭を季語にした代表的な3句で、行きかう人々の楽しげな様子が伝わってくるようです。
水澄む(みずすむ) | 秋になって気温が下がり、水が澄んだように感じる様子を表す季語です。 |
【例】
・うら枯や 隈々の水 澄みかへり (溝口素丸)
・一むらの 木賊の水も 澄みにけり (鈴木花簑)
・流れ澄む 水にあるもの 柳影 (原石鼎)
空気も水も、あるいは心まで澄み渡って、気持ちのよい季節。そんな秋の情景を水に代表させたのが、「水澄む」という言葉です。俳句の季語に水澄むを使うと、夏から秋への変化を情緒的に表現できます。
蜻蛉(とんぼ/とんぼう) | 蜻蛉は秋に成虫になり、空を自由に飛び回ります。 |
【例】
・蜻蛉や とりつきかねし 草の上 (松尾芭蕉)
・とんぼうや 白雲の飛ぶ 空までも (高井几董)
・夕日影 町一ぱいの とんぼ哉 (小林一茶)
蜻蛉が草に止まろうとする様子や、澄んだ秋空の下をすいすいと飛ぶ様子を詠んだ句です。蜻蛉と青空、夕日は、秋の風情を感じさせる代表的な組み合わせといえます。
初秋(8月ごろ)
初秋は、8月8日ごろから9月7日ごろまでを指します。初秋は夏の暑さが残りつつも、空気がさわやかになり、秋の気配を感じられる時期です。
初秋の季語(例)
天文 | 秋の初風/有明月/天の川/初嵐/二つ星/盆の月 |
---|---|
生活 | 秋扇/秋の蚊帳/苧殻/相撲/七夕/中元/盆用意 |
行事 | 愛宕火/生身魂/盂蘭盆会/送り火/大文字/茄子の馬/墓参 |
地理 | 秋出水/盆波 |
動物 | 秋の蛍/芋虫/きりぎりす/茶立虫/蜩(ひぐらし)/松虫/別れ烏 |
植物 | 青瓢/朝顔/桔梗/桐一葉/西瓜/刀豆/冬瓜 |
初秋の時期に使える、代表的な季語を紹介します。
初嵐(はつあらし) | 立秋を過ぎて初めて吹く強い風のことです。 |
【例】
・富士川の 石あらはなり 初嵐 (正岡子規)
・温泉湧く 谷の底より 初嵐 (夏目漱石)
・君こねば あぶら灯うすし 初嵐 (炭太祇)
暑さが続いた後に、冷ややかな風が吹き渡る。そんな秋ならではの情景を詠んだ句が多く見られますが、なかには揺れ動く心情を初嵐になぞらえた句もあります。
七夕(たなばた) | 旧暦7月7日(新暦8月20日ごろ)に行われる行事です。願い事を書いた短冊を笹に飾り、七夕の夜を祝います。 |
【例】
・七夕や 秋を定むる 初めの夜 (松尾芭蕉)
・七夕や 賀茂川わたる 牛車 (服部嵐雪)
・まだ書かぬ 七夕色紙 重ねあり(高浜虚子)
「七夕の日には織姫と彦星が年に一度だけ会える」という伝説になぞらえて、男女の恋の哀しさを詠んだ句も見られます。
墓参り(はかまいり・ぼさん) | お盆の時期に先祖の墓をお参りすることです。 |
【例】
・家はみな 杖に白髪の 墓参り (松尾芭蕉)
・見し人も 孫子になりて 墓参り (向井去来)
・草ぬいて 早や暮るる日の 墓参かな (河東碧梧桐)
墓参りを季語に使った句には、家族のつながりや郷里への思い、年月の経過を詠んだものが多く見られます。
鈴虫(すずむし) | 鈴虫は初秋を代表する虫で、鈴を振るような鳴き声が詩歌の世界で愛されています。 |
【例】
・鈴虫や 松明さきへ 荷はせて (宝井其角)
・雨来り 鈴虫声を たたみあへず (臼田亞浪)
・鈴虫を 聴く庭下駄を 揃へあり (高浜虚子)
日常のなかで鈴虫の美しい音色を聞き、秋の気配を感じる。そんな情景を詠んだ句が多く、鈴虫は古くから「秋の風物詩」として親しまれていたことがわかります。
仲秋(9月ごろ)
仲秋は、9月8日ごろから10月7日ごろまでの時期です。月や花に関連する言葉のほか、風の強さや空気の涼しさを感じさせる言葉が多く登場します。
仲秋の季語(例)
天文 | 十六夜/居待月/雨月/台風/立待月/名月/宵闇 |
---|---|
生活 | 稲扱/稲干す/栗刈る/豆引く/籾摺/月見/濁り酒 |
行事 | 秋の駒牽/北野瑞饋祭/司召/二十六夜待/八朔の祝/菩薩祭/敬老の日 |
地理 | 落し水/不知火/高潮/初潮 |
動物 | 秋の蛙/江鮭/太刀魚/尾越の鴨/小鳥/燕帰る/蛇穴に入る |
植物 | 秋茄子/通草/南瓜/コスモス/石榴/葡萄/早稲 |
以下では、代表的な仲秋の季語と俳句の例を紹介します。
十六夜(いざよい) | 旧暦16日の夜や月を表す季語です。名月として知られる十五夜の次の夜であり、必ずしも満月とは限りません。 |
【例】
・十六夜は わづかに闇の 初かな (松尾芭蕉)
・十六夜の 闇をこぼすや 芋の露 (加賀千代女)
・十六夜の 山はかはるや 月の道 (正岡子規)
十六夜には月が欠けはじめるため、名月の美しさを詠んだ俳句だけでなく、欠けていく月のもの悲しさを表現した句も多く見られます。ちなみに、「いざよう」には「ためらう」の意味もあります。
落し水(おとしみず) | 稲刈りの前、田を干すために水田の水を抜くことです。 |
【例】
・足あとの なき田わびしや 落し水 (与謝蕪村)
・泥亀の 流れ出でたり 落し水 (夏目漱石)
・おもしろや 田毎の月の 落し水 (正岡子規)
落し水は水田地帯でよく見られる光景であり、水が抜けた後の田の様子や、水路や小川に水が流れていく様子が、多くの俳句に詠まれています。
燕帰る(つばめかえる) | 夏の間に巣で子育てをしたつばめは、秋になると群れになって南方へと帰っていきます。 |
【例】
・落日の なかを燕の 帰るかな (与謝蕪村)
・時くれば 燕もやがて 帰るなり (夏目漱石)
・いぶしたる 炉上の燕 帰りけり (河東碧梧桐)
燕が飛んでいく様子に季節の移り変わりを感じて、ふと淋しくなってしまう。燕帰るは、そんな心情を詠む際に使われます。
葡萄(ぶどう) | どんどんつるが伸び広がっていき、秋に実が熟します。 |
【例】
・雫かと 鳥もあやぶむ 葡萄かな (加賀千代女)
・黒葡萄 天の甘露を うらやまず (小林一茶)
・黒きまで 紫深き 葡萄かな (正岡子規)
葡萄を季語に使った句では、たわわに実った房の形状や実の色合いのよさを褒める内容が多く見られます。
晩秋(10月ごろ)
晩秋は、10月8日ごろから11月6日ごろまでの時期です。晩秋の季語には、寒さを表現する言葉や秋に旬を迎える食べ物がそろっています。
晩秋の季語(例)
天文 | 秋時雨/秋の霜/秋雪/露寒/露時雨/露霜/後の月 |
---|---|
生活 | 甘干/稲刈/栗飯/新米/新蕎麦/茸狩/紅葉狩/冬支度 |
行事 | 太秦の牛祭/恵美須祭/菊の着綿/時代祭/芸術祭/体育の日/重陽 |
地理 | 刈田/枯野の色/野山の色/野山の錦/ひつぢ田 |
動物 | 猪/雁/秋刀魚/紅葉鮒/鵯(ひよどり)/連雀/菜虫 |
植物 | 無花果/梅紅葉/落穂/柿/銀杏/松茸/柚子 |
代表的な晩秋の季語と、それらを使った俳句の例を紹介します。
秋の霜(あきのしも) | 冬が近づく晩秋には霜が降りることもあり、秋の霜は作物や草木を傷めます。 |
【例】
・手にとらば 消えん涙ぞ熱き 秋の霜 (松尾芭蕉)
・秋の霜 うちひらめなる 石のうへ (与謝蕪村)
・山高く 通草腐りぬ 秋の霜 (正岡子規)
秋の霜は「冬が近づくこと」を表すだけでなく、「すぐ消えてしまうもの」のたとえとしても使われます。
茸狩(たけがり) | 秋の山に入り、生えているきのこを取ることです。 |
【例】
・茸狩や あぶなきことに ゆふぐれし (松尾芭蕉)
・たけがりや 見付ぬ先の おもしろさ (山口素堂)
・茸狩りの から手でもどる 騒ぎかな (小林一茶)
茸狩は昔から秋の行楽として親しまれており、多くの俳句にきのこを探し取ることの楽しさが詠まれています。
雁(かり) | 雁は晩秋に北方から渡ってくる鳥で、隊列を組んで飛ぶ姿は10月の風物詩となっています。 |
【例】
・雲とへだつ 友かや雁の いきわかれ (松尾芭蕉)
・初雁に 羽織の紐を 忘れけり (与謝蕪村)
・便船や 夜を行く雁の あとや先 (夏目漱石)
雁は渡り鳥として広く知られているため、旅する身を雁に見立てて詠んだ句も少なくありません。
柚子(ゆず) | 柚子は鮮やかな黄色い果皮とさわやかな香りで、古くから愛されている植物です。 |
【例】
・子籠の 柚の葉にのりし 匂ひ哉 (宝井其角)
・なんといふ 空がなごやかな 柚子の二つ三つ (種田山頭火)
・古家や 累々として 柚子黄なり (正岡子規)
柚子が放つさわやかな香りや、風景のなかでひときわ目を引く果実の色合いが、多くの俳句に詠まれています。
3.秋の季語と間違えやすい言葉は?
季語のなかには、季節を間違えやすいものもあります。たとえば、以下の3つは「秋」という言葉がついているにもかかわらず、秋の季語ではありません。
・竹の秋(晩春の季語)
・麦の秋(初夏の季語)
・夜の秋(晩夏の季語)
反対に、秋以外のイメージが強いものの、俳句の世界では秋を意味する言葉もあります。下記の言葉は、いずれも秋の季語です。
・盂蘭盆会
・七夕
・朝顔
・西瓜
使いたい季語が、意図する季節のものかどうかわからないときは、歳時記で確認するとよいでしょう。
4.秋に楽しめる!俳句を使ったレクリエーション
介護施設を利用する高齢の利用者さんのなかには、俳句に詳しい方も多いため、レクリエーションに俳句を取り入れると楽しんでもらえるでしょう。
秋には、秋の季語を使った俳句のレクリエーションを実施するのがおすすめです。
新聞俳句作り |
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新聞の紙面を切りぬき、書いてある文字を組み合わせて、五・七・五の定型詩を作るレクリエーションです。2つの箱に5文字・7文字の切り抜きをそれぞれ入れて、利用者さんに言葉を組み合わせてもらいましょう。 【例1】 5文字の紙が入った箱と、7文字の紙が入った箱を用意しました。 最初に5文字の紙を1枚選んで、次に7文字の紙を1枚選んで、最後にまた5文字の紙を1枚選んで、俳句のように五・七・五を作ってみましょう。 新聞の切り抜きのほか、5文字の季語が書かれた紙を用意して、季語を入れ込んだ俳句を作るレクリエーションもあります。 【例2】 5文字の紙が入った箱と、7文字の紙が入った箱と、季語入りの5文字の紙が入った箱を用意しました。 季語入りの紙を必ず1枚使って、五・七・五の俳句を作ってみましょう。 |
季語探し |
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俳句の季語を、利用者さんに探してもらうレクリエーションです。まずは季語を当てる問題を出して、俳句に詳しくない利用者さんが季語に親しめるようにするとよいでしょう。 【例1】 次のなかから、秋の季語を3つ探してください。 ・運動会 ・桜 ・蜜柑 ・田植 ・秋刀魚 ・蝉 ・コスモス 秋の俳句を使って、俳句に使われている季語を見つけてもらうやり方もあります。 【例2】 次の俳句では、どの言葉が季語として使われているでしょうか。 ・赤蜻蛉 飛ぶや平家の ちりぢりに (正岡子規) ・風に名の ついて吹くより 新酒かな (斯波園女) ・手斧打つ 音も木ぶかし 啄木鳥 (与謝蕪村) 難しい言葉ではなく、「秋の季語」だと推測できるような言葉を選ぶのがおすすめです。 |
まとめ
俳句に使われる秋の季語は、秋ならではの美しい情景や詠み手の感情を伝えるための大事な要素です。三秋、初秋、仲秋、晩秋の時期ごとに使える季語が異なるため、それらを適切に使い分けることで、俳句の表現力が格段に向上するでしょう。
俳句を使ったレクリエーションは、室内で気軽に楽しめるだけでなく、季語に対する理解を深めることにもつながります。新聞俳句作りや季語探しといったレクリエーションを通じて、利用者さんが俳句に親しむきっかけを作ってみてはどうでしょう。
俳句レクリエーションは、心の交流を深め、笑顔を広げるツールでもあります。レクリエーションの企画に困ったときは、ぜひ活用してください。「介護のみらいラボ」では、ほかにもさまざまなお役立ちコンテンツを提供しております。他の季節の季語も紹介していますので、ぜひご覧ください。
※当記事は2024年5月時点の情報をもとに作成しています
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